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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

匿名掲示板の短文レス投稿はどこから名誉毀損に該当して違法か

風評被害対策

匿名掲示板の短文レス投稿はどこから名誉毀損に該当して違法か

名誉毀損の典型的な事例とは、例えば、ある特定の個人について、過去に違法行為を行ったなどと、虚偽事実を述べることです。もう少し具体的に言うと、

  1. 世界に一人しかいない自分(又は一社しかない自社)のことを指しているということが明確で
  2. その自分について、具体的に、例えばいつどのような違法行為を行ったなど明確に述べており
  3. それが虚偽である

といった場合に、名誉毀損は成立します。言い換えれば、

  1. 誰のことを指しているのか分からない
  2. 例えば何らかの「悪事」を行ったと書いているように読めるが、具体的に何を言っているのかがよく分からない

という場合には、名誉毀損は成立しません。これは、プライバシー侵害など、名誉毀損以外の誹謗中傷でも同質です。誰のことを指しているのか分からない書込では、プライバシー侵害は成立しません。

ただ、ある投稿が、何を言っているのか、というのは、特にネット上の匿名掲示板等における短文レス(投稿)の場合、必ずしも明確ではない、「微妙」な問題となります。つまり、例えば100個のレスが付いている掲示板投稿の場合、

  • ある短文レスを1個だけ取り出して読んでも、誰について何を言っているのか分からないが
  • スレッド全体の文脈などから考えると、それがある程度明確に分かる

というようなケースがあるからです。

では、実際の裁判において、ネット上の匿名掲示板における、複数の投稿を合わせて判断する場合、どのような基準で、どこまでの範囲で複数の投稿(レス)の関係を総合判断しているのでしょうか

関連性が明示されている場合

関連性が明示されていれば、後の投稿は前の投稿と総合して判断されます。

「↑」を付した投稿

匿名掲示板「2ちゃんねる」に投稿された記事がプライバシー侵害にあたるとして、経由プロバイダに発信者情報開示を求めた事例があります。

「広島市a専門学校」というスレッドに、「1年の、こ○やまBバツイチ子持ち31才」との記載を含む投稿がなされ、この記事は本件スレッドの題名も考え合わせると、本件学校の1年次に在学する、31歳の離婚経験が1回あり、子を持つ、「こ○やまB」なる人物を話題の対象としていることが認められます。そして、この人物と原告とは、在校中の学校及び学年、年齢、離婚経験の有無及び回数並びに子の有無という属性において一致し、かつ、原告が友人等から「B」と呼ばれていることも考え合わせると、「こ○やまB」との記載は容易に原告の氏名を想起させ、この人物が原告のことであると特定できます。

この記事に続く、「↑」との記載を付した投稿は「広島デリヘルb店C」との記載を含む、広島市内のいわゆるデリバリー・ヘルスである「b」において「C」という源氏名をもって稼働している「現役風俗嬢」がいると指摘する投稿ですが、これを裁判所は、一般閲覧者の普通の注意と読み方からすれば先の投稿で指摘した原告を指しており、つまり原告が性風俗店従業員である事実を摘示するものと解することができるとしました。そして、

性風俗店で稼働している事実や、その際の店舗名及び源氏名といった事実は、一般人の感受性を基準として公開を欲しないような事柄であるといえ、かつ、(略)原告はこれらの事実を一般には知らせていないことが認められるから、本件各記事は、いずれも原告のプライバシーを侵害するものと認められる。
東京地方裁判所2015年12月4日判決

とし、原告が本件発信者らに対し名誉毀損を理由とする損害賠償請求等の準備をしていることが認められ、原告には、本件発信者らの発信者情報の開示を求める正当な理由があるものと認められるとして、経由プロバイダに発信者情報開示を命じました。

