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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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eスポーツの賞金は賭博罪に該当する?法律を守って賞金提供する方法

昨今、急激に脚光を浴びるようになったeスポーツ。

国内でも徐々に注目度合いはましており、2020年の国内eスポーツ市場は前年比109%の66.8億円に、2024年には180億円を超える規模に成長すると予測されています。(参照:「ファミ通」)

周辺産業への波及効果も考えるとeスポーツ大会はもはや一部のマニアのための競技にとどまらず、社会的に重要な意義を持ち始めています。したがって、大会運営者も関連法令については十分に配慮しなければなりません。

そこで、今回は賞金を分配するeスポーツ大会と「賭博罪」「賭博場開帳等図利罪」との関係や懸念点について詳しく解説します。

eスポーツ大会の参加者と賭博罪の関係

eスポーツの賞金

「賭博罪」はeスポーツ大会の参加者が問われる可能性のある犯罪です。

刑法第185条(賭博)
賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。

「賭博」とは、偶然の勝敗により財物や財産上の利益の得喪を争う行為とされています。

賭博罪の成立要件は以下の通りです。

  • 偶然により勝敗が決定する
  • 財物や財産上の利益の得喪を争う

また、ただし書において、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない」という例外規定もあります。

それぞれの要件の内容を以下で解説します。

eスポーツ大会の勝敗は「偶然」で決まるか?

eスポーツの勝敗は、プレイヤーの技量に大きく左右されます。
もっとも、勝敗の決定が参加者の能力に大きく影響される場合であっても、偶然の要素が少しでもあり結果を自由にコントロールできなければ偶然性があると言えるので、eスポーツ大会は将棋、麻雀、囲碁などと同様に「偶然により勝敗が決定する」と言えます。

eスポーツ大会は「財物や財産上の利益の得喪を争う」か?

eスポーツ大会の仕組みにはさまざまなものがあるため、当該大会の開催方法によって、参加者の行為が「賭博」に該当するかどうかの判断が分かれます

「賭博」行為だと判断された場合、参加者は賭博罪に問われる可能性が高くなります。いくつかのパターンをみてみましょう。

参加料がなく財物を賭けていない

この場合、参加者は試合に負けても自身の「財物や財産上の利益」を失うことはありません。したがって、このような開催方法は「賭博」には該当しません。 

徴収した参加料を賞金の原資としていない

これは、参加者から参加料を徴収しても、賞金の原資とはせず、スポンサーなどが直接賞金を支払う仕組みです。

このような開催方法をとる場合、敗者のお金が勝者に渡ることはありません。したがって、「賭博」に該当する可能性は低いと考えられます。

徴収した参加料を賞金の原資としている

この場合、実質的には参加料を原資とした賞金を賭けることになるので、勝者が利益を得て敗者が利益を失うこととなります。したがって、「賭博」に該当する可能性があります。

eスポーツ大会の賞金は「一時の娯楽に供する物」に該当するのか?

刑法185条はただし書で、「一時の娯楽に供するものを賭けたにとどまるときは、この限りでない」として、一定の場合に行為の違法性が否定されることを規定しています。

「一時の娯楽に供するもの」とは、経済的価値が低く、単なる娯楽のためにその場で費消できるものをいい、金銭はその性質上含まれない、とされてます。

具体的には、少量・少額の食べ物や飲み物などを指すとされています。

eスポーツ大会の賞金は、大会ごとに異なりますが、多額の金銭であることが多く、「一時の娯楽に供するもの」にあたらないことは明らかです。

したがって、賭博罪の構成要件に該当する場合、その行為の違法性が否定される可能性は低いと言えます。

eスポーツ大会の運営者と賭博開張等図利罪

賭博との関係

ここからは大会運営者が知っておかなければならない「賭博開張等図利罪」について説明します。

刑法第186条(常習賭博及び賭博場開張等図利)
1. 常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。
2. 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。

「賭博開張等図利罪」は、賭博場を開設した主催者に成立する犯罪です

賭博開帳等図利罪は、以下のいずれかに該当する行為をした場合に成立します。
①賭博場を開いて利益を図った(賭博開張図利罪)
②博徒を結合して利益を図った(博徒結合図利罪)

賭博場とは、賭博をさせる場所のことをいいます。

もっとも、賭博専用の場所である必要はなく、インターネットなどを利用した電子空間において賭博を主催し利益を得た場合も罪に問われる可能性があるので注意が必要です。

また、賭博開帳等図利罪は賭博場を開設した時点で成立するため、実際に賭博が行われていない状態でも犯罪が成立する可能性は大いにあります。

さらに、主催者に賭博場の開帳によって財産的利益をある目的があることが必要とされています。
このとき、実際に利益を得ているかどうかは犯罪の成立においては問題となりません。

