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風評被害対策

プライバシー侵害の慰謝料はいくら?実務上の相場を弁護士が解説

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プライバシー侵害の慰謝料はいくら?実務上の相場を弁護士が解説

名誉毀損やプライバシーの侵害が認められれば慰謝料の請求が可能です。慰謝料とは、「物質的損害ではなく精神的損害に対する賠償」(最高裁判所1994年2月22日判決)とされていますが、苦痛の程度を客観的・数量的に把握することは困難なので、様々な要素を考慮して算出されています。

では、慰謝料の一般的な相場はどれくらいなのでしょうか?

実務上ではプライバシーの侵害の慰謝料は低額な傾向がありますが、本記事では実際の事例を元にして慰謝料の相場を解説していきます。

プライバシーの侵害が認められた裁判例と慰謝料

プライバシーの侵害とそれに対する慰謝料にはどのような要素が考慮されているのでしょうか。

乳がんの闘病記録の場合

病歴は、自身の健康状況や身体的な特徴などと密接に関わることがあり、誰しも不特定多数の人に知られたくないものです。本件で問題になったのは「若年性乳がん」の病歴です。

乳がんの闘病記録を記したブログを匿名で運営していた女性が、被告の投稿により氏名、年齢、勤務先等を特定され、若年性乳がんに罹患していた事実を一般の人に知られてしまい、プライバシーを侵害されたとして提訴した事例があります。

裁判所は、

「乳がんに罹患した事実や治療経過及び結果などは、私生活上の事柄であり、また通常人の感受性を基準にしても公開されることを望まない事実であると解される」

東京地方裁判所2014年6月13日判決

とし、原告のプライバシー権の侵害を認定し、慰謝料120万円及び弁護士費用12万円、合計132万円の支払いを被告に命じました

給与明細等を公開した場合

給与明細を公開されたとして記事に対し、損害賠償を求めたケースがあります。

給与明細を公開されたとして記事に対し、損害賠償を求めたケースがあります。

大手出版社の報酬水準と下請けライターや異業種との賃金格差問題を論ずるとして、被告会社がインターネット上で自ら主宰するサイトに掲載した記事が、プライバシーを侵害したとして、原告の女性社員が損害賠償を求めた事例があります。

被告会社Xの代表取締役である被告Yは、Xが主宰するサイトに「国民の働く意欲削ぐ○○社の異常賃金」と題する記事を掲載し、「右記は、○○社が発行する女性誌『△△誌』編集部の、28歳女性社員の給与明細だ」と出版社名と週刊誌名をあげて、この女性社員の「給与明細書」、「源泉徴収票」、「特別区民税・都民税/特別徴収税額の通知書」を収録し、この女性社員の給与が「76万円超」であると記載しました。

記事に掲載された給与明細等は、社員番号及び氏名は見えないように加工処理されていたのですが、所属部署が「△△誌」であることが読み取れ、「△△誌」編集部は20から25人で構成され、そのうち社員は約10人で、20代女性社員は原告だけでした。つまり、原告が所属している社内あるいは同業者等で原告を知る者の相当数は記事の人物が原告であると同定できたのです。

裁判所は、

「プライバシーの侵害は、必ずしもその態様が不特定多数の者への公表に限られるものではなく、特定集団あるいは特定人への開示もその侵害となり得るものである」

最高裁判所2003年3月14日判決

とし、また、

「一定範囲の他者には、当然開示すべき個人情報や特に秘匿されるべきものとはいえない情報であっても、自己が欲しない他者にはこれを開示されたくないと考えることは自然なことであり、そのことへの期待は保護されるべきものである」

最高裁判所2003年9月12日判決)

原告を知る者の中に、本件記事を読んで、初めて原告の平成17年6月分の給料額や平成16年分の年収額を知り、あるいは初めて原告の支給明細書や源泉徴収票の実物の画像を目にした者も存在することが合理的に推認される。そして、特定の時点における原告の具体的な給与額、年収額や、給与明細等の資料の実物が一般人の感受性を基準にして公表を欲しない事柄に属することは明らかである。


