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風評被害対策

新型コロナウイルス関連のデマの削除や風評被害対策

風評被害対策

新型コロナウイルス関連のデマの削除や風評被害対策

いわゆる新型コロナウイルスは、国内でも、外食やエステ・スポーツジム・ホテル等の売上に大きな影響を与えています。外出自粛などによる売上低下は、いつまで続くか分からない重大な問題です。

さらにこれに加え、新型コロナウイルス関連のインターネット上におけるデマも、問題となり始めています。例えば飲食事業や店舗型の事業を営む企業にとって

●●の○○店で新型コロナウイルス感染が発生した
●●の○○店の店員が新型コロナウイルスに感染していた

といったデマを流されると、その悪影響は無視できません。

こうしたデマは、早い段階で対応を行わないと、SNS等で拡散され、少なからざる人間に閲覧されてしまう危険があります。

こうしたインターネット上のデマに該当するような投稿・記事に対し、取り得る手段について解説します。

※本記事掲載後、2020年4月10日に、実際にこうした投稿について、業務妨害罪による逮捕が行われました。この事実を踏まえた記事が下記となります。

関連記事:ネット掲示板等への「●店でコロナ」といったデマと業務妨害罪

利用規約違反と違法の関係性

特に昨今の社会的状況の下で新型コロナウイルス関連のデマに該当するような投稿・記事は、非常に悪質性が高いものといえます。ただ、こうしたデマがインターネット上に投稿された場合、その投稿の削除を求めたり、投稿者の特定を求めたりするには、基本的には、下記のいずれかを主張する必要があります。

  • 当該投稿が当該サイトの利用規約に違反している
  • 当該投稿が「違法」である

これらの関係性なのですが、

  • 利用規約違反:裁判所を通じずサイト運営者に対して直接裁判外で削除を求める場合には使える。ただし投稿者特定を求める場合には使えない
  • 違法:裁判外での削除にも、裁判所を通じた削除・投稿者特定にも使える

という関係となります。利用規約はサイト運営者が自ら設定しているものであり、運営者に対して「規約に違反しているから削除して欲しい」と求めれば任意に削除される可能性があります。ただ、少し分かりにくいのですが、裁判所が関心を持つのは「違法か否か」という点のみであり、裁判所を通じた手続では、「この投稿は利用規約違反であり削除されるべきなのに、裁判外で求めても削除されないので、裁判所から削除の判決(決定)を出して欲しい」という主張を行うことはできません。また、投稿者を特定するには裁判所を通じる必要があり、その際も同様に「利用規約違反」という主張は使えません。

また、「違法」という主張を構成し、その証拠を揃えるには、どうしても弁護士に依頼すべきケースが多いと思われますが、利用規約違反であれば、「この投稿はこの規約に違反している」という主張で足り、弁護士に依頼せずに社内で申請を出すことが出来るケースも多いと思われます。

利用規約違反に基づくデマの削除

一部サイトでは、利用規約違反という主張でデマの削除を求めることができるケースもあります

食べログは「内容の確認が困難」な投稿は規約違反

サイトによっては、「違法」とまではいえない投稿も、利用規約上で禁止されているケースは少なくありません。例えば食べログには

2:店へ悪影響を及ぼすかつ内容の確認が困難な事象についての投稿は禁止
 例)ここのお肉を食べると必ず腹痛になる                 
 例) 化学調味料を使っている(お店の調理方法や材料に関して、決め付けた口コミ)

こうした投稿について、食べログ側の判断により修正を依頼する場合や削除する場合がある、というガイドラインが設定されています。上記のようなデマはこれに該当するとして、削除を求める余地はあり得ます。食べログの削除に関しては下記記事にて詳細に解説しています。

関連記事:食べログとガイドライン違反口コミの削除依頼

利用規約が抽象的だと削除が難しいケースも

ただ、飲食店レビューサイト等以外の一般的なサイトの場合、本件のようなデマに該当するような投稿・記事が、規約上どの条項に違反していると言えるのか、何とも言いにくいケースは少なくありません。例えばTwitterは

  • 嫌がらせ行為
  • 身体の安全または健康を脅かす強烈な身体的脅迫

などを禁止していますが、

  1. 新型コロナウイルス関連のデマはこれに該当するのか
  2. そもそも上記のようなデマは、もちろん被害者側としては「デマ」であることが分かっている訳ですが、そのことをどうTwitterに裁判外交渉の段階で理解させ対応を促すか

というのは難しい問題です。

関連記事:Twitterのネガティブなツイートを削除する方法とは?

