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暗号資産に関する規制とは?資金決済法と金融商品取引法との関係を解説

暗号資産に関する規制とは?資金決済法と金融商品取引法との関係を解説

暗号資産(仮想通貨)については、広く知られるようになり、暗号資産を扱う事業者も増えてきました。最近では、暗号資産を扱う事業に関するテレビCMなども多く流れています。

一方で、暗号資産はその性質により法律上受ける規制が異なる場合もあり、これらの複雑な法規制を理解して適切に対応することが難しいという側面もあります。

そこで、本記事では、暗号資産を扱う事業者を対象に、暗号資産を扱う事業に対する法規制について説明をします。

暗号資産(仮想通貨)とは

暗号資産とは、インターネットを通じて不特定多数の者との間でやりとりができる財産的価値のことをいいます。従来は、「仮想通貨」と呼ばれていましたが、国際的な動向等を踏まえ、法令上の呼称が、「暗号資産」に変更されました。

暗号資産には、さまざまな種類があります。よく知られているものとしては、ビットコインやイーサリアムなどがあります。

暗号資産は、大きく分けると、ビットコイン型ICOトークン型の2つに分けることができます。

ビットコイン型について

ビットコイン型の特徴としては、発行者が存在しないという点があげられます。

そのため、ビットコイン型の暗号資産については、それ自体の本源的価値を想定しづらいという点が特徴としてあげられます。

ICOトークン型について

ICO(Initial Coin Offering)とは、企業等が電子的にトークン(証票)を発行して、公衆から法定通貨や暗号資産の調達を行うことをいいます。

この「ICOトークン型」については、ビットコイン型と異なり、発行者が存在します。そのため、保有価値は、権利の有無や内容(ホワイトペーパーの内容)に依存することになります。

また、ICOトークン型は、さらに以下の3つに分類できます。

  • 投資型
  • その他の利用権型
  • 無権利型

投資型とは、事業収益の分配などキャッシュに相当する経済的価値の受け取りを期待し、暗号資産を取得するケースのことをいいます。

その他の利用権型とは、暗号資産の発行者から、物品・サービス等の供与を見返りとして求め、暗号資産を取得するケースのことをいいます。

無権利型とは、暗号資産の発行者からの見返りを求めず、暗号資産を取得するケースのことをいいます。

暗号資産(仮想通貨)にはどのような規制があるか

暗号資産(仮想通貨)にはどのような規制があるか

暗号資産を規制する法律としては、主に、資金決済に関する法律(以下「資金決済法」といいます。)と金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)の2つがあります。

資金決済手段としての暗号資産は資金決済法の規制を受けます。一方、金融資産(投資対象)としての暗号資産や、資金調達手段としての暗号資産(ICO)は金商法の規制を受けます。

以下では、暗号資産と資金決済法や金商法との関係を詳しく説明します。

暗号資産と資金決済法

ビットコイン型の発行者が存在しない暗号資産や、その他の利用権型、無権利型の暗号資産は、資金決済法において決済規制を受けます。以下では、暗号資産と資金決済法の関係について説明をします。

資金決済法における暗号資産の定義

暗号資産については、資金決済法第2条第5項において、次の性質を持つものと規定されています。

  • 不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる
  • 電子的に記録され、移転できる
  • 法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない
  • 金商法第2条第3項に規定する「電子記録移転権利」を表示するものではないこと

資金決済法における暗号資産交換業の定義

資金決済法では、暗号資産交換業者に対する規制が定められています。

暗号資産交換業の定義については、以下の資金決済法第2条第7項で規定されています。

7 この法律において「暗号資産交換業」とは、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいい、「暗号資産の交換等」とは、第一号及び第二号に掲げる行為をいい、「暗号資産の管理」とは、第四号に掲げる行為をいう。
一 暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換
二 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
三 その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭の管理をすること。
四 他人のために暗号資産の管理をすること(当該管理を業として行うことにつき他の法律に特別の規定のある場合を除く。)。

資金決済法第2条第7項

上記の各号に該当する行為を行っている事業者は、資金決済法上、暗号資産交換業を行っている事業者として、規制の対象となります。

資金決済法による暗号資産交換業への規制の内容

暗号資産交換業を行う場合には、暗号資産交換業者としての登録を行う必要があります(資金決済法第63条の2)。

また、資金決済法では、暗号資産交換業者の業務の遂行に関し、以下のような規制を行っています。

  • 暗号資産交換業に係る情報の安全管理(第63条の8)
  • 暗号資産交換業の委託先に関する指導(第63条の9)
  • 暗号資産交換業に関する広告に関する規制(第63条の9の2)
  • 禁止行為の設定(第63条の9の3)
  • 暗号資産交換業の利用者の保護等に関する措置(第63条の10)
  • 暗号資産交換業の利用者の財産の管理(第63条の11)
  • 履行保証暗号資産の管理(第63条の11の2)
  • 指定暗号資産交換業務紛争解決機関との契約締結義務等(第63条の11)
  • 暗号資産交換業に関する帳簿書類の作成(第63条の13)
  • 事業年度毎の報告書の提出(第63条の14)

