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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

YouTuber・VTuber法務

VTuberのキャラクター制作依頼時に必須の契約書を解説

YouTuber・VTuber法務

近年のYouTube人気の高まりに伴い、YouTubeに動画を投稿してみたいと考える人が増えました。ただ、自らが動画に登場することに抵抗感があるという人もいると思います。

このような人でもYouTubeに動画を投稿する方法として、VTuberとして動画を投稿するという方法があります。

VTuberとして活動するためには、VTuberキャラクターを用意する必要がありますが、VTuberキャラクターの制作には、専門的な技術が必要になります

そのため、他者に制作を依頼するというケースも多くみられます。

そこで、本記事では、VTuberキャラクターの制作を他者に依頼することを考えている人を対象に、トラブルを未然に防ぐためには、制作を依頼する際に締結される契約書の内容をどのようにすることが適切かについて説明をします

VTuberとは

VTuberとは、Virtual YouTuber(バーチャルユーチューバー)の略で、2Dや3Dのキャラクターを使って、YouTuber活動をしている人のことをいいます。

VTuberの場合、キャラクターが登場することとなるため、いわゆる顔バレをせずにYouTubeに動画を投稿することができます

また、使用するキャラクターをアレンジすることで、様々な個性や特徴を出すこともできます

VTuberの制作依頼時に締結される契約書について

VTuberとして活動をするためには、VTuberとして使用するキャラクターが必要となります。

キャラクターは、動画の再生回数に影響することとなる重要な要素です。また、VTuberキャラクター制作には、専門的な技術が必要となるため、他者にデザインやモデリングを依頼するケースがあります。

契約としては、キャラクターのモデリングやデザインなどの成果が提供されることが通常ですので、請負型の業務委託契約が締結されるケースが多いと考えられます

そこで、以下では、請負型の業務委託契約を前提に、トラブルを未然に防ぐためには、契約書に、どのような規定を定めればよいかについて、説明をします。

業務内容に関する条項

VTuberキャラクター制作の依頼を受けた者(受託者)が、依頼内容を把握できなければ、VTuberキャラクター制作の依頼をした者(委託者)との間で認識の相違が生じ、後々、トラブルが生じる可能性があります。

そこで、業務内容について、規定をする必要があります

第●条(業務内容)
1.     乙は、甲がVTuber活動で使用するキャラクター(以下「本件キャラクター」という。)のデザイン・モデリングに係る業務(以下「本件業務」という。)を受託する。
2.     本件業務は、仕様書にしたがって遂行されるものとする。

第●条(仕様書)
1.     本件業務の仕様書を乙が作成するにあたり、乙は甲に要件の提示を求め、甲は乙の求めに応じて迅速に要件を提示しなければならない。
2.     乙が仕様書の作成を完了した場合、甲は、仕様書の記載内容が本件業務の仕様書として適合するか点検を行い、適合することを確認した証として甲乙双方が仕様書に記名押印する。
3.     第2項の点検の結果、仕様書が本件業務の仕様書として適合しないと判断された場合、乙は、協議の上定めた期限内に修正した仕様書を作成し、甲及び乙は再度前項の点検及び確認手続を行う。
4.     甲乙双方の責任者による記名押印をもって、仕様書は確定する。

仕様の変更に関する条項

契約締結後、企画やコンセプトの変更が生じ、キャラクターのデザインやモデリングの変更の必要性が生じることが考えられます。

そこで、仕様の変更に関する条項を規定する必要があります

第●条(仕様の変更)
1.     甲又は乙は、仕様書の確定後に、仕様書に記載された本件キャラクターの仕様等の変更を必要とする場合は、相手方に対して変更提案書を交付する。変更提案書には次の事項を記載する。
(1)   変更の名称
(2)   提案者
(3)   提案の年月日
(4)   変更の理由
(5)   変更に係る仕様を含む変更の詳細事項
(6)   変更のために費用を要する場合はその額
(7)   検討期間を定めた変更作業のスケジュール
2.     甲又は乙が相手方に変更提案書を交付した場合、その交付日から●●日以内に変更の可否について甲と乙とで協議を行う。
3.     前項の協議の結果、甲及び乙が変更を可とする場合は、甲乙双方の責任者が、変更提案書の記載事項(なお、協議の結果、変更がある場合は変更後の記載事項とする。以後同じ。)を承認の上、記名押印する。
4.     前項による甲乙双方の承認をもって、仕様の変更が確定する。但し、当該変更が本契約に影響を及ぼす場合は、本契約を変更する契約を締結した時をもって仕様の変更が確定する。
5.     本条により、仕様の変更が確定した場合には、乙は、甲に対して、仕様の変更が確定するまでに乙が行った本件業務の遂行割合に応じて、追加で委託料の支払いを請求することができる。

