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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

YouTuber・VTuber法務

YouTubeチャンネル名の商標登録は可能なのか?商標出願の制度を解説

YouTuber・VTuber法務

YouTube

YouTubeチャンネル名は、他のチャンネルと区別を行うために重要な要素となります。

そのため、特徴的なチャンネル名を用いているYouTuberもいます。

以前、YouTubeチャンネル名については、当該チャンネルの運営者ではないYouTuberが、商標出願を行ったことが話題になりました。

そこで、本記事では、YouTuberを対象に、YouTubeチャンネル名の商標登録について説明をします。

商標権とは

商標権とは、商標権者が、指定商品または指定役務について登録商標を独占的かつ排他的に使用することができる権利のことをいいます。

商標権が認められるためには、商標出願を行い、商標登録を完了する必要があります。

知的財産権の中に、著作権がありますが、著作権は、特別な手続きを要することなく法律上発生する権利であり、商標出願という手続きが必要な商標権とは違いがあります。

商標権には、出所表示機能、品質保証機能、宣伝広告機能が認められます。

商標登録の手続・費用

商標登録を行うためには、特許庁に対して、出願を行う必要があります

出願がなされると、商標審査官による審査が行われます。

商標審査官による審査を通過すると商標登録を受けることができます。

商標登録の費用については、出願料及び登録料が必要になります。

出願料については、3400円+ (8600円×区分数)の金額を支払う必要があります。

登録料については、28200円×区分数の金額を支払う必要があります。

また、弁護士や弁理士等の専門家に商標登録の手続きを委任する場合には、出願料及び登録料とは別に、弁護士や弁理士等の専門家に支払う報酬が必要になります。

弁護士や弁理士等の専門家に支払う費用については、先行商標調査を行うかや、どの程度の区分について出願を行うかによって異なりますが、概ね、数万円から数十万円の間に収まるケースが多いです。

商標登録を受けることができない標章

YouTuberと商標

商標登録を行えば、すべて商標登録がなされるわけではなく、商標審査官による審査の結果、商標登録が認められないこともあります

以下では、商標登録を受けることができないケースを紹介します。

他人の商品・役務と区別できないもの

まず、他人の商品・役務と区別できないものについては商標登録が認められないこととなります

具体的には、以下のものが考えられます。

  • 商品または役務の普通名称のみを表示する商標(商標法第3条第1項第1号)
  • 商品・役務について慣用されている商標(商標法第3条第1項第2号)
  • 単に商品の産地、販売地、品質等または役務の提供の場所、質等のみを表示する商標(商標法第3条第1項第3号)
  • ありふれた氏または名称のみを表示する商標(商標法第3条第1項第4号)
  • 極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標(商標法第3条第1項第5号)
  • その他何人かの業務に係る商品または役務であるかを認識することができない商標(商標法第3条第1項第6号)

公共の機関の標章と紛らわしい等公益性に反するもの

公共の機関の表彰と紛らわしいものについては、商標や需要者の利益を害する恐れがあるため、商標登録を行うことができません

具体的には、以下のものが考えられます。

  • 国旗、菊花紋章、勲章又は外国の国旗と同一又は類似の商標(商標法第4条第1項第1号)
  • 外国、国際機関の紋章、標章等であって経済産業大臣が指定するもの、白地赤十字の標章又は赤十字の名称と同一又は類似の商標等(商標法第4条第1項第2号、第3号、第4号及び第5号)
  • 国、地方公共団体等を表示する著名な標章と同一又は類似の商標(商標法第4条第1項第6号)
  • 公の秩序、善良な風俗を害する恐れがある商標(商標法第4条第1項第7号)
  • 商品の品質又は役務の質の誤認を生じさせるおそれのある商標(商標法第4条第1項第16号)
  • その他、博覧会の賞(商標法第4条第1項第9号)と同一又は類似の商標、商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標(商標法第4条第1項第18号)

