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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

免許なしの人材紹介は違法?有料職業紹介の許可が必要な場合とは

従来、転職活動や企業の求人活動においては有料職業紹介事業許可を取得した人材紹介会社のエージェントを通じてやり取りが行われることが主流でした。

これに対し、最近は特にIT業界を中心にWantedlyのような会社と個人を直接マッチングさせるサービスに人気が集まっています。

そこで、事業として会社と個人を直接マッチングさせるサービスを展開する場合に、人材紹介会社が取得しているような有料職業紹介事業許可は必要であるか、また有料職業紹介事業許可を取ることなくサービスを展開するにはどうすればよいかを解説します。

有料職業紹介事業とは

有料職業紹介事業とは、求人者に求職者を紹介し、求人者から紹介手数料を受け取る事業のことをいいます。

この紹介手数料は「届出制手数料」または「上限制手数料」のいずれかで、前者では求職者の年収の最大50%、後者では支払われた賃金(最大6か月分)の10.5%を、手数料として紹介事業者が受け取ることができます。

今日では、届出制手数料をとる紹介事業者がほとんどであり、その相場は年収の30~40%が多いです。

有料職業紹介事業許可が必要な場合

職業安定法は第4条1項において、「職業紹介」とは、求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんすることであると定義しています。

この定義の中で「雇用関係の成立」とあることから、業務委託契約や請負契約等、雇用関係以外を成立させる場合は「職業紹介」に該当しないということになります。

また、「職業紹介」における「あっせん」とは、求人及び求職の申込を受けて求人者と求職者の間に介在し、両者間の雇用関係の成立のために便宜をはかり、その成立を容易ならしめる行為をいいます。

従来の人材紹介ビジネスのように、エージェントが、求職者に対して求人企業の募集要項等を提示して応募を勧め、面接のセッティングを行ったり、給与条件等の交渉を代行するサービスは、典型的な「あっせん」の例といえます。

職業安定法によれば、有料で職業紹介を行う者は、厚労省から有料職業紹介事業許可を受ける必要があります(職業安定法30条1項)。

また、無料で職業紹介を行う者も、一部の場合を除き、厚労省の許可を受ける必要があります(職業安定法33条1項)。

有料職業紹介事業許可を取得せずに、有料で職業紹介を行った場合は、罰則として1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます(職業安定法64条)。

つまり、求職者に対し個別に職業を紹介するのではなく、求人情報又は求職者情報を提供するのみで、求人及び求職の申込みを受けず、雇用関係の成立のあっせんを行わないのであれば「職業紹介」にはあたらず、事業として行う場合であっても、有料職業紹介事業の許可は必要ないということになります。

なお、出向・派遣・準委任・請負など職業紹介以外の人材活用に関しては、下記の記事にて解説しています。

関連記事:出向・派遣・準委任・請負・偽装請負・労働者供給の区別と違いとは

有料職業紹介事業許可が必要ない場合

Wantedlyの展開する求職者と求人企業のマッチングサービスの運営にあたっては、有料職業紹介事業許可を取得する必要はないとされています。

その理由としては、特定の求人情報のみを示すのではなく、求職者の検索条件に該当する求人を全て示している点や、求職者との連絡等を行っていない点などが挙げられます。

求職者と求人者のマッチングについては、厚生労働省のグレーゾーン解消制度が活用されており、求職者が求人を検索した際に、条件に該当する求人を全件表示し、かつ、求職者との連絡等を行わない場合には、表示される求人の順位を求職者ごとに変更しても、「職業紹介」に該当しないとの解釈が、厚生労働省によって示されています。

参考(厚生労働省の公表):グレーゾーン解消制度の活用実績|厚生労働省(募集情報等提供において各求職者毎に募集記事の表示順序をパーソナライズするサービス

このように、「職業紹介」に該当しない事業であれば、有料職業紹介事業の許可は必要がありません。

業務委託のあっせんに伴う有料職業紹介事業許可

上記のとおり、雇用関係の成立のあっせんでなければ、職業安定法上の職業紹介には該当しません。

したがって、雇用関係ではなく、業務委託関係の成立をあっせんする場合には、有料職業紹介事業許可を取得する必要がないことになります。

しかし、雇用関係の成立のあっせんに該当するか否かは、事業の実態から実質的に判断されるため、業務委託と称していても実質的には雇用であると判断されるような場合は、有料職業紹介事業の許可が必要となります。