Twitterなどが実施するデマ削除とその限界

なお、Twitterは、3月23日付の「COVID-19流行期における一連の戦略の経過報告」にて、新型コロナウイルス関連のデマを削除する旨の声明を発表しています。ただ、ここで削除対象とされているツイートの例は、例えば下記です。

COVID-19流行期における一連の戦略の経過報告

概括的に言えば、Twitterは、あくまで、「公衆衛生に関し、国際的あるいは各国の関係当局からのガイダンスに直接的に反対するコンテンツに対応するために、Twitterにおける「危害」の定義を拡大」する、という姿勢で、「社会や公共にとって有害なデマ情報」を削除する、という旨を発表しているのみであり、一企業や一私人にとって有害で営業に危険を与えるようなデマ情報を積極的に削除する、という声明は、少なくとも本記事執筆時現在、出されていないものと考えられます。

違法という主張に基づくデマの削除

利用規約違反による削除が難しいケースでは、その投稿が「違法」であることを主張・立証する必要があります。悪質なデマが「違法」であることは一見明らかにも思えますが、具体的には、どのようなロジックで「違法」と言えるのか、まず検討を行う必要があります。

名誉毀損(名誉権侵害)に基づくデマの削除

例えば上記のように、「店員が新型コロナウイルスに感染していた」といったデマに該当するような投稿・記事は、当該店舗を利用すると新型コロナウイルスに感染する、といった印象を、当該投稿を見る人に対して与えるものであると言えます。過去には、当該飲食店で食事をしたら下痢の症状が生じる、といった匿名掲示板サイトへの投稿について、

本件記事(中略)は本件飲食店を話題の対象にしているものと認められること(中略)からすると,一般閲覧者の通常の注意と読み方によれば,本件記事(中略)は,「▽▽」すなわち本件飲食店で提供されているおでんを食べたことにより下痢の症状を生じたとの事実を摘示するものと解釈できる。
したがって,本件記事(中略)は,本件飲食店において食中毒を生ぜしめるような飲食物が提供されているという印象を与えるものといえるから,本件飲食店を経営する原告(中略)の社会的評価を低下させると認めることができる。
(中略)
原告(中略)は,本件記事(中略)において摘示されている事実が真実でないことを陳述していることがそれぞれ認められるところ,これらに反する証拠は特段見当たらないから,これら事実はいずれも真実ではないものと認めることができる。

東京地方裁判所平成28年2月5日判決

として、当該投稿は、当該店舗は食中毒が発生するような食べ物を提供しているという印象を与えるものである、として、名誉毀損(名誉権侵害)に該当し違法である、という判断を行った裁判例があります。

名誉毀損(名誉権侵害)が成立するための要件

名誉毀損(名誉権侵害)は特定の条件が満たされる場合にのみ成立します。

一般論として、名誉毀損(名誉権侵害)は、

  • 問題の投稿は具体的な事実を記載するものであり(反面、例えば「飲食店で出る食事が不味い」というように抽象的な感想は名誉毀損に該当しません)
  • その投稿は自社の評価を低下させる(悪影響を与える)ものであり
  • かつ、真実に反する

という場合に成立します。名誉毀損の成立要件については下記記事にて詳細に解説しています。

関連記事:名誉毀損で訴える条件とは?認められる要件と慰謝料の相場を解説

上で述べた食べログの利用規約と比較すると、

  • 食べログの利用規約:悪影響を与える投稿は、内容の確認が困難な場合は削除対象
  • 名誉毀損(名誉権侵害):悪影響を与える投稿は、内容が真実に反する場合には違法(削除対象)

ということです。このため、「真実でない」という主張やそれを支える証拠による立証が必要となるため、少しハードルは高いのですが、当該店舗を利用すると新型コロナウイルスに感染する可能性が高い、と読み取れるような投稿も、「名誉毀損(名誉権侵害)であり違法」と主張できる可能性があると言えます。

営業権や業務遂行権侵害によるデマの削除

さらに、新型コロナウイルス関連のデマに該当するような投稿・記事は、冒頭から述べている通り、店舗事業等を営む企業の営業面に大きな悪影響を与えるものであり、いわゆる営業権や業務遂行権の侵害を主張することも考えられます。

ただ、実務感覚として、営業権や業務遂行権といった権利は、名誉権と同時に主張され、裁判所も

  • 名誉毀損(名誉権侵害)が認められるケースでは営業権や業務遂行権侵害も同時に認められる
  • 名誉毀損(名誉権侵害)が認められないケースでは営業権や業務遂行権侵害も認められない

