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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

ネット上の誹謗中傷が信用毀損罪・業務妨害罪に該当するケースとは

風評被害対策

ネット上の誹謗中傷が信用毀損罪・業務妨害罪に該当するケースとは

インターネット上で行われる誹謗中傷に該当するようなウェブページや掲示板投稿などを削除したり、投稿者を特定したりするためには、「その記事は違法である」と主張する必要があります。この「違法」の理由として、まず検討されるべきなのは、名誉毀損(名誉権侵害)です。

ただ、営業上の信用を毀損するような行為であれば、刑法では、信用毀損罪・業務妨害罪に該当する場合があり、そうした投稿については、信用毀損・業務妨害といった主張を行う事になります。

刑法第233条

虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

こうした行為は違法であり、民事上も不法行為となります。

民法第709条

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

また、民法上の一般的な不法行為責任とは別に、不正競争防止法(不競法)2条1項14号により、営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する不正競争に対しては、停止や予防の請求や損害賠償の請求ができます。ただし、不競法上の信用毀損行為の当事者は、競争関係にあることが必要です。では、実際には、どういう場合に「信用を毀損した」と判断されるのでしょうか。典型的な「信用を毀損した」とされた事例を見てみましょう。

mixi内のコミュニティへの書き込みが信用を毀損したとされた事例

mixiでの書き込みが信用毀損とされた事例を紹介します。

ソーシャルネットワーキングサイト「mixi」内のコミュニティ「接骨院・整骨院の経営を考える」に、「大阪で柔整団体そのものに検察の手が入り、実に21億円もの組織的保険金詐欺が発覚した事に端を発し、各柔道整復師の所属団体別に闇の整骨院・接骨院への官憲臨検が開始されていることです。実際に、これを受けた院は倒産してしまいます」「会員請求分に会員が全く知らない間にレセプトを付け増し増額請求して受給を得ており、この状況で一旦、査察が入ると会員に要求される保険者からの賠償返還金は莫大な金額になり、あえなく破綻し一家心中か夜逃げと悲惨な実態です」などと、自称「整骨鍼灸マ院開業・柔整学校創設・健保取扱・保険取扱団体設定などのプロフェショナル(専門)プロデューサー」が書き込んだ事例があります。

「全柔協」と通称され、柔道整復師や鍼灸師の組合員を擁する協同組合であり、柔道整復師や鍼灸師の養成校である学校法人平成医療学園も設立している原告が、民法709条に基づく名誉・信用毀損と、不正競争防止法2条1項14号に基づく営業誹謗に対する無形損害の支払いを求めて提訴し、これに対して大阪地方裁判所は、

一般的な読者(本件コミュニティのメンバー)の通常の注意と読み方を基準とすれば、原告に対し検察による捜査が行われ、原告に所属すると不利益を被るとの事実を摘示するものと認められる。そうすると、本件書き込み2が示した事実は、原告の社会的評価・信用を低下させるものといえるから、原告は、本件書き込み2によって名誉・信用を毀損されたものと認められる。


大阪地方裁判所2010年10月21日判決

として、被った無形損害50万円と弁護士費用5万円の支払いを被告に命じました。ただし、被告が原告と競争関係にあると認めることはできないとして、原告の不正競争防止法に基づく請求は認めませんでした。

不正アクセス行為が信用毀損行為とされた事例

オンラインゲームの提供者の元従業員がその運営管理プログラムに不正アクセス行為を行いゲーム内の仮想通貨の保有量を増やし、これを仮装通貨やアイテムを現実の金銭で取引する業者に売却した行為が当該提供者の信用を毀損する不法行為に該当するとして、当該提供者が元従業員に対して損害賠償を求めた事例があります。この元従業員はすでに不正アクセス行為の禁止等に関する法律違反で起訴され、懲役1年、執行猶予4年の有罪判決を受けており、当該案件での民事訴訟ですが、東京地方裁判所は、

原告は、本件オンラインゲームのゲーム内のシステムなどの維持、管理権を有していたところ、被告は本件管理運営プログラムに不正アクセスし、データを改ざんして、本件仮想通貨の数値を増やし、それをRMT業者に販売することによって、本件オンラインゲーム内においては、現実の通貨と類似した機能を持つ本件仮想通貨の流通量が大幅に増大させたものであるが、こうした原告の行為は、原告の本件オンラインゲームの管理権及び本件仮想通貨を含むゲームシステムや原告の管理体制などに対する信用を毀損する行為であり、原告との関係で不法行為を構成するものといえる。


東京地方裁判所2007年10月23日判決

として、信用毀損に関する損害額として300万円と弁護士費用30万円の合計330万円の支払いを命じました。実際に信用毀損によりゲーム課金収入等に悪影響があったであろうこと、本件について多くの報道がされるなどしたため本件オンラインゲームのユーザー以外に対しても一定の影響があったと考えられることを考慮して、信用毀損が認められた事例です。

