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風評被害対策

肖像権侵害で損害賠償請求となる基準や流れを解説

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肖像権侵害で損害賠償請求となる基準や流れを解説

近年、InstagramやYouTube、Facebook等の普及に伴い、誰でも気軽に動画や写真を投稿できるようになりました。その一方で、許可なく自分の顔や姿態を公開されてしまう「肖像権」をめぐるトラブルが増えています。

しかし、そもそも肖像権とはどのような権利なのでしょうか。もし、SNSや動画サイトに知らないうちに自分や家族の写真を投稿され、肖像権が侵害された場合、どう対処すればいいのでしょうか。

本記事では、肖像権侵害の成立基準とその対処方法について解説します。

肖像権とは

肖像権とは、みだりに他人から写真を撮影されたり、それを公表されたりしないよう対世的に主張できる権利のことです。

肖像権は、著作権などとは異なり、明文化はされていません。しかし、判例において、肖像権について言及したものが唯一存在します。

それは、 公務執行妨害罪及び傷害罪に問われた事件で、デモ行進を撮影した巡査に対してデモ参加者が暴行した行為についてです。

巡査の撮影行為が被告人の肖像権を侵害する違法な職務執行である旨の弁護人の主張に対して、最高裁は次のように判示して「肖像権」に言及しました。

 憲法一三条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定しているのであつて、これは、国民の私生活上の自由が、警察権等の国家権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものということができる。そして、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態(以下「容ぼう等」という。)を撮影されない自由を有するものというべきである。

 これを肖像権と称するかどうかは別として、少なくとも、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法一三条の趣旨に反し、許されないものといわなければならない。

最判昭和44年12.月24日刑集23巻12号1625頁(京都府学連デモ事件)

最高裁は、上記のとおり、憲法13条に基づく「私生活上の自由」の一つとして、「みだりに容ぼう等を撮影されない自由」が保障される旨を判示しました。

確かに、判例上は「みだりに容ぼう等を撮影されない自由」と言い、この自由を「肖像権」と呼ぶことまでは積極的に認めていませんが、実質的には「肖像権」を認めたものと解されています、

「肖像権」の3類型

「肖像権」には、以下の3類型があるとされています。

①みだりに撮影をされない権利
②撮影された写真、作成された肖像を利用されない権利
③肖像の利用に対する本人の財産利益を保護する権利

一般的に、①②はプライバシー権の一内容として考えられており、③はパブリシティ権と呼ばれています。

一般個人が自身の顔(肖像)を無断でインターネット上に掲載されるなどした場合に感じる「不愉快」は、自分のパーソナルな情報である顔写真を、自身の意思に反した形で公開されることに対するものでしょう。

したがって、一般個人にとっての「肖像権」とは、「撮影」と「公表」を拒絶する権利と言えます。

また、著名人の場合、プライバシー権の側面からの肖像権の保護は一般個人に比べて緩やかになるものの、パブリシティ権の側面から肖像権侵害が成立することがあります。

なお、プライバシー権とパブリシティ権の概要については、下記記事で説明しています。

プライバシー権とは

プライバシー権の定義については議論があり、判例においては明確な定義を定めているものはほとんどありません。

しかし、判例上も、広くは「自分に関する情報をみだりに公表されない権利」として、実質的にはプライバシー権が承認されています。

なお、プライバシー権は、権利の性質上、自然人にしか認められておらず、法人には認められないとするのが一般的です。

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パブリシティ権とは

芸能人やスポーツ選手など、著名な人の肖像や氏名は、宣伝広告に利用すると極めて有効なものです。

これらの人々の肖像や氏名は、企業が提供する商品・サービスに対する集客効果が期待できるため、この意味で経済的価値を持つことになります。

したがって、芸能人やスポーツ選手等の肖像・氏名が経済的価値を有する場合に、その芸能人等が自らの経済的価値をコントロールする権利を、「パブリシティ権」といいます。


SNS上で問われる肖像権侵害

私たちは、SNSが普及し、誰もが全世界に向けて情報を発信できる便利な情報社会に生きています。

しかしその一方で、TwitterやFacebook、Instagram、YouTubeなどのSNSにおいて、肖像権を侵害されるケースが増えています。

もし自分や家族の顔写真や氏名が他人によってみだりに公開された場合、どのように対処するべきでしょうか。以下で詳しく検討していきます。

なお、SNSのツールによっては、フォーム入力やメールを通じて、不適切な投稿を運営に報告することが可能です。

肖像権侵害で損害賠償請求はできるか

肖像権侵害は、プライバシーの侵害と同様、刑法で罰する規定はありません。刑法には「肖像権侵害罪」という条文はないからです。

ただし、刑事上の責任は発生しなくても、民事上の責任が発生し、民法第709条の不法行為に基づく損害賠償請求をすることが可能です。

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法709条(不法行為による損害賠償)

