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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

好き嫌い.comで誹謗中傷された場合の投稿者特定方法を解説

風評被害対策

好き嫌い.comで誹謗中傷された場合の投稿者特定方法を解説

「好き嫌い.com(好き嫌いドットコム)」は「好き」か「嫌い」かのどちらかを投票し、コメントを投稿して、芸能人や有名人の好き嫌いを共有するサイトです。

好きな者同士が集まって情報を交換したりする楽しいコミュニティとなるはずですが、悪質なコメントが多くなり誹謗中傷の場となっています。

ここでは、好き嫌い.com上で誹謗中傷された場合に、投稿者を特定する方法を解説します。

なお、削除の方法に関しては、弊所別記事にて解説しています。

https://monolith-law.jp/reputation/suki-kira-delete

好き嫌い.comはどんなサイトなのか

好き嫌い.comは、好き嫌い.com運営事務局が運営する、芸能人や有名人についての本音を語るサイトです。ランキングは下記の3つのカテゴリーに分けられています。

  • 「好感度ランキング」
  • 「不人気ランキング」
  • 「トレンドランキング」

各ランキングの下には「新着コメント」があり、芸能人の写真と最新コメントが投稿された時間が「1分前」「2分前」といった形で示されています。したがって、最新のコメントを書き込まれた芸能人が誰なのかわかるようになっています。

誰かの写真をクリックするか「検索」をすることによって芸能人や有名人のページを開くことが可能となり、最新のコメント20本を見ることができます。各コメントについては「good」と「bad」で、同意と不同意の評価ができます。

コメント欄では、

  • 「すべて表示」
  • 「好き派のみ」
  • 「嫌い派のみ」

を選択できます。中でも「すべて表示」を見る人が多いようです。

例えば、好きなお笑いタレントAさんのコメント欄に、年齢や芸歴が似ている別のお笑いタレントBさんの名前をあげて

「Bの方がずっと面白い」

と書いてあったとしましょう。

上記のコメントを見つけると、レス番号をあげ、

「お笑いが何かわかりもしないくせに偉そうに言うな」

と反応する人がいます。さらに、Bさんのコメント欄に行き、

「引退しちゃえばいいのに」

などと書き込む人も現れます。

結果、AさんとBさんのコメント欄は互いの悪口を言い合う場となり、誹謗中傷するコメントで溢れかえることになってしまいます。

AさんとBさんは関与していないにもかかわらず、炎上騒ぎとなってしまう場合があります。特にデビュー間もない新人や若手の場合には、悪意のある嘘のコメントや誇張されたネガティブなコメントによる被害が拡大しないうちに、早期に削除する必要があるでしょう。

しかし、削除しただけでは問題が解決しない場合もあります。明らかな嫌がらせや明確な目的があるコメントの場合、当該コメントを削除することはできても、同一人物から悪意あるコメントを繰り返し投稿されたり、別のプラットフォームに記事を転載されたりする可能性があるからです。

上記のような事態を防いで、問題を完全に解決するためには、投稿者を特定して法的な手段をとり、責任を追及する必要があります。

名誉毀損罪や侮辱罪にあたるコメントが投稿されることも

コメントの内容が名誉毀損罪や侮辱罪に該当する場合は、投稿者に対して刑事責任を追及することが可能です。

名誉毀損罪は刑法230条で下記のように規定されています。

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

刑法第230条1項

例えば、ある芸能人について「犯罪歴がある」「不倫していた」などの具体的な事実が示されたコメントがあれば名誉毀損罪の対象となる可能性が高いです。

名誉毀損罪についてより詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

具体的な事実が示されていない場合には、侮辱罪によって刑事責任を追及できる可能性があります。

侮辱罪は刑法231条に規定されている犯罪です。条文は、下記の通りです。

事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

刑法第231条

具体的な事柄ではない「ブス」「アホ」などの侮辱的な表現は、侮辱罪に該当する可能性があります。

投稿者の特定には発信者情報開示請求が必要

悪質なコメントや虚偽のコメントの投稿者に対して法的な手段をとり、責任を追及するためには対象者の氏名や住所を知る必要があります。

匿名投稿である好き嫌い.comの投稿者の氏名や住所を知るためには、管理人(運営会社)に対して発信者情報開示請求を行い、投稿者の情報を開示するよう求めます。

発信者情報開示請求とは、プロバイダ責任制限法(正式名称「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」:平成14年5月27日施行)第4条に基づく情報開示請求です。

