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IT・ベンチャーの企業法務

美容整形の口コミ投稿に報酬を渡すのはアリ?サイト運営に潜む法的リスク

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美容整形の口コミ投稿に報酬を渡すのはアリ?サイト運営に潜む法的リスク

美容整形を受けた患者から口コミやレビューが多く寄せられる美容系口コミサイト。昨今、様々な口コミサイトが増えてきていますが、中にはレビュー掲載の対価として、医療機関から報酬を得ている場合があります。

では、口コミサイトが、医療機関からレビューの対価として報酬を受け取る行為は法律に抵触しないのでしょうか。個別に解説します。

問題の所在

口コミサイトを利用すると、治療内容への感想、治療前後の比較画像など多くのレビューが投稿されています。美容系口コミサイトの運営では、患者にレビューや写真の対価を払いつつ、医療機関から報酬を得ているケースがあり、こうした行為に対する法的リスクが問題となります。関連する規制は以下の2つです。

医療広告ガイドライン第3「禁止される広告について」

医療機関が広告を掲載する際に守るべき基準として、医療広告ガイドラインがあります。医療広告ガイドラインは、医療法の規制の内容を具体化したものだと言えます。

医療広告ガイドラインでは「患者等の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告及び治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前後の写真等の広告は禁止する」と述べています。

口コミサイトに投稿されるレビューや術前後の写真がガイドラインに違反するかについてはこちらで詳説しているので、ぜひご一読ください。

医療法第54条「条剰余金配当の禁止」

医療法人は、通常の会社と比べて許容される活動範囲が狭い点が特徴です。医療法第54条で営利追及と剰余金の配当という、会社であれば当然に認められる活動が認められません。

第五十四条 医療法人は、剰余金の配当をしてはならない。

http://www.jscm.org/m-info/07_iryouhou.pdf

収益を挙げる行為すべてが禁止されているわけではありませんが、下記の通り、規制は存在します。ポイントは、社会的に許容される範囲内のものかという点です。

①一定の計画の下に収益を得ることを目的として反復継続して行われる行為であって、社会通念上業務と認められる程度のものであること。

②医療法人の社会的信用を傷つけるおそれがあるもの(注)でないこと。

③経営が投機的に行われるものでないこと。

④当該業務を行うことにより、当該医療法人の開設する病院、診療所又は介護老人保健施設の業務の円滑な遂行を妨げるおそれがないこと。

⑤当該医療法人以外の者に対する名義の貸与その他不当な方法で経営されるものでないこと。


(注) 「社会的信用を傷つけるおそれがあるもの」とは、風俗営業、武器製造業、遊戯場などをいいます。

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/igyoukeiei/gyoumu.pdf

具体的な取引について、営利追及に当たるとして禁じる明文のルールはありません。ただし、行政運用として、営利追及や剰余金配当と同視できる取引は指導対象となります。

たとえば、業績連動型(企業の収益に応じて報酬が決定する行為)の取引の場合、指導対象ですが、すぐに過料等の罰則が科されることはありません。一方で医療機関の収益の多寡に応じて支払いを受ける継続的取引といった場合は、問題視される可能性が高いです。

このことから、一定の医療機関については、関係事業者との取引の報告も定められています。

対象となる医療機関

①最終会計年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が50億円以上又は最終会計年度に係る損益計算書の事業収益の部に計上した額の合計額が70億円以上である医療法人
②最終会計年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が20億円以上又は最終会計年度に係る損益計算書の事業収益の部に計上した額の合計額が10億円以上である社会医療法人
③社会医療法人債発行法人である社会医療法人
(上記①・②の基準となっている金額については、都道府県知事に届け出た貸借対照表又は損益計算書によって判断することで足りる。)

https://www.mhlw.go.jp/content/000459150.pdf

上記に該当する場合、指定した貸借対照表や損益計算書のフォーマットを使用し、収益報告をする必要があります。

また、上記に該当しない場合でも、保健所の検査時の帳簿チェックや、個別指導が行われたときなどに、収益に対応する形での口コミサイトへの支払いの形跡が見つかれば、何らかの追及がなされる可能性はあります。