さらに、ネット上での肖像権侵害であれば、該当記事の差止請求や削除請求も可能です。

肖像権侵害になる基準

インターネット上で自分や家族の写真が勝手に利用された場合などに、肖像権侵害が成立するかどうか、また、肖像権侵害がどのような基準で判断されるかを知っておくことは、情報社会を生きる私たちにとって大変重要です。

肖像権侵害になるかどうかについては、様々な事情が考慮されます。明確に判断基準を打ち出すことは困難ですが、具体的には以下について確認するとよいでしょう。

  1. 報道目的など、公益の目的の撮影・公表かどうか
  2. 犯罪予防目的として撮影・公表かどうか
  3. 私的生活空間の撮影・公表なのか、それとも、公園や公道などの公衆の場での撮影・公表かどうか
  4. 人物が特定できるほどの撮影・公表か。それとも、被写体が小さすぎて人物が特定できず、あるいはモザイク処理をするなどして特定できない形での撮影・公表か

中でもネット上の肖像権の侵害では、当該画像がどのような場所に掲載され、どのような写り方をしているかは重要な判断材料の一つです。

自分や家族の顔を特定できる

自分や家族の顔が特定できる場合には、肖像権侵害が認められる可能性が高くなります。反対に、ぼんやりしていたりモザイク加工されたりして、特定できない場合には、肖像権侵害にはなりません。

自分や家族がメインになっている

写真の中で、自分や家族が被写体のメインになっている場合には肖像権侵害が認められやすくなります。これに対し、風景等がメインになっている場合には肖像権侵害になりにくくなります。

拡散可能性が高い場所に公開されている

たとえばSNSなどでは拡散可能性が高く、不特定多数の人間に閲覧されることになるので、肖像権侵害が認められやすくなります。

撮影や公開の承諾がない

肖像権侵害が起こるのは、被写体の承諾がないからであり、権利者である被写体が撮影や公開について許可をしている場合には、肖像権侵害になりません。

ただ、注意しなければならないのは、撮影と公開については別個の承諾が必要になることです。撮影の承諾をしていても、公開の承諾がない限り、勝手に公開したら肖像権侵害になるので、注意が必要です。

撮影されることが予測できない場所

どこで撮影されたかによっても、判断は異なります。

観光地の施設やイベント会場など、テレビカメラなどで撮影されることがあらかじめ十分予測できるような場所では、写り込んでいたとして肖像権侵害を訴えるのは、難しくなります。

肖像権侵害に対する損害賠償を求めて提訴した事例

具体的に、どういう場合に肖像権侵害が認められてきたか、2つの事例を見てみましょう。

街を歩く女性の写真をウェブサイトに掲載した事例

東京の最先端のストリートファッションを紹介するという目的で、銀座界隈を歩いていた原告の写真を無断で撮影した例を紹介します。

この事例では、被告が管理するウェブサイトに掲載したことが肖像権の侵害にあたるとして、損害賠償請求が認容されました。

女性が着ていたのは、ドルチェ&ガッバーナがパリコレクションに出展した服で、胸に大きく赤い文字で「SEX」というデザインが施されていました。

この写真が発表されると、2ちゃんねるの複数のスレッドからリンクが貼られ、「オバハン無理すんな、絶対ブラ見せるなよ気分悪いから」、「胸に大きく『SEX』って書いた服を着たエロ女発見!」といった原告に対する下品な誹謗中傷が書き込まれました。

