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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

ママスタジアム(ママスタ)の投稿者を特定する発信者情報の開示請求

風評被害対策

ママスタジアム(ママスタ)の投稿者を特定する発信者情報の開示請求

株式会社インタースペースが運営する、「子育てに関する情報満載」の「ママ向けコミュニティ」をうたい文句とするママスタジアム(以降ママスタとします)では、BBS(掲示板)を利用して日々の悩みを相談したり、TVを話題にしてユーザー同士で交流したり、地域の病院や保育施設等のレビューを見て情報を得たりすることができますが、多くの誹謗中傷が発生しているというのが実情です。

この記事では、そんなママスタでの悪質な書き込みや誹謗中傷の投稿者を特定する方法について、説明します。

ママスタとはどのようなサイトなのか

ママスタはママ向けコミュニティの場として開設された匿名サイトです。BBS、コラム、レビューなどが含まれますが、交流掲示板ママスタBBSは女性だけの、特に子育て世代の交流掲示板として、有益な情報交換の場となっています。

「あなたのハッピーママライフを応援する交流掲示板」とされていますが、全国のママ達が子育て、旦那、義家族、ママ友の悩みについて相談したり、ファッションや趣味、ニュースやTVドラマなどの話題で盛り上がる場となっており、子育ての合間の息抜きに利用され、全体としても人気のあるサイトとなっています。

ママスタで行われる誹謗中傷の例

しかし、ママスタBBSはその匿名性ゆえに、日々のストレスを発散するための誹謗中傷の温床となっているという一面もあります。2019年7月に明らかになった堀ちえみさんの事例や、2020年3月に明らかになった川崎希さんの事例のように、書類送検となる悪質な書き込みや誹謗中傷も多く見られます。

相手の容姿に対する批判が多いのもママスタの特徴のひとつですが、対象者本人に対する罵倒や誹謗中傷だけでなく、相手の子供の悪口もよく見られます。

こうした悪質な書き込みや誹謗中傷は、ママスタ運営に申請して削除してもらうという対応が考えられますが、あまり期待はできません。仮にうまく削除してもらえたとしても、また新たにトピックを作成され、悪質な書き込みや誹謗中傷が繰り返されるのであれば、根本的な解決とはなりません。

こうした場合には、投稿者を特定して法的な手段をとり、責任を追及する必要があります。

投稿者特定の手順①:IPアドレス開示請求

投稿者を特定するためにはまず、ママスタに対して発信者情報開示請求を行いますが、これはママスタの運営会社である株式会社インタースペースに、「情報開示請求書」を郵送することで始まります。情報開示請求書には、悪質な書き込みや誹謗中傷が書きこまれたサイトのURL(アドレス)、請求者の氏名・住所、開示を求める理由などを記載する必要があります。

IPアドレスとタイムスタンプ

ママスタの運営会社は、ある投稿の投稿者について、何を知っているでしょうか。ママスタの会員登録はニックネーム可となっており、本名の登録が必要ありません。また、メールアドレスは必須となっていますが、フリーメールアドレスで可となっています。

これでは発信者の氏名や住所を特定することはできませんが、運営の管理者が間違いなく知っている情報があります。投稿者の「IPアドレスとタイムスタンプ」です。

「IPアドレス」とは、インターネット上における、住所のような情報です。インターネットに接続しているあらゆるマシン、自宅のPCやスマートフォンなどは、固有のIPアドレスという住所情報を持っています。インターネットの仕組み上、相手(投稿者)のIPアドレスがわからなければ、通信を行うことはできません。

あるサイトに接続したり、投稿が行われたりした場合、その投稿者のIPアドレスとアクセスした時間である「タイムスタンプ」が記録されます。通常の管理者は、IPアドレスとタイムスタンプを記録しているので、「この違法な投稿を行った者のIPアドレスとタイムスタンプを開示してくれ」と、求めることとなります。

仮処分手続による投稿者のIPアドレスとタイムスタンプ開示請求

発信者情報開示請求が行われると、管理者は、請求者の主張が法律上の要件を満たしているかどうかを判断し、開示・非開示を決めます。任意で開示請求に応じる場合もありますが、「裁判所による公的判断が下されない限り開示請求には応じられない」と言ってくるでしょうから、ママスタを相手とした発信者情報開示の仮処分を申し立てることとなります。ママスタに限らず、プロバイダ側からすれば書き込みをした人物は顧客であり、個人情報保護の観点からも、任意の情報開示請求に応じるケースはほとんどありません。

そこで、裁判所手続を用いなければ実現できないことになりますが、この裁判所手続は、具体的には、裁判ではなく仮処分という迅速な手続となります。裁判はどうしても時間がかかるのですが、仮処分の場合、1-2ヶ月程度で実施可能です。その場合の弁護士費用の相場は、インターネット上の情報では

着手金が30万円程度、成果報酬金が30万円程度

https://monolith-law.jp/reputation/reputation-lawyers-fee

などと言われています。この手続では、IPアドレスの開示と削除を、同時に求めることが可能です。上記は両方を行うための費用となります。もっとも、対象とする投稿の内容や量によって、当然費用は変わってきます。

