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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

サイト売買・サイトM&Aの手続きと注意点とは

サイトM&Aとは、「サイト売買」とも呼ばれ、ウェブサイトやウェブサイトのコンテンツの売買を指します。近年、ウェブサイトを通してのビジネスが活性化し、ウェブサイトの資産価値が認知されつつあります。その流れの中で、サイトM&Aの件数は増加傾向にあり、注目度も高まっています。

サイトM&Aを行う場合、株式譲渡や事業譲渡などの一般的なM&Aと異なる手続や注意点はあるのでしょうか。本記事では、サイトM&Aを検討中の企業の方向けに、サイトM&Aの手順やサイトM&Aを行う際の注意点について解説します。

サイトM&Aとは

サイトM&Aとは、個人や企業が所有するサイトを売買することです。アクセス数の多いサイトを買って収益を得たり、管理するのにコストがかかるサイトを売って他の事業に集中したりするなど、サイトM&Aを行う目的はさまざまです。

サイトM&Aのメリット

サイトM&Aの譲渡人にとってのメリットは、なんといっても対価が得られることです。サイトを複数運営している個人や企業にとっては、不要なサイトを売って管理コストを減らしたり、他のサイトや事業に集中したりすることができるというメリットもあります。

譲受人にとっては、一からサイトを育てて収益を上げていく手間や時間を短縮できるといったメリットがあります。また、すでにある程度運用されて収益が安定しているサイトを買えば、サイト運営で失敗するリスクをおさえることもできます。

サイトM&Aの手順

サイトM&Aは、マッチングサイトに登録したり、M&A仲介会社へ依頼したりして行います。個人間で取引を行うこともできますが、交渉の決裂や音信不通などさまざまなトラブルが起きる可能性がありますので、マッチングサイトや仲介会社の利用がおすすめです。こうしたサービスを利用する場合の手順は、以下の通りです。

サイトを譲渡する場合

  1. マッチングサイトへ登録・マッチングサイトによる譲渡サイトの審査
  2. 仲介契約、秘密保持契約の締結
    M&A仲介会社に仲介を依頼する場合には、仲介会社と仲介契約および秘密保持契約を締結します。マッチングサイトを利用する際には、相手先企業と秘密保持契約を締結します
  3. 相手先と交渉
  4. 基本合意を締結
  5. 譲受人から監査を受け、事業譲渡契約を締結
  6. サイト移行

サイトを譲り受ける場合

  1. マッチングサイトへ登録
  2. PV数などの情報をもとに、譲り受けるサイトを検討
  3. 相手先と交渉
  4. 基本合意を締結
  5. 監査を行い、事業譲渡契約を締結
  6. サイト移行

サイトを譲り受ける場合は、収益を細かくチェックし、安定した収益が出ているかどうかや一つのアフィリエイト案件に依存していないかなどを見ておくようにしましょう

なお、アプリM&Aでの場合については、下記の記事にて解説しております。

サイトM&Aの取引相場

サイトM&Aで取引されるサイトの相場はどのくらいなのでしょうか。サイトの価格は、そのサイトのビジネスモデルや収益の多寡や安定性によりまちまちですが、多く取引されているのは50万円から100万円くらいと言われています

高めの価格で取引されるサイトは、アフィリエイトやアドセンスで長期間収益を上げ続けているサイトです。こうしたサイトでは、日々発生する業務があまりなく、手間をかけずに収益を上げられるため人気があります。また、たとえ現時点で収益があまり出ていなくても、アクセス数やPV数が多ければ、手を加えて将来的に収益を大きくすることもできるため、アクセス数やPV数も大きなポイントになります。逆に、収益が少なかったり、運営期間が短かったりするサイトは売れにくく、取引相場も低くなります。

ビジネスモデルや収益性だけでなく、サイトのSEO対策によっても価格は上下します。SEO対策の中でも、検索エンジンに評価される優良なコンテンツを多く載せている方法は「ホワイトハット」と呼ばれ、価格は高くなります。逆に、自演リンクを貼るなどして不正に検索順位を上げる方法は「ブラックハット」と呼ばれており、価格は低くなります。検索エンジンは定期的にアップデートしてブラックなサイトが検索上位に上がらないように対策していますので、ホワイトハットのサイトは需要が高いです。

サイトM&Aを行う際の注意点

サイトM&Aには、サイトの売買という特性上、一般的なM&Aとは違った注意点があります。サイトにアクセスできなくなるなどのトラブルが起きないように、慎重に手続を進めていく必要があります。

引継ぎの手続はサイトの性質により異なる部分もありますが、どのようなサイトであっても気を付けるべき点を以下でご説明します。

ドメインの移管

ドメインの権利が譲渡されていないと、更新がなされずドメインが使えなくなってしまうこともありますので、気をつけましょう。

コンテンツの移管

サイトに載せている画像や記事などのコンテンツを譲受人に引き渡す際には、そのコンテンツの所有権や著作権を誰が持っているかに注意しなければなりません。

外部の写真家やライターに依頼して画像や記事を作成してもらった場合、契約の内容によっては、コンテンツの所有権や著作権がサイトの所有者に移転しておらず、写真家やライターが持っているケースもあります。コンテンツの権利の所在を契約書で確認し、サイトの所有者に権利がなかった場合は、サイトの所有権を移転してもそれらのコンテンツを載せられるように許可を取らなければなりません

サーバーの引継ぎまたは移管

サーバーは、既存のものを引き継いでも新たなサーバーを立ち上げてもかまいません。既存のサーバーを引き継ぐ場合は、サーバー管理会社に名義変更を申請しましょう。他のサーバー管理会社に移管したい場合は、新たにサーバーを立ち上げて移管することもできます。

サイト運営に関する実務作業の引継ぎ

サイトを運営するための実務作業(更新やメンテナンスなど)については、なるべく詳細なマニュアルを作って、譲受人に引き継ぎましょう。また、サイトの運営や記事の投稿などを外部のスタッフに委託している場合は、サイトの所有者が変わる旨を通知し、変更契約を締結したり、新たな契約を締結したりするなどして、運営を継続してもらいましょう。

まとめ

サイトM&Aには、通常のM&Aとは別の注意点があり、個人間で進めるにはさまざまなリスクを伴います。サイトM&Aを成功させるためには、法律やインターネットビジネスに関する高度な専門知識が必要です。サイトM&Aをお考えの場合は、案件を多く扱っている弁護士へ相談するのがおすすめです。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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