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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

YouTuber・VTuber法務

“物申す系”動画投稿で気をつけるべき点は?YouTube利用規約のポイントを弁護士が解説

YouTuber・VTuber法務

YouTube動画では、過激な口調で意見を述べる“物申す系YouTuber”の人気が高まっています。このような物申す系動画を投稿する場合、法律はもちろんですが、YouTubeの利用規約との関係でも、問題がないかを検討する必要があります。法律上は適法な動画であっても、利用規約違反だと動画削除やアカウント凍結などの問題になりかねないからです。

本記事では、YouTubeで物申す系動画を制作し配信する場合に注意すべき点を解説します。

YouTubeの利用規約等

YouTubeには、大きく言って、3個の「規約」が存在します。

  • 利用規約
  • コミュニティガイドライン
  • 各種ポリシー等

これらのうち、利用規約は抽象的なものであり、それを具体的にしたのがコミュニティガイドラインと各種ポリシー等である、というのが基本的な構造です。「法律的には違法ではない」としても、規約に違反してしまうと動画を削除されてしまうので、投稿する場合には、こうした「規約」に気を付ける必要があります。

本記事では、コミュニティガイドラインと各種ポリシー等を中心に、解説を行います

下品な表現

まずコミュニティガイドラインにおいて下品な表現に関するポリシーが定められています。物申す系動画では、最も注意せねばならないポリシーですが、一部の言葉は 18 歳未満には不適切な場合があるので、コンテンツに年齢制限を適用するか、コンテンツを削除するかのどちらかが求められることとなります

具体的には、

  • 露骨な性的表現やナレーションの使用
  • 動画内での過剰な冒とく的表現の使用
  • 動画のタイトル、サムネイル、関連付けられたメタデータでの非常に冒とく的な表現の使用

を要素として考慮し、判断されます。したがって下記の

  • 動画集や文脈を無視して抜き出したクリップなど、冒とく的な表現の使用に焦点を当てた動画
  • あおり運転の様子や長時間にわたる暴言が映っている動画で、非常に冒とく的な表現が使用されているもの
  • 非常に冒とく的な表現が飛び交う殴り合いの対立シーンを撮影した動画、または暴力を伝えるために非常に冒とく的な表現を使用している動画

参考:YouTubeのポリシー/下品な表現に関するポリシー

のようなコンテンツは、年齢制限を設定しなければなりません。「冒とく的な表現」が許されないのですから、誹謗・中傷や、罵倒することは避けましょう。

ヌードや性的なコンテンツ

性的満足を与えることを意図した露骨なコンテンツ、未成年者を性的に描写したコンテンツ、未成年者を性的に搾取するコンテンツは許可されていません。ポルノを投稿すると、コンテンツが削除されたり、チャンネルが停止されたりすることがあります。

フェティッシュを含む動画は、削除されるか、年齢制限が設けられますが、暴力的、生々しい、あるいは侮辱的なフェティッシュは、ほとんどの場合許可されません。

したがって、

  • 性的満足を目的とする性器、胸部、臀部の描写(着衣、非着衣を問わず)
  • 媒体(動画、テキスト、音声、画像など)を問わず、ポルノまたは性的満足を目的として性行為、性器、フェティッシュを描写したもの

参考:YouTubeのポリシー/ヌードや性的なコンテンツに関するポリシー

のようなコンテンツは、許可されません。

暴力的で生々しいコンテンツ

視聴者に衝撃や不快感を与えることを目的とする暴力的または残虐なコンテンツ、もしくは他のユーザーに暴力行為を促すコンテンツは、許可されません。したがって、

  • 個人または特定のグループの人々に対する暴力行為を扇動する
  • 交通事故、自然災害、戦争直後の状況、テロ攻撃直後の状況、路上でのけんか、暴行、性的暴行、侮辱、拷問、死体、抗議行動や暴動、強盗、医療行為などを含み、視聴者に衝撃や不快感を与えることを目的とする映像、音声、画像
  • 視聴者に衝撃や不快感を与える目的で、血液や嘔吐物などの体液を描写した映像または画像
  • 動物に不必要な苦痛や危害を故意に与えるコンテンツ
  • 手足の切断などの大怪我を負った死体の映像
  • 未成年者同士による学校での実際のけんか

