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YouTuber・VTuber法務

パロディ動画はどのような場合に翻案権侵害となるか

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パロディ動画はどのような場合に翻案権侵害となるか

パロディとは、他人のコンテンツを何らかの形でマネをして、新たに作品を生み出すことをいいますが、著作権法27条は「著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、もしくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する」と規定しています。

つまり、著作物の翻案行為(翻訳・編曲・変形・脚色・映画化等)を行う権利、翻案権を持っているのは著作権者だけなので、著作権者の許可を得ずにこれを行った場合には、原則として著作権侵害が成立することになります。

ここでは、YouTube等の動画サイトでも人気があるパロディ動画は、どのような場合に翻案権を侵害すると判断されてしまうのかについて解説します。

翻案とは

翻案とは、最高裁判所の判例によれば、

既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為

最高裁判決2001年6月28日

とされています。

パロディと翻案

つまり、翻案権侵害にあたるか否かは、新たに制作された作品において、元の著作物における表現形式上の本質的な特徴を直接感得することができるかどうかによって判断されるわけですが、元の著作物の本質的特徴を直接感得できなければ成立しにくいという性質上、パロディは、どうしても形式的に考えると翻案権侵害となる可能性が高いことになってしまいます

言い方を変えれば、翻案権を完全に侵害していないような、元の著作物を想起できないような作品ではパロディと言えず、そうして出来上がった作品は面白くもなんともないものとなってしまう可能性が高いでしょう。

そして、パロディは、他者の著作物を茶化したり、風刺の意味合いで使用したりすることが多いので、原著作権者の許諾を得て利用することが難しい場合がほとんどであると言えます。

翻案であるか否かの判断

翻案の範疇なのか、新たな著作物なのかの判断は非常に難しく、裁判でもこの点について争われてきましたが、翻案であるか否かは、「元の著作物における表現形式上の本質的な特徴を直接感得することができるかどうか」によって、判断されます。

例えば、当サイトの別記事で、「著作物が翻案されて名誉又は声望が侵害された場合」として紹介したテレビドラマを巡る裁判では、

  • 主人公の名前
  • 夫婦の間の子どもの有無
  • 共働きかどうか
  • 夫の勤務先
  • 夫の転勤先
  • 主人公のキャラクター
  • 夫のキャラクター

が、極めて類似していることが認められました。

そして、相違点も多くあるにもかかわらず、また、ドラマの後半に大きな相違があるとしても、前半の基本ストーリーが共通であることを考慮すれば、

原告著作物を読んだことのある一般人が本件テレビドラマを視聴すれば、本件テレビドラマは、原告著作物をテレビドラマ化したもので、テレビドラマ化にあたり、夫の帰国以後のストーリーを変えたものと容易に認識できる程度に、前半の基本的ストーリー、主人公夫婦の設定、細かいストーリーとその具体的表現が共通でありあるいは類似しているものというべきである

東京地方裁判所1993年8月30日判決

として、テレビドラマは原告著作物の翻案であると認めました。

パロディ動画の事例

コナミ株式会社が、プレイステーション用ゲームソフト「ときめきメモリアル」の主要登場人物である「藤崎詩織」の図柄を用いてアニメーションのパロディビデオを制作した被告の行為が、

著作権(複製権、翻案権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害するとして、同ビデオの製造、販売及び頒布の禁止と廃棄、損害賠償等を求めた事例があります。

原告は、

被告は原告に無断で、藤崎詩織の図柄を用いたアニメーションビデオ「どぎまぎイマジネーション」を制作して販売したものですが、被告は、清純派として人気を博したことに着目して、藤崎詩織の図柄を無断で用いて本件ビデオを制作したものであり、藤崎詩織の図柄に係る原告の複製権及び翻案権を侵害した

と主張しました。また、

ビデオは、藤崎詩織の図柄を用いて性行為の場面を描写した成人向けのアニメーションビデオであって、藤崎詩織の清純なイメージを損なうものであり、本件ゲームソフトの改変をもたらすものであるから同一性保持権を侵害する

とも主張しました。

これに対し、被告は、

藤崎詩織の図柄はありふれたもので創作性はなく、また、抽象的なキャラクターについては、具体的な図柄を離れて別個の創作性を有する外部的表現形式とならないので、著作権の保護の対象とならず、複製権の侵害はない

