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風評被害対策

転職会議の投稿者を特定する方法と弁護士費用の相場

風評被害対策

転職会議の投稿者を特定する方法と弁護士費用の相場

転職会議は、従業員からの企業の口コミを閲覧できるサイトです。就職や転職活動の際の情報収集に利用したことがある人も多いでしょう。書き込みをするのは退職者が多く、批判的な内容が多いのが特徴です。このため、誹謗中傷に該当する口コミが投稿される危険性が高いサイトでもあります。誹謗中傷の口コミが投稿された場合、どのような手段で投稿者を特定できるのでしょう。今回は、投稿者特定の方法や弁護士費用の相場について解説していきます。

転職会議とはどのようなサイトなのか?

転職会議のメイン画面より

転職会議は、国内最大級の転職口コミサイト。2020年時点で、300万件以上の口コミを掲載しており、会員登録者数は700万人以上にものぼります。元社員や現在働いている社員からの会社への評価や年収、残業時間などさまざまなテーマの口コミを見ることが可能です。また、転職サイトとしての性質もあり、延べ17万件以上の求人を保有しています。運営は、東京都品川に本社を置くインターネットメディア運営会社リブセンスです。

転職会議で行われる誹謗中傷の例

転職会議に口コミを行うのは、基本的には、その企業で過去に従業員として働いていた人です。そして、通常、退職するのは会社に何かしらの不満があるためです。このため、企業に対する悪口や批判に該当する内容が多く見受けられます。転職者に有益な情報を提供するという社会正義のためにこうした投稿をするのならいいですが、現実は単なるストレス発散に利用されるケースが多いです。過激な内容も多く、誹謗中傷に該当する口コミが発生する頻度は高いです。例えば、以下のような口コミが見られます。

  • 役員の私生活に関する情報(例:「役員の△△は武蔵小杉のタワーマンションに住んでいる」)
  • 個人を特定できる投稿(例:「営業の松平さんは短足」)
  • 誹謗中傷表現(例:「こんなクソ企業潰れたほうがいい」)
  • 伝聞や憶測など事実確認が困難な内容(例:「私がいた頃は有休もろくに取れない環境でした。おそらくこの忙しさは今も続いているのではないでしょうか?」)
  • 誇張表現や断定的表現(例:「だれでもできる単調な作業しかやらせてもらえない。この会社ではスキルアップは不可能」)
  • 閲覧者が不快に思う投稿(例:「絵文字や「W」を使うなどビジネスマナーとして良くない投稿」)

上記のような口コミは、サイトの規約違反に該当します。そのため、サイト側に削除の依頼を出せば、応じてもらえる可能性は高いでしょう。ただ、実害が発生している場合など、削除だけでは気が済まないケースも存在します。そんな方は、投稿者特定の手続きを取るのがおすすめです。投稿者が特定できれば、相手方への損害賠償請求が可能になります。以下、投稿者特定の手順を詳しく紹介します。

投稿者特定の手順1:IPアドレス開示請求

投稿者特定方法について、解説していきます。

IPアドレスとは

転職会議の口コミ投稿者を特定する最初のステップは、IPアドレスの開示請求です。IPアドレスとはインターネットに接続された端末に割り当てられた番号で、いわばインターネット上の住所のようなものです。

転職会議は、メールアドレスさえあれば登録可能です。

転職会議では、匿名での投稿が可能です。登録時にメールアドレスが必要ですが、gmailなど匿名性の高いフリーアドレスで登録できます。つまり、転職会議の運営者は、ある風評口コミを投稿した人物について、その人物の住所や本名を知らず、メールアドレスしか知らない可能性が高いのです。

そして、匿名性の高いフリーアドレスで登録できてしまう以上、メールアドレスの開示を受けても意味は無く、本人を特定するにはIPアドレスの開示を受ける必要があるのです。

仮処分手続による投稿者のIPアドレス開示請求

IPアドレスの開示請求の際は、基本的には裁判所手続きを行わねばなりません。転職会議では、明らかな違法や規約違反のケースでは、問い合わせフォームを利用して問い合わせれば、削除に応じてくれる可能性もあります。しかし、原則、IPアドレスの開示請求は裁判所手続きを利用する必要があります。転職会議の口コミの削除方法に関しては、下記記事で詳細に解説しています。

この裁判所手続きは、裁判ではなく仮処分という、迅速な手続きを取ります。裁判はどうしても時間がかかってしまうのがデメリットですが、仮処分の場合、1~2か月程度で実施可能です。インターネット上の情報では、その場合の弁護士費用の相場は

着手金が30万円程度、成果報酬金が30万円程度

風評被害の弁護士費用と賠償フローとは?

