弁護士法人 モノリス法律事務所03-6262-3248平日10:00-18:00(年末年始を除く)

法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

個人診療所の口コミを仮処分で削除する方法

風評被害対策

初めて行く病院を受診する際、まずは駅名や診療科名(整形外科、皮膚科等)をネットで検索して探す方が多いのではないでしょうか。その際に、口コミを参考にどの病院に行くかを決めることもよくあるでしょう。

病院の口コミは、Googleマップ、epark、calooなどのサイトで見ることができます。

ネットで検索すればすぐに病院やクリニックの口コミを見ることができるのは便利な反面、ネガティブな口コミによる風評被害が発生しやすくなっている側面もあります

この記事では、個人診療所、病院、クリニックなどの医療機関に関するネガティブな口コミが投稿された場合に、仮処分によって口コミを削除する方法について解説します

口コミを削除するのが難しい理由

診療所の口コミに限らず、一般的に、口コミの削除は簡単な手続ではありません。

なぜなら、口コミには公共性があるものとされており、口コミの対象者からの申し出によって簡単に口コミが削除されるとなれば口コミの信ぴょう性も少なくなってしまうためです

また、ネガティブな口コミがあったとしても、投稿者の個人的な感想であることは口コミを読む人もわかっています。

そのため、ネガティブな口コミのせいで対象者の社会的評価が必ず低下するとまでは言えないケースもあります。

以上の点から、SNSや掲示板に誹謗中傷の書き込みをされた場合と比べると、口コミの削除は比較的難しい手続であると言えます

当該サイトへの削除依頼

診療所に関するネガティブな口コミを書き込まれている場合、まずはその口コミサイトへ削除依頼をしましょう。

そのサイトの利用規約にもよりますが、明らかな誹謗中傷やプライバシーの侵害にあたると認められる場合には、削除してもらえるケースもあるでしょう。

ただ、その判断はサイトの運営者が行うため、削除が認められないこともあります。その場合は、裁判手続によって削除を申し立てる必要があります

Googleマップ(マイビジネス)の口コミを削除する方法については、以下の記事をご参照ください。

仮処分による削除申立て

仮処分とは

口コミの削除の申立ては、仮処分という手続によって行うことができます。

仮処分とは、民事保全法に基づく手続であり、裁判所が暫定的に違法かどうかを決定するものです。仮処分で違法と認められれば、ほとんどの場合、サイトの運営者は削除に応じることになります。

仮処分には、訴訟を起こすより迅速に結果が出るという利点がありますが、証拠等の書面はきちんと用意する必要があります。

また、スピーディに判断してもらうために、短期間で追加の証拠を揃えなくてはならないこともあります。仮処分を成功させるためには、こうした手続に精通した弁護士の手助けが不可欠です。

仮処分による削除申立てを検討している場合は、早めに弁護士へ相談するようにしましょう。

削除仮処分の流れ

削除仮処分は、以下の流れで行われます。

  • 仮処分の申立て
  • 審尋
  • 担保金納付
  • 仮処分命令の発令
  • 執行

以下で一つ一つの手続について、詳しくみていきます。

仮処分の申立て

まずは、裁判所に対して、保全すべき権利の内容等を記載した仮処分命令申立書を提出し、仮処分の申立てを行います。

この際に証拠もあわせて提出しますが、仮処分の場合は、「証明」ではなく「疎明」すればよいため、裁判官が一応確からしいという推測を得られるような資料を提出することになります

審尋

審尋とは、裁判における口頭弁論のような手続を指し、裁判官と弁護士が直接話し合います。口頭弁論の場合、1-2ヶ月の間が空くことも珍しくはありませんが、審尋は1-2週間の間隔で開催されます。そのため、短期間に有効な疎明資料を集めていく必要があります。

担保金納付

審尋の結果、権利の侵害が認められて担保決定となった場合は、担保金を納付します。この担保金は、のちに正式な裁判でその口コミの違法性が否定され、削除をする必要がなかったという結果になった場合に、損害賠償金に充当されます。この担保金は、手続をすれば戻ってきます。

仮処分命令の発令

担保金を納付した後、裁判所は当該コメントを削除するよう仮処分命令を発令します。正式な訴訟手続を経ていなくても、この命令が出ればほとんどのコメントは削除されます。

執行

仮処分命令を受けても当該コメントが削除されない場合は、仮差押えの執行又は強制執行という手続を取ることもできますが、ここまでいくケースはあまりないといえるでしょう

仮処分による誹謗中傷記事の削除について、詳しくは以下の記事をご参照ください。

削除仮処分が認められたケース

インターネット検索大手のグーグルが提供する地図サービス「グーグルマップ」に事実無根の「口コミ」が掲載され、名誉を傷つけられたとして、関東地方の医療機関が米グーグルに削除を求め、千葉地裁松戸支部が訴えを認める仮処分決定を出したことが、関係者への取材で14日までに分かった。決定は7日付。

グーグル側は異議申し立てをする方針。

2015年4月14日付日経新聞

口コミの内容は明らかになっていませんが、医療機関側の弁護士は「事実に反する書き込み」と話しており、事実でないことがきちんと疎明されれば、削除仮処分決定が出るものと言えそうです。

まとめ

病院やクリニックに対するネガティブな口コミは、裁判外交渉で削除できるケース、仮処分で削除できるケースがあります。仮処分手続を用いる場合、裁判所が「違法」と認めるだけの主張や証拠を揃え、適正に手続を進行させる必要があります。こうした手続は専門性が高いため、こうした分野の経験やノウハウを有する弁護士に依頼を行うことが重要だと言えるでしょう。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。

近年、ネット上に拡散された風評被害や誹謗中傷に関する情報は深刻な被害をもたらしています。当事務所ではこうした被害に対し、裁判外交渉から仮処分まで、様々な対策を手がけています。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

シェアする:

TOPへ戻る