「↑」との記載を付した投稿なので、明らかにその前の記事に続くものと認められたわけですが、妥当な判断です。

アンカーを付した投稿

やはり、「2ちゃんねる」に投稿された記事が名誉毀損とプライバシー侵害にあたるとして、経由プロバイダに発信者情報開示を求めた事例があります。

プロ野球b球団のファンでありb球団の私設応援団のメンバーとも親しく交際している「〇〇ちゃん」について、いくつかの投稿がなされたのですが、投稿1には「原告がd応援団に新規入会した女性に対して性的な意図をもって接触しようとしている」、投稿2には「原告は性風俗店で働いている風俗嬢以外の女性との性行為の経験がない素人童貞である」、投稿3には「原告はアトピー顔で50過ぎのジジィだ」、投稿4には「童貞らしいよ」との記載がありました。

これにつき裁判所は、b球団の応援団関係者で○○という姓は原告のみであり、「○○ちゃん」といえば原告を指すと認めることができるとし、するとスレッド名も併せて考慮すれば各投稿記事のうち投稿記事4以外のものが原告を対象とすることが認められる。また、投稿記事4には、「>>639」としてアンカーを付けた記載があり639である投稿記事3を受けたものであることは明らかであるが、本件投稿記事3が原告を対象としているのだから、本件投稿記事4も、原告を対象とするものだと認めました。

裁判所は、結局投稿4の「童貞らしいよ」との記載についてはプライバシー侵害を認めなかったのですが、投稿記事1について名誉毀損、投稿記事2についてプライバシー侵害と名誉感情の侵害、投稿記事3についてプライバシー侵害と名誉感情の侵害を認め、経由プロバイダに発信者情報開示を命じました。

新聞記事で「=関連12面」とあったり、本で「参照147頁」とあったりしますが、読者はアンカーをこれらの場合と同じように理解されたわけです。

全体の総合判断をする場合

関連性が明示されていない場合には、全体の総合判断がなされています。

スレッド内の他の記事

東京都中野区の町づくりのために設けられた電子掲示板へ区議会議員でありながら性風俗店で買春したなどと書き込みがされたことにより名誉を毀損されたとする原告が、経由プロバイダに対し、発信者情報開示を求めた事例があります。

裁判所はまず、記事において「d党の大幹事長」である「C議員」が原告であることは一般の読者には特定することができないとする経由プロバイダの主張に対し、中野区民でない一般の読者が本件掲示板を読んでも、「d党の大幹事長」であるとされる「C議員」が原告を指すことはにわかに判明しないということができるが、本件掲示板は、中野区政に関して開設されている掲示板なのであるから、これを閲覧しようとする者は、中野区政に関して関心を有する者であると解され、原告が中野区議会議員のd党議員団の幹事長であることは、相当数の不特定者が知っている事実であることが明らかであり、「C議員」が原告を指すことは、本件掲示板を閲覧する普通の読み手にとって容易に判明すると解される、としました。

そして、原告が松山のソープランドに行ったことを前提として、同ソープランドから脱税目的で白紙の領収証を取得したとの事実を摘示する記事は、他の記事とあわせ読めば、「C議員」が原告であることは明らかであり、掲示板上の前記認定の記事内容、本件掲示板の性質に照らすと、普通の閲覧者がスレッド内の他の記事を見て「C議員」が原告であることを知るのは容易であるとしました。

そして、被告であるプロバイダは、掲示板の一般の閲覧者は普通、掲示板の記載を全部読むとは限らないと主張したのですが、裁判所は、掲示板はあえて見ようと思わない者の目にも入る雑誌の吊広告や新聞広告等と異なるとし、

インターネット上の掲示板は、見ようと思わない者の目には入らない。これを見る者は、読もうと思って開くのである。したがって、読もうと思って掲示板を開いた普通の理解力の者が、普通の読み方をしたときに、どのような意味に理解されるかが問題となる。あえてインターネットの掲示板を見ようと思って、これを開く以上、文章の意味を理解しようとして読むのが普通であり、特定人を匿名表記して批判、非難する文章であることを理解しつつ、その文章をあえて読もうとする者は、普通、それが誰かを知ろうとして、前後の文章を拾い読みするのが普通であると解される。中野区政に関心をもつ不特定多数の者が閲覧する本件掲示板の性質に鑑みれば、「C議員」とは誰のことだろうかと関心を持った者が他の記事を拾い読みすることは容易に考えられるところであり、別紙3の本件掲示板の記載を通覧すると、普通の読者の注意と読み方をもってすれば、「C議員」が原告を指すことは容易に理解することができることが明らかである。
東京地方裁判所2008年10月27日判決

