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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

郵便物受け取りなどの非対面取引における犯罪収益移転防止法の規制とは?

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郵便物受け取りなどの非対面取引における犯罪収益移転防止法の規制とは?

企業がビジネスを進める上でコンプライアンスに留意するのは当たり前のことになりました。中でも「犯罪収益移転防止法」に注目が集まっています。犯罪収益移転防止法は文字通り、「犯罪」で得た「収益」を「移転」させることを「防止」することを目的としています。同法では、マネーロンダリングなどに利用されるリスクの高い一定の取引について、事業者に取引相手の本人確認を義務付けています。例えば、金融機関で口座を開設する際に本人確認書類の提示が求められるのも犯罪収益移転防止法に基づく対応です。

多くの人にはこの法律は、無関係に思えるかもしれませんが、必ずしもそうとも限りません。直接犯罪行為に加担していなくても、口座を売買することなどで知らないうちにマネーロンダリングに加担してしまうことがあるからです。このため、預貯金通帳やキャッシュカードなどの譲渡・譲受、交付、提供等の行為が禁止されています(犯罪収益移転防止法第28条)。

マネーロンダリングが国際化・巧妙化している中、金融機関の関係者だけではなく、一般的なビジネスパーソンも犯罪収益移転防止法の規制内容について十分に理解しておく必要があります。

金融取引以外にも、郵便物受取サービス業なども、犯罪収益移転防止法の適用対象となります。私書箱設置業のほか、レンタルオフィスやバーチャルオフィスが郵便物受取サービス業に該当することがあります。

また、最近ではオンラインで取引が完結することが増えています。このような非対面取引において、どのように犯罪収益移転防止法に基づく本人確認を行うかが問題となります。 

そこで、郵便物受取サービスなどを提供する事業者向けに、犯罪収益移転防止法上の規制と非対面取引における本人確認について解説します。

犯罪収益移転防止法と郵便物受取サービス

犯罪収益移転防止法と郵便物受取サービス

犯罪収益移転防止法(犯収法)は、マネーロンダリングやテロ資金供与防止に対する国際的要請に基づき、同法の定義する「特定事業者」に対して取引時の本人確認義務等を課しています。

犯罪収益移転防止法上の「特定事業者」の一つとして、郵便物受取サービス業が定められています。具体的には、以下の要件を満たすサービスを提供している事業者をいいます。

  • 顧客が自己の居所または事務所の所在地を郵便物の受取場所として利用することを許諾している
  • 顧客に代わって、顧客宛ての郵便物を受け取っている
  • 受け取った郵便物を顧客に引き渡している

例えば、レンタルオフィスやバーチャルオフィス事業において、契約者宛に届いた郵便物を本人に代わって受け取るサービスを提供しているケースでは、郵便物受取サービス業として犯罪収益移転防止法の適用対象となります。

このほか、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの店舗内にレンタルボックスを設置して、買い物客が自分宛てに届いた宅配物を受け取ることができるサービスがあります。このようなサービスもまた、郵便物受取サービス業にあたることがあります。

このように、犯罪収益移転防止法の適用対象はかなり広いです。したがって、自社のサービスが犯罪収益移転防止法の適用対象かどうかを適切に判断することが重要になります。

犯罪収益移転防止法における本人確認とは

犯罪収益移転防止法の適用対象となるビジネスをしている特定事業者は、取引時に本人確認を行う義務を課されています。特定事業者が顧客と取引する際の確認事項は以下の通りです。

  • 本人特定事項(名称、本店または主たる営業所の所在地)
  • 代表者等の本人特定事項(氏名、住所、生年月日)
  • 代表者等の取引権限
  • 取引目的
  • 事業内容(自然人の場合は、職業)
  • 実質的支配者がある場合は、実質的支配者の本人特定事項
  • ハイリスク取引に該当する場合は、資産及び収入

ここでいう「代表者等」とは、法人の代表者、取引担当者、代理人等が該当します。

また、「ハイリスク取引」とは、次の取引をいいます。

  • 過去の契約の際に確認した顧客等
  • 代表者等に成りすましている疑いのある取引
  • 過去の契約時の確認の際に偽っていた疑いのある顧客等との取引
  • イラン・北朝鮮に居住、所在する者との取引
  • 外国PEPs(外国要人、その家族、当該要人又はその家族が実質的に支配している法人)との取引

本人確認が軽減されるケース

取引相手である顧客が「国等」に該当する場合には、本人確認義務が軽減されます。「国等」にあたるのは以下のとおりです(犯罪収益移転防止法第4条第5項)。

  • 地方公共団体
  • 人格のない社団または団体
  • 上場会社等

上場会社などは「国」という法令上の文言からすると含まれないように思えるため注意が必要です。 上記の法人又は団体と取引をする際には、以下の本人確認を行えば足ります。

