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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

食品分野におけるステマ等の広告宣伝活動に関する法規制

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食品分野におけるステマ等の広告宣伝活動に関する法規制

近年、インターネットが急速に発展し、人々に普及しています。

それに伴い、Twitter、Facebook、Instagram及びLINEなどのSNSの利用が増加することとなりました。

SNSの利用者の増加に伴い、SNSが広告宣伝活動の有力な媒体となってきています。そのため、インフルエンサーなどがSNSを利用し、広告宣伝活動を行うという場面が増えてきました。

さらに、動画配信サイトも急速に普及しました。特に、YouTubeに動画を投稿する人やYouTubeで動画を視聴する人の数も増加しています。

そのため、YouTuberなどが商品紹介などを行う動画を投稿するなど、YouTubeが広告宣伝活動の媒体として利用される場面を増えてきました。

このように、SNSやYouTubeでの広告宣伝活動が増えるにつれ、問題視されるようになった広告宣伝活動として、「ステルスマーケティング(以下「ステマ」といいます。)」があります。

ステマは、表面上から広告宣伝活動か否かを判断することが難しいですが、広告宣伝活動の一種であることから、広告宣伝活動に関する法規制を受けることとなります。

一概にステマといっても、広告宣伝活動の内容が多岐に渡ることから、広告宣伝活動の内容に着目し、どのような法規制を受けるかを考える必要があります。

そこで、本記事では、本記事では、食品分野におけるステマに関する法規制についての解説をします。

ステマはどのような広告宣伝活動のことをいうのか

近年、ステマという言葉が日常的に使われるようになり、皆さんも一度はステマという言葉を聞いたことがあると思います。

ただ、ステマという言葉がどのような意味を指しているのかを、正確に理解している人はそこまで多く無いように思います。

ステマとは、ステルスマーケティング(Stealth Marketing)の略で、消費者に宣伝だと気付かれないように宣伝をすることをいいます。

「stealth」という英単語には、隠密、内密、隠れるなどの意味があります。

ステマは、広告宣伝活動であるということを消費者に明らかにせずに、広告宣伝活動を行うことから、ステルスマーケティングと言われます。

また、「stealth」という英単語とほぼ同義の英単語に、「undercover」という英単語があります。

この「undercover」という英単語が用いられ、ステルスマーケティングではなく、アンダーカバーマーケティング(Undercover Marketing)と呼ばれることもあります。

実は、ステマという概念は、大きく分けると以下の2つの概念で用いることができます。

  1. 事業者自身又は事業者から経済的対価を受けた者が口コミサイトに口コミを投稿しているにもかかわらず、純粋な第三者(消費者等)が口コミを投稿しているかのように誤認させる「なりすまし型」
  2. 事業者が第三者(インフルエンサーやYouTuberなど)に経済的利益を提供して、商品やアプリなどの広告や宣伝などを行わせているのに、その事実を表示しない「利益提供秘匿型」

インフルエンサーやYouTuberが行うステマ等の広告宣伝活動との関係では、主に上記の2.の概念が問題となります。

そのため、以下では 2. の概念でのステマに着目し、説明を行います。

食品分野における広告宣伝活動はどのようなものがあるか

食品分野における広告宣伝活動とは、具体的にはどのような広告宣伝活動を指すのでしょうか。

食品分野における広告宣伝活動というと、インフルエンサーやYouTuberが、特定の食品を単純においしいという理由で紹介するようなケースを想像する人が多いと思います。

例えば、○○株式会社から発売されている○○という商品名のカップラーメンがすごくおいしいので紹介しますというようなケースです。

ただ、食品分野における広告宣伝活動の範囲は意外に広く、味に着目した食品の紹介だけではなく、健康に着目したいわゆる健康食品に関する広告宣伝活動なども含まれます。

ステマに関する一般的な法規制について

ステマに関する一般的な法規制としては考えられる法律は、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」といいます。)です。

景品表示法とはどのような法律か

景品表示法とは、商品やサービスの品質、内容、価格等を偽って表示を行うことを厳しく規制するとともに、過大な景品類の提供を防ぐために景品類の最高額を制限することなどにより、消費者がより良い商品やサービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守ることを目的とした法律です。

景品表示法については、優良誤認表示(景品表示法第5条第1号)や有利誤認表示(景品表示法第5条第2号)との関係が問題となります。

景品表示法を含むステマに関する一般的な法規制の詳しい内容につきましては、以下の記事で説明をしていますので、以下の記事をご参照ください。

食品分野におけるステマ等の広告宣伝活動特有の法規制について

食品分野におけるステマ等の広告宣伝活動特有の法規制としては、主に健康食品に関して、健康増進法との関係が問題となります。

そこで、以下では、健康食品におけるステマ等の広告宣伝活動に関係して、健康増進法による法規制について説明をします。

健康増進法の目的

そもそも、健康増進法という法律は、どのような目的のために制定されたのでしょうか。

健康増進法の目的については、健康増進法第1条で規定されています。

(目的)

