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建築物の画像利用は法律違反?著作権と商標権について

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建築物の画像利用は法律違反?著作権と商標権について

写真や映画、アニメ、ゲーム、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)にグッズなど、建築物は多くのコンテンツで利用されるようになっています。

建築物は、様々な権利で保護されており、画像などを利用する際には、権利侵害とならないよう注意する必要があります。

ここでは、建築物と著作権や商標権との関係について解説します。

著作権

著作権とは、著作物を保護するための権利のことをいいます。

「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」とあり、第10条1項で「著作物の例示」がなされていますが、この5号に「建築の著作物」とあります。

著作権法第2条1項1号

建築物と著作権

建築物とは、住宅やビルだけでなく、劇場、神社、寺院、橋、庭園、公園、タワー等、各種建造物全般を指すのが通例ですが、これらのうち、「思想又は感情を創作的に表現した建築物」は、建築の著作物として著作権が認められることになります

著作権法第46条には、

公開の美術の著作物等の利用

美術の著作物でその原作品が前条第2項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。

1. 彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合

2. 建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合

3. 前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合

4. 専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合

著作権法第46条

とあります。

上記より、同じような建築物を建築する行為(複製)は禁じられますが、それ以外の行為、例えば撮影やその商用利用は認められることになります。

つまり、建築著作物は著作権法においては、著作権者の承諾がなくても、写真や映画、アニメやゲーム、またグッズ等での利用も可能となります。

また、建築の著作物には、美術の著作物と異なり「屋外に設置」という限定がないので、理論的には室内や階段などの建築物の一部も利用可能と考えられます。

ただし、同条4号により、創作性が高く、「美術の著作物」にも該当するような建築物、例えば岡本太郎の「太陽の塔」等については、自由利用の範囲は制限されます。

私的目的や無料配布等での写真撮影のほか、販売目的であっても背景の一部として写す程度なら可能ですが、建築物に焦点を当てた絵葉書やポスターのような、販売目的での写真撮影その他の複製や販売を行うには、著作権者の承諾が必要となります。

著作物性を巡る判断

対象建築物が著作物に該当するかどうかの判定は、実際にはかなり難しい問題なので、訴訟事件となって、争われることがあります。

著作物とは認められなかった建築物

建物の設計図を作成した原告が、設計図に沿って建物を建築することは原告の著作権(複製権)を侵害するとして、建物建築工事差止めの仮処分を申請した事例があります。

裁判所は、

本件設計図に表現されている観念的な建物が「建築の著作物」に該当するか否かを検討し、使い勝手のよさ等の実用性や機能性などではなく、もっぱら、その文化的精神性の表現としての建物の外観を中心に検討すべきとしつつ、本件の建物は一般人をして、設計者の文化的精神性を感得せしめるような芸術性を備えたものとは認められず、いまだ一般住宅の域を出ず、建築芸術に高められているものとは評価できないとして、「建築の著作物」には該当せず、したがって本件の建築行為は「複製」権の侵害とはならないとして、申請を却下しました。

福島地方裁判所1991年4月9日決定

同様の判断は、グットデザイン賞を受賞した高級注文住宅においても見られます。積水ハウス株式会社は、高級注文住宅のシリーズを設計、建築し、全国の住宅展示場に展示しました。一方、被告建築会社はモデルハウスを建築し、全国の展示場で展示していたのですが、この建物が自社建築物を複製または翻案したものであり、著作権を侵害するものであるとして、積水ハウス株式会社が被告会社のモデルハウスの建築差し止め等を求めた事例があります。

裁判所は、

原告の建物は和風建築の美を感じさせる要素と洋風建築の要素を試行錯誤を経て配置、構成し、実用性や機能性のみならず、美的な面でそれなりの創作性を有する建築物であり、また、専門的な知識、経験を有する複数の者が関与して、試行錯誤を経て外観のデザインが決定されたものであり、知的活動の成果であることも疑いないところであるとしました。また、グッドデザイン賞の選定に当たっては、美しさ、新規性、独自性など、審美性、芸術性に関連する要素が考慮されており、従来の建築様式との対比の点においても、純然たる和風建築でも洋風建築でもない独自の要素があることが認められる