他人の登録商標又は周知・署名商標等と紛らわしいもの

他人の使用する商標や他人の氏名・名称等と紛らわしい商標についても商標登録を受けることができません

具体的には、以下のものが考えられます。

  • 他人の氏名、名称又は著名な芸名、略称等を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)(商標法第4条第1項第8号)
  • 他人の周知商標と同一又は類似の商標であって、同一又は類似の商品・役務に使用するもの(商標法第4条第1項第10号)
  • 他人の登録商標と同一又は類似の商標であって、指定商品・役務と同一又は類似のもの(商標法第4条第1項第11号)
  • 他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれのある商標(商標法第4条第1項第15号)
  • 他人の周知商標と同一又は類似で不正の目的をもって使用する商標(商標法第4条第1項第19号)
  • その他、他人の登録防護標章(商標法第4条第1項第12号)と同一の商標、種苗法で登録された品種の名称(同第14号)と同一又は類似の商標、真正な産地を表示しないぶどう酒又は蒸留酒の産地の表示を含む商標(同第17号)

YouTubeチャンネル名の商標登録について

YouTuberと商標

YouTubeチャンネル名については、単に役務の内容を示すものに過ぎず、商標法第3条第1項第3号(単に商品の産地、販売地、品質等または役務の提供の場所、質等のみを表示する商標)や商標法第4条第1項第16号(商品の品質又は役務の質の誤認を生じさせるおそれのある商標)との関係から、商標登録ができないとも考えられます。

ただ、YouTubeのチャンネル名については、YouTubeチャンネル内にサブタイトルを付した動画が投稿されることから、YouTubeチャンネル名から、投稿された動画の具体的な内容を特定することが困難であり、YouTubeチャンネル名は、特定の役務の質を直ちに認識し、理解させるものとはいえないと考えられることから、商標登録が可能であると考えられます

先に登録出願された場合の対処法

上記のように、商標登録が認められないケースは様々考えられますが、商標登録が認められないケースとしては、大きく分けると、どのような対応を行っても商標登録が認められない場合と、何らかの対応を行えば商標登録が認められる場合があります。

後者の例としては、自分が商標登録をしようと思っていた標章について、他者に先に商標登録の出願をされてしまったケースが考えられます。

先に登録出願された場合には、商標登録に関する情報提供(商標法施行規則第19条)、登録異議の申立て(商標法第43条の2)や商標登録の無効の審判の請求(商標法第46条)で対応することが考えられます。

先に登録出願された場合には、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号又は同項第19号に該当することを主張することが考えられます。

ただ、上記のような方法をとったからといえ、必ずしも他者による商標登録に対処できるわけではなく、法律上の要件を満たす必要があります。

YouTubeチャンネル名の商標登録に関する出来事

2021年に、登録者数の多いYouTubeチャンネル名である「きまぐれクック」、「くまクッキング」及び「バズレシピ」などが、チャンネルの運営とは関係のない第三者によって、商標出願がなされるという出来事がありました。

この出来事は、SNSなどで話題となり、理由は明らかになっていませんが、2021年9月1日に、「くまクッキング」以外の商標登録出願は取り下げられました。

「くまクッキング」の商標出願の状況を特許情報プラットフォームで確認すると、2020年10月6日に商標登録願、2021年8月20日に登録査定となっています。そして、結果的に「くまクッキング」については2021年12月13日に「登録料の納付がなかった」との理由で「出願却下の処分」となりました。

まとめ

以上、YouTubeチャンネルを運営しているYouTuberの方を対象に、YouTubeチャンネル名の商標登録について説明をしました。

YouTubeチャンネル名については、商標登録が認められるケースが多いと考えられますが、商標登録を行わないと、他の者に商標登録をされてしまうリスクがあります。

そのため、YouTubeチャンネルを運営しているYouTuberの方は、商標登録に関して、専門的知識を有する弁護士等に相談をすることをオススメします。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。近年、ネット上で人気化するYouTuberやVTuberの顧問案件を多く承っております。チャンネル運用や契約関連などで、リーガルチェックの必要性が増加しております。当事務所では専門知識を有する弁護士が対策にあたっております。

下記記事にて詳細を記載しておりますのでご参照ください。

https://monolith.law/youtuberlaw

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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