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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

Instagramの悪質コメントを削除する方法

風評被害対策

近年、Instagram(インスタグラム)の流行に伴い、投稿に「いいね」を大量獲得するために目立つ写真を撮る「インスタ映え」という言葉が生まれるなど、社会現象になっています。

Instagramでは投稿にコメントをつけることができますが、時には悪質な書き込みをされる場合があり、他人の目に触れ風評となってしまう可能性があります。

この記事では、Instagramの投稿につけられた悪質なコメントを削除する方法について解説します。

Instagramとは

Instagramは写真や動画を共有できるソーシャル・ネットワーキング・サービスのひとつで、Facebook, Incという米国法人が運営しています。ユーザーは投稿写真を見るだけではなく、「いいね!」を付与したり、コメントをつけることができます。

悪質なコメントとは

Instagramは実名でなくても登録でき、その匿名性から誹謗中傷コメントを書き込まれる場合があります。

悪質なコメント例を紹介します。

旅館へのコメント

旅館の写真に対して、「この旅館、特にAっていう仲居のサービス悪くて最悪だった。絶対泊まらない方がいいよ」というコメントが投稿されている場合です。サービスの良し悪しは個人の主観になりますが、この旅館と何らかのトラブルになった人物が嫌がらせのためにこのようなコメントをしている可能性もあります。真偽に関わらず、当該旅館のイメージを下げ、予約が減少するといった被害をもたらすおそれがあります。

漫画家へのコメント

育児漫画の作者に対して、「この作者、子ども虐待してるよ。こないだも児相に通報されたらしい。」というコメントが投稿されている場合です。漫画の売り上げ減少などの悪影響を及ぼすものと思われます。

こうした根も葉もない悪質な投稿は、5ちゃんねる等の匿名掲示板の誹謗中傷書き込みや風評被害書き込みと同様に削除されるべきでしょう。

コメント削除方法

自分の投稿に悪質なコメントがつけられてしまった場合は、以下の手順で対応すれば、自ら削除することができます。ただし、他人の投稿に対しては削除することが出来ません。

違反報告で削除する方法

他人の投稿に悪質なコメントがついている場合は、下記の手順に従い、運営元に報告することができます。

Instagramのコミュニティガイドラインによれば、「特定の個人に屈辱を与えたり誹謗したりすることを意図したコンテンツ」は削除されるものとされています。

(前略)Instagramでは、信憑性の高い脅迫やヘイトスピーチを含むコンテンツ、特定の個人に屈辱を与えたり誹謗したりすることを意図したコンテンツ、脅迫や嫌がらせとして公開した個人情報、繰り返し発信される望ましくないメッセージは、削除されます。(後略)

※コミュニティガイドライン「詳細」

https://help.instagram.com/477434105621119

旅館への「この旅館、特にAっていう仲居のサービス悪くて最悪だった。絶対泊まらない方がいいよ」というコメントは、コミュニティガイドラインの「特定の個人に屈辱を与えたり誹謗したりすることを意図したコンテンツ」にあたるものとして報告ができるものと考えられます。

(前略)ガイドラインに違反すると思われるものを見つけたら、報告オプションを使って報告してください。Instagramのグローバルチームが報告内容を確認し、ガイドラインに沿っていないコンテンツをできる限り迅速に削除します。Instagramのアカウントを持っていない場合でも、報告は可能です。報告の確認と調査が迅速に進むよう、報告書への記入の際にはリンク、ユーザーネーム、コンテンツの説明など、できるだけ多くの情報を提供してください。画像または関連するキャンプションのいずれかがガイドラインに違反している場合、投稿全体が削除される可能性があります。(後略)

https://help.instagram.com/477434105621119

違反していると思われるコメントを報告し、運営元がガイドラインに沿っていないと判断すれば、そのコメントは削除されます。

違法性を主張して削除する方法

運営元に報告しても削除されなかったコメントについては、違法性を主張し、裁判所を通じて削除請求を行うこともできます。この場合、名誉毀損にあてはまるかどうかを検討するケースが多いです。名誉毀損とは名誉権の侵害を意味し、成立すれば損害賠償金などが支払われることもあります。

名誉毀損は、「公然と事実を摘示し人の名誉を毀損した場合」に成立します。漫画家への「この作者、子ども虐待してるよ。こないだも児相に通報されたらしい。」というコメントの場合、虐待の事実が無いならば名誉毀損が成立する可能性は高いです。

ただし、たとえ名誉毀損の要件を満たしたとしても、以下の三つの条件を満たしているのであれば、名誉毀損は成立しませんのでご注意ください。

  • 公共性がある
  • 公益性がある
  • 真実である又は真実相当性が認められる

名誉毀損の成立要件については、下記記事にて詳細に解説しています。

仮処分による削除

裁判所を通して削除請求をする場合、正式な裁判手続をしなくても、民事保全法に基づく仮処分という手続によって削除することができます。訴訟は、3-12ヶ月程度かかることが多く、1年以上かかってしまうこともあります。一方、仮処分は依頼から削除まで2-3ヶ月ほどですみやかに完了するケースが多いです。

仮処分は以下の流れで進行します。

  1. 仮処分の申立て
  2. 審尋
  3. 担保金の納付
  4. 仮処分命令の発令執行

仮処分を請求するためには、当該コメントに違法性がある旨を示す法的な主張と証拠が必要です。

なお、Instagramの運営会社はFacebook, Incという米国法人のため、手続の相手方は海外法人です。書面・証拠の英訳や、米国法人の登記取得をしたりしなければならないため、通常の弁護士費用に加えて実費(約20万円程)がかかります。削除仮処分については、下記記事にて詳細に解説しています。

投稿者の特定手続

悪質なコメントについては、投稿者の特定を検討することもできます。投稿者の特定に成功すれば、一連の手続にかかった弁護士費用や損害賠償金を請求することができます。

発信者情報開示請求については、下記記事にて詳細に解説しています。

まとめ

Instagramの利用者は多く、その手軽さと匿名性から、投稿に対し悪質な誹謗中傷コメントがつく場合があります。

自分の投稿に対しては自ら削除することができますが、他人の投稿へコメントされてしまった場合、簡単に削除することができません。運営元へ違反報告を行っても悪質なコメントが削除されない場合には、裁判所を通しての削除請求や投稿者特定手続を検討する必要があるでしょう。

一連の手続には高度な専門知識が必要ですので、豊富なノウハウを持つ弁護士に早めに相談しましょう。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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