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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

「保険オプション」の提供の問題点を解説~保険業の免許ナシで提供は可能か?~

IT・ベンチャーの企業法務

「保険オプション」の提供の問題点を解説~保険業の免許ナシで提供は可能か?~

結婚や住宅購入、子供の誕生などライフイベントの折に「保険に入ろうかな」と考えたことがある方も多いと思います。さらに経済状況に応じて、当初加入していた保険の内容を変更を考えることもあるでしょう。保険会社としても柔軟なプラン変更に対応したいと考えています。

例えば、利用料の増額を条件に損害賠償請求上限額の増額や免責項目の除外をするといったような保険に類似したオプション(以下、「保険類似オプション」)をつけて商品やサービスを提供する場合、どのような点が法的に問題となりうるのでしょうか。

保険業を行う際には、保険業法に基づき免許を受ける必要があります。本記事では、保険類似オプションの提供を検討されている企業向けに、保険業の免許を受けずに保険類似オプションを提供することは保険業法違反となるのかどうかについて解説します

保険業法とは

保険業法は、

保険業の公共性にかんがみ、保険業を行う者の業務の健全かつ適切な運営及び保険募集の公正を確保することにより、保険契約者等の保護を図り、もって国民生活の安定及び国民経済の健全な発展に資すること

保険業法第1条

を目的として制定されている法律です。

保険業法上、保険業は「人の生存又は死亡に関し一定額の保険金を支払うことを約し保険料を収受する保険、一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補することを約し保険料を収受する保険その他の保険の引受けを行う事業」と定義されています。

保険業法第3条により、保険業は内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ行うことができません

そのため、免許を受けていない会社が保険類似オプションをつけて商品やサービスを提供する場合には、そのオプションが保険に該当するかどうかを検討する必要があります。

保険類似オプションは保険または保証証券業務に該当するか

保険業の免許には、生命保険業免許と損害保険業免許の二種類がありますが、保険類似オプションが該当する可能性があるのは損害保険業免許の方です。

保険類似オプションが「一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補することを約し、保険料を収受する保険」または「保証証券業務」に該当する場合は損害保険業免許を受けなければなりません。

保険類似オプションは保険に該当しない

保険業法上、保険の定義はなされていないため、

経済的特性に則して保険業法の立法趣旨と社会通念によって決せざるを得ない

関西保険業法研究会『保険業法逐条解説(I)』(以下、「逐条解説」)196頁

ものとされています。この観点に基づき、保険類似オプションを検討すると、保険類似オプションは、

同種のリスクを多数プールしてリスクの分散を図る仕組みないし制度

逐条解説196頁

とはいえません。

損害の際、企業から利用者に賠償金が支払われることになりますが、その原資は、企業が利用者から得た利用料をプールしたものではなく、保険会社が企業へ支払う保険金であるためです。

また、

保険契約者が保険者との保険契約を通じて保険料を対価に保険者にリスクを移転する

逐条解説196頁

という性質のものでもありません。

利用者が企業に払う利用料は保険料という名目ではなく、締結する契約の名称も保険契約ではありません。また、上述の通り、損害の際の賠償金は、保険会社から企業に支払われる保険金から出るため、企業にリスクが移転しているとはいえません。以上の検討から、保険類似オプションは保険には該当しないものと考えられます

保険類似オプションは保証証券業務に該当しない

保証証券業務とは、保険業法第3条第6項により、

契約上の債務又は法令上の義務の履行を保証することを約し、その対価を受ける業務のうち、保険数理に基づき、当該対価を決定し、準備金を積み立て、再保険による危険の分散を行うことその他保険に固有の方法を用いて行うもの

と定義されています。

保険類似オプションは、「契約上の債務又は法令上の義務の履行を保証することを約し、その対価を受ける業務」にはあたるといえますが、「保険数理に基づき、当該対価を決定し、準備金を積み立て、再保険による危険の分散を行うことその他保険に固有の方法を用いて行うもの」とはいえないため、保証証券業務には該当しないと考えられます。

「保険数理」とは、保険業務に関する数学的な計算や理論を指し、統計学等を用いてリスクアセスメントをすることです。

保険類似オプションの場合、年間利用料を単純に数パーセント増額することにより、損害賠償請求上限額の増額及び免責項目の除外をするといったものであり、「保険数理に基づき、当該対価を決定」したものとはいえません。

また、保険類似オプションは、自社が保険会社でなければ再保険には該当しないため、「再保険による危険の分散を行うことその他保険に固有の方法を用いて行うもの」ともいえません。

以上より、保険類似オプションは保証証券業務にはあたらないといえます

保険募集人、保険代理店となる必要はあるか

保険類似オプションの提供は、保険会社の保険商品を媒介もしくは取次となって利用者に販売することにあたらないため、保険募集人の届出や保険代理店の登録をする必要もありません。

まとめ

以上で見てきたように、保険類似オプションは保険には該当せず、保険業の免許を受けることなく保険類似オプションを提供しても保険業法違反となる可能性は低いと考えられます。

また、保険募集人の届出や保険代理店の登録をする必要もありません。ただし、オプションの内容や販売形態によっては保険に該当するとみなされる可能性もありますので、ご心配な場合は弁護士へ相談しましょう。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。保険契約の締結にあたっては契約書を作成することが一般的です。

当事務所では、東証プライム上場企業からベンチャー企業まで、様々な案件に対する契約書の作成・レビューを行っております。もし契約書についてお困りであれば、下記記事をご参照ください。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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