参考:YouTubeのポリシー/暴力的で生々しいコンテンツに関するポリシー

のようなコンテンツは、許可されません。

また、

  • 開いた傷口が中心の内容で、視聴者に説明や知識を提供していない医療処置の映像
  • 強盗や暴行を行うなどの暴力的な犯罪の映像で、視聴者に説明や知識を提供していないもの
  • スマートフォン、ドライブ レコーダー、CCTV の映像で、「大事故」や「警告: 大量の血」などのタイトルを付けて、交通事故でけがをした人や死亡した人を表示するもの
  • 斬首の動画
  • 「ボコボコにされる男性に注目」などのタイトルを付けた一方的な暴行
  • 他者の命を脅かす暴力行為や深刻な暴力行為を加害者が撮影した映像

等は、「暴力的で衝撃的」なコンテンツとして、また、

  • 闘犬や闘鶏など、人間の見物人が動物同士を強制的に闘わせる動画
  • 不要な苦痛のシーンを含んだ、教育、ドキュメンタリー、科学、芸術以外のコンテンツ
  • 剣が刺さっている傷ついた牛を映した闘牛の映像
  • 爆弾や毒薬などの違法な方法による狩猟

等は、「動物虐待」のコンテンツとして、許可されません。

ヘイトスピーチ

年齢、人種、性別、宗教等を含む数々の特性に基づいて個人や集団に対する暴力や差別を助長する悪意のある表現を含むコンテンツは、許可されていませんし、ヘイトスピーチは許されません。したがって、

  • 年齢
  • 障がい
  • 民族
  • 性同一性や性表現
  • 国籍
  • 人種
  • 在留資格
  • 宗教
  • 性別 /ジェンダー
  • 性的指向
  • 深刻な暴力的出来事の被害者とその親族

参考:YouTubeのポリシー/ヘイトスピーチに関するポリシー

等のいずれかの特性に基づいて個人や集団に対する暴力や差別を助長するコンテンツは削除されます。

また、暴力行為の予告は間接的であっても現実の脅迫とみなされます。

詐欺やスパム(迷惑行為)

現金のプレゼントを提供するコンテンツや、「一攫千金」スキームまたはねずみ講(物品を伴わず金銭をやり取りするピラミッド商法)に勧誘するコンテンツは、詐欺として、禁止されています。そこで、

  • 視聴者に対して、すぐに金持ちになれる、奇跡の治療で癌などの慢性疾患を治せるなどの誇大宣伝を行う
  • 現金のプレゼント、またはその他のねずみ講の宣伝
  • 現金のプレゼントを提供するスキームへの勧誘を目的としたアカウント
  • 「この計画で明日までに 500 万円稼げます」などの約束をする動画

参考:コミュニティガイドライン/スパム、欺瞞行為、詐欺に関するポリシー

等のコンテンツは、禁止されています。

また、視聴回数、高評価、コメントなど YouTube のエンゲージメント指標を販売するコンテンツ、これには、チャンネル登録者数や視聴回数などの指標を増やすことだけを目的とするコンテンツも含まれます(別のクリエイターのチャンネルに登録することの見返りとして、自分のチャンネルへの登録を提案する)は、インセンティブスパムとして、禁止されています。そこで、

  • 視聴者にチャンネル登録を促すことを目的とした動画
  • 相互登録を呼びかける(「Sub4Sub」)動画
  • 「高評価」を販売する動画
  • 10 万人目のチャンネル登録者にチャンネルを与えることを持ちかけるだけで、それ以外のコンテンツを含んでいない動画

等のコンテンツは、禁止されています。

また、視聴者から個人情報を収集すること、視聴者を欺いて YouTube から別のサイトに移動させること、または前述の禁止されている行為を行うことだけを目的とするコメントは、コメントスパムとして、禁止されています。そこで、

  • ねずみ講の宣伝のためのアンケートやプレゼントに関するコメント
  • クリック課金型広告の参照リンクを含んだコメント
  • 動画の全コンテンツを視聴できるという虚偽の主張をしているコメントで、映画、テレビ番組、コンサートなどのコンテンツを含みます。
  • 不正なソフトウェアやフィッシングサイトへのリンクを含むコメント
  • 虚偽のショップへのリンクを含んだコメント。
  • 「こちらのチャンネルや動画もチェックしてね」などのコメントで、投稿された動画とは無関係のチャンネルや動画に誘導すること
  • 自分のチャンネルへのリンクを含む同じコメントを繰り返し投稿すること。

