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風評被害対策

誹謗中傷の加害者が未成年でも損害賠償責任は発生する?

風評被害対策

誹謗中傷の加害者が未成年でも損害賠償責任は発生する?

ネット上の誹謗中傷問題において、若年層による被害・加害のトラブルが増加しています。特に12歳から18歳のトラブルが多く、「インターネット・リテラシーが低い」と問題視されています。

未成年とはいえ、誹謗中傷により他人の権利を侵害すれば、成人と同様に処分されます。

本記事では、ネット誹謗中傷の加害者が未成年である場合、裁判ではどのように判断されているかについて、詳しく紹介します。

中学生による弁護士に対する誹謗中傷行為の事案

就業しながら、学生としても大学院に通っていた弁護士が、自己及び関係者の名誉を毀損されたとして、掲示板への誹謗中傷投稿を行った中学2年生に損害賠償を求めた事例があります。

訴訟の推移

被告は、2015年5月9日、午後4時8分から4時46分までの38分間に、したらば掲示板において数十回中傷コメントの投稿を繰り返しました。具体的には、

  • 「弁護の依頼人に暴行している」
  • 「遅刻した部下に熱湯をかける」
  • 「前科有り」

のように虚偽の事実を摘示し、また

「無能」「糞」「ゴミ」「逮捕」「犯罪者」「弁護士失格」「死刑」「脱獄」「懲戒免職」「もみ消し」「恐怖」「危険」「買収」「児童ポルノ」

等の否定的イメージの強い言葉を投げかけ、原告の社会的評価を低下させ、弁護士としての業務を妨害したとして、損害賠償を請求されました。

被告と原告の主張

原告・被告の主張は以下の通りです。

(被告主張)
被告は、本件の不法行為をなした平成27年5月9日当時、13歳で中学2年生であった。したがって、成人同様の十分な判断能力があったとは到底いえず、かつ、被告には支払能力が全くない。(中略)被告の上記判断能力からして、弁護士の社会的使命に対する十分な理解が備わっていたとは到底いえず、その点でも、違法性が高いとはいえない。

東京地方裁判所2016年6月21日判決

(原告主張)
被告が、本件各書込みの当時13歳の中学2年生であったことは認めるが、13歳ともなれば、通常、自身の行為の責任を弁識する知能を備えている。また、支払能力の有無は不法行為の成否、賠償額の評価に影響しない。

東京地方裁判所2016年6月21日判決

未成年者にどこまで責任を負わせるのかが争点となりました。

裁判所の判断

裁判所は、「投稿内容は原告に対する社会的評価を低下させるものである」として名誉毀損を認め、被告の年齢については、

被告は、本件各書込み当時、13歳の中学2年生であったものであるが、同年齢頃の未成年者について、成人に比べ、社会経験の少なさ等から適切な判断をする能力において劣る面は否定できないと考えられる一方、弁護士という職業がどのような仕事を行っているかを抽象的に理解できる程度には成長しているとも考えられる。(中略)また、加害者の支払能力についても、本件において、同様に慰謝料額を左右するとまではいえない。

東京地方裁判所2016年6月21日判決

として原告の主張を認め、被告に対し損害賠償金40万円の支払いを命じました。

学生塾の同級生同士での誹謗中傷行為の事案

同じ塾に通う中学3年生の被告により、匿名掲示板への誹謗中傷コメントを投稿され、社会的評価を傷付けられたとして、不法行為による損害賠償を求めた事例があります。

訴訟の推移

被告・原告は直接会話したことはないものの、同じ英語学習塾に通っており、被告は、原告が運営するブログの存在について別生徒から教えられて知っていました。その内容に良い印象を持たず、知人らとともに匿名掲示板へ誹謗中傷のコメントを投稿するようになります。

  • 「こいつ、○○サイトに晒されたいらしくてw調子に乗ってて、これがとてもむかつきます。頼む、荒らしてやってくれ」
  • 「こいつのブログを荒らして」

嫌がらせ目的で、「痛い椰子を晒すスレ」と題するスレッドに荒らし行為を助長するコメントを投稿し、原告が通っていた中学校及び所属学年・原告の氏名を明示したうえで、「誰とでも性交渉する性的道徳観念の希薄な人物」と事実とは異なる内容の投稿をしました。

裁判所の判断

裁判所はまず、本件投稿が原告の社会的評価を低下させることは明らかであるとして名誉権侵害を認めました。

被告の年齢については、以下のように判断しています。

本件記事の投稿は、原告ブログに対する同年代の中学生による反感がその原因になっているものと考えられ、若年時にネット社会に身を乗り出す危険性が具現化したものと評価することも可能であり、心身ともに未成熟な被告が一時の感情の赴くがままに行ったものとも見て取れる。

東京地方裁判所2012年12月20日判決

このように、年齢の未熟さからくる過失であったとしたうえで、責任は厳しく追及し、慰謝料50万円、調査費用20万円、弁護士費用7万円、合計77万円の支払いを命じました。

まとめ

善悪の判断が十分にできない若年層が、感情の赴くがままに、ネット上に広がる情報を鵜呑みにして書き込みをしてしまうおそれがあります。

軽はずみな行動であったとしても、他者の権利を侵害した責任は重く、未成年であるからといって責任を免れることはできません。訴訟により損害賠償を請求される可能性があります。責任能力の認定の下限年齢は、概ね11歳前後から14歳前後とされています。

未成年者による誹謗中傷の被害に遭った場合は、すみやかに専門の弁護士に相談しましょう。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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