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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

ライブドアブログの訪問者を足跡以外で特定する方法について

風評被害対策

ライブドアブログとは、LINE株式会社が運営するブログサービスです。ライブドアブログは、ブログ全体にパスワードを設定して友達にのみ公開することもできますが、そうした設定をしていなければ、誰もが記事を読むことができます。また、ブログの管理者が特に制限していなければ、誰でも記事へのコメントを投稿することができます。そのため、中にはブログ記事に対して誹謗中傷にあたると思われるようなコメントが投稿されてしまうケースもあります。

ライブドアブログの記事に対して悪質なコメントが投稿された場合、そのコメントの投稿者を特定することはできるのでしょうか。この記事では、ライブドアブログの記事の訪問者やコメント投稿者を特定する方法について説明します。

ライブドアブログとは

ライブドアブログでは、誰もが無料で登録してブログを書くことができます。ライブドアブログのカテゴリは、絵日記、婚活、グルメやペットなどたくさんのジャンルがあります。有名人から一般人まで、多くの人がライブドアブログを利用してブログ記事を書いています。ライブドアブログにはアプリもあり、アプリからブログを更新したり、コメントやメッセージを確認したりすることができます。また、TwitterやFacebookへの同時投稿機能もあります。

ライブドアブログの記事に投稿される誹謗中傷コメントの例

ライブドアブログでは、ブログの管理者が全てのコメントを受け付ける設定にしていれば、誰もが記事に対してコメントを書くことができます。そのため、誹謗中傷や名誉毀損に該当するような悪質なコメントが投稿されてしまう場合もあります。ライブドアブログの記事に投稿される誹謗中傷コメントの例には、どのようなものが考えられるのでしょうか。

  • (会社紹介の記事に対して)「ここの社長、婚活アプリのペアーズに○○って名前で登録して女性を騙してるよ」
  • (旅行記事に対して)「この旅館、Aって仲居がほんとに最悪だった。絶対泊まらない方がいいです」

上記の例のコメントは、送信防止措置(削除)依頼を行って、ライブドアブログ利用規約1.4.1禁止事由2.と3.(下記に引用)にそれぞれ該当すると判断されれば、利用規約1.4.2に基づき送信防止措置(非表示も含む)が取られる場合があります。

2.当社または他者の財産、プライバシー、人格権もしくは肖像権を侵害する行為、または、侵害するおそれのある行為
3.他者を差別もしくは誹謗中傷し、他者の名誉もしくは信用を毀損、侮辱し、もしくは業務を妨害する行為、または、そのおそれのある行為

ライブドアブログ利用規約1.4.1禁止事由(抜粋)

また、ライブドアブログガイドラインにより、コメントの著作権などの権利はブログ管理者に帰属するものとされているため、ブログ管理者へ依頼して削除してもらうこともできます。ただ、削除依頼をしてもコメントが削除されない場合や、そのコメントにより重大な損害を被った場合は、投稿者特定手続で対応することになります

ライブドアブログの足跡機能とは

投稿者特定手続についてご説明する前に、ライブドアブログの足跡機能を使って、ブログの訪問者やコメント投稿者をどこまで特定できるのかについて見ていきます。ライブドアブログにはアクセス解析機能があり、アクセス数、人気記事、リンク元、ブラウザ/OSや生ログを確認することができます。生ログとは、最新のアクセス200件分(過去3日分まで)の詳しい情報です。どの記事を閲覧したかが表示され、訪問者のリモートホストやIPアドレスも確認することができます

同じ投稿者からのコメントや訪問が大量にあれば、この足跡機能によってコメント投稿者のIPアドレスを特定することもできるかもしれませんが、たくさんの人がアクセスしているような状況では、あるコメントの投稿者だけを抜き出して特定するのは難しいでしょう。その場合、投稿者特定手続を検討することになります。

投稿者特定手続とは

投稿者特定手続は、以下の流れで行われます。

  • IPアドレス開示請求
  • ログの削除禁止命令または通知
  • 住所氏名開示請求
  • 損害賠償請求

それぞれの手順について、以下で詳しく解説します。

投稿者特定の手順1:IPアドレス開示請求

ライブドアブログの悪質なコメントの投稿者を特定するためにまず行うのは、IPアドレスの開示請求です。

IPアドレスとは

IPアドレスとは、PCやスマホなどでインターネット通信を行う際に利用される番号です。インターネット上の住所のような役割を果たしており、ネットワークに接続されているプリンタなどにも割り当てられています。

上記の画像の通り、ライブドアブログは、ID、パスワード、メールアドレスを入力すればユーザー登録をすることができます。また、ユーザー登録をしなくても、ニックネームでコメントを投稿することはできます。

そのため、コメント投稿者がユーザー登録をしていなければ、ライブドアブログの運営者は投稿者の個人情報を把握できません。また、たとえユーザー登録をしていたとしても、投稿者の個人情報はメールアドレスしかわからないものと思われます。メールアドレスが判明したとしても、メールアドレスだけでコメントの投稿者を特定するのは難しいでしょう。また、誹謗中傷などにあたるようなコメントを投稿する場合は、ユーザー登録をせずに行われる場合が多いものと思われます。そのため、投稿者を特定するには、IPアドレスの開示が必要になります

コメント投稿者のIPアドレス開示請求

IPアドレスの開示請求は、裁判所を通して行う手続ですが、裁判ではなく、仮処分という手続によって行うことができます。裁判になると、1年以上かかるケースも多くありますが、仮処分の場合は、約1~2ヶ月で早めに終わることが多いです。その場合の弁護士費用の相場は、インターネット上の情報では