等のコンテンツは禁止されています。

権利侵害

規約等に違反すると動画を削除されてしまいますが、法律的に違法な、権利侵害に該当する場合には、それだけではすみません

物申す系動画投稿において、最も行ってしまいがちな権利侵害は、名誉毀損と名誉感情の侵害(侮辱罪)と言えます。ここで、名誉とは、

  • 人の社会的評価を意味する社会的名誉
  • 自己に対する評価を意味する主観的名誉

の二種類があります。

前者の「社会的名誉」が「名誉毀損」というときの「名誉」であり、「自分が社会からどのように評価されるか」に関わるものです。後者は「自尊心を傷つけられた」というような場合の「名誉感情」と呼ばれるもので、名誉感情を侵害するような表現は、刑法上の名誉毀損には該当しませんが、民事上では「名誉感情の侵害」として、侮辱罪になるケースがあります。

名誉毀損

名誉毀損とは、

  • 公然と
  • 事実を摘示し
  • 人の名誉を毀損する

というときに成立します。

「公然と」とは、「不特定多数に対する」という意味で、「不特定」か「多数」か、少なくとも片方が満たされれば良いのですが、YouTubeに投稿した場合には、どちらも該当します。

「事実を摘示し」とは、「具体的な事柄」というような意味で、「証拠によって真偽を確かめられるような事柄」ということです。

「人の名誉を毀損する」とは、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な社会的評価を低下させる行為のことです。

この3つの要件を満たすときに、名誉毀損が成立します。ただし、その行為が、

  • 公共の利害に関する事実を摘示するもの(公共性)
  • 専ら公益を図る目的であること(公益性)
  • 摘示された事実が真実であると証明されること(真実性)またはその事実が真実であると信ずるに足りる相当の理由があること(相当性)

という3つの要件を満たしているときには、その行為には違法性がないとされます。つまり、名誉毀損とはなりません。

また、事実を摘示したのではない、意見ないし論評による名誉毀損の場合、

  • 意見ないし論評が公共の利害に関する事項に係ること(公共性)
  • 意見ないし論評の目的が専ら公益を図るものであること(公益性)
  • 前提としている事実が真実であると証明されること(真実性)またはその事実が真実であると信ずるに足りる相当の理由があること(相当性)
  • 人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでないこと

という4つの要件を満たしていれば、その行為には違法性がないとされます。つまり、名誉毀損とはなりません。

なお、YouTubeは「YouTubeは動画の真実性を判断する立場にないため、投稿された動画を名誉毀損の申し立てにより削除することはありません」としています。

ただし、「訴訟を起こし、問題の動画の削除をコンテンツ作成者に命じる判決が下された場合、YouTube はその命令に従って動画を強制的に削除することができます」とあります

参考:YouTubeのポリシー/法律に関するポリシー

名誉感情の侵害

名誉感情、つまり人が自分自身の人格的価値について有する主観的評価(主観的名誉)も法的保護に値する利益とされています。

したがって、利用規約の「悪意のある表現とヘイトスピーチ」に該当しない場合でも、相手に対して表現が著しく下品ないし侮辱的、誹謗中傷的である等、社会通念上許容される限度を超える侮辱行為は、人格権を侵害するものとして、名誉毀損には当たらない場合でも、名誉感情の侵害として不法行為とみなされます。

物申す系動画においては、口汚い罵倒、度が過ぎるような攻撃的表現、執拗な誹謗中傷には、注意が必要です。相手の挑発に乗ったり、売り言葉に買い言葉で名誉感情を侵害するような発言をしてしまったりすると、権利侵害を問われる場合もあります

まとめ

物申す系動画は、誰が作った動画であるかより先に、取り上げたニュースや話題に興味を持たれ関心を引くことができるので、無名のYouTuberでも再生数を稼ぐチャンスがあり、人気があります。

物申す系動画には様々な問題がありますが、注意しつつ制作し、配信しましょう。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。近年、ネット上で人気化するYouTuberやVTuberの顧問案件を多く承っております。

チャンネル運用にあたって、リーガルチェックの必要性が増加しております。当事務所では専門知識を有する弁護士が多く在籍しております。下記記事にて詳細を記載しておりますのでご参照ください。

モノリス法律事務所の取扱分野:YouTuber・VTuber法務

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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