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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

ネットショップを開く上での注意点、古物営業法を解説

今や、インターネットショッピングは日常生活にまで浸透しています。それに伴い、誰でも気軽にネットショップを開設できるようになりました。ですが、ネットショップ運営には様々な法律が関係しています。

ネットショップ運営に関係する法律としては、特定商取引法・不正競争防止法・景品表示法・電子契約法・特定電子メール法・個人情報保護法のような「ネットショップ全般に係る法律」と、「特定業種に係る法律」とが考えられますが、ここでは、「特定業種に係る法律」のひとつである古物営業法について解説します。

古物営業法

古物営業法とは、オークションサイトや中古品、リサイクル品の販売業者に適用されます。同法の趣旨は盗品等の売買の防止と速やかな発見等を図るために、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、窃盗その他の犯罪の防止を図り、その被害の迅速な回復にあります。

「古物」と「古物営業」

「古物」とは、古物営業法第2条1項では、次の3つのいずれかにあたるものと定義されています。

  • 一度使用された物品
  • 使用されていない物品で、使用のために取引されたもの
  • 上のいずれかを補修や修理をしたもの

そこで、実際に使用していない新品であったとしても、いったん消費者の手に渡ったものは、「古物」に該当することになります。

さらに、この「古物」は13品目に分類されており、古物商許可をとって営業を始めようという場合、申請書の「主として取り扱おうとする古物の区分」にある、以下の13品目から、何を取り引きするのかを選んで申請しなければなりません。

  1. 美術品類 
  2. 衣類 
  3. 時計・宝飾品 
  4. 自動車 
  5. 自動二輪車・原付 
  6. 自転車類
  7. 写真機類 
  8. 事務機器類 
  9. 機械工具類 
  10. 道具類 
  11. 皮革・ゴム製品類 
  12. 書籍 
  13. 金券類

各許可は、複数許可申請することが可能ですが、取得してから6ケ月以上経っているのに営業していないまたは営業を休止していると、許可を取り消されてしまいます。

同じく古物営業法第2条2項では、「古物営業」とは、以下の3種類に分類されます。

  • 古物商
  • 古物市場主
  • 古物競りあっせん業

「古物商」は、古物を売買、もしくは交換し、又は委託を受けて売買、もしくは交換することで利益を得ます。

「古物市場主」は、リサイクルショップの仕入れに利用する古物商同士が取引する古物市場を運営し、参加している古物商から参加料をとったり、取引成立に対する手数料をとったりすることで利益を得ます。

「古物競りあっせん業」は、ネットオークションの運営者がこれにあたります。古物を売りたい人、買いたい人(一般人も含む)のあっせんを「競り」によって行い、サービス利用者から利用料をとったり、取引成立に対する手数料をとったりすることで利益を得ます。

「古物商」や「古物市場主」となる場合には、公安委員会から許可を受ける必要があり(古物営業法第3条)ます。

また、「古物競りあっせん業」をする場合は、営業開始日から2週間以内に、公安委員会に届出が必要になります(古物営業法第10条2)。この届出は必要書類さえ整っていれば審査を通過できるので、公安委員会がOKを出さない限り審査を通過できない許可に比べて、審査ハードルは低くなっています。

この3種類の古物営業のいずれかにあたる場合には、古物営業法が定めるルールを守らなければならず、違反するとペナルティを科される可能性があります。

「古物商」と「古物市場主」の許可

公安委員会は、古物営業法第4条より、以下のいずれかに該当する人には「古物商」と「古物市場主」の許可をしてはなりません。

  • 破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない者
  • 禁錮以上の刑、又は特定の犯罪により罰金の刑に処せられ、5年を経過しない者
  • 住居の定まらない者
  • 古物営業の許可を取り消されてから、5年を経過しない者
  • 営業に関して成年者と同一の能力を有しない未成年者

これ以外にも暴力団関係者などは、許可を得ることはできません。

古物商の防犯3大義務

古物商は、防犯のために「3大義務」と呼ばれる、以下のルールを守る必要があります。

  1. 取引相手の確認義務(古物営業法第15条第1項)
  2. 不正品の申告義務(古物営業法第15条第3項)
  3. 帳簿の記録義務(古物営業法第16条)

1の取引相手の確認義務については、古物商は、「古物を買い受ける場合」、「古物を交換する場合」、「古物の売却・交換の委託を受ける場合」には、取引の相手方の「住所」、「氏名」、「職業」、「年齢」を確認しなければなりません。対面で確認する方法や、郵送やインターネットなどを利用して相手と対面せずに確認する方法も定められています。

2の不正品の申告義務については、古物商は、古物の取引をする際に、不正品(盗品や偽造品など)の疑いがあるときは、直ちに、警察官にその旨を申告しなければなりません。

不正品の疑いがある取引とは以下の場合が該当します。

  • 同一人物が、短期間のうちに多数の物品の売却を繰り返す場合
  • 顧客の収入・資産・取引を行う目的・職業などに見合わない高額の物品の売却を行う場合
  • 売却することを急ぎ、市場価格を大きく下回る価格での売却でもいとわない場合

なお、古物営業法第20条により、古物商が買い受け、又は交換した古物のうちに盗品又は遺失物があつた場合には、当該盗品又は遺失物を公の市場において又は同種の物を取り扱う営業者から善意で譲り受けた場合においてであっても、被害者又は遺失主は、古物商に対して、これを無償で回復することを求めることができます。ただし、盗難又は遺失の時から一年を経過した後においては、この限りではありません。

3の帳簿の記録義務については、古物商は、古物を受け取ったとき、引き渡したときに、帳簿などに、取引の日付、古物の品目と数量、古物の特徴、相手方の住所・氏名・職業・年齢、相手方の身元確認を行った方法等の事項を記録しなければいけません。