東京地方裁判所2010年10月1日判決

として、プライバシーの侵害を認め、慰謝料50万円と弁護士費用5万円、合計55万円の支払いを命じました。

職業、診療所の住所・電話番号を公開した場合

眼科医が、ニフティの掲示板で論争していた相手から、職業、診療所の住所・電話番号を掲示されたとして、損害賠償を求めて裁判を提起しました。

診療所の住所や電話番号は、地域別の職業別電話帳に広告掲載されており、純粋な私生活上の事柄であるとはいい難い面があったのですが、

裁判所は、

「個人の情報を一定の目的のために公開した者において、それが右目的外に悪用されないために、右個人情報を右公開目的と関係のない範囲まで知られたくないと欲することは決して不合理なことではなく、それもやはり保一されるべき利益であるというべきである。そして、このように自己に関する情報をコントロールすることは、プライバシーの権利の基本的属性として、これに含まれるものと解される」

神戸地方裁判所1999年6月23日判決

とし、慰謝料20万円、不眠症等の治療費2380円、合計20万2380円の支払いを被告に命じました

配偶者らの氏名・住所、親族の氏名、親族の経営する会社の名称を公開した場合

原告らが、「2ちゃんねる」に、原告配偶者らの氏名・住所、親族の氏名、親族の経営する会社の名称を記載され、第三者が閲覧可能な状況に置いたと主張して、被告に対し、損害賠償を求めた事例があります。

裁判所は、

「個人の氏名や住所、会社所在地の情報はプライバシーという他人に知られたくない事由の対象外である」

東京地方裁判所2009年1月21日判決

とする被告の主張を退け、氏名及び住所がプライバシーに該当することは明らかであるとしてプライバシーの侵害を認め、原告とその妻にそれぞれ10万円と弁護士費用2万円、合計24万円の支払いを、被告に命じました。

原告を被疑者とする捜査情報がインターネットを通じて流出した場合

少年である原告を被疑者とする道路交通法違反事件の捜査関係文書を作成した巡査の私有パソコンから、原告の住所、職業、氏名、生年月日といった個人識別情報とともに事件の詳細な内容がインターネットを通じて外部に流出したとして、原告少年が損害賠償請求を求めた事例があります。捜査を担当した巡査がパソコンを使用して捜査関係文書を作成した際に、通達に反して作成途中の文書をパソコンのハードディスクに保存し、通達に反して同パソコンを自宅に持ち帰り、同パソコンがウイルスに汚染されていることに気づかずにインターネットに接続したために発生したものですが、裁判所は、

同事実は少年の非行事実として少年の健全育成のため秘匿されるべき情報であって、A巡査の上記原因行為により本件情報流出という本来あってはならない事故が発生し、その結果、原告の秘匿されるべき情報がウイニーを利用する不特定多数人の閲覧に供されたばかりか、その情報はダウンロードされ、プリントアウトされることによってインターネットを利用しない一般人にまで広く暴露され得る状況に至ったのであり、原告が本件情報流出により人格権に基づくプライバシー権を侵害されたことは明らかというべきである。

札幌地方裁判所2005年4月28日判決

として、非行事実であって比較的軽微な事犯に関するものであることを考慮しつつ、損害賠償金として40万円の支払いを被告に命じました。

写真をTwitterに無断転載した場合

最後に、写真をTwitter上に無断転載した事例を紹介します。

共同著作者がTwitterに投稿した写真を無断で転載したことに対し、著作権侵害、プライバシーの侵害、肖像権侵害として、著作権者である緊縛写真のモデル女性が裁判を提起した事例があります。

裁判所は、著作権(複製権及び公衆送信権)侵害、肖像権侵害を認めた上で、

本件写真は、「その内容に照らし、一般人の感受性を基準にして公開を欲しないものといえるから、このような写真を本人の許諾なく公開することはプライバシー権を侵害し得るものである」

とし、

「本件写真の被写体の女性が原告であることは未だ社会に知られていなかった事実といえるところ、本件被告行為によって初めて被写体の女性が原告であるとの同定が可能となり、同事実が公にされるに至ったものと認められる」

東京地方裁判所2018年9月27日判決

としてプライバシーの侵害を認め、合計47万1500円の損害賠償(プライバシー権侵害に対する損害30万円を含む)の支払いを、被告に命じました

まとめ

損害賠償金を得ることも大切ですが、まず、当該の記事を削除することが必要です。ネット上の書き込みによってプライバシーの侵害を受けた被害者には、プロバイダ責任制限法によって書き込みの削除依頼を行う権利「送信防止措置請求権」が認められています。

業者が削除に応じない場合には、裁判所に削除依頼の仮処分を申し立てるなどの法律的な手続きをとることになります。

削除依頼が完了しても、証拠があれば「損害賠償請求」を行うことができます。経験豊かな弁護士にご相談ください。

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