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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

マシュマロを使って誹謗中傷してきた相手を特定できるのか

風評被害対策

インターネットの発展に伴い、ネットでの誹謗中傷が社会問題になっています。近年、誹謗中傷が原因と見られる芸能人の自殺という痛ましい出来事もありました。

誹謗中傷のターゲットにされる原因としては、様々な原因が考えられますが、いわゆる炎上した場合に、誹謗中傷のターゲットとされるケースが珍しくありません。炎上がきっかけとなる場合、集団心理が働くこともあり、行き過ぎた誹謗中傷が行われることも少なくありません。

このように、多くの問題を含む誹謗中傷ですが、現在は、AIを用いて誹謗中傷を防ぐ「マシュマロ」というサービスを利用するという手もあります。

ただ、マシュマロのAIにさえ防げないような巧妙な表現を用いて誹謗中傷が行われるケースもあり、このような行為は、焼きマシュマロや毒マシュマロなどと呼ばれることがあります。

焼きマシュマロ(毒マシュマロ)を送ってきた相手に対しては、誹謗中傷を理由として法的な責任を追及できる可能性があります。

そこで、本記事では、マシュマロで誹謗中傷された方に向けて、相手方の特定と法的な対応方法を説明します。

マシュマロとは

マシュマロとは、匿名のメッセージを受け付けるサービスです。

マシュマロというサービスは、「世界はもっとマシュマロを投げ合うような安全さでみたされるべき」という思想が由来となっています。

傷つく人を減らしたい

匿名のメッセージは怖い。 素敵な本音と一緒に、最低な悪口が届く。

でもマシュマロなら怖くない。

匿名のメッセージを受け付けるのに、悪口は来ない。 そんな安全な場所がマシュマロです。

https://marshmallow-qa.com/

匿名のサービスを受け付けるサービスは他にも多くありますが、マシュマロの特徴は、ネガティブな内容のメッセージについては、AIが選別を行い削除してくれるという点です。

これにより、メッセージを受け取る側は、ポジティブな内容のメッセージのみ受け取ることができるようになります。

AIでの選別については、以下のような設定を行うことが可能です。

  • 不干渉
  • ネガティブOK
  • 普通
  • ポジティブオンリー

また、Twitterと連携しているので、Twitterのアカウントでも登録することができます。

マシュマロの使い方

ここでは、メッセージを募集する側と送る側に分けてマシュマロの使い方を解説します。

メッセージを募集する側

メッセージを募集する場合、ログインが必要になります。マシュマロのアカウントはTwitterアカウントかメールアドレスで登録することができます。

Twitterアカウントでマシュマロに登録し、Twitter上で募集をツイートすると便利ですが、URLやQRコードを拡散することでメッセージを募集することも可能です。

また、Twitterと連携させている場合には、寄せられたメッセージに対する回答は自分のTwitterアカウントを通して公開されます。

マシュマロでは、メッセージを募集する際、メッセージの受け付けについて、以下のように設定することができます。

  • 誰からでもOK
  • ログインユーザーに限定(安全)
  • Twitterフォロワーに限定(より安全)
  • 受け付け停止

マイページの受信箱で、送られてきたメッセージの内容を確認し、回答を行うこともできます。回答を行う場合もログインが必要です。

メッセージを送る側

メッセージを送る場合には、原則登録の必要はありません。しかし、メッセージ募集ユーザーが、受付範囲を設定している場合には、ログインやTwitterアカウントが必要になります。また、募集ユーザーがTwitterを通して質問箱を公開している場合、Twitterに貼られたリンクから送ることができます。

メッセージを送る際、回答をもらえたらメールで通知するかの設定をすることが可能です。しかし、安全上の理由から、仮にメッセージが届いていない場合でも、送ったメッセージがどういう状態であるかを確認することはできません。

焼きマシュマロが送られてきたときの対処法

こういった誹謗中傷によって生じた精神的な苦痛が、癒えないケースもあります。

この場合、メッセージの削除や送信者を特定して、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条、710条)を行うことが考えられます。また、内容によっては、脅迫罪(刑法222条)として、警察に被害届や告訴状を提出することも考えられます。

