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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

自作自演やアフィリエイターのランキングサイトの削除

風評被害対策

自作自演やアフィリエイターのランキングサイトの削除

現代では多くの人がネットを通じて商品やサービスを検索し、そこで得られる情報をもとに商品やサービスを比較し、購入を決定します。特にネット通販を利用する場合、実物を確認することができないので、ネットでの評価や評判は非常に強い影響力を持ち、企業にとって、時として死活問題となることもあります。

ランキングサイトとは

ネット上では、様々なランキングを目にすることができます。「可愛いナンバーワン女優ランキング」や「平成最強の朝ドラランキング」などは、「え、そうかな?」とか「忘れるところだったが、〇〇がいたな」とか考えながら楽しく遊べますし、「読み方を間違っていた漢字ランキング」などはちょっとしたクイズでもあり、いい時間つぶしになります。

ランキングサイトには、こういったランキングを集めた「Gooランキング」などもありますし、女性誌や商品比較雑誌が作成したものもあります。後者では、様々な商品が、テーマ別に比較されています。

こうしたランキングサイトには、あまり問題はありません。どうせ遊びであり、害はほとんどありません。読者も遊びだと思っているので、「どれだけの人数に聞いたのか」「どういう属性の人に聞いたのか」「質問文はどのようなものだったのか」などと疑問を持ったりはせずに楽しんでいますし、本気で追及するほどのことではありません。正確さや真実性は、ここでは要求されてはいないのです。

しかし、「Gooランキング」や女性誌、商品比較雑誌が作成したわけではないランキングサイトもあります。

そうしたものでなければ、誰かが何らかの目的があって作成しているわけであり、「自作自演のランキングサイト」や「アフィリエイターが作るランキングサイト」も多くあるのです。

自作自演のランキングサイトとは

商品やサービスを売っている企業には、ほとんど必ずライバル企業があります。そこで、自ら自社の商品やサービスがテーマであるランキングサイトを作り、同業他社と比較して自社商品やサービスが優れている、ランキングの上位を独占している、とすれば安直な宣伝になるでしょう。

しかも、自社商品やサービスを宣伝するだけでなく、同時に、他社の商品やサービスをけなし、評価を低下させるという、ネガティブキャンペーンを行うことができます。

ランキングというものに慣れてしまっている人が多いので、「どれだけの人数に聞いたのか」「どういう属性の人に聞いたのか」「質問文はどのようなものだったのか」などという疑問を持つことはほとんどありません。

「購買者の口コミです」と言われれば、「話半分だな」と仮に思ったとしても、専門的な知識はないのですから、何となく納得してしまいます。

自作自演のランキングサイト作成というのは甘い誘惑となりますが、実際にこれを行い、摘発された例があります。

自作自演のランキングサイトに対する裁判

あるリフォーム会社が自ら口コミサイトを開設し、自社を1位にランキングさせていたとして、ライバル業者が損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地方裁判所はリフォーム会社が架空の投稿で自社の評価を上げていたとして、賠償請求の一部を認めました。

判決では、リフォーム会社は自ら開設したサイトにおいて「開設以前にも以降にも架空の投稿をしている」とし、次のように判示しています。

被告は、架空の投稿を相当数行うことによって、ランキング1位の表示を作出していたと推認するのが相当である。
以上からすると、本件サイトにおける被告がランキング1位であるという本件ランキング表示は、実際の口コミ件数及び内容に基づくものとの間に乖離があると認められる。

大阪地方裁判所2019年4月11日判決

上のように、大阪地裁は自作自演のでたらめだとして賠償請求の一部を認め、また、不正競争防止法上の品質等誤認惹起行為があったとしました。

アフィリエイターが作るランキングサイト

ランキングサイトの広告効果とは?

ランキングサイトや比較サイトの多くは、アフィリエイターが作る、アフィリエイトサイトです。

アフィリエイトとは、A8.netやAmazonやafbのようなASP(アフィリエイトサービスプロバイダ)と呼ばれる広告代理店を通して、商品やサービスを保有する企業(コンテンツホルダー)と提携し、自分のブログやSNS等を活用してその商品やサービスの口コミを行い、販売につなげることで手数料(アフィリエイト報酬)を得るビジネスモデルであり、アフィリエイトで起業する人のことをアフィリエイターと呼びます。

アフィリエイトは個人で起業できますし、金銭的リスクが少なく、うまくやれば大きな利益を得る可能性があるので、ネットビジネスの中でも特に人気があります。また、広告効果と費用の関係が直接的であるので、広告主にとっても効率的な手法として利便性が高いと考えられています。

この中で、ランキングサイトを作るアフィリエイターは、提携する会社の商品やサービスを利用してもらい、それを収入とします。だから、クリックしてほしい商品やサービスが上位になるようにし、必然的に提携していない会社の商品やサービスを下位に表示させ、場合によっては誹謗中傷したりすることがあります。 特定企業の商品やサービスを絶賛するだけならまだいいのですが、売りたいがために、ライバル社の商品やサービスの評価を下げ、相対的に報酬を得られる商品の評判を高めるという行為は卑劣であり、許されるものではありません。