暗号資産交換業を行う場合には、資金決済法の上記の規制に従う必要があります。

関連記事:カストディ業務とは?暗号資産交換業者に対する規制について解説

関連記事:ステーブルコイン規制も追加!令和4年改正資金決済法のポイントを解説

暗号資産と金融商品取引法

投資型の性質を持つ暗号資産は、金商法の投資規制の対象になります。以下では、 暗号資産と金商法の関係について説明をします。

金融商品取引法における暗号資産の定義

暗号資産の定義に関して、金商法では、資金決済法に規定される暗号資産の定義と同様とすると規定されています(金商法第2条第24項第3号の2)。

集団投資スキーム持分との関係について

まず、金商法第2条第2項第5号で規定されているように、原則的に、以下の要件を満たす場合、集団投資スキーム持分と判断されることになります。

  • 権利を有する者が金銭等を出資または拠出すること
  • 拠出された金銭等を充てて事業(出資対象事業)が営まれること
  • 権利者が出資対象事業から生じる収益の配当または当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利を有すること

従来、暗号資産については、金銭でも金銭類似物でもないものとして扱われていたため、集団投資スキーム持分における「金銭等」には該当しませんでした。令和元年に改正された金商法第2条の2により、暗号資産は、金商法上、金銭とみなされることになりました。

そのため、投資家が暗号資産を出資する場合には、「権利を有する者が金銭等を出資または拠出すること」に該当しますので、投資家がファンドに対して暗号資産を出資または拠出するケースでは、暗号資産を投資家に出資してもらう仕組みを採用しているファンド運営者は、金商法の規制を受けることになります。

その結果、ファンド運営者は、暗号資産が金銭とみなされていなかった従来とは異なり、出資の募集または私募を行う場合には、原則として、第二種金融商品取引業の登録(金商法第28条2項第1号、第2条第8項第7号)等の規制を受けることになりますので、注意が必要です。

電子記録移転権利とは

金商法第2条第3項において、新たに「電子記録移転権利」という定義が規定されました。

3 この法律において、「有価証券の募集」とは、新たに発行される有価証券の取得の申込みの勧誘(これに類するものとして内閣府令で定めるもの(次項において「取得勧誘類似行為」という。)を含む。以下「取得勧誘」という。)のうち、当該取得勧誘が第一項各号に掲げる有価証券又は前項の規定により有価証券とみなされる有価証券表示権利、特定電子記録債権若しくは同項各号に掲げる権利(電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されるものに限る。)に表示される場合(流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定める場合を除く。)に限る。以下「電子記録移転権利」という。)(次項及び第六項、第二条の三第四項及び第五項並びに第二十三条の十三第四項において「第一項有価証券」という。)に係るものである場合にあつては第一号及び第二号に掲げる場合、当該取得勧誘が前項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利(電子記録移転権利を除く。次項、第二条の三第四項及び第五項並びに第二十三条の十三第四項において「第二項有価証券」という。)に係るものである場合にあつては第三号に掲げる場合に該当するものをいい、「有価証券の私募」とは、取得勧誘であつて有価証券の募集に該当しないものをいう。

金商法第2条第3項

「電子記録移転権利」とは、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値のことをいいます。

電子記録移転権利については、本来であれば、金商法第2条第2項のみなし有価証券に分類されるものの、ブロックチェーン技術等による流通性の高さから、開示規制に関しては、金商法第2条第1項の有価証券として扱われることになります。

前述の集団投資スキーム持分を暗号資産化した場合には、通常、電子記録移転権利に該当するものと考えられます。

電子記録移転権利に該当する場合の規制

電子記録移転権利に該当する場合、開示規定においては、第1項有価証券と扱われることとなるため、例えば、暗号資産化された集団投資スキーム持分の募集の取扱い又は私募取扱いを業として行う場合には、第一種金融商品取引業(金商法第28条第1項第1号、第2条第8号第9号)に該当することとなります。

電子記録移転権利が第1項有価証券に該当することとなると、例えば、暗号化された集団投資スキーム持分を募集(公募)する際には、原則として開示規制の適用を受けることになります。

その結果、有価証券届出書(金商法第4条第1項)や目論見書の作成義務や交付義務(金商法第13条第1項、第15条第1項)等を負うことになります。

ただし、適格機関投資家のみを相手とする場合、特定投資家のみを相手とする場合及び50名未満の少人数を相手方とする場合等の私募に該当するときには、公衆縦覧型の開示規制は課されないこととなります。

まとめ:暗号資産の法規制については弁護士に相談を

以上、暗号資産を扱う事業者を対象に、暗号資産を扱う事業に対する法規制について説明をしました。

暗号資産に関する法規制につきましては、複雑であり、暗号資産を扱う事業の内容によってもどのような規制を受けるかが変わってくる可能性があります。暗号資産の規制に関しては、専門的知識を持つ弁護士に相談することをおすすめします。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。例えば、海外のホワイトペーパーを読解して、そのスキームを日本で行う場合の適法性をリサーチし、ホワイトペーパーや契約書等を作成するなど、暗号資産やブロックチェーンに関わるビジネスの全面的なサポートを行います。下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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