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口コミも薬機法の規制の対象となる?関連する法律を解説

投稿された口コミをめぐって事業者の責任が問われる場面はあるのでしょうか。

商品の購入を検討する際、消費者は店側が発信する情報だけでなく、実際にその商品を購入した消費者の生の感想・意見を参照することで、より良い商品の選択が可能となります。口コミにはこうした消費者にとっての利益もあり、インターネット上ではさまざまな口コミがあふれています。

本記事では、口コミ投稿が、薬機法をはじめとした景品表示法、健康増進法などの法律との関係で、どのような点で問題となるのかについて解説します。

口コミは薬機法の規制の対象となるのか?

薬機法第66条は、すべての者に対し、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器または再生医療等の製品に関して虚偽または誇大な記事による広告を禁止しています。また第68条は、すべての者に対し、➀承認前の医薬品、医療機器または再生医療等製品、②承認前の医療機器または体外診断用医薬品の名称、製造方法、効能、効果または性能に関して広告することを禁止しています(薬機法の条文はこちら)。

したがって、薬機法の規制対象は特に事業者に限られるわけではなく、例えば一般消費者が、健康食品の販売ページに「飲むだけで瘦せた」などと、それがあたかも医薬品であるかのような効能・効果を示すことを内容とする口コミが投稿され、事業者が削除等の対応を行っていない場合には、法的に問題となってしまう恐れもあります。

参照:審査トピックス:口コミは法的措置の対象となるか(JARO)

では、「医薬品」とはどのようなものを指すのでしょうか。「医薬品」の定義については薬機法2条で定められていますが、この条文の定義に該当するかどうかは、その対象物が

  • 対象物は、医薬品としての目的を有しているか
  • 対象物について、通常人が医薬品としての目的を有するものであると認識するかどうか

によって判断されます。実際には、その対象物の原材料、形状およびその物に表示された使用目的・効能効果・用法用量並びに販売方法、販売の際の演述等を考慮したうえで、総合的に判断されます。

またもう少し具体的な基準としては、昭和46年6月1日薬発第476号厚生省薬務局長通知「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」において、「医薬品」の判定方法について次のように定めています。

医薬品とみなす範囲は次の通りとする。

㈠ 効能効果、形状及び用法用量の如何にかかわらず、判断基準1.に該当する成分本質(原材料)が配合又は含有されている場合は、原則として医薬品の範囲とする。

㈡ 判断基準1.に該当しない成分本質(原材料)が配合又は含有されている場合であって、以下の①から③に示すいずれかに該当するものにあたっては、原則として医薬品とみなすものとする。

①医薬品的な効果効能を標ぼうするもの

②アンプル形状など専ら医薬品的形状であるもの

③用法用量が医薬品的であるもの

昭和46年6月1日薬発第476号厚生省薬務局長通知「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」

ここでいう判断基準1.とは、医薬品として使用される成分を示す基準です。したがって、判断基準1に例示される成分が含有されている製品は、原則として医薬品として扱われます。他方、判断基準1に例示される成分が実際には含有されていない製品(例えば、健康食品)であったとしても、口コミの内容において、「医薬品的な効果効能を標ぼうする」ときには、「医薬品」とみなされ、薬機法の適用を受ける可能性もあります。

なお、この通知では、「医薬品的な効能効果を標榜する」表示の例として次のようなものを挙げており、これらの表現が口コミの内容に含まれている場合に問題となってしまう可能性があります。

㈠疾病の治療又は予防を目的とする効能効果

(例)糖尿病、高血圧、動脈硬化の人に、胃・十二指腸潰瘍の予防、肝障害・腎障害をなおす、ガンがよくなる、眼病の人のために、便秘がなおる等

㈡身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効能効果

ただし、栄養補給、健康維持等に関する表現はこの限りではない。

(例)疲労回復、強精(強性)強壮、体力増強、食欲増進、老化防止、勉学能力を高める、回春、若返り、精力をつける、新陳代謝を盛んにする、内分泌機能を盛んにする、解毒機能を高める、心臓の働きを高める、血液を浄化する、病気に対する自然治癒能力が増す、胃腸の消化吸収を増す、健胃整腸、病中・病後に、成長促進等

昭和46年6月1日薬発第476号厚生省薬務局長通知「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(一部抜粋)

詳しくは上記通知のほか、昭和62年9月22日薬監第88号「無承認無許可医薬品の監視指導について」をご覧ください。また、下記記事でも、薬機法について解説しておりますのでご参照下さい。

関連記事:薬機法(旧薬事法)とは?目的や規制対象、広告規制を解説

口コミのその他の問題点

口コミは薬機法の規制の対象となるのか?