と言われています。上述の費用は、IPアドレスの開示と削除を同時に求める際の費用です。ただ、投稿の内容や量によって、当然費用は変わってきます。転職会議ではひとつの投稿当たり最低150文字以上は書かねばならないとの基準が存在します。数ある口コミサイトの中でも長文の部類に入るため、費用があがってしまうケースも十分考えられます。

投稿が違法であることを主張・立証する必要

仮処分手続きで、IPアドレスの開示を裁判所に認めてもらうには、その投稿が違法であると立証する必要があります。少しわかりにくいですが、違法と認められた場合のみ開示してもらうことができます。サイトへの削除申請で削除を求める場合、大きく分けると以下の2つのケースで削除依頼を出せます。

  • 利用規約違反
  • 違法

そして、「転職会議で行われる誹謗中傷の例」で紹介した通り、転職会議では役員の私生活に関する投稿や個人を特定しうる投稿などは削除対象とするとの判断基準があります。しかし、これはあくまでも転職会議の運営者が自主的に削除する基準というだけで、必ずしも違法に該当するとは限りません。つまり、サイトへの請求の際は、違法でなくとも削除に成功するケースが存在するのです。

一方、IPアドレスの開示請求が認められるには、

  • その投稿が違法であるとの法的な主張
  • それを裏付ける証拠

の2つが求められます。なぜその投稿が違法と言えるのか、証拠として用意すべきものは何かといった議論が必須です。こうした議論は素人だけで判断するのは難しいので、ネットの誹謗中傷に強い弁護士に依頼すべきです。

投稿者特定の手順2:ログの削除禁止

投稿を行ったネットのプロバイダに対し、ログの削除をしないように請求します。

手順1でIPアドレスを入手できると、投稿を行ったネット環境を提供するプロバイダ(固定回線の場合のBIGROBE、携帯回線の場合のdocomoなど)が判明します。そして、プロバイダはそのIPアドレスを用いて投稿を行った者の住所・氏名といったログ(記録)を保持しています。しかし、プロバイダはいつまでもログを保存しているわけではありません。携帯回線などは保存期間が短く、3か月程度で消してしまいます。このため、プロバイダに対し「ログの削除をするな」との禁止命令を出すべく、別の裁判手続きを起こす必要があるのです。

ただ実際は、裁判手続きを利用しなくとも、「今から投稿者特定の開示請求を出すので、それまでログを削除しないでほしい」との通知を出せば、事足りるケースは多いです。このため、いきなり裁判を起こすのでなく、まずは通知を検討すべきです。もっとも、通知の際も、転職会議の該当の口コミが、どのように法的権利を主張しているのか、主張や立証は求められます。

この通知に関する弁護士相場は、10万円程度と考えられます。ただ、あまりネット上に例が紹介されていないので、専門的に扱う弁護士に直接お問い合わせするとよいでしょう。

投稿者特定の手順3:住所氏名開示請求

手順2でログ保存の依頼が完了したら、次はプロバイダに対し、投稿者の住所・氏名の開示を請求します。住所氏名開示請求は、スピーディーな仮処分ではなく、正式に裁判手続きをとらなくてはなりません。住所・氏名は個人を特定しうる重要な情報です。例えば、転職会議で「ブラック企業だ」との投稿がされたとしても、その投稿に十分な根拠があり、悪事を世に知らしめるとの使命感からの投稿であれば、投稿者のプライバシーは尊重されなくてはいけません。裁判所は、こうした観点から慎重な議論を行い、正式な裁判手続きをもって違法と判断されば場合のみ、開示命令を発出します。

この部分の弁護士費用の相場は

着手金が30万円程度、成果報酬金が20万円程度

風評被害の弁護士費用と賠償フローとは?

と想定されています。

投稿者特定の手順4:損害賠償請求

手順3の住所氏名開示請求で勝訴すれば、投稿者が投稿を行った回線の契約者の住所氏名が開示されます。特定した投稿者に対し、一連の手続きで生じた弁護士費用、慰謝料などの請求も可能となります。

つまり、投稿者の特定に成功し、損害賠償で弁護士費用を補填できれば、被害者に金銭的な負担は発生しません。ただ、投稿者が特定できるか、できたとしても損害賠償で弁護士費用を賄えられるのかといったリスクは存在します。こちらに関しては、下記記事で詳しく解説しています。

転職会議は、口コミを閲覧するには、自ら勤めていた会社の口コミを投稿するか、有料プランに申し込む必要があります。口コミを投稿する際は、在職年度やカテゴリ(ワークライフバランスや将来性など)を選ばなくてはならず、口コミの文字数も150字以上と制限があるので、おっくうに感じ、途中で挫折する人もいるでしょう。このことから、家で時間がある時にPCを使って利用するケースが多いと想定されます。このため、公衆無線LANなど匿名性の高い回線を利用する場合は少ないと言えるでしょう。

まとめ

転職会議で投稿者を特定するには、複数の裁判手続きを行わなければならず、一筋縄ではいかない大変な手続きです。もちろん、特定に成功したケースはあるので、不可能なものではありません。失敗するリスクも高いですが、挑戦してみる価値は十分あります。投稿者を特定できれば、相手方に対し損害賠償請求が可能となります。ただ、損害賠償請求が成功したとしても、一連の手続きで生じる弁護士費用もそれなりの金額ですから、損害の補填を十分に受けられない可能性もあることを知っておいてください。投稿者特定は難易度が低い請求とはいえませんから、ネットの誹謗中傷に強い弁護士に依頼するべきです。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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