と主張し、争うこととなりました。

裁判所の著作権侵害と同一性保持権侵害についての判断

裁判所は、まず著作権侵害について判断し、

本件ビデオに登場する女子高校生の図柄を藤崎詩織の図柄と対比すると、容貌、髪型、制服等において、その特徴が共通しており、藤崎詩織の図柄と実質的に同一のものであり、藤崎詩織の図柄を複製ないし翻案したものと認められるとし、したがって、被告が本件ビデオを制作した行為は、本件ゲームソフトにおける藤崎詩織の図柄に係る原告の著作権を侵害する

東京地方裁判所1999年8月30日判決

としました。

同一性保持権侵害については、

本件ゲームソフトは恋愛シミュレーションゲームであるが、登場人物である藤崎詩織は、優等生的で、清純な、さわやかな印象を与える性格付けがされており、藤崎詩織が性的行為を行うような場面は存在しない。一方、本件ビデオは、本件ゲームソフトにおいて、男子生徒が藤崎詩織から愛の告白を受けた最終場面の続編として設定され、清純な女子高校生と性格付けられていた登場人物の藤崎詩織が、伝説の樹の下で、男子生徒との性行為を繰り返し行うという、露骨な性描写を内容とする、10分程度の成人向けのアニメーションビデオとして制作されており、藤崎詩織の名前は用いられていないが、被告は本件ビデオにおいて、藤崎詩織の図柄を、性行為を行う姿に改変しているというべきであり、原告の有する、藤崎詩織の図柄に係る同一性保持権を侵害している

東京地方裁判所1999年8月30日判決

ともしました。

元のコンテンツの中心となる表現について、マネをしたり、パクったりしたりする行為については、同一性侵害に当たる可能性が高くなるので、パロディ動画については、同一性保持権侵害についても、注意が必要です。

裁判所の損害額についての判断

裁判所は、

被告は本件ビデオを販売用に500本制作し、1本当たり1400円の卸価格で小売店に販売したので、販売総額は70万円となる。そして被告は、動画、原画、彩色の各担当者、声優及び監督へ人件費として20万円、複製費用として17万5000円、包装等の諸雑費として5万円の合計42万5000円を支出したことが認められ、したがって被告が本件ビデオを販売することにより得た利益額は27万5000円になるとし、原告に生じた著作権侵害による損害額は、被告が本件ビデオ販売により得た利益額27万5000円と同額と推定できる

東京地方裁判所1999年8月30日判決

としました。

さらに、原告作品については、

1995年に本件ゲームソフトにより、日本ソフトウェア大賞のエンターテイメントソフト部門優秀賞やその他の賞を多数獲得し、登場人物である藤崎詩織に対する人気も高まり、コンピュータゲーム誌上におけるゲームキャラクター人気投票で、藤崎詩織が1位に選ばれたこと、二次的著作物として、藤崎詩織を仮想アイドル歌手としたCDが発売されたり、登場人物のイラスト集やその他の関連商品が販売されたり、実写映画も上映され、小説も刊行されており、本件ゲームソフトにおいては、藤崎詩織の優等生的で、清純な、さわやかな印象を与える性格付けが、本件ゲームソフト及び関連商品の売上げ及び人気の向上に大きく寄与していると解するのが相当である

東京地方裁判所1999年8月30日判決

としました。これらを踏まえて、裁判所は、

「清純な女子高校生と性格付けられる藤崎詩織と分かる女子高校生が男子生徒との性行為を繰り返し行うという、露骨な性描写を内容とする、成人向けのアニメーションビデオに改変、制作したというものであるのだから、被告の行為は、原告が本件ゲームソフトを著作し、藤崎詩織の性格付けに対する創作意図ないし目的を著しくゆがめる、極めて悪質な行為であるということができる」

として、一切の事情を総合考慮して、

「被告の同一性保持権侵害により生じた原告の無形損害を金銭に評価した額は、200万円と解するのが相当である」

とし、合計227万5000円の支払いとビデオの製造、販売又は頒布の禁止と在庫品及びマスターテープの廃棄を、被告に命じました。

なお、被告は、「仮に複製権侵害、同一性保持権侵害が存在するとしても、被告が本件ビデオを制作した行為は、同人文化の一環としての創作活動であるから、著作権法に違反するとの評価はされるべきでない」と主張していたのですが、これについては、「採用の限りでない」と一蹴されています。

人気漫画やアニメ・ゲームの登場人物の絵柄をそのまま用いて、無許諾で続編や番外編などを二次創作することはコミケなどの場においても散見されますが、裁判所の判断は厳しいものとなる可能性が高いといえます

まとめ

動画に限らず、パロディを製作する場合には、著作権法上、問題がないのか、慎重な判断が必要になります。経験豊かな弁護士にご相談ください。

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