投稿された口コミが薬機法のみならず、その他の法令との関係で問題となることもあります。そこで、いかなる場合にいかなる法令に抵触するのかについて見ていきましょう。

景品表示法上の問題

景品表示法第5条は不当な表示を禁じています。ここでいう「表示」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品または役務の内容または取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示をいいます(第2条第4項)。したがって、商品・サービスの購入者・利用者たる消費者が書き込む口コミは、原則として、景品表示法上の「表示」には該当しません。

しかし、商品・サービスを提供する事業者が、顧客を誘引する手段として、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、または第三者をして掲載させ、当該口コミ情報が、実際の商品・サービスまたは他の事業者のものよりも著しく優良または有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法5条に抵触する口コミとなります。

インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項(消費者庁)では、景品表示法上問題となる事例として次の事例を挙げています。

商品・サービスを提供する店舗を経営する事業者が、口コミ投稿の代行を行う事業者に依頼し、自己の供給する商品・サービスに関するサイトの口コミ情報コーナーに口コミを多数書き込ませ、口コミサイト上の評価自体を変動させて、もともとも口コミサイト上で当該商品・サービスに対する好意的な評価はさほど多くなかったにもかかわらず、提供する商品・サービスの品質その他の内容について、あたかも一般消費者の多数から好意的評価を受けているかのように表示させること。

インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項

健康増進法上の問題

投稿された口コミをめぐる健康増進法上の問題は、健康増進法第65条第1項で禁止されている虚偽誇大表示にあたるかどうか、という点です。

何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項(次条三項において「健康保持増進効果等」という。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。

健康増進法第65条第1項

ここでは、消費者庁の公表した「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(消費者庁)を参考に、条文の解釈について説明します。

規制の対象について、「何人も」と定められていることから、食品の製造業者、販売業者等に限られることなく、新聞社、雑誌社、放送事業者、インターネット媒体社等の広告媒体事業者や、これら広告媒体事業者に対して広告の仲介・取次をする広告代理店、サービスプロバイダー等も規制の対象となり得ます。特に、表示をした事業者が規制の対象となるところ、この「表示をした事業者」とは、

  1. 自らまたは他の者と共同して積極的に表示の内容を決定した事業者のみならず、
  2. 他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた事業者、
  3. 他の事業者にその決定を委ねた事業者

も含まれます。これは例えばアフィリエイターが、広告主の販売する健康食品について虚偽誇大広告表示にあたる内容を掲載した場合に広告主がその表示内容を具体的に認識していない場合であっても、広告主が法的な責任を問われる可能性がある、ということです。

また、「著しく」の該当性は、個々の広告に即して判断がなされるものですが、例えば次のものは「誇大広告表示」にあたるおそれがあるとされています。

健康食品を販売する事業者が、口コミ投稿の代行を行う事業者に依頼し、その事業者が販売する健康食品に関するサイトの口コミ情報コーナーに口コミを多数書き込ませ、口コミサイト上の評価自体を変動させて、もともと口コミサイト上でその健康食品に対する好意的な評価はさほど多くなかったにもかかわらず、その健康食品の健康保持増進効果等について、あたかも一般消費者の多数から好意的評価を受けているかのように表示させること

「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」p.16

通常、一般消費者は広告にはある程度の誇張が含まれることを織り込んで表示内容を判断し、商品選択をしています。しかし、上記の例では、広告であると一般消費者が認識することができず、その表示内容が商品選択に与える影響が大きいため、規制の対象となっているのです。

医療法上の問題

平成29年医療法改正により医療に関する広告規制の見直しが行われました。同改正では、患者保護の観点から、医療機関のウェブサイト等についても新たに規制の対象とし、他方で、患者が知りたい情報(自由診療等)が得られなくなるという懸念を踏まえ、一定の条件の下に広告規制を解除しています。

以下では医療広告ガイドラインを参考に、規制される広告について、改正内容とともに見ていきます。

まず従来は、ここでいう「広告」について、下記の3つの要件をすべて満たした場合に規制対象となるとされていました。

  1. 誘引性(患者の受診等を誘引する意図があること)
  2. 特定性(医師の氏名や病院の名称等が特定可能であること)
  3. 認知性(一般人が認知できる状態にあること)

