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風評被害対策

ネットストーカーの定義は?警察が動いてくれる基準を解説

風評被害対策

ネットストーカーの定義は?警察が動いてくれる基準を解説

近年、元交際相手や見ず知らずの他人から、恋愛感情による嫌がらせや、復縁を迫る執拗な連絡を受けるケースが多発しています。このようなストーカー行為は、放置すると取り返しのつかない被害を招くことになりかねず、早期に対応する必要があります。

警察庁ストーカー事案への対応状況によると、2021年の「ストーカー等に係る相談件数」は19728件となっており、減少傾向にあるものの依然として高水準で推移していることが分かります。

また、2021年の「ストーカー規制法違反による検挙件数」は937件と、前年と比べて減少したものの、なお高水準で横ばいしている状況です。

このように、ストーカー行為は社会問題として広く認知されており、実際に被害にあったという方も少なくありません。

特に、SNSの浸透に伴い、従来とは異なった手法によるストーカー行為(ネットストーカー)が目立ってきており、それに伴い、ストーカー規制法も近年改正されています。

そこで本記事では、ストーカー規制法の概要とともに、多発する「ネットストーカー」の被害にどのように立ち向かえば良いのかを解説します。

ネットストーカーの定義

ネットストーカーの定義

ネットストーカーとは、SNS・メールなどのインターネットを悪用して、恋愛感情を抱く特定の人物に付きまとう行為を指します。これは、サイバー犯罪の一つです。

ネットストーカーにあたる行為には、特定の相手に対してメールなどを通じて執拗にメッセージを送る行為のほか、

  • 住所や顔写真といった個人情報を特定・公開する
  • インターネット掲示板に誹謗中傷の書き込みをする

など、多種多様な行為が含まれ、ストーカー規制法により規制されています。

ストーカー規制法とは何か

ストーカー規制法とは何か

ストーカー規制法(「ストーカー行為等の規制等に関する法律」)は、1999年の「桶川ストーカー殺人事件」がきっかけとなり、2000年に成立しました。

桶川ストーカー殺人事件
元交際相手(当時27歳)らにストーカー行為をされていた女子大生(当時21歳)が、元交際相手の実兄を含むストーカーグループに、白昼ナイフで刺殺された事件。

被害者家族は殺人事件発生の4ヶ月以上前から、加害者グループによるストーカー行為を上尾警察署に何度も訴え、加害者告訴まで行っていましたが、上尾警察署は十分に取り合おうとしませんでした。そのあげくに発生してしまった事件であり、遺族は「娘は加害者と警察に殺された」と、警察を非難しました。

ストーカー規制法が成立する前は、つきまとい行為自体は規制されておらず、脅迫や暴行、住居侵入などが行われて初めて犯人が逮捕されるに至っていました。

そのため、ストーカーにより身の危険を感じて警察に相談したとしても、それに対して警察の方で効果的に対応することができませんでした。

「つきまとい等」とは

ストーカー規制法では、「恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」で、特定の者に対して以下の行為をすることを、「つきまとい等」として禁止しています。

  1. つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつきなど
  2. 監視していると告げる行為など
  3. 面会や交際の要求など
  4. 乱暴な言動など
  5. 無言電話・拒否後の連続した電話・ファクシミリ・電子メール・SNSの送信など
  6. 汚物の送付など
  7. 名誉を傷つける事項を告げる行為など
  8. 性的羞恥心を害する事項を告げる行為など

ストーカーは凶悪事件へ発展する可能性が高いため、初期のうちに厳しく対処すべき行為です。

もっとも、「貸した金を返してほしい」、「合意事項を実行してほしい」などという連絡を繰り返し行ったからといって、ストーカー犯だと訴えられては困ります。そのため、ストーカー規制法では、 「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」で行われた場合に限って、「つきまとい等」に当たるとしています。

「位置情報無承諾取得等」とは

ストーカー規制法では、「恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」で、特定の者に対して以下の行為をすることを、「位置情報無承諾取得等」にあたるとして禁止しています。

この「位置情報無承諾取得等」は、2021年の法改正により追加されました。

  1. 承諾を得ることなく、GPS機器などの位置情報を取得する行為
  2. 承諾を得ることなく、GPS機器などを取り付ける行為

たとえば、被害者のスマートフォンに無断でインストールした位置情報アプリを利用してその位置情報を取得する行為や、被害者の自動車にGPS機器を取り付ける行為が、「位置情報無承諾取得等」に当たります。

「ストーカー行為」とは

ストーカー規制法では、「つきまとい等」や「位置情報無承諾取得等」にあたる行為を繰り返し「反復」してする行為を、「ストーカー行為」と定義し、このような行為に対して罰則を設けています。

なお、「つきまとい等」のうち、待ち伏せや乱暴な言動、拒否後の連続したメール送信などの行為(上述した1から4及び5(電子メールやSNSの送信のみ)の行為)については、繰り返し行われたとしても、 「身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われた場合」に限り、「ストーカー行為」にあたると規定されている点に、注意が必要です。