メッセージを削除する

焼きマシュマロ(毒マシュマロ)が送られてきた場合、メッセージを自分で削除することができます。また、削除と同時に、スパム報告やユーザーのブロックが可能です。

スパム報告がされたメッセージは、マシュマロの運営が内容を全てチェックし、問題が認められた場合には、送信者に何らかの措置が講じられることになります。

相手方の特定

相手方の法的な責任を追及するためには、相手が誰かを特定する必要があります。マシュマロ運営はホームページに、誹謗中傷に対して、しっかりとサポートすることを明記しています。

以下では相手の特定方法について説明します。

警察に相談する

マシュマロの運営会社は、サイトにて被害者が警察に相談をした場合、警察に「捜査関係事項照会」の送付をお願いするよう記載しています。「捜査関係事項照会」とは、捜査機関が、刑事訴訟法第197条第2項の定めに基づいて事業者に対して行う照会のことをいいます。

また、以下の情報もマシュマロの運営会社に送るよう記載されています。

  • 相談者本人の氏名
  • 相談日時
  • 相談に行った警察署
  • 相談に対応した者の氏名
  • 相談内容
  • 捜査関係事項照会を行ってくれるかどうか。行ってくれない場合はその理由

これにより、マシュマロの運営側が、加害者の情報を開示する場合には、個人情報保護法の例外とみなされ得る照会に応じる形になるので、相談者に直接伝えられることはありません。

被害者の方がご自分で警察に相談をして加害者の情報の開示を求めるということも可能ですが、そもそも警察にどのように相談をしたらよいのか、警察に相談した後、どのような手続が必要になるのかなど専門的な知識が要求されます。

そのため、知識や経験を有する弁護士に相談をする方が円滑に手続を進めることができます。

弁護士に相談する

弁護士の場合、弁護士法第23条の2に基づく「弁護士会照会」という方法が認められています。

この方法は、弁護士からの依頼を受けた弁護士会が、必要性及び相当性の審査を行った後、それらが認められれば、官公庁や企業などの団体に対して、必要事項の調査及び照会を行うという制度です。

マシュマロのサイトには、警察に相談した際と同様に、弁護士照会と以下の情報を運営会社宛に送るよう明記されています。

  • 相談者本人の氏名
  • 相談日時
  • 相談に行った弁護士事務所
  • 相談に対応していただいた方の氏名
  • 相談内容
  • 弁護士会照会を行ってくれるかどうか。行ってくれない場合はその理由

弁護士会照会は、原則的に個人情報保護法で個人情報の開示が認められる例外に該当しますので、円滑に情報の開示を求めることができます

もちろん、弁護士会照会は弁護士に認められた権限ですので、弁護士しか行うことができません。そのため、弁護士会照会をお考えの方は、専門的な知識を有する弁護士に相談する必要があります。

マシュマロの発信者情報開示請求はできるのか

誹謗中傷一般で相手方を特定する方法として用いられることが多い方法に、発信者情報開示請求という方法がありますが、焼きマシュマロ(毒マシュマロ)による誹謗中傷については、この方法を用いることは難しいと考えられます。

なぜなら、発信者情報開示請求は、自己の権利を侵害されたとする者が行う必要がありますが、焼きマシュマロ(毒マシュマロ)は、特定の個人に送られるものであり、公然と行われる誹謗中傷ではありません。したがって、侵害された権利として主張されることが多い名誉権の侵害を主張することが難しいのです。

まとめ:マシュマロの発信者特定なら弁護士に相談しよう

以上、マシュマロで誹謗中傷された際の法的対応について紹介をしました。

マシュマロでは、メッセージを送信できる者の範囲を特定することができ、また、AIでの選別もあるため、明らかな誹謗中傷を受ける可能性は低いと考えられます。

ただ、巧妙に焼きマシュマロ(毒マシュマロ)を送りつけてくる者もいるため、マシュマロを利用しようと考えている方又利用している方も、誹謗中傷への対応方法を理解しておくことが重要となります。

マシュマロにおける誹謗中傷への対応については、専門的な法律知識が要求され、弁護士会照会については弁護士でなければ行うことができないため、まずは法律事務所に相談をすることをおすすめします。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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