したがって従前は、3.の認知性の要件によって、一般の人が目にするテレビCM、看板、折込広告等が規制の対象とされており、ウェブサイト等は、患者が自ら情報を求めて検索するなど能動的に閲覧するものであることから3.の認知性の要件を充足せず、規制の対象外とされていました。

しかし、改正後は、3.の要件が不要とされることによりウェブサイトも規制の対象とされました。

そして、患者による適切な選択が阻害されないように、虚偽・比較優良・誇大・公序良俗違反の広告は禁止されており(医療法第6条の5第1項・第2項)、広告可能な事項は、別途定めがある場合を除き原則として、病院の診療科名や所在地、医療従事者の情報、診療の曜日・時間など、医療法第6条の5第3項に掲げられているもののみになります。

なお、通常、医療広告とは見なされないものとして、学術論文・学術発表等、新聞や雑誌等での記事、患者等が自ら掲載する体験談・手記等、院内掲示・院内で配布するパンフレット等、医療機関の職員募集に関する広告が挙げられます。これらは原則として上記1.の「誘引性」の要件を充足しないため、広告に当たらないとされています。

もっとも、これらに該当するからといって全てが広告に該当しないというわけではありません。例えば、学術論文等を装いつつ、不特定多数にダイレクトメールで送る等により、実際には特定の医療機関に対する患者の受診等を増やすことを目的としていると認められる場合には、誘引性があると判断され、「広告」として取り扱われる場合もあります。

薬機法の広告規制については、下記記事でも解説しておりますのでご参考下さい。

関連記事:薬機法の広告規制とは?適法な表現で広告を作成するポイントを解説

口コミサイト側の責任と対処法

医療法上の問題

では、口コミサイトの管理者は違法な口コミが投稿された場合に、どのような責任を負うのでしょうか。

口コミサイトの管理者が、違法な情報の存在を認識しつつも、これについて何ら措置を講じず、単に放置したにとどまる場合には、通常は民事上・刑事上の責任を負うことはありません。ただし、サイト管理者が違法な情報の存在を放置したというだけでなく、違法な情報の流通に「積極的な関与」をしていた場合には、責任が問われる可能性もあります。

もっとも、当該管理者が一般の利用者等から違法な情報がサイトに掲載されているとの情報提供を受けた場合や、自ら違法と思われる情報を発見した場合には、違法性を判断の上、自主的に対応を行うことが望ましいとされています。「インターネット上の違法な情報への対応に関するガイドライン」(電気通信事業者協会等)には、サイト管理者のとりうる具体的な違法情報に対する措置(以下「送信防止措置」といいます。)として、当該違法情報を発信した者に対し、

  1. 違法な情報をやめるように要求すること
  2. 要求を繰り返し行っても、発信者が要求された措置を講じないときは、プロバイダが違法な情報を公衆が受信できない状態にすること(ただし、明らかに違法又は有害で、緊急性があると判断できる相当の事由がある場合、1.の要求を行うことなく、事業者が違法な情報を公衆が受信できない状態にすること)
  3. 発信者が違法な情報の発信を繰り返す場合、発信者の利用を停止し、又は発信者との利用契約を解除すること

等が掲げられています。

また、口コミサイトの管理者は厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策関係機関や都道府県薬務関係機関から送信防止措置の依頼を受けることもあります。これは、上記機関による管理者に対する要請であって、これにより、当該管理者に送信防止措置を行う法律上の義務が生じることは通常はないですが、要請を受けたプロバイダはこれに従い、送信防止措置を講じることが望ましいです。

詳しくは、「インターネット上の違法な情報への対応に関するガイドライン」及び薬食監麻発0301第1号平成22年3月1日をご覧ください。

まとめ:薬機法の表現ルールをチェックするなら弁護士へ

本記事では、掲載された口コミの薬機法ほか関連法令上の問題点について解説しました。

掲載された口コミの内容が違法かどうかという判断には、薬機法のみならず、景品表示法、健康増進法、医療法とさまざまな法律が関わります。このように、口コミの内容の違法性判断は、複数の法律との関係を見る必要があり判断が難しいため、弁護士に相談することをおすすめします。

薬機法等のリーガルチェックや書き換え表現の提案は、非常に専門性の高い領域です。モノリス法律事務所は、薬機法法務チームを組成し、サプリメントから医薬品まで、さまざまな商材の記事チェックに対応しています。

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モノリス法律事務所の取扱分野:記事・LPの薬機法等チェック

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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