ストーカー規制法の改正

ストーカー規制法の改正

「桶川ストーカー殺人事件」がきっかけとなって作られたストーカー規制法は、特にインターネットの発展とともに「ネットストーカー」と呼ばれる行為が目立ち始めたことを受けて、改正されてきました。

2013年7月のストーカー規制法改正

ストーカー規制法が成立した2000年当時、「つきまとい等」には電子メールの送信による方法が想定されていませんでした。

しかし、2012年の「逗子ストーカー殺人事件」がきっかけとなり、「つきまとい等」に電子メールの送信が含まれることになりました。

逗子ストーカー殺人事件
2012年11月6日、神奈川県逗子市のアパートでフリーデザイナーの女性(当時33歳)が刺殺され、犯人の元交際相手の男(当時40歳)も首吊り自殺した事件。

2人は2004年頃から交際していましたが、2006年4月頃に別れ、被害女性は2008年夏に別の男性と結婚し逗子市に転居しました。加害者の男には新しい姓や住所は隠していましたが、被害女性が新婚生活を度々facebookに投稿していたことから、2010年4月頃に被害女性の結婚を知った加害者から嫌がらせのメールが届くようになりました。メールは次第にエスカレートし、2011年4月には「刺し殺す」などと脅すメールが1日に80通から100通送りつけられたため、被害女性は警察に相談し、同年6月に脅迫容疑で加害者の男は逮捕され、同年9月に懲役1年・執行猶予3年の有罪判決が確定しました。その後も、2012年3月下旬から4月上旬にかけて、被害女性は計1089通に上る嫌がらせメールを送りつけられました。被害女性は警察に相談しましたが、警察は違法行為に該当しないとして立件を見送りました。加害者の男は、探偵などを用いて被害女性の住所を特定し、11月の事件に至りました。

2016年12月のストーカー規制法改正

LINEやTwitterなどのSNSの発展に伴い、友人や知人と連絡を取り合うのに、電子メールよりもSNSを用いる方が多くなりました。

しかし、SNSによるストーカー行為は2013年7月の改正で追加された「電子メールの送信」とは別の行為であるとされ、ストーカー規制法の規制対象外でした。

しかし、2016年の「小金井ストーカー殺人未遂事件」がきっかけとなり、「つきまとい等」にTwitterやLINEなどのSNSでのメッセージの連続送信や、個人のブログへの執拗な書き込みが含まれることになりました。

小金井ストーカー殺人未遂事件
2016年5月21日に東京都小金井市で発生した殺人未遂事件。

芸能活動を行っていた女子大学生(当時20歳)を、ファンを自称する男(当時28歳)がTwitterなどのSNS上でストーカー行為を繰り返した後、小金井市内のライブハウスでナイフで刺殺しようとしました。男は京都に在住する会社員で、Twitterで女子大学生と接触を試みたが返信がなく、一方的に贈り付けたプレゼントを返却するよう彼女やその関係者に要求。しかし、警察にはプレゼントとして贈った腕時計を返送されて逆上し、殺害を計画したと供述しており、腕時計を返却された後はさらに書き込みが過激化していました。

2021年5月のストーカー規制法改正

近年、元交際相手などの自動車にGPS機器を無断で取り付けて、その居場所を取得するようなストーカー行為が度々発生しています。これを受けて、2021年5月の改正では、先に解説しましたとおり「位置情報無承諾取得等」という行為類型を設けて、新たに規制対象に追加しました。

その他にも、拒絶されているにもかかわらず手紙などの文書を連続して送付する行為、学校や勤務先、住居など被害者が通常いる場所に加えて、被害者が実際にいる場所の付近において見張りやうろつきなどを行う行為が、「つきまとい等」に当たる行為として新たに追加されました。

ストーカー規制法の警告や禁止命令

ストーカー規制法の警告や禁止命令

「ストーカー行為」が行われた場合、被害者の被害届などを端緒として、警察によって捜査、検挙されます。

これに対して、ストーカー行為に至らない「つきまとい等」や「位置情報無承諾取得等」については、ただちに検挙されるわけではありません。

もっとも、被害者の要望により、警察から加害者に対して、このような行為を繰り返し行わないように「警告」をすることができます。また、被害者が禁止命令等を要望した場合などには、一定の手続きを踏んだうえで、「禁止命令等」の実施をすることができます。「禁止命令等」については、これに違反すると検挙されます。 そのため、「禁止命令等」は逮捕などの前の段階に位置付けられる処分になります。

ストーカー行為の罰則

ストーカー行為を行った場合や、禁止命令等に違反してストーカー行為を行った場合などには、ストーカー規制法により罰則が科されます。

第十八条 ストーカー行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

第十九条 禁止命令等(第五条第一項第一号に係るものに限る。以下同じ。)に違反してストーカー行為をした者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。

