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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

YouTuber・VTuber法務

YouTuberの事業譲渡と、譲渡後のマネジメント契約の契約書とは

YouTuber・VTuber法務

YouTuberには、大きく分けると個人で動画投稿を行う人と、事務所に所属しつつ事務所のマネジメントを受けながら動画投稿を行う人がいます。

個人で動画投稿を行うYouTuberの中には、様々な理由で、運営しているチャンネルを企業に売却するケースがあります。

また、チャンネルの売却を受けた企業が、チャンネルを売却したYouTuberに対し、今後もそのチャンネルで動画に出演し続けて欲しいとオファーをするケースもあります。

これらのケースを契約書に落とし込むと、事業譲渡契約兼マネジメント契約という複合的な契約となります。この契約は、典型的に想定される契約類型ではないため、契約内容をどうするかしっかりと検討する必要があります。

そこで、チャンネルの売却を考えているYouTuberやYouTubeチャンネルの譲渡を受けることを考えている企業を対象に、事業譲渡契約兼マネジメント契約の要点について説明します。

事業譲渡契約兼専属マネジメント契約とはなにか

YouTuber事業における事業譲渡契約書兼専属マネジメント契約とは、YouTubeチャンネルの運営という事業の譲渡に関する内容と、譲渡を受けたチャンネルへのYouTuberの出演に関する内容が規定された契約のことをいいます。

事業譲渡契約兼マネジメント契約書の要注意条項

YouTubeチャンネルの事業譲渡に関する条項について

譲渡財産に関する条項

YouTubeチャンネルの事業譲渡に関しては、譲渡財産になにが含まれるかを詳細に規定することが重要です。

例えば、以下のような条項が考えられます。

第●条(譲渡財産)
1. YouTubeチャンネルの譲渡に関し、YouTuberである●●(以下「甲」という。)から株式会社●●(以下「乙」といいます。)に譲渡される財産の内容は、以下の通りとする。
(1) 甲が運営・管理するYouTubeチャンネル「●●」(以下「譲渡対象チャンネル」という。)にかかるオーナー権限
(2) 譲渡対象チャンネルにアップロードされた全ての動画又は動画内に含まれる画像、音楽、音声その他の一切のコンテンツに関する権利(著作権、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、これらの権利を取得し又は登録等を出願する権利、その他のノウハウ及び技術情報等を含み、これらを総称して「知的財産」という。著作権については著作権法27条及び第28条に定める権利を含む。以下同じ。)。
(3) 譲渡対象チャンネルにアップロードされた全ての動画又は動画内に含まれる知的財産を制作する過程で生じた一切の権利
2. 甲は、前項第2号及び第3号にかかる著作者人格権を行使しないものとする。

譲渡日までのYouTubeチャンネルの運営に関する条項について

YouTubeチャンネルの譲渡に際しては、譲渡に関する手続や設定などを要することから、実際にチャンネルが譲渡されるまで、ある程度、日数が掛かってしまう場合があります。

その間、YouTubeチャンネルの運営を止めてしまうと、登録者の減少などで、チャンネルの価値が下がってしまう可能性があります。

そのため、YouTubeチャンネルの価値を維持するため、譲渡日までのチャンネル運営に関する事項を規定する必要があります。

例えば、以下のような条項が考えられます。

第●条(譲渡日までの譲渡対象チャンネル の運営)
1. 甲は、譲渡日まで、善良なる管理者の注意をもって譲渡対象チャンネルの運営を続行するものとする。
2. 甲は譲渡日まで、譲渡対象チャンネルの価値を減少させる可能性のある一切の行為を行わないものとする。

専属マネジメントに関する条項について

マネジメント内容に関する条項について

マネジメントと一概にいっても、マネジメント会社により、マネジメントの範囲が異なります。そのため、いかなる範囲がマネジメントの範囲に含まれるかについて、契約書で明記しておくことが必要となります。

例えば、譲渡対象となったYouTubeチャンネルのみに出演するのか、それとも、YouTubeチャンネルの譲渡を受けた企業が運営する他の媒体にも出演するのか、また、実際にどのようなマネジメントがなされるのかなどについて明記しておく必要があります。

