弁護士法人 モノリス法律事務所03-6262-3248平日10:00-18:00(年末年始を除く)

法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

ミルクカフェの口コミやネガティブな書き込みの削除方法

風評被害対策

ミルクカフェにおける風評被害対策

学生や保護者にとって予備校の選択は頭を悩ませる問題です。通塾するにはそれなりの費用がかかるにもかかわらず、講師の人柄や能力などといった事情は実際に通ってみないとわからないからです。このような悩みを持つ学生や保護者には事前にネット上の口コミ情報を知りたいというニーズがあります。このようなニーズに応えるサイトとしてミルクカフェという匿名掲示板があります。ミルクカフェでは全国の予備校や塾、そこに勤務する講師などへの口コミを誰でも閲覧することができます。もっとも、ミルクカフェでは匿名掲示板という性質上、予備校や講師に対する根も葉もない誹謗中傷も多いことから、予備校にとっては投稿内容を注視しておかなければならないサイトでもあります。そこで、ミルクカフェに誹謗中傷を書き込まれた際の対応方法について説明します。

ミルクカフェに関する解説

ミルクカフェは、予備校などの教育機関に対する口コミに特化した匿名掲示板です。2000年にnanapi創業者である古川健介氏によって開設された掲示板であり、当時すでに人気を博していた匿名掲示板5ちゃんねる(当時は2ちゃんねる)と基本的に同様の仕組みとなっています。具体的には、予備校や予備校の講師ごとに多くのスレッドが建てられており、各スレッドには匿名でレスと呼ばれるコメントが書き込める仕組みとなっています。なお、ミルクカフェは2009年に株式会社サイブリッジに運営権が譲渡されています。

ミルクカフェではどのような風評被害があるのか

ミルクカフェでは匿名で書き込みができるので、特定の予備校や講師の実名を挙げて誹謗中傷の書き込みがされています。

ミルクカフェでは匿名で書き込みができることもあり、予備校や講師の実名とともに多くの誹謗中傷の書き込みがなされています。特定の予備校や講師に対する誹謗中傷だけを目的としたスレッドがたてられているケースもあります。ミルクカフェでよくみられる誹謗中傷としては、「A塾の講師Bは生徒を殴ったことがある」「講師Cは複数の女子生徒と付き合っている」などといった予備校生徒とのトラブルに関するものです。特にミルクカフェでは、5ちゃんねるに似た執拗かつ悪質な内容の投稿が目立ちます。投稿の内容が事実ではない場合でも、閲覧者からすればこのような噂が流れること自体その予備校や講師に何らかの問題があるに違いないと考えるでしょう。したがって、誹謗中傷の書き込みを目にした生徒や保護者の不安をあおることは必至であり、退塾者が増えたり、新規入会者が減少したりといった風評被害が起こることは容易に想定できます。
また、講師に対する悪評の書き込みがあれば、その講師が大きなストレスを抱えることとなり、場合によっては退職に追い込まれるおそれもあります。

利用規約違反で削除請求する方法

ミルクカフェに予備校や講師についての誹謗中傷の書き込みを発見した場合にまず取り得る手段は、サイトの利用規約違反を理由としてサイト運営者に直接削除を依頼する方法です。ミルクカフェにおいて、運営者に直接削除を依頼する手段は2種類あります。一つは、削除依頼掲示板に削除依頼を投稿すること、もう一つは問い合わせフォームから削除を依頼することです。

削除依頼掲示板を利用する方法

削除依頼掲示板は、ミルクカフェのホームページ左側にある「掲示板カテゴリ」のうち「運営・管理」をクリックするとリンク先が表示されます。

ミスクカフェ削除依頼掲示板ページより

削除依頼掲示板は、ミルクカフェの通常の掲示板と同様の仕組みとなっており、スレッドをたてること、または既にあるスレッドのレスとして投稿することにより削除依頼を行います。このため、削除依頼をした者が誰であるかは閲覧者にわからないものの、削除依頼がされたことを不特定多数の人が閲覧することができることになります。したがって、秘密裏に削除依頼をしたい場合には不向きです。特に、削除依頼をしているのが誹謗中傷を書き込まれた本人であることを閲覧者に気付かれると更なる炎上を招くおそれがあるので、本人が削除依頼掲示板を利用することは基本的におすすめできません。削除依頼掲示板に削除依頼を書き込む際には、以下に引用するとおり、①掲示板名、②スレッド名、③URL、④削除依頼レス番号、⑤削除理由を記載する必要があります。⑤削除理由については、後で説明する削除ガイドラインに抵触すると考える理由を詳細に説明することが重要です。

ミルクカフェ削除のためのガイドライン 画面より

問い合わせフォームから削除依頼する方法

ミルクカフェでは、誹謗中傷を受けた本人が削除依頼する場合には問い合わせフォームから連絡することができることとしています。そこで、本人が投稿の削除を求める場合には基本的にこちらの方法を利用することとなります。ホームページ下部の「規約」をクリックして表示される「削除のためのガイドライン」内の「訴訟・裁判・該当者について」の項目内に「本人また該当法人・企業の削除依頼はこちら」とあります。「こちら」をクリックすると、問い合わせフォームからの直接の削除依頼に関する案内が表示されます。