ネット上で他者を誹謗中傷するなどした発信者、つまり犯人の情報(住所・氏名・登録された電話番号等)について、情報を保有しているプロバイダに対して開示するように求める制度です。

まず、プロバイダについて確認しておきましょう。

2種類のプロバイダとは

インターネットを利用している人はまず、「経由プロバイダ」(インターネット・サービス・プロバイダ)との契約が必要になります。

経由プロバイダとは、回線を通してインターネットに接続する事業者のことです。回線をインターネットに接続するには、経由プロバイダとの契約が必要となります。

固定回線のようなサービスだけではなく、携帯・スマートフォンの場合も同様です。

経由プロバイダを通じて、インターネット上のサービスを提供する事業者である「コンテンツ・サービス・プロバイダ」、端的に言えば「ウェブサイトやウェブサービスの運営者」が運営するサイトに接続する訳です。

上記のように、プロバイダには「コンテンツ・サービス・プロバイダ」と「経由プロバイダ」という2つの種類があることになります。

好き嫌い.comの投稿者特定のための手順

では、実際に好き嫌い.comの投稿者を特定するにはどのような手順を踏めば良いのでしょうか。

手順は全部で5つあります。

  1. 運営会社の特定
  2. IPアドレスとタイムスタンプの開示請求
  3. ログの削除禁止
  4. 発信者情報開示請求の訴訟
  5. 損害賠償請求や刑事告訴

以下で、5つの手順について詳しく説明していきます。

手順1:弁護士会照会による運営会社の特定

投稿者を特定するためにはまず発信者情報開示請求を行いますが、好き嫌い.comの運営会社は不明で、住所も公表していないため、そのままでは請求することができません。

運営会社が不明な場合の特定方法はいくつかあるのですが、好き嫌い.comには複数の日本企業の広告が掲載されています。広告を配信している代理店は、サイトに広告を掲載する契約をしているのですから、運営会社の情報を持っています。

つまり、運営会社の情報を広告代理店に教えてもらう事により、管理者を特定できる可能性があります。しかし通常、広告代理店は個人情報を教えてくれません。

そこで有効なのが、「弁護士会照会」です。下記の記事で詳しく解説しています。

弁護士会からの照会を受けた場合には、回答してくれる可能性が非常に高くなります。

そして、運営会社を特定することができれば、IPアドレスの開示請求を申請することが可能となります。

手順2:仮処分手続によるIPアドレスとタイムスタンプ開示請求

発信者情報開示請求が行われると、コンテンツ・サービス・プロバイダである好き嫌い.comの運営会社は、請求が法律上の要件を満たしているかどうかを判断し、開示するかどうかを決めることになります。

任意で開示請求に応じる場合もありますが、「裁判所による公的判断が下されない限り開示請求には応じられない」という対応が通常なので、好き嫌い.comを相手とした発信者情報開示の仮処分を申し立てることとなります。

プロバイダ側からすれば書き込みをした人物はお客様ですし、個人情報保護の観点からも任意の情報開示請求に応じるケースはほとんどないというのが実情です。

IPアドレスとタイムスタンプの開示を請求する場合には、正式な本訴訟という裁判手続ではなく仮処分という迅速な手続をとります。裁判はどうしても時間がかかるのですが、仮処分の手続きであれば1~2ヶ月程度となります。

仮処分によって情報開示が認められたら、好き嫌い.comは速やかにIPアドレスとタイムスタンプを開示する必要があります。

IPアドレスとタイムスタンプとは

好き嫌い.comは完全匿名なので、運営会社も投稿者の氏名や住所を特定することはできません。

ただ、運営が間違いなく知っている情報があります。それは、投稿者の「IPアドレスとタイムスタンプ」です。

「IPアドレス」とは、インターネット上における住所の情報です。インターネットに接続しているあらゆる機械、自宅のPCやスマートフォンなどは、固有のIPアドレスを持っています。