専属条項

契約書では、YouTuberが、他の者とはマネジメント契約をせず、YouTubeチャンネルの譲渡を受けた企業とのみマネジメント契約を締結する旨の条項(専属条項)が重要な条項となります

チャンネルの売却を受けた企業としては、専属契約である旨の条項を規定する必要があります。

報酬及び経費に関する条項

報酬及び経費などの金銭に関する条項はトラブルが生じやすい条項です。

そこで、報酬及び経費については、しっかりと契約書で規定しておくことが重要となります。

まず、報酬については、どのような行為に対し、いくら報酬が支払われるかということについて明確に規定をしておく必要があります

YouTubeの動画は、一般的に、台本の制作、動画撮影、動画編集など複数の作業工程があります。

これらの作業のどの部分をYouTuberに担当させ、いくらの報酬を支払うのかをしっかりと契約書で規定しておく必要があります。

また、報酬については、固定報酬で規定する場合変動報酬で規定する場合が考えられます。

例えば、投稿された動画の再生回数に応じて報酬額を変動させるという形の変動報酬とすることや、契約後1年間はYouTubeとマネジメント会社の取り分を50対50とし、2年目以降は段階的にYouTuberの報酬を減らしていくような形の変動報酬も考えられます。

次に、経費についてです。YouTubeに投稿する動画を作成するためには、様々な経費が発生することとなります。

この経費については、YouTuberと会社がどのような割合で負担をするのかということをしっかりと契約書で規定しておくことが必要となります。

YouTuberの義務に関する条項

YouTubeチャンネルの価値を維持するためには、動画に出演するYouTuberが、不祥事やトラブルなどを起こさないことが重要です。

一度、YouTubeチャンネルの評判が悪くなってしまうと、一気に登録者や再生回数が減少してしまうことが考えられます。また、炎上してしまうと、動画投稿を休止せざるを得なくなる可能性もあります。

そのため、YouTuberには、チャンネルの価値を維持するため、チャンネルの価値を下げるような言動や行動をしないようにする義務を負わせることが考えられます。

例えば、以下のような条項が考えられます。

第●条(YouTuberの義務)
1. 甲は、常に乙の専属クリエイターとしての自覚と責任のもとに、一般社会人としての品位をもって行動するものとし、自ら又は乙の社会的信用の低下を招くような言動及び行動を行わないものとする。
2. 甲は、クリエイター活動に関して乙から打ち合わせ等の要請があった場合には、速やかにこれに応じるものとする。
3. 甲は、乙からの要請があった場合には、クリエイター活動の進捗状況その他乙が要求した事項について、乙の指示に従って速やかに報告するものとする。
4. 甲は、クリエイター活動に関し、日本及び諸外国の適用のある法令に従うものとし、自己の責任においてこれらを遵守しなければならない。

知的財産権等に関する条項

YouTube動画は、その性質上、著作権等の知的財産権が発生することになります。

YouTuber自身が動画を撮影し、編集を行っている場合、そのYouTuberに動画の著作権が発生することになります。

YouTubeチャンネルの譲渡を受けた会社としては、動画の著作権等の知的財産権を保有するため、YouTuberに発生した動画の著作権等の知的財産権を、会社に譲渡させる旨の規定を定めておくことが必要となります。

知的財産権に関する条項が規定されていないと、後々、会社が大きな損失を被ることにもなりかねませんので、必ず規定するようにしてください。

一般条項について

損害賠償義務に関する条項

損害賠償義務に関する条項は、ほとんどの契約書で規定されている条項で、目にすることが多い条項です。

ただ、損害賠償義務に関する条項は、ただ規定すればよいというものではなく、その範囲をしっかりと検討して規定する必要があります

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。昨今、人気化しつあるYouTuberやVTuberの間でも、法務リスクは存在します。特にチャンネル譲渡などの金銭が関わることとなると、後々大きな火種となりかねません。当事務所ではYouTuberやVTuberの法務対応も行っております。下記記事にて詳細を記載しておりますのでご参照ください。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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