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YouTuber・VTuber法務

ゲームMODの使用は違法?法的問題点を解説

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コロナによって外出する機会が減った影響もあり、ゲームの人気はますます高まっています。

多くの人は購入・ダウンロードしたままの状態でゲームをしていますが、中には、いわゆるMODを使用してゲームを楽しむ人もいます。しかし、データを改造するMODを使用することに法的問題はないのでしょうか。

そこで、本記事では、ゲームのMOD使用を考えている方を対象に、ゲームのMOD使用に関する法的問題を解説します。

ゲームのMODとはなにか

MODとは、主にPCゲームにおいて、開発・運営元ではなくユーザーが作成してゲームに適用可能にしたプログラムの総称をいい、改良や変更という意味の「modification」の略称に由来するといわれています。

なお、MODとよく似た言葉にMADという言葉があります。MADとは、主に既存の音声・画像・動画(アニメーション)などを個人が編集・合成し、再構成した二次創作物である”MADムービー”のことを指し、MODとは全くの別物です。

MODには、オリジナルのゲームにはない機能を追加するものや、ゲームやキャラクターの見た目を変更するもの、バグを是正するもの等、いろいろな種類があります。

MODは海外のPCゲームの文化においてはメジャーであり、ゲーム界隈を活性化させる要因として一役買っているものといえるでしょう。

ゲームMODの法的な問題点

ゲームMODの法的な問題点を考える場合、以下の2つの視点が重要です。

  1. ゲーム会社との関係
  2. MODによってゲームに登場させたキャラクターの権利者との関係

関連記事:YouTuberが知っておきたい著作権法「ゲーム実況」が違法になる場合

ゲーム会社との関係

ゲーム会社との関係

ゲーム会社との関係では、「同一性保持権」という権利が問題となります。

同一性保持権とは

同一性保持権とは、著作者人格権の一種であり、著作者の意思に反して著作物等の改変を受けない権利です(著作権法20条1項)。

同一性保持権の侵害となるか否かは、著作者の主観的意思が重視されるため、比較的広く認められる傾向にあります。また、著作者人格権である同一性保持権には、権利制限規定の適用がない(著作権法50条)ため、私的領域での改変行為も同一性保持権の侵害となる可能性がある点には注意が必要です。

もっとも、著作者の意思を杓子定規的に用いると、利用者に酷な場合もあるため、意思に反する改変すべてが同一性保持権の侵害になるわけではありません。しかし、同一性保持権の侵害に関する明確な基準がない以上、著作者の許諾を得ておくなどの対応をしておくことが望ましいです。

ゲームのMODと同一性保持権の関係

MODを使用するには、ゲームのソフトウェアにMODを追加することが必要です。

MODの追加行為についての事例ではありませんが、似たような事例が問題となった有名な判例として、最判平成13年2月13日・民集2086号114頁(ときめきメモリアル事件)があります。

この判例は、ゲームソフト「ときめきメモリアル」について著作者人格権を有する原告が、ゲーム主人公のパラメータを本来であればあり得ない極めて高数値にすることができるメモリーカードを輸入及び販売する被告に対して、同一性保持権を侵害するとして、損害賠償を請求した事案です。

最高裁は、次のように判示して、メモリーカードの使用行為が同一性保持権を侵害することを認めました。

本件メモリーカードの使用は,本件ゲームソフトを改変し,被上告人の有する同一性保持権を侵害するものと解するのが相当である。けだし,本件ゲームソフトにおけるパラメータは,それによって主人公の人物像を表現するものであり,その変化に応じてストーリーが展開されるものであるところ,本件メモリーカードの使用によって,本件ゲームソフトにおいて設定されたパラメータによって表現される主人公の人物像が改変されるとともに,その結果,本件ゲームソフトのストーリーが本来予定された範囲を超えて展開され,ストーリーの改変をもたらすことになるからである。

最判平成13年2月13日・民集2086号114頁(ときめきメモリアル事件)

上記判示からすると、ゲームのソフトウェアにMODを追加する行為がストーリーの改変をもたらすことになる場合には、同一性保持権の侵害に当たり違法になると考えられます。

なお、上記判例はメモリーカードを輸入・販売した上告人の損害賠償責任を認めましたが、同一性保持権を侵害する主体が販売業者とユーザーのどちらであるのかについては明示していません。仮にメモリーカードのユーザーが同一性保持権の侵害主体であるとした場合、ユーザーが私的領域で行う改変行為も同一性保持権侵害に当たることになります。

もっとも、使用行為が侵害行為と明示されている以上、専ら私的領域で遊ぶつもりでソフトウェアにMODを追加する場合であっても、ゲーム会社に許可を得ておくことが望ましいと思われます。