あるサイトに接続したり、投稿を行ったりした場合には、該当する投稿者の「IPアドレス」とアクセスした時間である「タイムスタンプ」が、コンテンツ・サービス・プロバイダに記録されます。

管理者は通常、IPアドレスとタイムスタンプを記録しているので、当該投稿を行った者のIPアドレスとタイムスタンプを開示するよう求めることになります。

発信者情報開示請求の条件とは

どのような場合に発信者情報開示請求をすることができるのでしょうか。プロバイダ責任制限法は、

一 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。

プロバイダ責任制限法第4条

のいずれもに該当するときに限り、発信者情報の開示を請求することができるとします。

この条文から、発信者情報開示請求の要件は、①権利侵害の明白性、②開示を受けるべき正当な理由であると言えるでしょう。

①権利侵害の明白性とは、ある人の権利が侵害された事実に加え、そのことについて違法性を阻却する事由が存在しないことを意味します。主張する権利侵害の類型としては、名誉毀損、名誉感情侵害、プライバシー侵害等があり、それぞれ成立要件や判断基準が異なります。

各類型の成立要件については、弊所別記事にて詳しく解説しています。

②開示を受けるべき正当な理由については、「開示された情報が損害賠償請求する際に必要である」と言えれば基本的には認められると考えてよいでしょう。

手順3:ログの削除禁止

手順2で投稿者のIPアドレスが開示されたら、URLにより、もしくは「WHOIS」等のプロバイダ特定サービスを用いて、発信者が使用した経由プロバイダを特定できます。

次に、経由プロバイダを相手に「この時間にこのIPアドレスで接続していた人間の住所氏名を開示せよ」というログ情報を請求することになります。ただし、ログは、携帯キャリアであれば数千万人、経由プロバイダでも数百万人という膨大な量となるため、一定期間で削除されることになっています。

携帯キャリアは3ヶ月程度、固定回線のプロバイダも1年程度で削除してしまうため、投稿から訴訟を提起するまでに多くの時間がかかると、ログが消える可能性が生じてしまいます。

一方で、プロバイダに対して発信者の氏名等の開示を求めることは、重大な個人情報を求めることになるので、原則としては通常の民事訴訟によって行われます。しかし、通常の民事訴訟の手続きが終了するまでには数か月程度を要することが多いです。

手続きが行われている間にプロバイダが保存しているログが消去されないように、つまり証拠がなくならないように、ログを消去することを禁止する仮処分の手続きが必要となります。

もっとも、プロバイダは「裁判所を通じて住所・氏名の開示を求めるので、しばらくログを保存しておいてほしい」と通知すると、ログを保存しておいてくれる場合が多いです。よって、通知だけで足りるケースも多くなっています。

手順4:発信者情報開示請求の訴訟

ログの保存が保証されたら、経由プロバイダを相手方とする発信者情報開示請求訴訟を提起し、発信者に関する住所・氏名等の情報の開示を求めることとなります。

経由プロバイダは原則として、発信者の同意がない限り、発信者情報の開示に応じません。

住所や氏名は重要な個人情報のため、裁判所は、訴訟という正式な手続きで違法と認めた場合にのみ住所・氏名の開示を命じてくれるのです。

手順5:損害賠償請求等

「投稿の記載内容により権利が侵害された」と認められ、「正当な理由がある」と判断されれば、裁判所は経由プロバイダに対して、投稿の際に利用された契約者の氏名・住所等の開示を命じてくれます。

発信者情報の開示により発信者が特定された場合、発信者に対して取りうる手段はいくつか考えられます。もちろん複数を選択することも可能です。

  • 今後は誹謗中傷をしないと誓約させる
  • 損害賠償の請求を行う
  • 開示手続にかかった経費を請求する
  • 刑事告訴をする

まとめ:好き嫌い.comの誹謗中傷にお困りなら弁護士にご相談ください

インターネット上で誹謗中傷された場合、ひどい内容の投稿を削除するだけでは、根本的な解決にならない場合があります。投稿者を特定し、責任を追及することが肝要です。

ただし、好き嫌い.comは運営会社が不明なので、手続きは大変複雑になります。問題の早期解決・再発防止のためにも、高度な専門知識と豊富な経験を持つ弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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