適法なeスポーツ大会の開催方法

プロゲーマー

では、eスポーツ大会を適法に開催するためには方法にはどうすればいいのでしょうか。

参加料は徴収しない

この場合には、参加者は試合に負けても自身の「財物や財産上の利益」は何ら失うことはありませんから「賭博」には該当しません。これが最も安全な方法と言えます。

参加料と賞金の原資を区別して運用する

しかし、eスポーツ大会の開催にはそれなりの費用が必要となるので、参加料を徴収するケースも考えられます。

その場合には、参加料と賞金の原資を明確に区別した上で、賞金以外の大会の運営費などに充当するのであれば「賭博」と判断される可能性は低いと考えられます。

賞金がスポンサーなどから直接支払われる

賞金がスポンサーなどの第三者から直接支払われるのであれば、参加料を徴収しても賞金の原資として使用されていないことが明らかなので「賭博」と判断される可能性は低いと考えられます。

JeSU公認プロライセンス制度とは

eスポーツ会場

eスポーツ大会と景品表示法の関係

ここまでは、eスポーツ大会と賭博罪(刑法)の関係をみてきましたが、eスポーツ大会には、他にも様々な法律が関係してきます。ここでは、「景品表示法」との関係について解説していきます。

景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)は、消費者の利益を保護することを目的とした法律で、消費者が適切な商品やサービスを選べるよう、過度な景品類の提供を防ぐために景品類に対して上限を設定しています。

eスポーツ大会の賞金は、この「景品類」に該当する可能性があり、景品表示法の対象となるおそれがあります。

どのような賞金制大会が景品表示法の規制を受けるのか

これは、「賞金制大会の主催者」および「競技タイトルの販売、課金方法」によって判断されます。

eスポーツ大会は、当該ゲームソフトを販売しているゲーム会社が主催しているのか、それ以外の第三者が主催しているのかで区別されると考えられており、景品表示法の適用を受けるのは前者です。

競技タイトルが有料で販売されている場合や「課金額がユーザーの強さに影響するタイトル」の場合、景品表示法の規制を受けます。

逆に、「課金額がユーザーの強さに影響しない無料タイトル」の場合は、たとえゲーム会社が賞金を提供したとしても規制を受けないと考えられます。

以上をまとめると、景品表示法の規制を受けるのは、「ゲーム会社が主催し、有料販売タイトルや課金額がユーザーの強さに影響するタイトルを使用して開かれる大会」ということになります。

「仕事の報酬」という考え方

景品表示法と高額賞金の関係から、日本のeスポーツの発展に対する懸念が示されるなか、それを払しょくするために、「仕事の報酬」という考え方が登場しました。

これは、賞金が「大会への出演」という「仕事に対する報酬」として提供される場合には、景品表示法の規制を受けないという考えです。

しかし、当時の日本において、『どういった場合にeスポーツの大会における賞金が「仕事の報酬等」として認められるのか』についての見解はまとまっておらず、判断基準も存在していませんでした。

そのため、賞金制大会を開催する場合は、各社の個別判断により、各社がリスクを負いながら開催せざるを得ないという状況が続いていました。

JeSU公認プロライセンス制度の誕生

そこで、JeSU(一般社団法人日本eスポーツ連合)は、賞金制大会を法的に問題がない形で実施することを目的とし、eスポーツにおける興行性や競技性を担保する統一的な基準としての「JeSUプロライセンス制度」を発足させました。

eスポーツプレイヤーは、JeSU公認プロライセンスを保持することで、eスポーツのプロ選手であることが明確となり、JeSU認定公認大会への出場権やJeSU認定公認大会での賞金受領権を取得します。

選手の活動が仕事であることを、プロライセンスという仕組みを通じて明確にすることで、「選手に確実に賞金を授与できる大会」の実現が可能となりました。

もっとも、JeSUのプロライセンスは高額賞金の必須条件というわけではありません。
実際の大会において、JeSUのプロライセンスを持たない選手が優勝し、賞金を獲得した事例も存在します。

その後、消費者庁は、賞金の提供先をプロライセンス選手に限定する大会」に加え、「一定の方法で参加者を限定した上で大会等の成績に応じて賞金を提供する大会」であればプロライセンスを所持していない参加者に対しても、高額賞金の授与は「仕事の報酬等」の提供であると認められるため、景品表示法の規制を受けないとの見解を示しました。

このような経緯から、高額賞金に関する景品表示法の問題は解決されました。

日本における賞金制大会はさらに拡大し、2022年現在は、日本でも高額賞金をeスポーツに出すことは違法ではなく、賞金付きの大会もたくさん開催されるようになってきています。

まとめ:eスポーツでは法律に準拠した賞金を提供しよう

今回は、賞金を配分するeスポーツ大会における法的問題点を解説しました。

eスポーツの大会を開催するにあたっては、開催方法や賞金面において様々な配慮が必要となります。

また、eスポーツ大会には、今回紹介した刑法や景品表示法以外にも様々な関係法令があるため、大会運営者は、これらの問題点について独自に判断するのではなく、専門的な知識や経験が豊富な弁護士に事前に相談することをおすすめします

「eスポーツ大会と景品表示法の関係」について詳しく知りたい方は以下に詳述していますので本記事と合わせてご覧ください。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。

近年、企業がスポンサーに入ったeスポーツ大会も多く開催されるようになりました。ですが、まだ日本では法整備が整っていないこともあり、開催に際して多くの気をつけるべきポイントがあるのが現状です。

当事務所ではベンチャーやIT企業の企業法務に関するソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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