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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

引用がNGとされる「著作権法」の事例について(動画編)

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引用がNGとされる「著作権法」の事例について(動画編)

著作物の複製や改変、掲載を許諾なく⾏なっても、状況や⽬的等によっては著作権侵害にならない場合があり、「公表された著作物の引⽤ (著作権法32条)」として、正当な範囲内での著作物の利用が認められています。

本記事では、実際の裁判で、動画の引用はどのように判断されているかを解説します。

なお、文書や画像の引用については、下記の記事で詳しく解説しております。

引用とは

引用は、権利者に無断で行われるものですが、著作権法第32条で認められた合法な行為であり、権利者は著作権法の引用の要件を満たさない違法な無断転載等でなければ、引用を拒否することはできません。

適切な引用の要件

現在まで、多数の判例により、適法な引用となるか否かの実務的な判断基準が示されています。

  1. 既に「公表されている著作物」であること
  2. 「公正な慣行」に合致すること
  3. 報道,批評,研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること
  4. 引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること
  5. カギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること
  6. 引用を行う「必然性」があること
  7. 「出典元」が明記されていること

「引用」と認められず、違法な無断転載等とされた場合には、著作権法第119条以降の罰則に基づいて、懲役や罰金に処される可能性があります。

FC2動画における引用を巡る裁判

氏名不詳者が、FC2動画に著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により、原告の公衆送信権(著作権法23条1項)が侵害されたと主張して、FC2運営よりIPアドレスとタイムスタンプを入手し、経由プロバイダに、発信者情報開示を請求した事例があります。

裁判の経緯

原告はアダルトビデオの制作、販売等を業とする株式会社であり、原告従業員が職務上作成し、原告の名義の下に公表した本件動画を、インターネット上において有料配信していました。

本件発信者は、本件動画中に第3者が作成した楽曲が許可なく使われていることを知り、原告がBGMとして使用することにより著作権者の権利を侵害していることを一般のユーザーに知らせて批評することを目的と称して、本件楽曲使用部分が原告動画の一場面であることを示すために、

  • 男女数名が参加する海辺で開かれたパーティーを取材している冒頭部分(約3分38秒間)
  • 著作権侵害にあたるとする、楽曲がBGMとして使用されている、水着の男女数名ずつの性交渉の場面 (約2分18秒間)
  • ニコニコ動画にアップロードされていた、本件楽曲が使用されている動画(約4分4秒間)

という3つの部分からなる、再生時間約10分間の動画をFC2動画にアップロードしたというものです。

当事者の主張

被告である経由プロバイダは、著作権法32条1項に基づく適法な引用であり、本件発信者の目的は、原告が著作権者の権利を侵害していることを一般のインターネットユーザーに知らしめて批評することであり、楽曲使用部分のほか、楽曲使用部分が原告動画の一場面であることを示すために冒頭部分を利用したが、その他の部分は利用しておらず、上記目的に必要な範囲内の利用である。また、本件発信者動画に利用されたのは、原告動画全体のわずか3%程度にすぎず、原告動画に係る原告の経済的利益に対する悪影響は皆無である。

さらに、本件発信者動画のデータをFC2動画にアップロードするに当たり、本件原告動画の出所も明示しているから、本件投稿行為は公正な慣行に合致した正当な範囲内の利用であり、引用として適法である、と主張しました。

これに対し、原告は、本件発信者による投稿行為の目的は原告による著作権侵害行為の事実を一般のインターネットユーザーに知らせて批評することにはなく、仮にそのような目的があったとしても冒頭部分を利用する必要はなく、被引用著作物である原告動画との主従関係が明確でもない。また、約2分18秒間の性交渉のシーンである楽曲使用部分は視聴者の性的欲求を満たすのに足りるものであり、原告動画の有料視聴の需要を減少させるものであるから、本件投稿行為は公正な慣行に合致した正当な範囲内で行われたものとはいえず、引用として適法になる余地はない、としました。

なお、被告の主張にある「本件発信者動画に利用されたのは本件原告動画全体のわずか3%程度」というのは、全編の再生時間が約195分間に対する、冒頭部分とBGM部分を合わせた5分56秒間の割合になります。

裁判所の判断

裁判所はまず本件原告動画に係る原告の著作権侵害について、本件動画は原告の従業員が職務上作成した著作物であって原告の名義の下に公表されたものであるから、原告の職務著作に当たり、原告は本件動画に係る著作権を有することを認めました。そして、本件動画から冒頭部分及び楽曲使用部分を複製して作成された発信者動画のデータを発信者がFC2動画にアップロードし、これを不特定多数の者が閲覧できる状態に置く投稿行為をしたのであるから、原告の公衆送信権が侵害されたということができる、としました。

その上で、適法な引用に該当するかについては、「正当な範囲内」(著作権法32条1項)の利用であるか否かにつき検討し、

本件原告動画において本件楽曲が使用されている事実を摘示するためには、本件楽曲使用部分又はその一部を利用すれば足りる。本件冒頭部分の内容に照らしても、本件原告動画において本件楽曲が使用されている事実を摘示するために本件冒頭部分を利用する必要はないし、上記の事実の摘示との関係で本件楽曲部分の背景等を理解するために本件冒頭部分が必要であるとも認められない。そうすると、仮に本件発信者に被告主張の批評目的があったと認められるとしても、本件発信者動画における本件冒頭部分も含む本件原告動画の上記利用は目的との関係において「正当な範囲内」の利用であるという余地はない。

東京地方裁判所2017年7月20日判決

として、適法な引用ではないとし、被告である経由プロバイダに、発信者の情報開示を命じました。

被告は、「出典元」を明記しており、引用を行う「必然性」があり、発信者動画に利用した割合は低いと主張しましたが、引用の目的上「正当な範囲内」といえなければ、つまり必要最低限の利用でなければ、「公正な慣行」に合致すると認められず、正当な引用とは認められませんでした。

まとめ

引用が認められているのは、文化的所産である著作物等を保護しつつ、著作物等を公正で円滑に利用し、文化の発展に寄与しようとする著作権制度の趣旨に合致するためです。

著作権者等の利益を不当に侵害しないように、引用の条件は厳密に定められていますが、著作権侵害になるか、ならないのかについては、判断が難しい場合が多くあります。経験豊かな弁護士にご相談ください。

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