この記録は、記録した日から3年間保存しておかなければならず、保管していた帳簿を紛失したり、コンピュータ上のデータを削除してしまった場合は、警察に届出が必要になります。

古物商と古物市場主の共通ルール

古物商と古物市場主に共通して課せられているルールがあり、主なものは以下の6つです。

  1. 標識の掲示・許可証の携帯義務
  2. 管理者の選任義務
  3. 取引場所の制限
  4. 品触れの保存・届出義務
  5. 保管命令・立入検査に応じる義務
  6. 名義貸しの禁止

1の標識の掲示・許可証の携帯義務については、古物商は営業所や仮設店舗ごとに、古物市場主は古物市場ごとに、古物商許可の標識を見やすい場所に掲示し、取引をしようとする相手方に対して、こちらが古物商許可を受けていることを明示しなければなりません。

また、古物商がWebサイトで古物の取引を行うときには、「古物商の名称」、「許可した公安委員会の名称」、「許可証番号」をWebサイトの定められた場所に表示しなければいけません。

また、訪問買い取りなど、古物商が営業所以外の場所で取引を行うときは、「古物商許可証」を携帯し、相手から提示を求められたときは、それを提示しなければなりません。

2の管理者の選任義務については、古物商・古物市場主は、営業所(または古物市場)ごとに、業務を適正に実施するための責任者として管理者を1人選任しなければいけません。

3の取引場所の制限については、古物商は、古物商以外の一般人と取引できる場所は、「営業所」「取引の相手方の住所」「あらかじめ公安委員会に届け出た仮設店舗」の3つに限られています。

古物商がWebサイトで古物の取引を行う場合には、このような取引場所の制限のルールはありませんが、Webサイトを開設した日から14日以内に古物商許可の申請をした警察署に、サイトのURLの届出がしなければなりません。

4の品触れの保存・届出義務については、「品触れ」とは、所轄の警察署から送られてくる手配書のことで、「品触書」ともいいます。盗品等の発見のために必要があるときに送付され、被害品の品目や特徴などが記載されており、以下のルールがあります。

  • 品触れに受け取った日付を記載し、その日から6ヶ月間保存すること
  • 品触れを受けた日に該当する古物を所持していたときは、直ちに届け出ること
  • 品触れの保存期間内に、該当する古物を受け取ったときは、直ちに届け出ること

5の保管命令・立入検査に応じる義務については、古物商が所持する古物に盗品などの疑いがあるときには、警察本部長等は、古物商に対して最大30日間その古物の保管を命じることができます。保管を命じられた期間は、古物商はその古物を売却することはできません。また、売買や交換の委託を受けて預かっている場合には、委託者に返すこともできません。

また、警察職員は、必要があるときには古物商の営業所、仮設店舗、古物の保管場所、古物市場などに立入り、検査し、関係者に質問することができ、古物商・古物市場主は、この命令・検査等に応じる義務があります。

6の名義貸しの禁止については、古物商・古物市場主は、自己の名義で他人にその古物営業をさせることを禁止されています。公安委員会の許可を受けていない者が名義を借りて許可を受けているように装って営業すると、許可制度を設けた意味がなくなり、犯罪の抜け道になるおそれがあるからです。名義貸しに対しては、無許可営業の場合や、不当に許可を得た場合と並んで最も重いペナルティを科される可能性があり、さらにその後5年間は古物商許可を受けられなくなります。

6の名義貸しの禁止については、古物商・古物市場主は、自己の名義で他人にその古物営業をさせることを禁止されています。公安委員会の許可を受けていない者が名義を借りて許可を受けているように装って営業すると、許可制度を設けた意味がなくなり、犯罪の抜け道になるおそれがあるからです。名義貸しに対しては、無許可営業の場合や、不当に許可を得た場合と並んで最も重いペナルティを科される可能性があり、さらにその後5年間は古物商許可を受けられなくなります。

古物競りあっせん業者のルール

古物競りあっせん業者の守るべきルールには次の3つがあります。

  1. 相手方の確認
  2. 申告義務
  3. 記録の作成と保存

1の相手方の確認については、古物の売却をしようとする者からあっせんの申込みを受ける場合には、申込者を確認するよう努めなければなりません。「努めなければ」としてあるとおり、これは努力義務と呼ばれるもので、必ずしなければいけないものではありませんが、努力義務にすぎないなら、守らなくていいという意識でいるのではなく、コンプライアンス遵守の精神のもと、可能な限り守るべきといえます。

2の申告義務については、あっせんの相手方が売却しようとする古物について、盗品などの疑いがあるときには、直ちに警察官にその旨を申告しなければなりません。

3の記録については、古物の売買をしようとする者のあっせんを行ったときは、「出品日」、「出品情報」、「出品者・落札者のユーザーIDなど」、「出品者・落札者を特定する事項(氏名、住所、年齢など)」といった記録の作成・保存し、これらを1年間保存するよう、努めなければなりません。

まとめ

ネットオークションで自分が使用する目的で古物を購入したり、自分が使用していたものを販売したりするというように、営利目的ではなく単発的に行うのであれば古物商免許は必要ありませんが、営利目的で反復継続してネットオークションで古物の売買を行う場合には、古物商免許が必要となります。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。近年、ネットショッピングをめぐるリーガルチェックの必要性はますます増加しています。当事務所は様々な法律の規制を踏まえた上で、現に開始したビジネス、開始しようとしたビジネスに関する法的リスクを分析し、可能な限りビジネスを止めることなく適法化を図ります。下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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