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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

Yahoo!知恵袋でID非公開の人物を特定する方法を弁護士が解説

風評被害対策

Yahoo!のイメージ画像

Yahoo!知恵袋には、日々多くの質問や回答が投稿されています。Googleなどの検索エンジンで関連するワードを検索するとヒットすることも多いので、見たことのある方もたくさんいるでしょう。

しかし、誰もが気軽に質問や回答を投稿できてしまうため、中には、誹謗中傷や名誉毀損に該当すると思われるような投稿がされる可能性もあります。

加えて、Yahoo!知恵袋は、ID非公開による投稿が可能であるため、複数の投稿で一致するIDから投稿者の同一性を判断するなどの方法により個人を特定することが事実上難しいという特徴もあります。

そこで、この記事では、Yahoo!知恵袋に悪質な質問や回答が投稿された場合に、その投稿者を特定する方法について、法的観点から解説します。

Yahoo!知恵袋とは

知恵袋のイメージ画像

Yahoo!知恵袋とは、Yahoo!JAPAN(ヤフー株式会社)が運営するナレッジコミュニティであり、利用者が質問や回答をすることにより、知恵を共有することができるサービスです。

Yahoo!知恵袋には、芸能人、料理、健康、恋愛相談、人間関係の悩みなどさまざまなジャンルのカテゴリがあり、復縁の方法など友達や家族に相談しにくい日常的な悩みごとから専門的な事柄まで、多種多様な質問・回答が投稿されています。

Yahoo! JAPAN利用規約

Yahoo!知恵袋に投稿される悪質な質問や回答の例

Yahoo!知恵袋の投稿内容イメージ画像

Yahoo!知恵袋は、Yahoo! JAPANへログインした上でYahoo!知恵袋への利用登録を行えば、誰でも質問や回答が可能です。

そのため、下記のような誹謗中傷や名誉毀損にあたると思われる内容が投稿される場合があります。

  • 「○○旅館の温泉に有害な菌が繁殖してるって噂は本当ですか?」
  • 「△△レストラン、食中毒起こしたのに隠してるらしいですよ」

このような場合は、投稿の右下にある「違反報告」ボタンから違反報告を行い、Yahoo!知恵袋の「利用のルール」の禁止事項に該当すると判断されれば、投稿の削除が行われる可能性があります。

Yahoo!知恵袋「利用のルール」に列挙されている禁止事項は、以下の通りです。

禁止事項1: 過度な批判、誹謗(ひぼう)中傷など他人を攻撃したり、傷つける内容の投稿や、他人を不快にさせる内容の投稿
禁止事項2: わいせつや暴力的、過激な描写等を含む不愉快な内容の投稿
禁止事項3: 法令違反行為や犯罪行為の誘発や予告を内容とする投稿
禁止事項4: 商業目的や広告目的で利用すること
禁止事項5: 個人を特的できる情報の投稿
禁止事項6: 著作権など第三者の知的財産権を侵害すること
禁止事項7: サービス運営を妨害する行為
禁止事項8: 質問、回答の投稿になっていないものや、なっていたとしても文意をなさない投稿
禁止事項9: なりすまし行為や自作自演
禁止事項10:勧誘や呼びかけ投稿の行為
禁止事項11:明らかな偽情報に関する投稿
禁止事項12:その他Yahoo! JAPANが不適切だと判断するもの

利用のルール – Yahoo!知恵袋

もっとも、違反報告を行ったとしても、必ずしもその投稿が削除されるとは限りません。

違反報告を行っても悪質な質問や回答が削除されない場合や、その投稿により被った損害が甚大である場合などは、法的な投稿者特定手続を検討しましょう

Yahoo!知恵袋の投稿者特定手続

悪評を投稿する人

投稿者を特定するための一般的な手続の流れは、以下の通りです。

  1. IPアドレスの開示
  2. ログの保存請求
  3. 住所氏名の開示請求
  4. 損害賠償請求

Yahoo!知恵袋についても基本的には同様の流れとなるため、上記の各手続について、以下で詳しく解説していきます。

手順1:IPアドレスの開示請求

Yahoo!知恵袋の悪質な投稿者を特定するために最初に行わなければならない手続は、サイト管理者に対するIPアドレスの開示請求です。

IPアドレスとは

IPアドレスとは、ネットワーク上にある機器(PCやスマホなど)を識別するために割り当てられた番号で、いわば、インターネット上における住所のような情報です。

記事の冒頭で述べたように、Yahoo!知恵袋はID非公開による投稿が可能であるため、ID等から投稿者を特定することは事実上困難です。

しかし、Yahoo!知恵袋を利用するためには、Yahoo! JAPANに登録している自身のアカウントにログインする必要があります。

そして、このログインの際に用いられたIPアドレスを、サイト管理者であるYahoo! JAPANは取得・保存しています。

ログイン時のIPアドレスが分かれば、当該ログイン時に経由したサーバー及び当該サーバーの管理者(経由プロバイダ)を特定できるため、当該経由プロバイダに対して上記IPアドレスが割り当てられていた契約者情報(住所・氏名等)の開示を請求することで、投稿者を特定することができます。

