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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

医療機器の広告掲載に対する規制 薬機法とは

医療機器の広告

医療機器には様々な種類があります。中には、私達の身体や健康に大きな影響を与える医療機器もあります。

このような医療機器について、不適切な広告掲載が行われてしまうと、その不適切な広告の内容を信じた人が医療機器を購入し、使用した結果、甚大な健康被害が発生してしまう可能性もあります。

そのため、医療機器の広告掲載については、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「薬機法」といいます。)で規制がされています。

そこで、本記事では、医療機器の広告掲載を考えている事業者の方を対象に、医療機器の広告に関する法規制を紹介します。

薬機法で規定されている医療機器に関する広告規制とは

薬機法では、医療機器の品質、有効性及び安全性の確保並びに医療機器の使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために、医療機器の広告掲載に関し、以下のような規制を行っています。

  • 誇大広告等の禁止(66条)
  • 承認前の医療機器の広告の禁止(68条)

以下では、薬機法による医療機器に関する広告規制に関して、詳しく説明します。

医療機器の法律的な定義とは

「医療機器」の定義については、以下の薬機法第2条第4項で規定されています。

(定義)
この法律で「医療機器」とは、人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。

上記の定義から、「医療機器」といえるためには、下記のいずれかに該当する必要があります。

  • 人や動物の疾病の診断、治療や予防に使用されること
  • 人や動物の身体の構造や機能に影響を及ぼすことが目的となっていること

なお、「医療機器」の定義から、再生医療等製品は除外されていますので、再生医療等製品は、医療機器には該当しません。

医療機器について、私達の生活に身近な具体例としては、体温計、血圧計、コンタクトレンズなどがあげられます。

また、AEDなども医療機器に含まれます

医療機器の広告表現規制

医療機器に関する広告表現規制については、前述のように、誇大広告等並びに承認前の医療機器の広告が対象となっています。

「広告」の該当性

薬機法上、「医療機器」のように、「広告」に関して、定義規定は設けられていません。

ただ、薬機法の規定の中では、「広告」という用語が用いられており、何が、「広告」に該当するかが分からなければ、薬機法の適用の有無を判断することができません。

そのため、「広告」の意義を考える必要があります。

薬機法上の「広告」については、以下の「薬事法における医薬品等の広告の該当性について」(平成10年9月29日医薬監第148号都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省医薬安全局監視指導課長通知)で、要件が公表されています。

具体的には、以下の3要件に該当する場合には、「広告」と判断されることになります。

  • 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること
  • 医療機器の商品名が明らかにされていること
  • 一般人が認知できる状態であること

https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/koukokukisei/dl/index_d.pdf

医療機器の広告規制の対象となる主体について

医療機器の広告規制の対象となる主体について注意すべき点は、主体に限定がなく、何人も規制の対象となるという点です。

そのため、医療機器を販売している事業者でなくとも、医療機器に関する広告を行えば、薬機法の規制を受けることになります。

どのような表現が規制の対象となるのか

前述のように、薬機法上の規制の対象となるのは、誇大広告等の禁止(66条)並びに承認前の医療機器の広告の禁止(68条)です。

そこで、以下では、それぞれの広告規制について、詳しく説明をします。

医療機器に関する誇大広告等の禁止(66条)について

薬機法第66条では、医療機器に関する誇大広告等の禁止について、以下のように規定されています。

(誇大広告等)
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。

医療機器に関する誇大広告等の禁止の内容をまとめると以下のようになります。

  • 医療機器の名称、製造方法、効能・効果、性能に関する虚偽・誇大な記事の広告・記述・流布の禁止
  • 医療機器の効能、効果又は性能について、医師等が保証したと誤解を与えるおそれのある記事の広告・記述・流布の禁止
  • 医療機器に関して堕胎を暗示することやわいせつ文書・図画の使用の禁止

医療機器に関する誇大広告等の典型例は、医療機器に全く効果が無い、または効果がほとんど無いにも関わらず、大きな効果があるように広告を行うようなケースです。他にも、具体的なデータを示し医療機器の効果について根拠があるような広告を行っていたにも関わらず、具体的なデータが改ざんされた虚偽のデータであったケースなどが考えられます。

承認前の医療機器の広告の禁止(68条)について

薬機法第68条では、承認前の医療機器の禁止について、以下のような規定内容になっています。

(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)
第六十八条 何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であって、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。

承認前の医療機器の広告の禁止については、承認(又は認証)前の医療機器について、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告が禁止の対象となります。

承認前の医療機器の広告の禁止については、たとえ、外国で承認済みであっても、日本国内で承認前であれば、広告を行ってしまうと、承認前の医療機器の広告の禁止に違反することになりますので、注意が必要です。

まとめ

以上、医療機器の広告掲載を考えている事業者の方を対象に、医療機器の広告に関する法規制を紹介しました。

医療機器の広告に関しては、広告内容を精査せずに広告を掲載してしまうと薬機法に違反してしまう可能性があります。

そのため、医療機器に関する広告を行おうと考えている事業者の方は注意が必要です。

医療機器の広告規制に違反するかどうかは、医療機器の実際の効果や、掲載を考えている広告の内容等との関係で、判断されることになります。

医療機器に関する広告が、薬機法に違反するかどうかを判断するためには、専門的な判断を行う必要があります。

そのため、医療機器に関する広告の掲載を考えている事業者の方は、専門的知識を有する弁護士に相談をすることをおすすめします。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。近年、ネット広告分野などで薬機法違反は大きな問題となっており、リーガルチェックの必要性はますます増加しています。当事務所は様々な法律の規制を踏まえた上で、現に開始したビジネス、開始しようとしたビジネスに関する法的リスクを分析し、可能な限りビジネスを止めることなく適法化を図ります。下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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