アフィリエイターに対する裁判

外国語教材の企画、開発及び販売等を行う会社が、アフィリエイターに名誉権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求及び将来の差止請求等をするために、Google社に発信者情報開示を請求し、裁判で認められました。

あるアフィリエイターが運営するWebサイトでは、英会話教材を徹底比較するという建前となっていましたが、実際にはA社の英会話教材を絶賛し、B社の教材については、「効果がまったく見られず英会話学習には不適切」であり、B社の宣伝手法が「意図的に誤解するような宣伝文句を使用した詐欺的、欺瞞的」なものであり、そのためB社の教材に対する「消費者からのクレームが多発している」等と記述していました。

このWebサイトには、A社の教材を販売するサイトへのリンクが貼られていました。このWebサイトを見てA社の教材を購入した人がいると、その購入価格の数パーセントがアフィリエイターに対して支払われるという、アフィリエイトサイトだったのです。 GoogleでB社や代表者の名前を検索すると「詐欺」「騙された」といった言葉が表示されることから、B社はこのアフィリエイターに対して損害賠償請求及び将来の差止請求等をするためにGoogle社を相手に発信者情報開示を請求し、東京地方裁判所は、次のように判示しました。

本件サイトの記載全体及び本件投稿の前後の文脈を考慮して、一般の読者の通常の理解ないし読み方を基準とすると、本件投稿は、単に本件サイトが勧める英会話教材と原告教材とを比較対照しているにとどまらず、記載の大半を費やしながら一貫して、原告教材に効果が全く見られず英会話学習には不適切な商品であるとの事実を摘示するとともに、その宣伝手法についても、原告が意図的に一般消費者が誤解するような宣伝文句を使用した詐欺的、欺瞞的なものであるとの事実を摘示し、さらに、これらが原因で原告教材に対する消費者からのクレームが多発しているとの事実を摘示しているものと認めるのが相当である。

東京地裁2015年7月13日判決

そして、一連の投稿は、一般読者にB社の教材に悪印象を抱かせるものであると認められ、B社の社会的評価を低下させるものであることが明らかであるとし、

本件サイトの運営者情報には、本件サイトはCという有志の団体が英会話教材を実際に体験して効果を確かめ徹底調査することを目標としていると記載されているものの、実際には、本件サイトがおすすめの英語教材ランキング第1位ないし第3位とする英語教材についてのアフィリエイトサイトであることが認められ、かかる事実によれば、本件サイトは、原告教材の内容はもとよりその宣伝手法にも言及して悪印象を与え、その評価を下げることにより特定の英語教材の購入に誘導し、アフィリエイト報酬を得ることを主たる目的とするものというべきであるから、本件投稿が専ら公益を図る目的によるものとは認められない。

同上

として、Google社に発信者の情報開示を命じました。

アフィリエイターが作るランキングサイトはどうあるべきか

「B社の教材を使ったけれども、自分にとっては効果があるように感じられなかった」という単なる個人の感想レベルの記述であれば、B社の社会的評価を低下させる名誉毀損とはなりません。

B社の宣伝手法が意図的に一般消費者が誤解するような宣伝文句を使用した詐欺的、欺瞞的なものであると信ずるに足る理由等があるのなら、そして実際に詐欺行為が行われている可能性があるのなら、これらに関する情報を社会一般に広く共有して、新たな被害を防止するよう消費者に警鐘を鳴らす必要があるので、公益を図る目的によるものと認められます。

上のアフィリエイターの過ちというのは、利益を得るために、教材の内容についての批判といった言論として許される範囲を超えて根拠なき誹謗中傷をし、おまけにB社の宣伝方法が詐欺的、欺瞞的であるなどと、まるでB社が詐欺ないしはそれに類する行為を働いたかのような記述をしており、それはいくらなんでもやりすぎだというところにあります。

アフィリエイトそれ自体に問題があるわけではありません。アフィリエイターのすべてが悪質だというわけではありません。自分の経験や体験を生かし、消費者に優良商品を紹介したいと願って運営しているアフィリエイターも多くいます。アフィリエイトは健全なスタイルで行うのであれば、時代の要求にかなった優れたビジネスモデルです。

もちろん、商品やサービスを提供している立場からは、競合企業の自作自演であれ、アフィリエイターによるものであれ、ランキングサイトや比較サイトによってもたらされる不利益は深刻なものであり、これを甘受する必要はありません。 当事務所の経験豊かな弁護士にご相談ください。速やかに対処いたします。

なお、ランキングサイトではない、いわゆる「ステマ」によって自社商品が不当に貶されている場合の対応に関しては下記記事にて詳細に解説しています。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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