納期に関する条項

VTuber活動を開始する場合、委託者として、希望の開始時期が定まっているケースがあります。

開始時期が定まっている場合、委託者としては、開始時期までに、VTuberとして使用するキャラクターが完成されていなければ、VTuber活動を開始することができません。

そこで、納期を規定しておくことが必要となります

第●条(納期)
本件キャラクターのデザイン・モデリングの納期は、20●●年●月●日とする。

検収に関する条項

委託者にキャラクターが納品された場合、委託者としては、仕様書のとおりにキャラクターが制作されたかを確認する必要があります。

そこで、検収に関する条項を規定する必要があります

第●条(検収)
1.     甲は、納品物を受領後●日以内に、本件キャラクターが仕様書に適合することを検査する。
2.     甲は、納品物が前項の検査に合格すると判断する場合、検査合格書に記名押印の上、乙に交付する。また、甲は、納品物が前項の検査に合格しないと判断する場合、乙に対し不合格となった具体的な理由を明示した書面を速やかに交付し、修正を求め、乙は不合格理由が認められるときは、甲乙協議の上定めた期限内に無償で修正し、甲に納品する。
3.     検査合格書が交付されない場合であっても、第1項の検査期間内に甲が書面で具体的かつ合理的な理由を明示して異議を述べない場合は、納品物は、本条所定の検査に合格したものとみなされる。
4.     本条所定の検査合格をもって、納品物の検収が完了する。

契約不適合責任に関する条項

2020年4月1日から、改正民法が施行され、瑕疵担保責任が、契約不適合責任に改められました

ケースによっては、検収後に問題が発生することも考えられるため、契約不適合責任に関する条項を規定しておくことも必要になります

第●条(契約不適合責任)
1.     納品物に前条に定める第●条の検収では発見できない本契約の内容との不適合がある場合に、納品後●か月以内に甲がその不適合を発見し、乙に対して通知をしたときは、甲は、乙に対し、修補の請求を行うことができる。
2.     甲は、前項の修補の請求に代えて、乙に対し、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
3.     納品物の本契約の内容との不適合が甲の責めに帰すべき事由によるものである場合、甲は、乙に対し、前二項に基づく修補及び代金の減額を請求することができない。
4.     納品物の本契約の内容との不適合に関して乙が負う責任は本条に定めるものに限られる。

著作権に関する条項

VTuberのキャラクター制作は、著作権を含む知的財産権に関する事項が最も重要な事項となります

VTuberキャラクターに関する著作権が受託者に帰属してしまうと、委託者は、VTuberキャラクターを意図した形で使用することが困難となり、思うようなVTuber活動を行うことができないという状況が生じることにもなりかねません。

第●条(本件キャラクターに関する著作権)
1.     乙が制作した本件キャラクターに関する著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)は、乙又は第三者が従前から保有していた著作物の著作権を除き、甲に帰属する。
2.     乙は、甲又は甲が指定する者に対して、著作者人格権を行使しないものとする。

第●条(知的財産権侵害の責任)
1.     乙が制作した本件キャラクターに関し、第三者から著作権又は特許権等の侵害の申立を受けたとき、乙は、速やかに甲に対し申立の事実及び内容を通知する。
2.     甲は、前項の申立が甲の帰責事由による場合には、乙が第三者との交渉又は訴訟の遂行に関し、甲に対して実質的な参加の機会及びすべてについての決定権限を与え、並びに必要な援助を行ったことを条件に、かかる申立によって乙が支払うべきとされた損害賠償額を負担する。また、前項の申立が乙の帰責事由による場合には、甲は一切責任を負わない。
3.     乙の帰責事由によって第三者の知的財産権の侵害されたことを理由として、甲が納品物を将来に向けて使用できなくなるおそれがある場合、乙は、乙の判断及び費用負担により、権利侵害のない他の納品物との交換、権利侵害している部分の変更、継続使用のための権利取得のいずれかの措置を講じることができる。

まとめ

以上、トラブルを未然に防ぐためには、VTuberの制作を依頼する際に締結される契約書の内容をどのようにすることが適切かについて説明をしました。

VTuberは、ここ数年の間に注目をされるようになりましたので、VTuberキャラクター制作を依頼する際に、契約上、どのような点に留意をすればよいかが十分に理解されていない部分もあります。

そのため、VTuberキャラクターの制作の依頼を考えている方は、本記事で紹介した点にご留意いただければと思います。

契約書の文言は、どのケースでも同じように規定されるわけではなく、事案にあわせた形で規定されることが必要になりますので、VTuberキャラクターの制作を依頼することを考えている方は、一度、専門的な知識を有する弁護士に相談をすることをおすすめします。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。

昨今、YouTuberやVTuberの間でも、チャンネル運用にあたって、肖像権や著作権、広告規制などリーガルチェックの必要性が急増しております

また契約をめぐる問題についても事前にしっかりと下準備をしておくことが不可欠です。下記記事にて詳細を記載しておりますのでご参照ください。

https://monolith.law/youtuberlaw
弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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