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YouTuber・VTuber法務

事件や炎上に関するYouTubeコメント動画は法的に問題ないか

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事件や炎上に関するYouTubeコメント動画は法的に問題ないか

YouTubeなどの動画サイトでは、様々な動画が投稿されていますが、その中には、有名人の事件や炎上に関してのコメント動画があります。

このような動画は、世間の関心が高い話題のため、再生回数が大きく伸びることもあります。

事件や炎上に関してコメントを行うことは言論の自由として保障されていますが、どのような内容のコメントも無制限に認められるわけではありません。どの程度のコメントが適法・違法なのかという判断は難しい問題です。

本記事では、「事件や炎上に関するコメント動画は法的に問題がないのか」について解説します。

著作権との関係

まず、世間一般の事件やSNSにおける炎上事件と著作権の関係について解説します。

著作権の概念

著作権とは、簡単に言うと、著作物を保護するために認められる権利のことをいいます。

著作物については、著作権法2条1項1号で以下のように定義されています。

(定義) 第二条
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

著作権法2条1項1号

著作物として認められるためには、以下の4つの要件をみたす必要があります。

  • 思想または感情に関するものであること
  • 創作性が認められること
  • 表現されていること
  • 文芸、学術、美術または音楽の範囲に属すること

該当しないものは著作物と認められず、著作権法による保護を受けることができません。

炎上事件に著作権が認められるか

世間一般の事件やSNSにおける炎上事件については、新聞や報道で知ったとしても、新聞記事などの具体的な表現ではなく、抽象的な事件に留まる場合には著作物に該当せず、著作権は認められません。

他方で、新聞記事、雑誌、報道機関の映像、他者が投稿した動画などをそのまま転載してコメント動画を作成する場合には、ケースによっては、著作物性が認められ、著作権侵害となってしまう可能性がありますので、注意が必要です。

引用の要件をみたす場合には著作権侵害にはならない

コメント動画で、事件に関する新聞記事等を使用しても、著作権法上の引用に該当する場合には、著作権法に違反することにはなりません。

第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

著作権法第三十二条

引用が適法に認められるためには、以下の要件をみたすことが必要であるとされています。

引用の対象が公表された著作物であること

「公表」については、以下のように規定されています。

第四条 著作物は、発行され、又は第二十二条から第二十五条までに規定する権利を有する者若しくはその許諾を得た者によつて上演、演奏、上映、公衆送信、口述、若しくは展示の方法で公衆に提示された場合(建築の著作物にあつては、第二十一条に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者によつて建設された場合を含む。)において、公表されたものとする。

著作権法第四条

引用の部分と自己の著作物との区別が明瞭なものであること

明瞭区分性については、鍵括弧などを用いて、引用の部分と自己の著作物との区別を明瞭にしておくことなどが考えられます。

自己の著作物が主たるものであり、引用された著作物が従たるものであること

あくまで他者の著作物を引用するということですので、自己の著作物が主で、他者の著作物が従であることが必要です。

主従については、量的な視点と質的な視点の双方から判断されますので、自己の著作物部分が多いというだけでは不十分な場合があります。

引用の目的が正当な範囲のものであること

引用の目的の正当性については、以下の点から判断されます。

  • 引用の必要性が認められるかどうか
  • 引用される著作物の量が必要な範囲に留まっているかどうか
  • 引用の方法が適切かどうか

引用の対象となる著作物の出どころを明示すること

引用の対象となる著作物の出どころの明示については、著作権法48条で規定されています。

著作者名が明らかになる場合及び当該著作物が無名のものである場合を除き、当該著作物につき表示されている著作者名を示さなければならない。

著作権法48条2項

書籍の巻末等に引用文献を明示しているのはこのためです。

勝手に改変するなど引用元の著作権者の著作者人格権を侵害しないこと

著作者には一身専属権として、著作者人格権が認められています。この中には、同一性保持権(著作権法20条)があるため、引用をする場合には、引用元の著作物をそのまま引用することが原則となります。

(同一性保持権)
著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。

著作権法20条

また、引用の際に翻訳を行うことは著作権法46条の6第1項3号で認められています。

引用の要件を満たす情報は動画で使用可能

新聞等で事件等の情報は著作権法の要件をみたす形で引用すれば、著作権法に抵触することなく使用することができます。

適法な引用方法については下記記事で紹介しています。

肖像権との関係

肖像権の概念

肖像権とは、自分の顔や姿態などを無断で撮影され、または、撮影された写真を無断で公表されないように主張することができる権利のことです。

肖像権については、法律上明文で認められている訳ではありませんが、判例上認められている権利になります。

肖像権侵害になる・ならないケース

炎上事件を動画で取り上げる際、芸能人や有名人の顔が映ることがあります。

そこで問題となるのが肖像権です。肖像権侵害となるか否かについて、「和歌山毒物混入カレー事件報道事件」では以下のように述べられています。

人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等として許されるべき場合もあるのであって,ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは,被撮影者の社会的地位,撮影された被撮影者の活動内容,撮影の場所,撮影の目的,撮影の態様,撮影の必要性等を総合考慮して,被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。

最高裁平成17年11月10日第一小法廷判決

芸能人や有名人の顔が映っている場合でも、判例で述べられている要素から判断し、動画に映っている芸能人や有名人の人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものではない場合には、顔などを動画の中で映していても、肖像権侵害にならない可能性が高いといえます。

パブリシティ権との関係

パブリシティ権の概念

パブリシティ権とは、芸能人や有名人の名前や肖像等から生じる経済的な利益や価値を排他的に利用することができる権利になります。

パブリシティ権侵害になるケースとならないケース

パブリシティ権侵害になるか否かは、芸能人・有名人の名前や肖像の利用が、専ら顧客吸引力に着目され利用されているかどうかから判断されるのが一般的です。

そのため、動画の再生数を増やし、広告料を得る目的で芸能人・有名人の写真や動画を利用し、動画を投稿している場合には、自らの動画の広告として利用しているとの評価され、パブリシティ権侵害となる可能性があります。

個別の事情により違法・適法の判断が難しく、しっかりと許諾を受けることが一番確実な方法といえます。

まとめ

事件や炎上に関するコメント動画は、個人の意見を発信し、様々なモノの見方を視聴者に提供するという側面があり、社会的に意義がある場合もあります。

ただし、新聞やニュースの動画をそのまま転用したり、芸能人や有名人に関する事件を取り上げる場合には、著作権、肖像権およびパブリシティ権等の権利に関わってくることになり、それらの権利を侵害しないように動画投稿を行う必要があります。

事件や炎上に関するコメント動画に関する法的な問題に対処するには、専門的な法律知識が要求されるため、一度、詳しい法律事務所に相談をすることをおすすめします。

この記事の内容を動画で知りたい方は、弊所YouTubeチャンネルの動画をご覧ください。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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