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二重価格表示とは?景品表示法に違反しないためのポイントや罰則についても解説

「通常価格から半額!」など、他の価格との比較により、消費者に対して販売価格の安さを強調することは日常的に利用されている価格表示の方法です。しかし、場合によっては、このような二重価格表示は、景品表示法上の不当表示として、罰則の適用対象となるおそれがあります。

とはいえ、そもそも、どのような価格表示が二重価格表示であり、それがどのような場合に景品表示法に違反する不当表示に該当するのかは、実は判断するのが難しい問題でもあります。

そこで、本記事では、景品表示法と二重価格表示の関係や、景品表示法に抵触しないために注意すべきポイントについて解説します。

景品表示法とは

景品表示法とは、事業者が不当な手段を用いて顧客を誘引することを防止して、一般消費者の利益を保護することを目的とした法律です。

そのために、景品表示法は、次の行為に関して規制しています。

  • 商品やサービスの品質、内容、価格等の表示(不当表示の禁止
  • 景品類の提供(景品類の制限及び禁止

本記事では、二重価格表示との関係で、「不当表示の禁止」のみ解説しますが、景品類に関する規制については、下記記事でも解説していますので、あわせてご参照ください。

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不当表示として主に禁止されるのは、次の2つです。

  • 優良誤認表示
  • 有利誤認表示

「優良誤認表示」とは、自己の供給する商品または役務の内容について、実際のものや競合する他の事業者のものよりも「著しく優良」であると一般消費者に対し示す表示をいいます。

他方、「有利誤認表示」とは、自己の供給する商品または役務の取引条件について、実際のものや競合する他の事業者のものよりも「著しく有利」であると一般消費者に誤認される表示をいいます。

つまり、景品表示法は、二重価格表示それ自体を禁止しているわけではなく、上記のような不当表示(とりわけ有利誤認表示)に該当するような二重価格表示を禁止している、ということです。

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二重価格表示とは

二重価格表示とは

消費者庁の価格表示ガイドラインによれば、二重価格表示とは、

事業者が自己の販売価格に当該販売価格よりも高い他の価格(以下「比較対照価格」という。)を併記して表示するもの

とされています。

例えば、「当店通常価格2,000円のところ、30%オフのセール価格で1,400円」という価格表示であれば、販売価格がセール価格の1,400円、比較対照価格が通常価格の2,000円ということになります。

二重価格表示は、表示内容が適正であれば、むしろ消費者の商品選択に資する側面があり、また、競争業者よりも低価格を実現することは企業努力の賜物であるため、これを禁止することは、競争原理に反することになりかねません。

そこで、価格表示ガイドラインでは、次のような二重価格表示が不当表示に該当するおそれがあると指摘されています。

  • 同一ではない商品の価格を比較対照価格に用いて表示を行う場合
  • (同一の商品であるとしても)比較対照価格に用いる価格について実際と異なる表示やあいまいな表示を行う場合

商品の同一性は、主に銘柄、品質、規格等から判断されますが、同一でない商品の比較であるからといって、直ちに不当表示となるわけではありません。ただし、同一でない商品の価格を比較対照価格として表示する場合には、消費者に誤認を与えないように、品質等の違いを明記することが望ましいとされています。

他方で、同一の商品であるとしても、比較対照価格にはさまざまなものがありうるため、比較対照価格の類型に応じて不当表示になるか否かを考える必要があります。

比較対照価格に用いられるものには、主に次のようなものがあります。

  • 過去の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示
  • 将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示
  • 希望小売価格を比較対照価格とする二重価格表示について
  • 競争事業者の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示について

ここでは、上記のうち、特に多い「過去の販売価格」を比較対照価格とする二重価格表示について、主に解説します。

期間限定セール等で、「当店通常価格」や「セール前価格」といった過去の販売価格を表示することで、セール期間中の販売価格の安さを強調するものをよく見かけるでしょう。例えば、上記の「当店通常価格2,000円のところ、30%オフのセール価格で1,400円」という表示は、この類型に含まれます。

上記のとおり、本当にセールの実態があるのであれば、消費者にとっては有益でありこれを禁止する理由はありません。

もっとも、例えば、セール対象商品の販売開始時点で、セールの実施やセール価格等があらかじめ決定されていた場合、セール前の販売は、セールの安さを強調するための一時的な実績作りと考えられることから、一般消費者にセール時の販売価格が安いものとの誤認を与えるおそれがあります。

そこで、価格表示ガイドラインでは、比較対照価格が「最近相当期間にわたって販売されていた価格」であるか否かを基準として、不当表示の該当性を判断するとされています。

具体的には、次の要件をすべて満たす場合、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」であるとして、不当表示に該当しないものとされています。