としましたが、

完成した原告建物を既存の通常の住宅建築と比較した場合、原告建物にそれらとは異なって美術性、芸術性が備わっているものとまでは認められないから、設計において上記のような考慮がされているとしても、その故に、原告建物に美術性,芸術性が備えられていると認めることはできないとして、著作権法上の建築著作物には該当しない

大阪地方裁判所2003年10月30日判決

としました。

「それなりの創作性を有する建築物」であり、「知的活動の成果」であって、「独自の要素がある」としても、通常の住宅や建築物が備える美的要素を超える美的な創作性を有し、建築芸術といえるような美術性、芸術性を有すると判断されるのは、難しいと言えます。

著作物と認められた建築物

慶應義塾大学三田キャンパスにおいて、

法科大学院を開設するための新校舎を建設するにあたり、彫刻家イサム・ノグチらの設計に係る、建物の一部、建物に隣接する庭園および庭園に設置された彫刻2点を移設する工事を実施しようとした行為が、イサム・ノグチの著作者人格権(同一性保持権)を侵害するものである

として、同人の著作物に関する一切の権利を承継したとするイサム・ノグチ財団が、建物等の解体、移設工事の差止めの仮処分命令を申立てた事例があります。(東京地方裁判所2003年6月11日決定)

裁判所は、

ノグチ・ルームを含めた本件建物全体が一体としての著作物であり、また、庭園は本件建物と一体となるものとして設計され、本件建物と有機的に一体となっているもの

とし、彫刻についても、

庭園全体の構成のみならず本件建物におけるノグチ・ルームの構造が庭園に設置される彫刻の位置、形状を考慮した上で設計されているものであるから、設置した場所に位置している限りにおいては、庭園の構成要素の一部として上記の一個の建築の著作物を構成するものであり、同時に、独立して鑑賞する対象ともなり得るものとして、それ自体が独立した「美術の著作物」でもある

としました。ただし、

工事は法科大学院開設という公共目的のために、予定学生数等から算出した必要な敷地面積の新校舎を大学敷地内という限られたスペースに建設するためのものであり、できる限り製作者の意図を保存するため、法科大学院開設予定時期が間近に迫るなか、保存ワーキンググループの意見を採り入れるなどして最終案を決定したものであって、その内容は、ノグチ・ルームを含む本件建物と庭園をいったん解体した上で移設するものではあるが、可能な限り現状に近い形で復元するものであり、同一性保持権が適用されない「建築物の増築、改変、修繕又は模様替えによる改変」(著作権法第20条2項2号)に該当する

として、建物等の解体、移設工事の差止めの仮処分命令申立てを、却下しました。

裁判上、著作物性が認められた建築物は、「新梅田シティ」や「ステラマッカートニー青山旗艦店」等、あまり多くはありません。

神社仏閣、城郭等の建造物も著作物となり得ますが、保護期間が満了済みのものが多いでしょう。ただ、著作者人格権は、保護期間の満了後も存続する可能性があります。

著作者が生きている場合には、著作者人格権の侵害となるような行為は禁止され(著作権法第60条)、また、著作者の名誉や声望を害するような著作物の利用は、著作者人格権侵害とみなされる(著作権法第113条7項)可能性があるので、注意が必要です。

建築物と商標権

東京タワーやスカイツリーは、名称だけでなく、建物のシルエット等も商標登録しています。また、外観に識別力があれば、立体商標としても登録が可能なので、東京タワーやスカイツリーのようなランドマーク的な建築物については、識別力があることなどから、形状そのものが立体商標として登録されています。