2 前項に規定するもののほか、禁止命令等に違反してつきまとい等又は位置情報無承諾取得等をすることにより、ストーカー行為をした者も、同項と同様とする。

なお、2016年の改正で親告罪とする規定が削除され、被害者などの告訴がなくても起訴することができるようになりました。

ネットストーカーに対して警察が動いてくれる基準

ネットストーカーに対して警察が動いてくれる基準

ネットストーカーの被害にあった場合、被害者は迷わず警察に相談することが大切です。

もっとも、警察がストーカー行為に対して効果的な対応を速やかに行うために、留意すべき点があります。ここでは、以下の2点を紹介します。

十分な証拠が揃っている

まず、実際にネットストーカーの被害にあっている事実を警察に明らかにするために、客観的な証拠を用意する必要があります。

たとえば、電子メールやSNSを通じて加害者から送られてきたメッセージのスクリーンショット、投稿された画像や動画のデータが考えられます。

特に、メッセージを通じたネットストーカーについては、被害者が拒絶したにもかかわらず、なお繰り返し送られていることを示すために、被害者がメッセージの受け取りを拒んでいることが分かるような証拠が重要になります。

緊急性がある

また、SNSなどによるネットストーカーについては、 「身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われた場合」に限って、「ストーカー行為」に当たることになります。

そこで、実際に行われているネットストーカー行為が、被害者に不安を覚えさせるような方法で行われており、ただちに警察の方で対応すべき緊急性のある事態であることを明らかにすることが重要です。

具体的には、拒絶しているのにSNSなどで執拗に交際を迫るメッセージが送られたり、あたかも被害者を監視しているかのような投稿がなされたりした場合、これにより外出がしづらくなったなどの実生活への悪影響が出ている状況であること、身の安全が害されるような危険を感じていることを具体的に説明することが考えられます。

ネットストーカー行為を弁護士に相談すべき場合

ネットストーカー行為を弁護士に相談すべき場合

ネットストーカー被害にあった場合、一人で解決することは困難でしょう。また、被害者が嫌がらせを放置しておくことで、ネットストーカー行為がエスカレートする可能性もあります。

そのため、まずは、警察に相談してみましょう。常軌を逸した行動である場合には、被害届を提出し、処罰を求めるとの意思を明確に表示することが大切です。

警察が対応してくれない場合

警察に相談しても、事件性がないと判断されてしまったり、ストーカー規制法の運用ができないとして、対応してくれない場合があります。

また、警察が加害者に対して、「警告」や「禁⽌命令」を出しても無視してストーカー行為を繰り返す加害者もいます。

警察に相談をしても納得のいく十分な対応を受けられない場合は、インターネットトラブルを強みとする弁護士に相談し、具体的な対処方法を検討することが有効です。

法的措置を行う場合

ネットストーカーの加害者が、SNS上で誹謗中傷の投稿を行った場合、このような投稿の削除を求めるのが通常でしょう。その場合、弁護士を通じて、SNS運営事業者に対して、投稿の削除請求をすることが考えられます。

また、ネットストーカーの加害者に対して、その処罰に加えて損害賠償請求をすることもあり得ます。具体的な交渉や、訴訟に発展する可能性もあるため、弁護士に相談すると良いでしょう。

なお、特にSNSでは匿名でメッセージを発信することができることから、損害賠償請求を行うには、加害者の氏名などを具体的に特定することが必要です。

以下の記事では、発信者情報開示手続きについて詳細に解説しておりますので、ご参照ください。

関連記事:発信者情報開示請求とは?やり方と注意点を弁護士が解説

ストーカーとの示談等場合

裁判になれば、加害者が示談を申し込んでくる場合があります。この示談交渉を被害者本人が行うことは被害者に大きな負担となります。そのため、弁護士に任せる方がいいでしょう。

まとめ:ネットストーカー被害は弁護士へご相談を

まとめ:ネットストーカー被害は弁護士へご相談を

SNSなどを通じたネットストーカーの被害を受けた場合は、ただちに警察に相談するなどの対応をする必要があります。被害を受けているにもかかわらず放置をしてしまうと、ますますストーカー行為がエスカレートする可能性もあります。

もっとも、警察に対応を相談したとしても、被害者の状況や意思が具体的に明らかでないと、十分に動いてもらえない可能性もあります。

ストーカー被害にあっていることを明らかにするために

  • 何を証拠として残せばよいのか
  • 警察に対してどのように説明すればよいのか
  • 今後さらなる被害を受けないためにどうすればよいのか

など、具体的なアドバイスを受けたい方は、ぜひ専門の弁護士にご相談ください。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。ストーカー被害が深刻化すれば個人情報、いわれのない誹謗中傷などがネット上に拡散するおそれがあります。

こうした被害は「デジタルタトゥー」として大きな問題になりつつあります、当事務所では「デジタルタトゥー」対策を行うソリューション提供を行っております。

下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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