例外的にゲームの権利者がMODの使用を認めている場合

既に述べたように、権利者の許可を得ないで、MODを使用する行為は同一性保持権を侵害し、違法となる場合があります。一方で、MODのメリットから、ゲームの権利者がMODの使用を認めているケースもあります。例えば、ゲームの権利者がMODの使用を認めている有名なゲームとして、マインクラフトというゲームがあります。

マインクラフトの「MINECRAFT利用規約およびエンドユーザー使用許諾契約書」では以下のような記載があります。

Minecraft:Java Edition をご購入いただいた場合は、修正、ツール、プラグイン (「MOD」と総称します) を追加するかたちで、ゲームをいじったり改造したりすることができます。

MINECRAFT 利用規約および エンド ユーザー使用許諾契約書

このようにゲームの権利者がMODの使用を認めている場合には、MODを使用しても、同一性保持権を侵害することにはならず合法です。もっとも、この場合でも、許可された範囲を超えた使用行為は違法です。

例えば、ゲームのMOD動画を公開するためには、MODの使用が認められていることに加えて、ゲームの動画を公開することについても許諾があることが必要になります。

マインクラフトでは、「MINECRAFT利用規約およびエンドユーザー使用許諾契約書」で、以下のような規定もあります。

お客様は、本ゲームのスクリーンショットや動画を常識の範囲内で任意の用途で使用できます。「常識の範囲内で使用する」とは、スクリーンショットや動画を商用利用したり、不当なことあるいは弊社の権利に悪影響を及ぼすことを行ったりしてはならないことを意味します。ただし、弊社がそのような行為を本契約で明示的に承諾している場合、ブランド/アセット使用ガイドラインで許可している場合、またはお客様との具体的な取り決めで規定している場合を除きます。一方、本ゲームの動画を動画共有/ストリーミング サイトにアップロードする場合は、動画に広告を掲載することが許可されています。その際も、アート リソースを不正にコピーして共有することのないようご注意ください。

MINECRAFT 利用規約および エンド ユーザー使用許諾契約書

マインクラフトでは、上記のように、MODを使用することの許諾だけでなく、ゲーム動画の公開も許諾されているので、MOD動画を公開しても違法にはなりません。

いかなる範囲で許諾がされているかについては、ゲーム会社ごとに異なりますので、事前にしっかりと確認することが重要となります。

不正競争防止法との関係

不正競争防止法との関係

ゲーム会社との関係では「不正競争防止法」についても問題になります。

不正競争防止法とは、営業秘密侵害や周知なマークの不正使用、原産地の偽装表示、形態コピー商品の販売等の「不正競争」を規制するとともに、国際約束に基づく禁止行為を定め、 国民経済の健全な発展に寄与することを目的として制定された法律です。

技術的制限手段とは

不正競争防止法では、技術的制限手段を妨げる行為等が規制の対象になっています。

技術的制限手段とは、音楽・映画・写真・ゲーム等のコンテンツの無断コピーや無断視聴を防止するための技術を指します。

不正競争防止法は、平成30年に改正され、技術的制限手段として保護される対象に、データ(電磁的記録に記録された情報)が追加され、また、技術的制限手段を妨げる行為についても、効果を妨げる指令符号の譲渡、提供等や効果を妨げるサービスの提供が追加されています。

これにより、例えば、ゲームのセーブデータを改造することができるツールやプログラムの譲渡等が禁止されました。

上記改正により、不正競争防止法においてゲームというコンテンツの保護範囲が拡大され、ゲームMODを勝手に譲渡したり売ったりする行為も不正競争防止法の違反となる可能性があります。

チート行為について

MODの使用が違法になる場合としては、刑法上の犯罪に当たる行為として使用が禁じられている、いわゆる”チート行為”も含まれます。

チート行為とは、一般的に、ゲームのデータやプログラムを改ざんして、正規の利用では本来できないことを、不正に可能にする行為のことを言います。

チートとMODの違い

チートとMODの区別は明らかではありません。しかし、一般的にチートはインチキや騙しといった不正を強調するときに使われています。チートの典型例としては、ゲーム内の通貨やアイテムを不正な方法で増やすことや、キャラクターのレベルやステータスを不正な方法で急激に上げること等が挙げられます。

一方、MODは先述のとおり、オリジナルのゲームのグラフィックを強化したり、キャラクターの容姿を変更する等の、ゲームに対して変更を加えるプログラムの総称を指します。そのため、MODの中にはチートになるものと、そうでないものが両方含まれています

