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風評被害対策

過激なネット投稿は脅迫になることも 「殺す」や「死ね」は脅迫に当たるのか

風評被害対策

過激なネット投稿は脅迫になることも 「殺す」や「死ね」は脅迫に当たるのか

SNSやブログ・掲示板などで他人を誹謗中傷するような内容を投稿すれば罪に問われます。その投稿内容もあまりに過激になれば脅迫罪に該当することがあります。ではどのような投稿内容が脅迫罪に当たるのでしょうか?実際の投稿内容を元に判例を解説していきましょう。

2008年に『乳と卵』で第138回芥川賞を受賞した川上未映子さんが、「5ちゃんねる」やブログに脅迫や名誉毀損の内容を書き込まれたとして損害賠償を求めました。判決が2021年6月10日に東京地方裁判所でくだされ、裁判所は脅迫を認め、被告に損害賠償金の支払いを命じました。

事案の経緯

被告女性は2018年10月に「5ちゃんねる」に「ほんとにレ(死)んでしまえと思っている」「やるっきゃない、さすしか」(以下、投稿記事①)、同年8月と9月に「11月18日やろうと思えばやれる」「いつも研ぎ澄まして準備しておく」(以下、投稿記事②)、同年10月に「それをいつ実行するか」、「そうですね、これは予告でしょうね」や「恨みを晴らす」「直接的な行動」(以下、投稿記事③)などと投稿しました。

原告は同年11月18日に青山ブックセンターで開催される公開対談イベントに出演予定であり、自身のブログ等で告知していました。ですが、記事①及び③の各投稿を受けて警察に対応を相談したところ、対応した警察官からイベントの出演を取り止めるよう要請を受け、出演を取り止めました。

原告はそれぞれの投稿について発信者情報開示を請求し、運営及び経由プロバイダから投稿者情報の開示を受け、被告に対し、原告を脅迫し又はその名誉を毀損する内容の記事を投稿したとして、不法行為に基づく損害賠償を請求する訴訟を提起しました。

脅迫罪について

脅迫罪は刑法第222条に規定されている重大な犯罪です。他人を脅すような言葉で誹謗中傷すると、脅迫罪が成立する可能性があります。

1.生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

刑法第222条 (脅迫) 

上に該当するような投稿をすると、脅迫罪は非親告罪なので、被害者が刑事告訴をしなくても処罰されてしまう可能性があります。

脅迫罪と「害悪の告知」

脅迫罪は、本人(または親族)の生命、身体、自由、名誉、財産に対して「害を加える旨を告知」した場合に成立しますが、これを「害悪の告知」といいます。

害悪を告知する方法に制限はありません。口頭や書面などはもちろん、被害者が知ることさえできれば態度であっても成立します。もちろん、相手にLINEやメールで脅迫のメッセージを送った場合には、「告知」であり、脅迫罪となります。

ネット上の投稿でも、相手を畏怖させるに足りるものなら当然「害悪の告知」です。例えば、相手のSNSや自分のブログに投稿した場合や匿名掲示板に投稿した場合でも、それが「害悪の告知」と認められれば脅迫罪が成立する可能性があり、刑事責任だけでなく、民事責任も追及されることとなります。

脅迫罪の成立

脅迫罪が成立するためには、いくつかの条件があります。当サイトの別記事『「死ね」という投稿は名誉毀損?争われた2つの判例を解説』で取り上げた、約1か月の間に13回にわたって「死ね」「さっさと死ね」「キンモ早く死ね」「とっとと死ね」などと繰り返し投稿された会社経営者が、損害賠償を請求した事例では、侮辱罪が認められましたが、脅迫罪は認められませんでした。

その理由として、裁判所は、これらの投稿は「死ね」という表現を使用しているに過ぎず、「殺す」といった表現を使用しているわけではない点、「死ね」というのみで、殺害行為の日時、場所、方法などの具体的な事実を予告しているわけではない点などを考慮して、本件投稿は原告に対する殺意を示すものであるとは認められないとしたのです。

なお、この事例では、投稿は原告に関する具体的な事実を摘示するものであるとは認められないし、一般読者の普通の注意と読み方を基準にしたときに、原告に関する何らかの具体的な事実を暗示するものであるとも認められないとして、社会的評価を低下させたものではないので、名誉毀損罪も認められませんでした。

脅迫罪が認められるためには、全体として判断されることになりますが、このように、条件が満たされなければなりません。では、本件ではどうだったのでしょうか。

脅迫罪についての裁判所の判断

裁判所はまず「5ちゃんねる」に投稿した記事①が害悪の告知として違法であるか否かにつき、

投稿記事には、「ほんとにレ(死)んでしまえと思っている」「やるっきゃない、さすしか」(投稿記事①)、「11月18日やろうと思えばやれる」「いつも研ぎ澄まして準備しておく」(投稿記事②)との記載があるところ、これは投稿者である被告において、本件イベントその他の機会において、原告を殺傷する行為に及ぶ意思を有しており、又はその準備をしていることを示唆するものであって、その生命・身体に危害を加える旨を表示するものといえる。

東京地方裁判所2021年6月10日判決

とし、害悪の告知として違法であると認めました。「刺す」と具体的方法を述べ、「11月18日」という、公開対談イベントの具体的日時を予告していること等からの判断です。

一方、記事③が害悪の告知として違法であるか否かについては、「それをいつ実行するか」、「そうですね、これは予告でしょうね」との記載があるものの、全体としてみれば「実行」や「予告」の意味は判然とせず、原告に対する害悪の告知など、「実行」に該当するような事柄の記載はないとして、違法であるとは認めませんでした。

ただし、記事③の「恨みを晴らす」「直接的な行動」と記載があり、これらは生命や身体に対する加害行為を行うことを示唆する表現ということができるし、全体としてみれば、原告の生命、身体に対する加害行為を実行する旨を表示したものと認められるとして、害悪の告知として違法であると認めました。

一方、これらの害悪の告知につき、被告は原告に対する加害行為を実行するつもりはなかったと主張したのですが、裁判所は、それは「被告の主観的な事情」であるとし、違法性に直接影響するものではないとしています。

他者を誹謗中傷し、害悪の告知とみなされるような脅迫を行っておきながら、「実行するつもりはなかった」などと抗弁しても、「被告の主観的な事情」であるとされます。

損害についての裁判所の判断

裁判所は脅迫行為による損害については、原告の生命、身体に対する加害行為の意思等を表示するものであること、これによって原告がイベントへの出演を取り止めるに至ったこと等の事情を考慮し、慰謝料100万円を認めました。

発信者情報の取得に要した費用については、発信者情報開示に係る手続きとして108万円が認められるが、記事③の1については原告に対する不法行為とは認められないので、この分を引き、被告の不法行為と相当因果関係のある発信者情報の取得に要した費用相当額の損害として、(108万円×7/8=)94万5000円を相当と認めました。

まとめ

この事件では、被告の家宅捜査まで行われましたが、初犯で身元が明らかであったことから、逮捕は見送りとなったそうです。

卑劣な加害行為をした者は必ず追及され、罰せられるということが、常識として周知される必要があるといえます。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。近年、ネット上に拡散された風評被害や誹謗中傷に関する情報を看過すると深刻な被害をもたらします。当事務所では風評被害や炎上対策を行うソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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