第一条 この法律は、我が国における急速な高齢化の進展及び疾病構造の変化に伴い、国民の健康の増進の重要性が著しく増大していることにかんがみ、国民の健康の増進の総合的な推進に関し基本的な事項を定めるとともに、国民の栄養の改善その他の国民の健康の増進を図るための措置を講じ、もって国民保健の向上を図ることを目的とする。

健康増進法第1条

健康増進法は、国民の健康の増進の総合的な推進に関し基本的な事項を定めるとともに、国民の栄養の改善その他の国民の健康の増進を図るための措置を講じ、もって国民保健の向上を図ることを目的にしています。

健康増進法は、簡単にいえば、国民の健康を増進することを目的とした法律になります。

誇大表示の禁止

誇大表示の禁止の内容

健康増進法では、第65条で誇大表示を行うことを禁止しています。

(誇大表示の禁止)

第六十五条 何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項(次条第三項において「健康保持増進効果等」という。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。
2 内閣総理大臣は、前項の内閣府令を制定し、又は改廃しようとするときは、あらかじめ、厚生労働大臣に協議しなければならない。

健康増進法第65条

例えば、インフルエンサーやYouTuberが、食品の健康の保持増進の効果等について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をした場合には、健康増進法第65条に違反することとなります。

健康増進法第65条に違反すると考えられるケースとしては、実際にはそのような効果がないにも関わらず、「この食品を食べるとコロナウイルスにかからなくなり、コロナウイルスの予防になります」などの広告宣伝活動を行うというケースが考えられます。

誇大表示の禁止の規制の対象となる者

上記の健康増進法第65条第1項では、「何人も」という形で、規制の対象が限定されていません。

そのため、「食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をする」全ての者が規制対象に含まれます。

したがって、ステマを依頼した企業だけでなく、ステマ行為に関与したインフルエンサーやYouTuberも健康増進法の規制対象に含まれるものと考えられます。

これは、商品・サービスを供給する事業者を規制対象とする景品表示法と異なる部分ですので注意が必要です。

健康増進法に違反した場合の措置について

健康増進法第65条第1項に違反し、誇大表示を行った者に対しては、健康増進法第66条第1項において、以下のように規定されています。

(勧告等)

第六十六条 内閣総理大臣又は都道府県知事は、前条第一項の規定に違反して表示をした者がある場合において、国民の健康の保持増進及び国民に対する正確な情報の伝達に重大な影響を与えるおそれがあると認めるときは、その者に対し、当該表示に関し必要な措置をとるべき旨の勧告をすることができる。

健康増進法第66条第1項

また、健康増進法第66条第1項で規定される勧告にしたがわない者に対しては、健康増進法第66条第2項において、以下のように規定されています。

2 内閣総理大臣又は都道府県知事は、前項に規定する勧告を受けた者が、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかったときは、その者に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。


健康増進法第66条第2項

そして、健康増進法第66条第2項で規定される勧告に係る措置をとるべき命令にしたがわない者に対しては、健康増進法第71条において、以下のように規定されています。

第七十一条 第六十六条第二項の規定に基づく命令に違反した者は、六月以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

健康増進法第71条

つまり、健康増進法第65条1項に違反した場合には、必要な措置をとるべき旨の勧告がなされ、勧告に任意に従わない場合には勧告に係る措置をとるべき命令がなされ、命令に従わない場合には、6か月以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されるという流れになります。

まとめ

以上、食品分野におけるステマに関する法規制について説明をしました。

食品分野におけるステマについては、景品表示法だけでなく、健康増進法に抵触する可能性があります。そのため、ステマを依頼する企業及びステマ等の広告宣伝活動を行うインフルエンサーやYouTuberは、景品表示法及び健康増進法に違反しないように注意をする必要があります。

また、法律に違反した広告宣伝活動により、消費者が食品を購入し、それを食べた結果、重大な損害を被ってしまう可能性もあります。

インフルエンサーやYouTuberにステマ等の広告宣伝活動を依頼する企業はもちろん、ステマ等の広告宣伝活動を行うインフルエンサーやYouTuberも食品分野におけるステマ等の広告宣伝活動に関する正確な知識を持っておくことが重要となります。

食品分野におけるステマ等の広告宣伝活動に関する法規制ついては、法律的な知識や専門的な判断が要求されますので、詳しい内容について、法律事務所に相談をするようにしてください。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証一部上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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