顧客 確認事項
・代表者等の本人特定事項
・取引権限
地方公共団体
上場会社等
人格のない社団又は財団 ・代表者等の本人特定事項
・取引を行う目的
・事業内容

非対面取引における確認方法

オンラインで契約が完結するような非対面取引において、犯罪収益移転防止法上の本人確認をどのように行うかという問題があります。

いくつかの方法がありますが、以下では特に、IT企業におすすめのオンラインで完結する確認方法をご紹介します。

法人の本人特定事項の確認方法

一般の顧客との取引時における確認事項には、法人の本人特定事項があります。法人の本人特定事項の確認をオンラインで完結する方法として、電子署名法に基づく電子証明書を用いる方法があります。

具体的には、顧客である法人の代表者等から、電子証明書と、その電子証明書により確認される電子署名がなされた特定取引等に関する情報の送信を受ける方法があります。商業登記に基づく電子認証制度の電子証明書は、登記所において登記官により作成されます。

参考:法務省|電子証明書取得のご案内

代表者等の本人特定事項の確認方法

顧客との取引時における確認事項の一つである、代表者等の本人特定事項をオンラインで確認するためには、次の2通りの手続きがあります。

  • 電子署名法に基づく認定認証事業者発行の電子証明書を用いる方法
  • アプリ受信型(顔画像撮影+本人確認書類撮影画像の送信)

一般的には、顧客が個人である場合には後者のアプリ受信型の確認方法が利用しやすいでしょう。具体的には、次のような手順で確認を行います。

  1. 特定事業者が提供するソフトウェアを顧客に使用させる
  2. 自己の容貌の写真と写真付き本人確認書類の写真の両方を顧客に撮影させる
  3. これらの画像情報を、自社又は委託先に直ちに送信させる
  4. 自社又は委託先において、本人確認書類が真正なものであること、受信する写真が過去に撮影された容貌や本人確認書類の写真を撮影したものでないことの確認をする

注意すべきは、アプリ受信型の確認方法においては特定事業者が提供するソフトウェアを使用して写真を送信する必要がある点です。つまり、顧客の撮影した写真を電子メール等で送信するという方法は許容されていません。

また、本人確認書類が真正なものであることの確認では、本人確認書類の画像等から検知できる外形等に不自然な点がないかを確認する必要があります。

受信する写真が過去に撮影された容貌や本人確認書類の写真を撮影したものでないことの確認は、例えば、本人特定事項の確認時にランダムな数字等を顧客等に示し、一定時間内に顧客等に当該数字等を記した紙と一緒に容貌や本人確認書類を撮影させて直ちに送信を受ける方法などが考えられます。

なお、オンラインで本人確認書類を受領し保管する場合には、情報漏洩に十分な注意が必要です。実際に情報漏洩が起きてしまったケースと対応に関して、以下の記事で詳細に解説しています。

関連記事:カプコンの情報漏洩に学ぶ危機管理と弁護士の役割

代表者等の取引権限

従来は、代表者等の取引権限の確認として、当該代表者等が、当該顧客を代表する権限を有する役員として登記されていることを登記事項証明書によって確認する方法が一般的でした。

もっとも、最近では企業間取引でもオンラインで契約を締結することが増えてきました。書面のやり取りを発生させずに代表者等の取引権限を確認する方法として、顧客の本店等または営業所に電話、FAX、電子メール等によって代表者等が顧客のために、取引に関しての任にあたっていることを確認する方法があります。

取引目的

取引目的に関しては、電話や電子メール等で聴取することで確認できます。

事業内容

事業内容については、電話や電子メール等での確認方法は認められていません。通常は顧客の登記事項証明書を取り寄せることで事業内容を確認します。

実質的支配者の本人特定事項

実質的支配者とは、顧客である法人を実質的に支配している自然人をいいます。例えば、顧客が株式会社である場合には、議決権総数の25%超を保有する自然人は、原則として実質的支配者にあたります。

実質的支配者がいる場合には、実質的支配者の本人特定事項である氏名、住所、生年月日を代表者等から申告を受ける方法で確認します。

なお、ハイリスク取引に該当しない限りは、実質的支配者の本人特定事項を実質的支配者自身の本人確認書類を用いて確認する必要はなく、代表者等からの申告のみで足ります。

まとめ:非対面取引における犯罪収益移転防止法の規制

犯罪収益移転防止法は法改正が頻繁に行われており、規制対象も増加しています。犯罪収益移転防止法は犯罪の抑止を目的としていることから警察庁が主管となっており、非常に厳密な運用が求められています。

他方で、犯罪収益移転防止法の本人確認義務は、場合分けが複雑であり、正確に理解することが難しい法律でもあります。法令の解釈を誤って必要な本人確認ができていなければ、会社にとって大きな不祥事となるリスクとなります。

そこで、犯罪収益移転防止法に基づく本人確認が必要になる場合には、どのようなシステムを構築する必要があるのか、IT分野に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。近年、犯罪収益移転防止法は注目を集めており、リーガルチェックの必要性はますます増加しています。当事務所では犯罪収益移転防止法に関するソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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