着手金が30万円程度、成果報酬金が30万円程度

https://monolith.law/reputation/reputation-lawyers-fee

などと言われています。この手続では、IPアドレスの開示と削除を、同時に求めることが可能です。上記は両方を行うための費用となります。もっとも、対象とする投稿の内容や量によって、当然費用は変わってきます。

ライブドアブログの利用規約やガイドラインに違反していると思われる悪質なコメントは、送信防止措置(削除)依頼をしたり、ブログ管理者に削除を依頼したりすれば削除してもらえる可能性もあります。しかし、削除依頼を行ってもコメントが削除されない場合は、IPアドレスの開示請求を検討する必要があります。ライブドアブログの口コミを削除する方法については、下記記事で詳細に解説しています。

投稿の違法性を立証

ライブドアブログの利用規約の禁止事由に該当するコメントが投稿された場合、LINE株式会社はそのコメントを削除することができるものと規定されています。この場合は、そのコメントがライブドアブログの利用規約に違反していることは確かですが、必ずしも違法性があるわけではありません。LINE株式会社やブログ管理者へ削除依頼した場合には、特に違法性がなくても削除してもらえるケースがあります。

一方、裁判所がIPアドレスの開示命令を出すためには、以下の二つが必要です。

  • その投稿の違法性を示す法的な主張
  • 上記を裏付ける証拠

そのコメントの違法性を法的に主張したり、違法性を証拠立てるための証拠を用意したりしなければなりません。このような法的な議論や証拠の用意は、法律の知識がないと難しいものです。ネット上の誹謗中傷対策に豊富なノウハウを持つ弁護士に依頼するのがおすすめです。

投稿者特定の手順2:ログの削除禁止命令

手順1でIPアドレスの開示命令を受けてIPアドレスを入手すれば、コメント投稿者が利用していたプロバイダを特定することができるようになります。プロバイダは、そのIPアドレスを使っている者のログ(操作が行われた日時、操作の内容や送受信されたデータなどの記録)を持っています。しかし、ログはいつまでも保存されているわけではありません。特に、携帯回線などは保存期限が短く、約3ヶ月で削除されてしまいます。このため、プロバイダに対し、ログの削除をしないよう禁止命令を出してもらわなければなりません。この禁止命令を出してもらうためには、また別の裁判手続が必要になります。

ただ、「住所氏名の開示請求を行うので、命令が出るまでログを削除しないでほしい」という通知を出せば、裁判手続をしなくてもログを保存しておいてもらえるケースもあります。まずはいきなり裁判を起こすのではなく、通知を検討したほうがよいでしょう。ただ、その通知を行う際にも、コメントの違法性の主張やその立証は必要です。

この通知は、記載例などがネット上にあまりなく、単独で作成するのは難しいかもしれません。こうした手続についても詳しい弁護士に依頼して作成しましょう。

投稿者特定の手順3:住所氏名開示請求

上記の手順2でログ保存の依頼を通知した後、プロバイダに対し、コメント投稿者の住所氏名開示の請求手続をします。住所氏名開示請求は、仮処分によって行うことはできず、正式な裁判手続を行わなくてはなりません
例えば、ライブドアブログのコスメの記事に「この商品を使って肌が荒れた。海外では、○○という成分は有害であるとして禁止されているのに、この商品には大量に使われている」というコメントが投稿された場合、その投稿に説得力のある証拠があり、また、そのコメントを公に知らしめることが公共の利益に合致すると考えられる場合には、投稿者のプライバシーは尊重されるべきであるといえます。住所と氏名は、個人情報の中でも特に重要な情報です。そのため、簡単に開示させることはできません。
3裁判所は慎重な審議を行い、正式な裁判手続を経てその投稿が違法であると判断した場合にのみ、住所氏名の開示命令を出します

投稿者特定の手順4:損害賠償請求

手順3により、住所氏名開示請求が認められた場合、投稿者がコメントを投稿した時に使用した回線の契約者の住所氏名が開示されます。住所氏名がわかれば、一連の手続に要した弁護士費用や慰謝料などを請求することができます

損害賠償請求を行って、その損害賠償金を弁護士費用に充当することができれば、被害者に費用負担は発生しません。ただし、投稿者の特定が失敗に終わるかもしれない可能性や、たとえ投稿者を特定できたとしても、損害賠償金がかかった弁護士費用をまかなうには足りないという可能性はあります。この点に関しては、下記記事で詳しく解説しています。

まとめ

ライブドアブログは、無料でユーザー情報を登録してブログ記事を作成したり、コメントをしたりすることができるブログサービスです。
コメントは、ユーザー情報を登録しなくても行うことが可能です。そのため、誹謗中傷に該当すると思われるようなコメントが投稿されてしまうケースがありえます。
ライブドアブログの足跡機能により、直近3日分の訪問者のIPアドレスなどは確認できますが、どのIPアドレスが悪質なコメント投稿者のものなのかを特定するのは難しいでしょう。悪質な記事やコメントの投稿者を特定するためには、いくつかの裁判手続が必要です。裁判手続が成功して投稿者を特定できれば、投稿者に対する損害賠償請求が可能になります。ただ、一連の手続にかかる弁護士費用も決して安いものではないため、たとえ投稿者から損害賠償金が支払われても、弁護士費用や損害額に届かないケースもあります。
投稿者特定手続は、複数の裁判手続を経なければならず、豊富な専門知識を要する複雑な手続です。ライブドアブログの悪質なコメントにお困りの場合は、ネット上の誹謗中傷対策に詳しい弁護士へ早めに相談しましょう。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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