つまり、美容系口コミサイトにレビューの対価として報酬を支払う行為は、医療機関側としても、医療法に抵触する可能性が十分にある行為だと認識しておく必要があるのです。

ここまでの内容を整理すると、以下の通りです。

  • 美容系口コミサイトの写真やレビューは、医療広告ガイドラインに抵触する可能性が高い
  • 病院が報酬の対価としてレビューを書きこませる行為は、医療法で禁止される「収益を挙げる行為」に該当する可能性もある

医療関係のサイト比較

ここで、医療関係のサイトを比較してみましょう。現状、医療関係で、医療機関からシステム利用料等の名目で報酬を得る仕組みで運営しているサイトは以下の通りです。

※「メディモ」が口コミサイト、その他は予約管理サイトです。

上記のうち、「Dentry」は、利用するプランの違いによってシステム利用料が異なります。「EPARKクリニック・病院」「EPARK歯科」その他上記のサイトに関しては、ホームページ上では公開していませんが、予約件数に報酬を連動させている模様です。

後者の場合は業績連動型にも見えますが、報酬の性質が「予約受付」という代行業務の対価であり、収益(料金)ではなく作業件数を基準とすることで、適法性を確保するという方針だと考えられます。病院の収益の多寡とは関係なく、サイトを通じて多くの予約がなされたら受け取る報酬が多くなり、逆に予約件数が少なければ報酬も比例して少なくなる仕組みです。このような仕組みであれば、病院の収益との関係性は薄れるため、業績連動型には当たらなくなりそうです。

医療機関からレビューの対価として報酬を受け取る行為は違法なのか?

上記の医療機関サイトの事例を参考にすると、口コミサイトの場合、たとえば「サイトの口コミを見て予約しました」と言った患者の数に応じて、報酬額を変えるという契約内容にすると、報酬の性質がサイトへの口コミ掲載という具体的業務の対価となり、業績連動型であるとの評価は免れるかもしれません。しかしその場合、業務内容が医療機関から委託を受けての口コミ掲載になるため、口コミが広告に該当しかねないという、上述した医療広告ガイドライン上の問題に直面します。

医療広告ガイドライン上の、広告の定義は以下の通りです。

  • 患者の受診等を誘因する意図があること(誘因性)
  • 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)

業務内容を医療機関が指定すると、上記の事項を満たし、広告と捉えられる可能性が高いです。そもそも医療広告ガイドライン上の広告に該当すると見なされると、金銭支払いの伴うレビュー等の掲載依頼は禁止事項に抵触するため、ガイドライン違反に該当する恐れが高い点は説明した通りです。


つまり、業績連動型と、契約内容で報酬を変える場合、どちらの場合でも法的リスクは高いといえます。

こうした状況を踏まえると、保健所等に一度匿名で問い合わせを行い、問題視されるかどうか確認を取るのがよいでしょう。口コミサイトを仲介としていても、医療機関がレビューの投稿者に、投稿の対価として報酬を支払っていることと本質的に変わりありません。医療法第54条で医療機関が本来の業務以外に収益を挙げることは、限定的な場合を除いて禁止されていることを考慮すると、かなりグレーな行為であることは事実です。サイト運営を継続する上でのリスクを避けたい場合には、適切な機関への事前相談が確実な選択といえるでしょう。

まとめ

美容系口コミサイトの運営において、医療機関からレビューの対価として報酬を受け取る行為の法的リスクを考察してきました。

まずレビューや写真が医療広告ガイドラインの禁止事項に抵触するかという点が争点となり、また病院側としても、レビューの対価として報酬を支払う行為が医療法で規制される行為に該当する可能性もあります。

業績連動型の報酬体系を取っているかという点が重要なポイントですが、判断が非常に難しい事例です。独自に判断するのではなく、事前に専門知識が豊富な弁護士へ相談することをおすすめします。

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