として、名誉毀損を認め、真実であることはもとより、真実であると信ずるに足りる相当の理由もなく違法性阻却事由はないとして、経由プロバイダに発信者情報開示を命じました。

複数のスレッド

掲示板のカテゴリ内の複数のスレッドに投稿された記事によって、名誉感情やプライバシーが侵害されたとして、経由プロバイダに発信者情報開示を求めた事例があります。

原告は、動物の虐待を指向する者や動物虐待の実態を調査することを目的として、本件カテゴリに原告スレッドを開設し、自ら、野良猫などの動物を捕獲して虐待することを目的とする集会(オフ会)を企画して参加者を募集する記事を投稿しました。その後、原告の目的が上記にあることを認識し、原告スレッド又は本件カテゴリ内に開設された別のスレッドに、原告を批判ないし中傷する内容の記事を投稿する者があり、これらの投稿者の間で、原告は「B2」や「B3」と称されるようになりました。

その後、本件カテゴリ内に開設された動物の虐待を話題にする複数のスレッドにおいて、「B2」の本名であるとして原告の氏名を明らかにする記載を含む記事、「B3」であるとして原告の顔写真を掲載する記事、原告の居住地域を特定する記載を含む記事等が掲載され、また「不特定多数sex募集のババア」との記事が投稿されました。

この記載は、原告に対しその名誉感情を著しく侵害し、社会通念上許容できる限度を超えて侮辱するものであるとして、原告が発信者情報の開示を求めたのです。 被告側は「一般の閲覧者は、本件記事の対象が原告であるとしていることを読み取ることはできない。また、本件記事を閲覧した一般の閲覧者が、本件カテゴリ内の本件スレッド以外のスレッドに投稿された記事を読むとは限らない。したがって、本件記事によって、原告の名誉感情やプライバシーが侵害されることはない」と主張したのですが、裁判所は、各スレッドはいずれも動物の虐待を話題にするものであり、本件スレッドの一般的な閲覧者が本件各カテゴリ内の他のスレッドを併せて閲覧していることは十分に考えられ、このような閲覧者が本件記事を読めば、本件記事が原告を対象としているものと理解できるとした上で、

本件記事の記載は、原告が、不特定多数の男性に対して性交渉を求めたり、また、実際に不特定多数の男性との間で性交渉を行ったりしている女性であるかのような事実を示すものということができる。性交渉を含む男女の交際の有無等は、一般的に個人の私的な領域に係るプライバシーというべきである。(中略)本件記事の閲覧者は、本件スレッドを含む本件カテゴリ内に開設された複数のスレッド内の記事を閲覧し、原告の氏名、容姿(顔写真)及び居住地域に係る事実を把握していると推測され、このような事実ないし事情を前提とすれば、本件記事に記載の事実が、その閲覧者によって相応に私生活上の事実らしく受け止められるおそれのあることは否定できない。
東京地方裁判所2014年11月11日判決

として、本件記事が原告の人格的利益を害するものであることは明らかなので原告の請求は理由があるとして、発信者の情報開示を経由プロバイダに命じました。

原告に対する一定の悪意をもって記載された悪口と言えるような記事には公益性があるとはいえず、発信者の目的が専ら公益を図るものであるということもできない、とみなされます。

まとめ

このように、ネット上の匿名掲示板において行われる短文レス投稿が名誉毀損などに該当するか否かを判断する場面では、「↑」やアンカーなどによって関連性が明示されている場合だけでなく、明示されていない場合であっても、同スレッド内の他の投稿文章、時には他のスレッド内の投稿文章との関係から、その文脈を読み取ることが認められる場合もあります。

どのような場合に関係が認められ、どのような場合には認められないのかは、判断が難しい問題です。経験豊かな弁護士にご相談ください。

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