場合には問い合わせフォームから連絡することができることとしています。そこで、本人が投稿の削除を求める場合には基本的にこちらの方法を利用することとなります。ホームページ下部の「規約」をクリックして表示される「削除のためのガイドライン」内の「訴訟・裁判・該当者について」の項目内に「本人また該当法人・企業の削除依頼はこちら」とあります。「こちら」をクリックすると、問い合わせフォームからの直接の削除依頼に関する案内が表示されます。

メールでの削除依頼画面より

この案内ページにあるように、①担当者名、②電話番号、③メールアドレス、④掲示板名、⑤スレッド名、⑥URL、⑦削除依頼レス番号、⑧削除理由を記載して、「連絡はこちら」をクリックして表示される以下の問い合わせフォームから送信します。

ミルクカフェお問い合わせ 画面より

ここでも、削除依頼掲示板から削除依頼する場合と同様、⑥削除理由の箇所において削除ガイドラインに照らして削除すべきと考える理由を詳細に記載することが重要となります。

削除ガイドライン

ミルクカフェの運営者に直接書き込みの削除を求める場合、削除ガイドラインに従って削除理由を記載する必要があります。誹謗中傷の削除に関しては、以下の基準が示されています。

削除のためのガイドラインページより

特定の講師に対する暴言

例えば、「A塾の講師・山〇〇夫はクズで無能」という口コミがなされた場合はどうでしょうか。まず、ミルクカフェにおいて誹謗中傷の書き込みが削除されるためには、書き込みによって個人特定が可能であることが一つの要件となります。この例では対象となる講師の名前を一部伏せ字としていますが、A塾の講師のうち山で始まり夫で終わる名前の講師が1人しかいないのであれば、このような伏せ字でも個人特定が可能ということができます。
次に「クズで無能」という部分については、削除ガイドラインにおいても削除されるケースとして記載されている「明らかな暴言」にあたります。
したがって、削除ガイドラインにおける「2.所属する社員・講師の個人が特定できる情報を含むもの」に該当し、また「明らかな暴言」を内容とするものであるとして削除を要請することになります。

違法だとして削除請求する場合の例

違法な書き込みがなされた場合の対策について説明していきます。

誹謗中傷の書き込みは利用規約に違反するというだけでなく、ときに違法となることがあります。特に問題となるのは名誉毀損です。名誉毀損は、原則として人の社会的評価を低下させる事実が書き込まれた場合に成立します。ただし、投稿された事実が真実である場合または真実であると信じるべき正当な理由・根拠がある場合には名誉棄毀損は成立しません。名誉毀損の成立要件に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。

ミルクカフェへの投稿が名誉毀損となり得るのは、例えば「A塾の講師Bは複数の女子生徒に手を出している」といった口コミです。塾の生徒は未成年者であることが大半なので、女子生徒と性的関係を持つことは各自治体が制定する青少年健全育成条例に抵触する可能性が高いといえます。この条例に違反すると刑事罰の対象となりますので、投稿の内容は講師Bの社会的評価を低下させるものといえます。したがって、この口コミが事実無根である場合には名誉毀損が成立する可能性があります。ミルクカフェへの投稿が違法となる場合、プロバイダ責任制限法に基づきサイト運営者等に対して送信防止措置依頼を行うこともできます。送信防止措置依頼とは口コミが削除されたのと同等の結果をもたらす措置です。ただし、送信防止措置依頼に対応するかの判断は、依頼を受けたサイト運営者等が行います。したがって、サイト運営者等の判断次第では送信防止措置が行われない可能性があります。

仮処分による削除

ミルクカフェの運営者に直接削除依頼をしても受け入れられない場合には、強制的に削除を求めるため裁判所に仮処分申立てをする必要があります。仮処分は簡略な裁判手続であり通常約1~2か月程度で結論が出ます。仮処分によって削除すべきとの結論が出れば、運営者はこれに従い口コミを削除することになります。 投稿の削除を求める仮処分に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。

仮処分による投稿者特定

ミルクカフェでは、実際に予備校の経営に大きな影響を及ぼしかねないような誹謗中傷が投稿されることが頻繁にあります。悪質な誹謗中傷が継続的に投稿されているような場合には、削除をしてもまた新たな誹謗中傷が書き込まれるようなことも多くキリがありません。そこで、再発防止や損害賠償請求のために投稿者を特定する必要があります。投稿者を特定するための手続を発信者情報開示請求といいます。発信者情報開示請求においては、まずサイト運営者から問題の口コミに対応するIPアドレスおよびタイムスタンプを開示してもらい、これをもとに投稿に利用されたインターネットサービスプロバイダを特定します。そして、インターネットサービスプロバイダに対して、投稿者の個人情報を開示するよう民事裁判手続を通して請求するという流れになります。発信者情報開示請求に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。

まとめ

ミルクカフェは5ちゃんねるに類似した匿名掲示板であるという性質上、比較的誹謗中傷が書き込まれやすいサイトといえます。個人特定が可能となる投稿も多いため、予備校や講師としては風評被害の拡大を阻止するため、問題のある投稿がなされたら直ちに削除を求める必要があります。削除請求や投稿者を特定する手続を迅速に進めるためには、ネット上の誹謗中傷や風評被害への対策について経験豊富な弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

シェアする:

TOPへ戻る