したがって、投稿者を特定するためには、まず、サイト管理者に対してIPアドレスを開示してもらう必要がある、というわけです。

投稿者のIPアドレス開示請求

IPアドレスの開示請求は、仮処分という手続によって行うことができます。

仮処分とは、民事保全制度の一種で、裁判所が決定する暫定的措置です。

また、この手続では、IPアドレスの開示とともに、投稿の削除も同時に求めることが可能です。

先述の通り、悪質な投稿に対して違反報告を行ってもYahoo! JAPANが必ず対応するとは限りません。

したがって、違反報告をしても削除されない場合や精神的苦痛が大きい場合などは、法的拘束力をもつ仮処分による方法を検討した方が良いでしょう。

なお、Yahoo!知恵袋の”質問や回答を削除”する方法については、下記記事で詳細に解説しています。

投稿の違法性を主張・立証

Yahoo!知恵袋「利用のルール」によれば、禁止事項に該当する質問や回答が投稿された場合、Yahoo! JAPANは投稿の削除などを行うことができるものとされています。

個人情報の書き込み、法令に違反するもの、悪質なリンク、他人を不快にさせるもの、誰かを著しく傷つけたり、攻撃したりするような内容を含む投稿は、利用規約違反と見なし、質問・回答を削除する場合があります。また、悪質な場合は、Yahoo! JAPAN IDの削除や、罰則の対象となります。

利用規約違反とは

もっとも、上記「利用のルール」は、あくまでYahoo!知恵袋の内部的なルールに過ぎないため、違法性が認められるかは別の問題です。

そこで、裁判所にIPアドレスの開示請求をする場合には、その質問や回答の違法性を根拠づける法的な主張や、当該違法性を立証するための証拠を検討することが必要です。

手順2:ログの保存請求

先述のとおり、IPアドレスの開示命令が出て、サイト管理者よりIPアドレスが開示されれば、経由プロバイダを特定できます。経由プロバイダは、当該IPアドレスを使用している者の通信記録(ログ)を保存しています。

しかし、ログは永久に保存されているわけではなく、携帯回線などは3ヶ月ほどで削除されてしまうこともあります。

このため、ログを保存するために、裁判所からプロバイダに対してログの削除禁止命令を出してもらう必要があります。

この禁止命令は、IPアドレスの開示請求等とはまた別の裁判手続により発令してもらわなくてはなりません。

もっとも、経由プロバイダに対して、「これから投稿者の住所氏名の開示請求手続を行うので、開示命令が出るまでログを保存しておいてほしい」という旨の通知を出せば、仮処分によらなくてもログを保存しておいてもらえることも多いです。

そのため、まずはこのような通知を出すことを考えたほうが良いでしょう。

ただし、上記通知を行うにも、該当する投稿の違法性を主張・立証する必要があり、専門知識が必要なため、弁護士に依頼することをおすすめします。

手順3:住所氏名の開示請求

ログの保存請求をした後、経由プロバイダに対して、投稿者の住所氏名等を開示請求します。

住所氏名の開示請求は、暫定的措置である仮処分ではなく、終局的な裁判手続を経る必要があります。

そのため、裁判所は、投稿の違法性について、仮処分の際よりも慎重に検討を重ねたうえで、当該投稿の違法性を最終的に認めた場合にのみ、住所氏名の開示命令を出すことになります。

どのような場合に投稿の違法性が認められるかについては、下記記事などで詳しく解説しています。

手順4:損害賠償請求

投稿者の住所氏名が開示されると、一連の手続に要した弁護士費用や損害に対する慰謝料などを請求することができます。

損害賠償金がきちんと支払われ、それを弁護士費用にあてることができれば、被害者の金銭負担はありません。

ただし、投稿者の特定ができずに終わることや、投稿者を特定し損害賠償を請求できたとしても、受け取った損害賠償金が一連の弁護士費用に満たないこともあります。

この点については、下記記事で詳しく解説しています。

裁判所を通さずにYahoo!知恵袋で誹謗中傷した人を特定するには

誹謗中傷した人を特定するイメージ画像

Yahoo! 知恵袋では匿名での投稿が可能ですが、Yahoo! JAPANのアカウントと紐づけされているため、大元のYahoo! JAPANが投稿者の住所氏名を把握している場合があります。

そのため、Yahoo! JAPANに対して投稿者の情報を開示してもらうよう請求を行い、住所氏名の情報を得ることができれば、投稿者に対して損害賠償請求をすることも可能です。

もっとも、Yahoo! JAPAN側からすれば書き込みをした人物は顧客であり、個人情報保護の観点からも、「裁判所による公的判断が下されない限り開示請求には応じられない」として、任意の開示請求に応じてくれるケースは少ないのが現状です。

Yahoo!知恵袋の削除が困難な場合は弁護士に依頼しよう

法律相談をする人たち

Yahoo!知恵袋は、身近な人には聞きづらい疑問や悩みを気軽に相談でき、回答が得られるとても便利なサービスです。

しかし、中には悪質な質問や、誹謗中傷にあたるような回答が投稿される場合もあります。

悪意のある質問や回答の投稿者を特定するためには、複数の裁判手続を経る必要があり、また、それぞれの手続も複雑です。

Yahoo!知恵袋の悪質な投稿に悩まされている場合は、インターネット上の誹謗中傷対策や名誉毀損対策に詳しい弁護士へ早めに相談してみましょう

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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