仮処分によって情報開示が認められたら、ママスタ側は速やかにIPアドレスとタイムスタンプを開示してくれます。

発信者情報開示の条件

インターネット上で権利侵害を受けた人は、プロバイダ責任法に基づいて、プロバイダに対して発信者情報開示を請求できるのですが、それには2つの条件があります。

プロバイダ責任制限法第4条には

「権利が侵害された」ことが明らかであり、「正当な理由がある」ときに、発信者情報の開示を求めることができる。

プロバイダ責任制限法第4条

とあります。

権利が侵害されたとは

書き込みや誹謗中傷が悪質で執拗なものであったとしても、違法なものでなければ、「権利が侵害された」と主張することはできません。例えば、「不愉快でたまらない」というだけでは、情報開示を請求することはできないのです。

悪質な書き込みや誹謗中傷の場合、限度を超えたものについては、名誉毀損や侮辱罪を問うことができる可能性が高いといえます。こうした行為は違法であり、民事上も不法行為となります。民法第709条には

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法第709条

とあります。

これらを根拠に、また場合によってはプライバシー侵害や脅迫罪にあたるとして、ママスタに発信者情報開示を請求することになりますが、名誉毀損が成立するか否か、プライバシー侵害となるのか否か、侮辱罪は問えるのかといったような、投稿が違法なものであるか否かの見極めは難しく、個人で判断するだけではなく、経験豊かな弁護士の判断を仰ぐことが必要な場合が多いといえます。

正当な理由があるとは

発信者情報開示請求には、情報を取得する正当な理由が必要です。「こんな投稿をするのはどんな年代の人なのか知りたい」といったような好奇心やあいまいな理由では、情報開示を請求することはできません。

つまり、ママスタの投稿者に対してであれば、

  • 発信者に対する削除要請のため
  • 民事上の損害賠償請求権の行使のため
  • 刑事告発などの法的手段をとるにあたり本人を特定するため

といったような場合に、「正当な理由がある」と認められます。

投稿者特定の手順②:ログの削除禁止

手順①で投稿者のIPアドレスが開示されたら、投稿者の用いていたプロバイダ(固定回線の場合のNifty、携帯回線の場合のソフトバンクなど)を特定することができます。

そこで、次にはプロバイダを相手に「この時間にこのIPアドレスで接続していた人間の住所氏名を開示せよ」という、ログ情報を請求することになりますが、ここで、時間的限界という問題が生じます。ログ情報の量は膨大であり、携帯キャリアであれば数千万人、経由プロバイダでも数百万人分の、上記のようなログを記録しています。そこで、プロバイダは、ログを一定期間で削除することとしており、携帯キャリアは3ヶ月程度、固定回線のプロバイダでもせいぜい1年程度で削除してしまいます。そのため、投稿から訴訟提起までの間に時間をかけてしまうと、その間にログが消えてしまう可能性が生じるのです。

特にママスタの場合、携帯での投稿の割合が高いと思われるので、この時間という問題は、極めて重要となります。投稿から訴訟提起までを、できる限り速やかに行う必要があります。

プロバイダに対して発信者の氏名等の開示を求めるときには、重大な個人情報を求めることになるので、原則として通常の民事訴訟による必要があります。通常の民事訴訟の手続きが終了するまでには数か月程度を要することが多いため、その間にプロバイダが保存しているログを消去しないように、つまり証拠がなくなってしまわないように、ログを消去することを禁止する仮処分の手続きが必要となります。

ただ、プロバイダは「裁判所を通じて住所・氏名の開示を求めるので、しばらくログを保存しておいてほしい」という通知を出せば保存しておいてくれる場合が多いので、この部分は通知だけで足りるケースも多くなっています。

投稿者特定の手順③:発信者情報開示請求の訴訟

アクセスログの保存が保証されたら、プロバイダを相手方とする発信者情報開示請求訴訟を提起し、発信者に関する「住所・氏名・メールアドレス」等の情報の開示を求めます。

プロバイダは原則として発信者の同意がない限り、発信者情報の開示に応じません。プロバイダが要件の判断を誤って発信者情報の開示を行った場合には、発信者に対して損害賠償責任を負う可能性があり、場合によっては刑事上の責任を問われるおそれもあるので、プロバイダも慎重になります。

そこで、本訴訟となりますが、訴訟の主な争点は、対象投稿等の記載が原告(開示請求者)の権利を侵害するものであることが明白か否かです。

投稿者特定の手順④:損害賠償請求

訴えが認められれば、裁判所はプロバイダに対し、記事投稿の際に利用された契約者の氏名、住所、メールアドレス等を開示することを命じます。

発信者情報が開示され、発信者が特定されたら、次のような選択肢があります。

  • 今後誹謗中傷を行わないと誓約させる
  • 損害賠償を請求する
  • かかった経費(調査費用・弁護士費用)を請求する
  • 刑事告訴をする

損害賠償を請求する以外にも選択肢はありますし、複数を選択することも可能です。

まとめ

ネット上で誹謗中傷を受けた場合、被害が拡散して大きくならないうちに、素早く対応することが重要です。

しかし、その手続きや判断は専門的で難しく、個人の判断で無理に行うと余計に時間を要し、証拠保全等うまくいかない危険性があります。

誹謗中傷対策の経験が豊富な弁護士に依頼すると、スピーディーな対応を得ることが可能です。是非早期の段階で相談してください。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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