弁護士法人 モノリス法律事務所03-6262-3248平日10:00-18:00(年末年始を除く)

法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

食べログの口コミの投稿者を特定する方法と弁護士費用の相場

風評被害対策

近所で美味しいお店を探すために「食べログ」を利用したことがある人は多いのではないでしょうか?お店を利用するかどうか選ぶ基準として、5つ星評価や利用者からの口コミが大きな意味を果たしています。掲載されたお店の立場からすると評判を上げる内容なら嬉しいですが、誹謗中傷の口コミが投稿されるリスクも考えなくてはいけません

今回は食べログの誹謗中傷の口コミの投稿者を特定する方法とそのための費用相場を解説します。

食べログとは?

「失敗しないお店選び」をコンセプトにした、日本最大級のグルメサイトです。飲食店の場合、お店の公式HPを参考にしただけだと、実際利用した後に「思っていたのと違う!」と感じるケースも多いです。食べログは、利用者の口コミを掲載することで、飲食店特有のこのギャップの軽減に大きく貢献しました。

2020年5月現在、月間約1億1,846万人以上が利用し、掲載レストラン数は90万件以上、総口コミ数は約3,510万件以上ととてつもない規模のサイトに成長しています。この規模感なので、HPを持っていない隠れた名店を発見することも可能です。

店舗情報の閲覧はサイトにアクセスすればだれでも可能ですが、口コミを投稿するにはアカウントの作成が必要です。口コミは、「料理・味」「サービス」「雰囲気」「CP(コストパフォーマンス)」「酒・ドリンク」の5つの項目で評価し、他の人の参考になるように、文章の記述も求められます。

味覚は人によって異なりますしお店の評価も賛否両論あって当然なので、お店にとって良い内容・悪い内容の記載をどちらも認めています。運営元は、株式会社カカクコムです。

食べログで起こり得る誹謗中傷の例

食べログではネガティブな内容の投稿も容認されているため、誹謗中傷が起こり得る危険が高いサイトだといえます。例えば、以下のような口コミが考えられます。

接客態度など店員に対する誹謗中傷

  • 〇〇という店員の態度が最悪だった
  • この店の店員は裏で客が残した料理を勝手に食っている
  • シェフは前科三犯
  • 店員は中国人だから接客態度が悪くても仕方ない

料理のクオリティに対する誹謗中傷

  • こんな不味い店にお金を出す価値はない
  • 化学調味料をふんだんに使っている

店舗の衛生管理に関する誹謗中傷

  • テーブルの周りにハエが飛んでいた
  • この店のお肉を食べると必ず腹痛になる。腐った肉を使っているのでは

個人的なクレームやトラブルに関する誹謗中傷

  • 別の客と会計を間違われた
  • 財布を落として見つからなかった。盗まれたに違いない

上記のような口コミがされると店舗側は困り果ててしまうでしょう。利用を敬遠され、売り上げが落ちてしまう可能性も高いです。

取りうる対処法は「口コミの削除請求」、もしくは「口コミの投稿者の特定」です。投稿者を特定すれば同じ人物から再度被害を受けることが無くなるため、効果的な対処法です。

以下では、投稿者特定の手順を詳細に解説していきます。

投稿者特定の手順1:IPアドレスの開示請求

IPアドレスとは

最初のステップとして、投稿者が書き込みを行った端末のIPアドレス開示請求を食べログを運営するカカクコムに対して、提起します。IPアドレスはインターネットを接続するパソコン1台1台に割り当てられた識別番号です。インターネット上の住所のような役割を持ちます。

なぜIPアドレスの開示が必要なのかというと、カカクコム側は投稿者の住所や氏名などの個人情報を保有していないためです。

食べログで口コミを投稿するには会員登録が必要ですが、TwitterやFacebook、LINE等のSNSなどの外部ツールと連携する形となっているため、登録時に個人情報の入力は必須ではありません。

このため、まずはIPアドレスを開示してもらい、誹謗中傷の口コミを行った端末を特定する必要があるのです。

仮処分手続きによる投稿者のIPアドレス開示請求

IPアドレスの開示請求を行う際は、裁判手続きを行う必要があります。この裁判手続きは、裁判ではなく仮処分という手続きを用います。仮処分手続きは裁判と比べて迅速で、通常であれば1~2か月程度で裁判所から命令が発出されます。口コミがサイトに掲載されたままでは風評被害が広がってしまいますから、よりスピーディな仮処分のほうが裁判と比べ、適切な手続きだといえます。

裁判でないといえども仮処分が認められるには法的な議論が必須ですから、法律のプロである弁護士に依頼するのがおすすめです。仮処分の弁護士費用の相場は、

IPアドレス開示について、着手金が20-30万円程度、成果報酬金が15-20万円程度

https://monolith.law/reputation/reputation-lawyers-fee

裁判所を通じた手続きということもあり、完全な成果報酬型というわけにはいきません。また、口コミの削除も合わせて依頼する場合の相場は、

削除&IPアドレス開示について、着手金が30万円程度、成果報酬金が30万円程度

https://monolith.law/reputation/reputation-lawyers-fee

と言われています。ただ投稿の文字量や内容によって金額も変動するとみられるので、あくまでも参考程度にご覧ください。

投稿が違法であることを立証・証明する必要

仮処分命令が出されるためには、その投稿が違法であることを立証・証明する必要があります。

一方、口コミの削除を請求する場合、違法のほかサイトのガイドライン違反を立証・証明すれば、削除が成功することもあります。この場合、裁判所を通さず、自らサイトに削除請求を行います。

