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IT・ベンチャーの企業法務

官公庁が公表した文書に著作権はあるのか?利用上の注意点を解説

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官公庁が公表した文書に著作権はあるのか?利用上の注意点を解説

官公庁とは、国と地方公共団体の役所を指し、中央省庁や裁判所、国会などを含みます。こうした官公庁では膨大な量の文書が作成され、公表されていますが、この文書の作成は公務であり、作成しているのは公務員であり、作成の財源は税金です。では、納税者である私たちは、このような文書を自由に利用する権利があるのでしょうか。

ここでは官公庁が公表した文書等の利用と著作権の関係を解説します。

官公庁の著作物

作成者が誰であるにせよ、著作物には著作権が発生するというのが大原則です。

しかし、官公庁が作成する文書の最大の目的のひとつは、国民に現状等を広く知らせ、文書にまとめられた資料を国民生活において活用させることです。

例えば、「国民生活基礎調査」は、厚生労働省が実施する調査で、保健、医療、福祉、年金、所得など国民生活の基礎的な事項に関して3年ごとに大規模調査を行います。こうした調査の結果を厚生労働省に専有させておくのは不合理であり、適切とはいえません。

著作権法には「目的」として、

この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

著作権法第1条(目的)

とありますが、著作権法第13条では、官公庁が作成する一定の文書は著作権の目的にならないと規定されています。

次の各号のいずれかに該当する著作物は、この章の規定による権利の目的となることができない。

1 憲法その他の法令

2 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人(略)又は地方独立行政法人(略)が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの

3 裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの

4 前3号に掲げるものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの

著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)

と列挙されています。

この記事でも、上で、著作権法第1条と第13条を引用しましたし、当サイトの様々な記事では、多くの判決文や省庁の調査資料等を引用し、記事の解説に利用しています。著作権の対象にはならないので、著作権法違反を問われたり、損害賠償を請求されたりすることはありません。

著作物を許諾なく転載できる場合

著作権法第13条で「権利の目的とならない著作物」とされたもの以外の官公庁が公表した文書は、著作物として著作権法で守られますが、著作物の複製や、改変、掲載は、状況や⽬的等によって、許諾なく⾏なっても著作権侵害にならない場合があります。

「著作権が制限される場合」は、著作権法第30条~第47条の8で細かく規定されています。

「著作権が制限される場合」を定めているのは、著作物等を利用するときに、いかなる場合でも著作物等を利用しようとするたびごとに著作権者等の許諾を受け、必要であれば使用料を支払わなければならないとすると、文化的所産である著作物等の公正で円滑な利用が妨げられ、文化の発展に寄与することを目的とする著作権制度の趣旨に反することになりかねないためです。この例としては、

  • 私的使⽤のための複製(第30条)
  • 図書館等における複製等 (第31条)
  • 教科⽤図書等への掲載 (第33条)
  • 試験問題としての複製等(第36条)
  • 営利を目的としない上演(第38条)
  • 時事問題に関する論説の転載(第39条)
  • 公開の美術の著作物等の利用(第46条)

などがありますが、「公表された著作物の引⽤ (第32条1項)」において、正当な範囲内での著作物の利用も、「引用」として認められています。

さらに、適法な引用でなかったとしても、著作権法では第32条2項において、一定の官公庁の著作物については、定められたルールの下での転載を認めており、官公庁が作成する著作物の円滑利用が図られています。

国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。

著作権法第32条2項

転載可能な著作物とは、政府が発行する白書(エネルギー白書、原子力白書、防災白書など)、各種報告書(年次報告書、意識調査報告書など)などがこれにあたります。「一般に周知させることを目的として作成」したものであることを要するので、内部資料として作成された報告書はこれにあたりません。また、有識者会議の有識者が作成・提出した資料は、その有識者の著作物です。

また、「説明の材料として」転載することができるとあるので、官公庁の著作物であっても、まるごと転載するような場合はこれに該当せず、許されないこととなります。

さらに、転載を禁止する表示(禁転載表示)がある場合には、著作権者に無断で転載することは許されません。もちろん、禁転載表示があっても、適法な要件を充たすのであれば、引用することは可能です。

なお、転載する際には、著作権法第48条により、「著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。」とされています。

官公庁Webサイトに掲載された情報

官公庁Webサイトに掲載された情報は、自由に使ってもいいのでしょうか。

官公庁Webサイト掲載物のうち、著作権法第13条「権利の目的とならない著作物」に該当するものは自由に使えるですが、それ以外のものはどうなるのでしょうか。

各官公庁のWebサイトには、著作物の取り扱いについて概ね同じような記載があり、ひな形通りになっているようです。例えば総務省の「当省ホームページについて」の「著作権について」には、「当ホームページのコンテンツの利用について」として、

当ホームページで公開している情報(以下「コンテンツ」といいます。)は、どなたでも以下の1~7に従って、複製、公衆送信、翻訳・変形等の翻案等、自由に利用できます。商用利用も可能です。また、数値データ、簡単な表・グラフ等は著作権の対象ではありませんので、これらについては本利用ルールの適用はなく、自由に利用できます。

とあり、1~7とは、

1の「出典の記載について」は、コンテンツを利用する際に出典を記載するということ。

2の「第三者の権利を侵害しないようにしてください」は、コンテンツの中には、第三者が著作権その他の権利を有している場合があるということ。

3の「個別法令による利用の制約があるコンテンツについて」は、「政党助成法に基づく政党交付金使途等報告書の利用に当たっての制約について」が例としてあげられています。

4の「本利用ルールが適用されないコンテンツについて」は、以下のコンテンツについては、本利用ルールの適用外です」として、「組織や特定の事業を表すシンボルマーク、ロゴ、キャラクターデザイン」があげられています。

5の「準拠法と合意管轄について」と6の「免責について」は、通常の内容です。

7の「その他」には、「本利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません」と、あります。

どの官公庁のホームページでも、ほぼ同じ内容ですが、公衆送信も自由にできるとあるので、WEB掲載も許されますが、官公庁Webサイトに掲載されているものであっても、全てにつき、官公庁が著作権を持っているわけではないので、注意が必要です。

まとめ

官公庁は、作成した文書の多くにつき、著作権そのものを放棄しているわけではありません。だから、使い方には一定のルールがあります。これらに留意しつつ、様々な白書や人口動態統計、統計、各種の報告書、法令や判決文などを活用することが大切です。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。近年、著作権をめぐる知的財産権は注目を集めており、リーガルチェックの必要性はますます増加しています。当事務所では知的財産に関するソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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