有料職業紹介事業許可を取得しない場合の注意点

 有料職業紹介事業許可を取得しない場合の注意点

Wantedlyなどと同様に、有料職業紹介事業許可を取得せずに、求人者・求職者のマッチングサービスをメインとした事業を始めたいという場合には、どのような点に注意すべきでしょうか。特定の文言の記載や特定のサービスなどにより、有料職業紹介事業許可を取る必要が生じるので気をつける必要があります。以下では、ポイントとなる点を具体的に説明します。

有料職業紹介事業許可を取得しない場合にやってはいけないこと

運営するサービスのウェブサイト等に以下の記載をしたり、以下のサービスを提供したりすると、「職業紹介」にあたると判断される可能性があります。

しがたって、有料職業紹介事業許可を取得しない場合には、以下のことを行わないように気を付けましょう。

  1. 求人情報・求職者情報に、運営者が紹介文句や宣伝文句を付したり、運営者の判断により求人情報・求職者情報をカテゴライズしたりすること
  2. 求人者・求職者間の面談の日程調整を行う等の便宜を図ること
  3. 運営するウェブサイト上で求人者・求職者が意思疎通するとき、通信内容を加工すること
  4. 運営者が、求人情報・求職者情報を選別して、個別の求人者・求職者に向けて提供すること

求人情報・求職者情報の作成

上記1について、マッチングサービスとして運営するウェブサイト上に求人情報や求職者情報を掲載する場合に、求人者・求職者に代わって、運営者が求人情報・求職者情報を作成すると「職業紹介」に該当するとして、有料職業紹介事業許可を取得する必要が出てきます。

したがって、求人情報は求人企業自身に自らの責任において登録してもらう仕組みとする必要があります。求職者の情報も同様に、求職者自身が登録しなければなりません。

また、求人情報や求職者情報を求人企業又は求職者自身に登録してもらう場合でも、マッチングサービス運営者が宣伝文句やアピールポイント等のコメントを追加することが「職業紹介」に該当すると判断されるおそれがあります。

したがって、有料職業紹介事業許可を取得しないのであれば、登録された求人情報・求職者情報への加筆はすべきではありません。

まとめると、求人者と求職者の間に、マッチングサービス運営者の意図や判断を伴う行為の介在があるか否かがポイントとなります。求人者・求職者によって登録された情報をそのままウェブサイト上で公開するといった、単純な情報提供に徹することが重要といえます。

求人者と求職者の意思疎通

 求人企業と求職者の意思疎通

上記3に記載のとおり、求人企業に対して求職者が問合せや応募をする場合など、求人者・求職者が意思疎通を行う際に、通信内容をマッチングサービス運営者が加工すると「職業紹介」にあたり、有料職業紹介事業許可の取得が必要となってしまいます。

例えば、

  • 求人企業に向けたサービスとして、求職者に対する連絡用のテンプレートを作成すること
  • 求職者が求人企業に応募する際に、応募の文面を求人企業の受けがいいように修正するようなサービスを行うこと

などは、「職業紹介」にあたると判断されることがあります。

したがって、有料職業紹介事業許可を取得しないのであれば、このようなサービスを行うことはできません。 

以上から、ウェブサイトを通じて求人企業と求職者が連絡を取り合えるようなシステムを設けたとしても、両者の連絡内容には関与せず、ただ連絡用ツールを提供するのみであれば、マッチングサービス運営者の意図や判断が介在することにはならないので、職業安定法上の問題は生じないと考えられます。

まとめ:人材紹介トラブルでお悩みなら弁護士へご相談を

もともと、Wantedlyのような求人企業と求職者のマッチングサービスは、IT業界を中心に利用されるようになりましたが、最近では他の業界へも拡大しています。働き方の多様化に伴い、今後は同種のサービスの需要の高まりが期待されます。

もっとも、人材紹介に関しては労働者保護の要請が強いため、職業安定法により厳しいルールが定められています。このため、同種のサービスの展開を検討している場合には、事前に法的な問題がないか必ず検討する必要があります。

なお、IT業界での人材ビジネスでは偽装請負も問題になりやすいので、併せて確認しておくと良いでしょう。IT業界の偽装請負に関しては、下記記事で解説しています。

関連記事:IT業界における偽装請負の判断基準と対処法とは

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弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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