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風評被害対策

中古車販売店への悪質な口コミを仮処分で削除する方法

風評被害対策

自分の車を売ったり、中古車を買ったりしようと考えたときに、ネットの口コミを参考にして販売店を選ぶことも多いでしょう。

ユーザーにとって、販売店選びの際に口コミを確認できるのはとても便利ですが、中には悪質な口コミが投稿されている場合もあります。

この記事では、悪質な口コミが書き込まれた中古車販売店の方向けに、口コミの削除方法を解説します。

中古車販売店の口コミが投稿される可能性のあるGoogleマップの口コミを削除する方法については、以下の記事をご参照ください。

中古車販売店への悪質な口コミ

中古車販売店の口コミは、「カーセンサー」などのサイトでチェックすることができます。接客や雰囲気などの評価や口コミが投稿されており、どんなお店なのかイメージしやすくなっています。

ただ、売買価格で折り合わなかったり、スタッフの接客に顧客が不満を持ったりした場合などにネガティブな口コミが投稿される可能性もあります。

悪質な口コミが投稿されれば、その販売店の来客数や取引数が減るなどの被害が発生する可能性があります。そのため、事実と異なる悪質な口コミは、何らかの方法で削除する必要があるでしょう。

口コミサイトへの削除依頼

悪質な口コミが投稿されている場合、口コミサイトの利用規約を確認し、削除依頼をしましょう。

利用規約により、誹謗中傷やプライバシーの侵害にあたる口コミは禁止されていることが多いです。

ただ、削除依頼をしたとしても、必ず削除してもらえるとは限りません。誹謗中傷やプライバシーの侵害にあたるかどうかを判断するのは口コミサイトの運営者です。

ネガティブな口コミを全て削除してしまえば、口コミサイトとしての信ぴょう性もなくなってしまいますので、運営者が納得しなければ削除してもらえないこともあるでしょう。

裁判所に削除の仮処分申し立てを行う

削除仮処分とは

口コミサイトが口コミの削除依頼に応じなかった場合は、削除の仮処分申し立てを検討しましょう。仮処分とは、そのままにしておくと被害が発生し続けてしまう場合などに、裁判所が決定する暫定的処置を指します。

通常の裁判の場合、判決が出るまでに年単位の期間を要しますが、仮処分の場合は、数ヶ月で結果が出るケースが多いです。

口コミは、いったん投稿されてしまえば多数の人の目に触れ続けることになりますので、被害を最小限に抑えるためには早めに削除することが大切です。そのため、訴訟ではなく、仮処分申し立てが向いていると言えるでしょう。

仮処分は、文字通り仮の決定であるため、仮処分決定後に訴訟を起こすことになっていますが、実際は仮処分で削除が認められれば、口コミが削除されることがほとんどであるといえます

削除仮処分の方法

仮処分申立て

裁判所に申立書、疎明資料及び添付資料を提出し、削除仮処分の申立てを行います。申立書には、保全すべき権利の内容、権利侵害の事実、保全の必要性を記載します。

審尋

審尋では、裁判官と弁護士が議論する手続を指し、通常の裁判における口頭弁論のようなものです。

審尋の間隔は約1週間と短く、不当に遅延することはできません。そのため、次の審尋までの短い期間で不足していた資料や書面を作成する必要があります。

担保金納付

審尋を経て、その口コミに違法性があるものとされた場合、担保決定が出されます。その際、法務局へ担保金を供託することになります

仮処分の決定後、本訴で決定が覆り、その口コミに違法性がなかったものとされた場合、口コミ削除に関する損害賠償金を支払わなければならなくなるおそれがあります。

この担保金は、その場合の損害賠償金に充当されます。担保金は、担保権利者の同意を得たり、権利行使の催告により同意したものとみなされたりした場合などには返還してもらうことができます。

仮処分命令の発令

担保金の供託が行われた後、裁判所は口コミの削除を命じる仮処分命令を出します。上述しましたが、この命令が出されれば、多くの場合、口コミは削除されます。

執行

仮処分命令が出されても口コミの削除に応じない場合は、執行の申立てを行うことができます。

ただ、執行の申立てが必要になるケースはあまりないといえるでしょう。

誹謗中傷記事を仮処分で削除する方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

削除仮処分が認められるためには

仮処分は、民事保全法に基づく手続です。民事保全法第13条によれば、

保全命令の申立ては、その趣旨並びに保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を明らかにして、これをしなければならない。

ものとされています。

保全すべき権利とは

「保全すべき権利」とは、守るべき権利を指し、悪質な口コミの場合は、名誉権やプライバシー権を「保全すべき権利」とする場合が多いでしょう。

申立ての際には、「当該口コミは、○○権を侵害している」という主張を行う必要があります。名誉権の侵害を主張する場合であれば、その口コミが、以下の名誉毀損の要件

  • 公然と
  • 事実を摘示し
  • 人の名誉を毀損する

を満たしていることを主張する必要があります。単に「ネガティブな口コミを書かれた」というだけでは、削除命令を出してもらうことは難しいでしょう。

名誉毀損の要件については以下の記事で詳しく解説しています。

保全の必要性とは

保全の必要性とは、通常の裁判手続ではなく、仮処分により解決しなければいけない理由がある、ということです。ネット上に悪質な口コミが投稿されている場合、多くの人が日々その口コミを見ることになり、さらに拡散されるなどして被害が大きくなる可能性もありますので、保全の必要性について争われることはあまりないと言えます。

まとめ

中古車販売店について悪質な口コミが投稿されている場合、なるべく早く口コミを削除する必要があります。

仮処分による削除の申立てを成功させるためには、法的な主張を抜かりなく組み立てたり、説得力のある疎明資料を用意したりすることが重要です。

仮処分は、スピーディに終わる手続ですが、けして簡単な手続ではありません。

中古車販売店について書き込まれている悪質な口コミにお困りの場合は、ネット上の誹謗中傷案件を多く扱っている弁護士へ早めに相談するのが肝心です

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。

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弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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