信用毀損における信用の範囲に関する判例

コンビニエンスストアで買った紙パック入リオレンジジュースに家庭用洗剤を注入した上、警察官に対して、異物が混入していたという虚偽の申告をし、報道機関に、コンビニエンスストアで異物の混入されたオレンジジュースが陳列、販売されていたことを報道させたという事例があります。これは刑事裁判ですが、信用毀損における「信用」の範囲を広げたものとして、いろいろなところで引用される判決です。最高裁判所は、

刑法233条が定める信用毀損罪は、経済的な側面における人の社会的な評価を保護するものであり、同条にいう「信用」は、人の支払能力又は支払意思に対する社会的な信頼に限定されるべきものではなく、販売される商品の品質に対する社会的な信頼も含むと解するのが相当である。


最高裁判所2003年3月11日判決

とし、「被告人は、粗悪な商品を販売しているという虚偽の風説を流布して、上記コンビニエンスストアが販売する商品に対する社会的な信頼を毀損した」として、懲役1年6月、執行猶予3年の1審に対する上告を棄却し、刑が確定しました。これまでは、「人の支払能力又は支払意思に対する社会的な信頼」を毀損しない限り、信用毀損罪は成立しないとされていたのですが(大審院大正5年12月18日判決・及び大審院昭和8年4月12日判決)、信用を支払いに関する信用に限定すべき事情はありません。この判決を受け、現在では「企業が販売する商品や提供するサービスの品質を貶めるような虚偽情報を伝達する行為」においても、信用毀損罪が成立するとされています。

サイトへの誹謗中傷の書き込みが信用毀損行為とされた事例

最後に、誹謗中傷が信用毀損とされた事例を紹介します。

海釣り用のボートを購入した客が、ボートの沈没事故についてボートを製造した会社及びその代表者の対応に不満を持ち、自らが開設したホームページ掲示板に、ボート製造会社を攻撃する発言を書き込み、これに呼応した読者が誹謗中傷を次々と書き込むのを放置したため名誉を毀損されたとして、当該発言をした読者B及びこれを放置したホームページ管理者Aに対し、同会社と代表者Cが損害賠償を求めた事例があります。

ボート購入者であるAは、沈没の原因はボートの欠陥にあると主張したのですが、実際には、Aが製造会社や代表者に相談することなく補機エンジンをボート船尾の未補強部分に取り付けたことが事故の原因でした。しかも、沈没事故はボート引き渡しから約3年4か月後であり、同規模のボートに係る売買契約書にはその品質保証期間を一年と明記しているのが通常であることからすれば、本件ボートの品質保証期間も同程度とみるのが合理的であり、しかも前記のような本件補機エンジンの設置という特殊事情下では、製造会社が品質保証責任を負うことはない、と裁判所は判断しました。

Aは、補機エンジンをボート船尾の未補強部分に取り付けたというような「本件沈没事故について最も重要な事実を隠ぺいして、事情を知らない多くの読者に誤解ないし誤った先入観を抱かせ本件書込み行為に参入させたというべきであって、インターネット上で展開される言論社会の自由かつ健全な発展を図る上で欠くことのできない要因である公正、公平に違背するものである」とされました。

また、Aに呼応したBは、「本件沈没事故についてその原因等の事実関係を正確に把握しようとする姿勢もなく、インターネットによる人身攻撃のエスカレートしていく効用を利用して思いつくままに読者に対し控訴人らへの攻撃を煽り立てるような攻撃的で過激な批判的文言を書き込んで本件書込みの継続に影響を与えた」とされました。

彼らの記事によって、この海釣り用ボートは一艇も売れなくなり、事実上ボートの製造販売について廃業に追い込まれてしまいました。東京高等裁判所は2009年6月17日、

  • Aに対し、本件掲示板に発言を書き込んだこと、Bの発言等を放置したことによってCが受けた精神的苦痛に対する慰謝料として50万円、その弁護士費用5万円、C会社が受けた信用毀損による無形の経済的損害として100万円、その弁護士費用10万円
  • Bに対し、本件掲示板に発言を書き込んだことによってCが受けた精神的苦痛に対する慰謝料として15万円、その弁護士費用1万円、C会社が受けた信用毀損による無形の経済的損害として30万円、その弁護士費用3万円

の支払いを命じました。名誉毀損と信用毀損を認定し、無形の損害を認めた判決となりました。

まとめ

会社にダメージを与える最も安易な方法は「信用を台無しにすること」です。資金繰りが苦しい会社の場合、「あの会社はそろそろ倒産しそうだ」という噂を立てられたら、ひとたまりもありません。信用というのは作るのに時間がかかりますが、壊すのは簡単なのです。インターネット以前から信用毀損はいろいろな手口で行われてきましたが、ネットが普及した現在では、「ネットに噂を流す」という方法がとられるようになってきました。ネット上での信用毀損は伝搬する範囲が広くなりますし、スピードが速いので、即座に対応しなければ、取り返しのつかないことになりかねません。信用毀損罪は、名誉毀損や侮辱罪と違い親告罪ではなく、告訴がなくても警察は動くことができます。しかし実際は、申告しないと警察は動かないケースがほとんどであるため、また動いてくれたとしても時間がかかるため、親告罪に近いものとして、対処する必要があります。手遅れにならないうちに、速やかに、弁護士に相談し、適切な対応をとることが必要です。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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