例えば、食べログのガイドラインには「店へ悪影響を及ぼすかつ内容の確認が困難な事象についての投稿は禁止」とあるので、この規約を引用すれば「化学調味料をふんだんに使っている」という憶測の投稿は、削除してもらえる可能性も高いです。また、「8:主観的であっても、店関係者個人を特定した批判、特定・不特定を問わず、他の利用客を非難・中傷・嘲笑することは禁止」との規約もあり、「〇〇という店員の態度が最悪だった」という口コミは個人を特定する内容にほかならないので、削除してもらえる可能性が高いです。

もちろん、違法であることを証明した場合でも、サイト側は裁判を通さずとも削除に応じるでしょう。

食べログの口コミの削除請求については、こちらの記事で詳しく解説しているのでご一読ください。

また、食べログを相手取った削除請求の裁判は数多く提起されています。詳しい事例が知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

対して、投稿者を特定するケースではサイトの規約違反を証明・立証するだけでは足りず、違法であることを証明せねばなりません。違法であることを証明するためには、その投稿が違法であるといえる理由を論じ、合わせてそれを証明する証拠を提示する必要があります
こうした主張は素人のみで行うのは厳しいので、ネットの誹謗中傷に強い弁護士に依頼すべきなのです。

投稿者特定の手順2:ログの削除禁止

IPアドレスが入手できると、その端末にインターネット接続環境を提供したプロバイダが判明します。例えば、固定回線であればNTT、携帯の回線であればdocomoなどが該当します。このログを元に投稿者に個人情報を特定するのですが、プロバイダはログをいつまでも保存するわけではありません。特に携帯回線の場合、会社によっても異なりますが、3か月程度でログを削除してしまいます。

ログが削除されると個人情報を突き止めることができなくなってしまうため、プロバイダに対し「ログを削除するな」という命令を求める仮処分を行う必要があるのです。

ただし、実際には裁判所を通さずとも「これからそちらに投稿者特定の開示請求訴訟を起こすから、ログを保存しておいてくれ」との通知を出せば済むケースも多いです。この通知の弁護士費用の相場は、10万円程度とみられています。

食べログはスマホアプリもリリースされています。出先でスマホのアプリを開き、美味しいお店を検索する使い方をする人が多いと想定されます。前述の通り、携帯回線の場合、早めにログが削除されてしまうため通知を出しておいたほうが賢明です。

投稿者特定の手順3:住所氏名開示請求

ログの保存に成功したら、プロバイダに対し、投稿者(正確には回線の契約者)の住所氏名の開示を求める訴訟を提起します。住所氏名開示請求の場合、仮処分ではなく訴訟を提起しなければいけません。住所や氏名といった情報は重要な個人情報なので、投稿者のプライバシーの権利も保護する必要があるわけです。

例えば、「化学調味料をふんだんに使っている」という内容でもそれが事実であれば、投稿者のプライバシー保護の要請が勝り、名誉毀損は成立しない可能性が高いです。この場合の弁護士費用の相場は、

着手金が30万円程度、成果報酬金が20万円程度

https://monolith.law/reputation/indetify-poster-jpnumber-attorney-fee

と言われています。

投稿者特定の手順4:損害賠償請求

手順3で訴訟に勝利すれば、投稿者の情報が入手できます。投稿者を特定できたことで、相手に対する損害賠償請求も可能になります。調査料などの弁護士への依頼にかかった費用や、風評被害で生じた実害に対する慰謝料が請求可能です。特に、レストランなどの飲食店は口コミの影響を多分に受けるので、売上低下など金銭的な損害が発生している可能性が高いです。このため、損害賠償請求を検討する場面は少なくないでしょう。

十分な賠償額を受け取れば、弁護士に依頼するために生じた全ての額を回収することも可能です。しかし、それだけの額受け取れるかはわかりませんし、そもそも損害賠償請求が認められない可能性もあります。

一連の手続きでは少なくとも100万円以上は弁護士費用でかかるとみられます。これだけの額の賠償を受け取れるのは簡単ではなく、結局損する確率も低くはない点にご留意ください。

まとめ

食べログの口コミの投稿者を特定する方法や弁護士費用の相場に関して解説してきました。誹謗中傷の口コミの投稿者を特定するには、IPアドレス開示の仮処分・ログ削除禁止の通知・プロバイダに対する住所氏名開示請求の3つの手続きが必要です。また、損害賠償を請求したければ、損害賠償請求訴訟も行わなければなりません。

裁判手続きが複数必要となるため、手続きの際は法律のプロである弁護士に依頼することをおすすめします。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

シェアする:

TOPへ戻る