  • セール開始時点からさかのぼって8週間(「最近時」:8週間未満なら当該期間)のうち半分以上の期間、比較対照価格で販売していた(「8週間ルール」とも言われます)
  • 比較対照価格で販売されていた期間が通算で2週間以上
  • セール開始時点で、最後に比較対照価格で販売した日から2週間以内

二重価格表示等が不当表示に該当する具体例

「当店通常価格2,000円のところ、30%オフのセール価格で1,400円」という表示を具体例として考えてみましょう。

比較対照価格に用いる価格について実際と異なる表示やあいまいな表示を行う場合

実際の通常価格は1,800円であったなど。

比較対照価格での販売実績がない場合

当該商品は今回初めて販売されるものであった、または過去に販売されていたが2,000円で販売されたことはないなど。

比較対照価格での販売期間が短期間である場合

過去の販売期間(8週間)のうち、2,000円で販売されていた期間が当初の3週間だけで、その後の5週間は1,800円で販売されていたなど。

2週間以上前の過去の販売価格を比較対照価格とする場合

2,000円で最後に販売していたのが半年前であるなど。

同一ではない商品の価格を比較対照価格とする場合

長期間展示品として使われていたなど、新品とはみなされない商品について、当該商品と同一の商品の新品の通常価格である2,000円を比較対照価格として表示するなど。

その他の二重価格表示の類型について

以上は「過去の販売価格」を比較対照価格とする場合を念頭に置いたものですが、上記の「将来の販売価格」等を比較対照価格とする場合にも、主に次のような点に注意するとよいでしょう。

  • 将来において当該価格で販売することが、需給状況等にかかわらず確定している場合を除き、将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示(「お試し価格」などの表示)は行わない。「お試し期間」等の終了後も、お試し価格での販売が継続されていないか。
  • 製造業者等の希望小売価格等を比較対照価格とする場合、当該価格が製造業者等のカタログログやパンフレット等で公開(個別の問い合わせが必要な場合は含まれない。)されているか。
  • 市価や特定の競争事業者の販売価格を比較対照価格とする場合、競争事業者の最近時の販売価格を正確に調査するとともに、特定の競争事業者の場合には、当該事業者の名称も明記する。

これらの具体例については、価格表示ガイドラインも併せて参照することをお勧めいたします。

違法な二重価格表示に対する罰則

二重価格表示が不当表示に該当する場合、罰則として、措置命令とともに、課徴金納付命令が下される場合がありえます。

措置命令

「措置命令」とは、消費者庁が事業者に対して主に以下のような措置を講じることを命じることをいいます。

  • 不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除
  • 再発防止策の実施
  • 今後同様の違反行為を行わないこと

課徴金納付命令

また、「課徴金納付命令」とは、措置命令とともに、当該行為を行った事業者に対して、不当表示により得た商品やサービスの売上額に3%を乗じた額を最長で3年分納付することを命じるものです。当該行為が長期にわたって行われた場合には、課徴金が高額になることも少なくありません。

ただし、場合によっては、課徴金納付命令が命じられないケースや課徴金が減額されるケースもありえます。

<課徴金納付が命じられないケース>

  • 事業者が表示の根拠となる情報を確認する等、正常な商習慣に照らして必要とされる注意をしていたため「相当の注意を怠った者でない」と認められる場合
  • 算出した課徴金額が150万円未満である場合、つまり、課徴金対象行為によって売り上げた商品・サービスの総額が5000万円未満である場合

<課徴金額が減額されるケース>

  • 課徴金対象行為に該当する事実を消費者庁長官に自主申告した場合
  • 返金措置の実施に関する計画を作成して消費者庁長官の認定を受ける等、所定の手続きに従って消費者に対して返金措置を行った場合

まとめ:二重価格表示については弁護士にご相談を

まとめ:二重価格表示についてお悩みなら弁護士にご相談を

セール価格や割引率の二重価格表示は、消費者への誘引力が強く、店舗等でも日常的に行われている販売手段です。しかし、その誘引力の強さゆえに、行き過ぎた二週価格表示は、景品表示法上の不当表示に該当するおそれがあります。

さらに、不当表示に対する罰則は、企業の信用を低下させるだけでなく、場合によっては課徴金の額も莫大になるおそれもあります。

消費者庁が公表する価格表示ガイドラインは、二重価格表示等が不当表示に該当するか否かの判断基準や具体例を示してくれていますが、実際に不当表示等に該当するとして景品表示法に抵触するか否かは、様々な事情を考慮した専門的判断を必要とするケースも少なくありません。

商品やサービスの価格表示でお悩みの場合は、弁護士にご相談ください。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。近年、ネット広告をめぐる優良誤認などの景品表示法違反は大きな問題となっており、リーガルチェックの必要性はますます増加しています。当事務所はさまざまな法律の規制を踏まえた上で、現に開始したビジネス、開始しようとしたビジネスに関する法的リスクを分析し、可能な限りビジネスを止めることなく適法化を図ります。下記記事にて詳細を記載しております。

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弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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