チート行為をした場合の法的責任

まず、チート行為はゲーム会社の意思に反してゲームを改変する者にあたるため、先述した同一性保持権の侵害に当たると考えられます。

また、チート行為をする利用者が現れることにより利用者が減ってしまうことや、その他にも、チートによって希少価値の高いアイテムが簡単に手に入るようになってしまうと、アイテムへの課金によって入ってくるはずだった利益がゲーム会社に入らなくなるという損害が発生することも考えられます。このように、チート行為をした者は、ゲーム会社から民事上の損害賠償責任を追及される恐れがあります。

チート行為をした場合には、民事上の責任だけでなく刑事上の責任を負うことも考えられます。

第二百三十四条の二(電子計算機損壊等業務妨害)

人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

2 前項の罪の未遂は、罰する。

刑法第234条の2

オンラインゲームの場合、通常、個々のプレーヤーの行動を処理するサーバーコンピューターという人の業務に使用する電子計算機が存在します。そして、チートはサーバーに虚偽の情報もしくは不正の指令を与え、想定された使用目的に沿うべき動作を妨げるものです。また、ゲームの提供者としては、チートの使用されないゲーム環境を提供することを業務の内容としているので、チートによって平穏なゲーム環境が乱されると業務が妨害されます。

以上のように、チート行為には刑法第234条の2に定められた電子計算機損壊等業務妨害罪が成立する可能性があります。

MODによってゲームに登場させたキャラクターの権利者との関係

ゲームに登場させたキャラクターの権利者との関係

著作権とは、著作物に対する著作権者の利益を保護するための権利です。著作物については、著作権法上、次のように定義されています。

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの

著作権法2条1項1号

そして、著作物に当たるかは、頭の中にある思想や概念といった「アイディア」に過ぎないのか、それらを具体的に「表現」したものであるのか、によって区別されています。

キャラクターの著作権については、次のように判示した判例があります。

キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということはできない

最判平成9年7月17日・民集51巻6号2714頁(ポパイネクタイ事件)

つまり、キャラクターそれ自体はアイディアに過ぎないが、漫画の1コマ等に具体的に表れたキャラクターの絵柄等は「表現」に当たるため、当該絵柄等に対する著作権(以下、これを便宜的に「キャラクターの著作権」といいます)が認められうる、ということです。

関連記事:キャラクターには著作権がない?IPビジネスのための基礎知識

そこで以下では、キャラクターの著作権が認められるケースを前提に、MODにより他のゲームやアニメのキャラクターをゲームに登場させた際の法的な問題点について説明します。

ゲームに他のキャラクターを登場させると著作権侵害となる

まず、MODを利用し、他のアニメやゲームのキャラクターの絵柄を用いてそのまま登場させた場合、他人の著作物を無断で利用していることとなりますので、原則として、著作権の1つである複製権の侵害にあたります

次に、MODを利用し、ゲームにオリジナルのグラフィックやデフォルメ化されたグラフィックを利用すした場合、キャラクターの絵柄をそのまま利用しているわけではないので、複製権侵害とはなりませんが、翻案権侵害となる可能性も高いと考えられます。

MODの利用時の注意点

MODは個人で配布することが可能であることから、気軽に利用することができます。

しかし、ユーザーが勝手に配布したMODを導入したことにより問題が発生しても、ゲーム会社からサポートを受けることはできません。したがって、MODの導入は自己責任で行うものだということに留意しておく必要があります。

また、MODにはたくさんの種類があります。中には、データを破壊するような悪質なMODが存在します。公式が認めていないMODの導入は、そのようなリスクを伴うものだと認識しておくことが必要です。例えばスマブラなど、オンラインで遊ぶゲームにMODを追加すると、アカウントBAN(停止)や違法となる可能性も十分あります。

まとめ:公式で認められたMODを利用するのが安全

以上、ゲームのMODに関する法的問題を説明しました。

このようにゲームのMODは、ゲームをさらに楽しむことを可能にしてくれる反面、問題点もあります。しかも、実際にそれが違法かどうかの判断は微妙な場合が多いです。仮に違法だった場合には莫大な額を損害賠償請求される可能性もあるため、MODを利用したい場合には、公式が利用を認めているMODを利用するのが安全です。

ゲームMODに関する法的問題には、専門的知識が要求されますので、専門性の高い弁護士に相談することをおすすめします。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。昨今、YouTuberやVTuberの間でも、チャンネル運用にあたって、肖像権や著作権、広告規制などリーガルチェックの必要性が急増しております。また契約をめぐる問題についても事前にしっかりと下準備をしておくことが不可欠です。下記記事にて詳細を記載しておりますのでご参照ください。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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