また、店舗外観についても、コメダ珈琲等は立体商標として登録されています。

商標権者は、無断使用者に対して差止請求(商標法第36条)や損害賠償請求(商標法第38条)を行うことが可能です。

ただし、商標のあらゆる使用を制限できるわけではなく、商標権は商標に含まれる「営業上の信用」を保護する制度なので、商標権の対象は営業上の信用のフリーライドなど、自他識別力を有するような使用(「商標的使用」といわれます)に限られます(商標法第26条1項6号)。

一方、商標登録されている建築物をコンテンツ上、単なる表現の一環として登場させることは、商標的使用に当たらないので、商標権侵害にはならない場合があります。

映画やゲーム等に商標登録された建築物を表示したとしても、特に強調していなければ、商標権侵害とならない可能性もありますが、微妙で難しい判断が必要です。

著作権侵害には注意が必要ですが、商標権侵害も重大な問題となる可能性があるのです。

なお、2020年4月から、建築物も意匠登録の対象となり、屋上が公園になっている「ユニクロPARK横浜ベイサイド店」や「上野駅公園口駅舎」などの登録事例が出ています。ただ、1年間の猶予期間がありますが、意匠登録の対象は新規デザインなので、2020年4月以前に存在していた建築物をコンテンツなどで使用しても、意匠権侵害となる可能性は低いでしょう。

施設管理権や利用規約における著作権と商標権

建物や施設の所有者や管理者には、所有権に基づく「施設管理権」があります。施設内の迷惑行為や知的財産使用については、この施設管理権に基づく制限があり得ますが、民間の施設等においては、特に制限のない施設管理権が認められているので、施設管理権の一環として、「施設内での撮影を禁止する」ことは可能です。

この場合、無断撮影は施設管理権を侵害したことになります。さらに、著作権や商標権を侵害している場合は、公開にも規制が及ぶこととなります

例えば、東京スカイツリーのサイトには、

東京スカイツリーに関する知的財産(名称・ロゴマーク・シルエットデザイン・完成予想CG等)は、東武タワースカイツリー株式会社等の著作権・商標権により保護されております。使用に関しては、東京スカイツリーのイメージ維持のため、東京スカイツリーライセンス事務局で管理しております。これら知的財産は事務局の許諾なしに使用する事はできません。商品化や広告・販促での活用など、東京スカイツリー知的財産のご使用に関するお問合せは、下記事務局までお願いいたします。

東京スカイツリー知的財産使用に関するお問い合わせ

とあり、東京タワーのサイトにも、

東京タワーのプロパティ(※)を用いた商品・サービスの企画・製造・販売に関する業務、広告宣伝及び各種媒体における東京タワーのプロパティの使用につきましては、株式会社TOKYO TOWERの承諾が必要となります。

東京タワーのプロパティのご利用につきましては、こちらよりご相談ください。詳細につきましては後日弊社よりご連絡申し上げます。使用許諾料は、内容によって決めさせていただきます。なお、使用承諾には使用許諾料のお支払いの他、東京タワーのプロパティとしてのイメージを維持するため遵守していただく事項等の諸条件がございますが、利用内容によりましては、使用を承諾しかねる場合がございますので、予めご了承ください。

※東京タワーのプロパティ

・名称(東京タワー・TOKYO TOWER)日本語・外国語問わず

・ロゴマーク

・外観的形象(東京タワーの形状・色彩・照明等)写真・デザイン含む

・キャラクター「ノッポン」※名称・形象

TOKYO TOWER ライセンス/撮影・取材について

とあります。建築物の画像を利用するときには、このような施設管理権や利用規約にも、注意が必要となります。

まとめ

建築物には、様々な権利が発生する可能性があります。また、著作権法的には、「建築の著作物」や「美術の著作物」の該当性によって、利用可能な範囲も異なります。このように、建築物の画像を利用する際には、解決しておくべき難しい問題が数多くあります。経験豊かな弁護士にご相談ください。

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