という判断を行うケースが多いものといえます。結局、名誉毀損(名誉権侵害)は上記のように「当該投稿が真実でない」という場合にしか成立しないところ、新型コロナウイルス関連のデマに関しても、

  • 真実でないデマは名誉毀損だし、昨今の社会的状況の下で営業面に看過できない悪影響を及ぼす結果、営業権や業務遂行権侵害にもなる
  • 仮に真実であれば名誉毀損ではないし、昨今の社会的状況の下では、正しい警戒情報により業務面に悪影響が出るのはやむを得ないことで、営業権や業務遂行権侵害とはいえない

という判断になる可能性があるからです。

風評投稿について営業権侵害を認めた裁判例

例えば過去の裁判例では、注文住宅の工事を行う会社に対する、「詐欺師に騙されて最悪な結果となってしまいましたね。」「詐欺師は契約までは仏顔,調印後は鬼に変わるとはよくある話ですね。」「このような会社では工事の遅れは当たり前,瑕疵知らん顔でしょうから,戦う体力をつけておいた方がいいですよ。」といった投稿について

原告は,耐震性に優れた工法とされるSE構法の登録施工店であり,重量木骨の家(中略)に選定され,住宅業者についてのインターネット上の掲示板サイトにおいて,高評価を得ている場合もある上(中略),原告代表者は,顧客との契約交渉の際の欺罔行為を否定し,施工後の建物の検査やアフターメンテナンスを行っているとしていることなどから(中略),本件記事で摘示された事実が真実で(中略)あること(中略)をうかがわせるような事情は存在しない

東京地裁平成27年7月6日判決

などとして名誉毀損の主張を認め、同時に、

さらに,本件記事の投稿後,原告には,本件記事に関連した問合せが相次いで寄せられるなどしており(中略),本件記事の投稿は,原告の社会的評価を低下させ,その信用を毀損するもので,原告の(中略)営業権を侵害するものであることが明らかであるといえる。

東京地裁平成27年7月6日判決

として営業権侵害も認めている裁判例などが存在します。

もちろん、具体的な投稿の記載内容次第では、名誉毀損とは言い難くても営業権や業務遂行権侵害とは言える、というケースも考えられますが、あくまで例外的であるとは思われます。

裁判所を通じたデマの削除や投稿者特定

弁護士に風評被害対策を依頼した場合のフローについて説明します。

こうした主張構成により当該投稿が違法であると主張することができれば、裁判所を通じ、「仮処分」という迅速な手続にて、当該記事の削除を求めることができます。さらに同様に、仮処分手続などを通じて、発信者情報開示請求、投稿者の特定を求めることも出来ます。こうしたケースでは、

  1. まず裁判外交渉で削除を求める
  2. 裁判外交渉に失敗した場合は仮処分によって削除を求め、同時に投稿者のIPアドレス開示も求める
  3. 開示されたIPアドレスを元に、訴訟にて投稿者の住所氏名開示を求める
  4. 特定できた投稿者に対して損害賠償請求を行う

というフローで削除・投稿者特定を行うことが一般的です。もちろん、投稿者特定までは求めないケースであれば、上記2で求めることは削除のみになりますし、3は不要となります。こうした流れや弁護士費用の目安については下記記事にて詳細に解説しています。

関連記事:食べログとガイドライン違反口コミの削除依頼

まとめ

新型コロナウイルス関連のデマに該当するような投稿・記事に対しては、なるべく迅速な対応が必要です。そして、迅速な対応を行うためには、

  • 現時点でインターネット上に存在している「デマ」を精査し、根絶のために削除を行う
  • 特に悪質な場合は、どの情報が発信源なのかを見極め、当該投稿を対象に投稿者特定を行う

という初動が必要です。そしてこれらは共に、インターネット上における風評被害対策にノウハウを有する弁護士でないと困難です。例えば後者について、匿名掲示板の5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)への投稿は、2ちゃんねる(2ch.sc)に自動でコピーされ、また、いわゆるコピーサイトやまとめサイトにも転載されます。こうした状況の場合、デマの根絶のためには全てのサイト相手の削除が必要ですし、また、「どのサイトの」投稿がオリジナルでありデマの発信源なのかを識別できないと、投稿者特定を実現することができません。

関連記事:2ちゃんねる・5ちゃんねるとコピーサイト・まとめサイトの削除

当事務所は、昨今の社会的状況に鑑み、クライアント各企業に対する新型コロナウイルス関連のデマに関しては、特に可能な限り迅速な対応を心がけております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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