それだけでなく、個人ウェブサイトで本件サイトからダウンロードされ複製された写真が掲載され、拡散されました。

撮影されていたことを知らなかった女性は写真が掲載され誹謗中傷されていることを友人から知らされ、すぐに抗議したため、写真はサイトから削除されました。

しかし、個人のウェブサイトにダウンロードされて複製された本件写真のページに対してリンクが貼られ、原告に対する誹謗中傷が繰り返されました。

女性が損害賠償を求めた裁判で、裁判所は、以下のとおり判示して女性の損害賠償請求を認めました。

何人も、個人の私生活上の自由として、みだりに自己の容貌や姿態を撮影されたり、撮影された肖像写真を公表されないという人格的利益を有しており、これは肖像権として法的に保護されるものと解される。

本件写真の撮影及び本件サイトへの掲載が原告の肖像権を侵害するか否かについて検討するに、本件写真は原告の全身像に焦点を絞り、その容貌もはっきり分かる形で大写しに撮影されたものであり、しかも、原告の着用していた服の胸部には上記のような「SEX」の文字がデザインされていたのであるから、一般人であれば、自己がかかる写真を撮影されることを知れば心理的な負担を覚え、このような写真を撮影されたり、これをウェブサイトに掲載されることを望まないものと認められる。

東京地方裁判所平成17年9月27日判決

法廷で被告人の写真を撮影して週刊誌に掲載した事例

「和歌山毒物混入カレー事件」の法廷において、被疑者の勾留理由開示手続が行われた際に、雑誌「フォーカス」のカメラマンがカメラを隠して持ち込みました。

本件刑事事件の手続における被告の動静を報道する目的で、裁判所の許可を得ることなく被疑者に無断で容貌・姿態を写真撮影し、この写真が上記雑誌に掲載されました。

そこで、当時被疑者であった女性は、肖像権侵害に対する損害賠償を求めて提訴しています。

この裁判では、一審で原告勝訴、控訴審で原告敗訴となり、最高裁まで争われました。最高裁は、以下のとおり判示して、肖像権侵害となる基準を示したのです。

人は,みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する(最高裁昭和40年(あ)第1187号同44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁参照)。もっとも,人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等として許されるべき場合もあるのであって,ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは,被撮影者の社会的地位,撮影された被撮影者の活動内容,撮影の場所,撮影の目的,撮影の態様,撮影の必要性等を総合考慮して,被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。
また,人は,自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益も有すると解するのが相当であり,人の容ぼう等の撮影が違法と評価される場合には,その容ぼう等が撮影された写真を公表する行為は,被撮影者の上記人格的利益を侵害するものとして,違法性を有するものというべきである。

最判平成17年11月10日民集59巻9号2428頁

肖像権侵害の被害に遭い、損害賠償するまでの流れ

InstagramやFacebookなど、SNSの普及により、様々な撮影物がインターネットを通して世間の目に触れるようになりました。一方で、トラブルになるケースも増えています。

では、実際に自分が肖像権侵害の被害に遭ったときは、どうすればよいのでしょうか。3つの対処法を紹介します。

運営会社・管理者への削除請求

インターネット上に無断で写真や動画を晒された場合、被害が拡大する前に一刻も早く削除してもらうことが重要です。投稿者がわからない場合、サイトの運営会社や管理者に削除請求をしましょう。

削除請求とは、投稿者の不正行為を停止するために対象コンテンツの削除要求をすることです。拡散される前に、掲載先の媒体を管理するウェブサイトの運営者に、対象コンテンツの削除を申し出る必要があります。

その際、ウェブサイトによっては、専用の削除申請用フォームが用意されていますが、それらがない場合は、ウェブサイト上に掲載されているメールアドレスやお問い合わせフォームから差止請求を申請することになります。

こうした交渉で削除を実現できない場合は、裁判所を通じた、仮処分という手続による削除を求めることになります。

民事訴訟の提起

肖像権の侵害を刑法では罰することは不可能ですが、民事上の責任を問うことは可能です。

その場合、侵害行為は民法709条の不法行為に当たることがあり、裁判所に当該コンテンツの削除請求や差し止め請求、さらに慰謝料として損害賠償請求をすることも可能です。

弁護士への相談

肖像権侵害の被害に遭った場合、さらなる被害の拡大を防ぐためにも、裁判所で仮処分等の適切な手続きをとる必要があります。また、誰が写真を投稿したのかわからない場合には、個人を特定する手続きも行う必要があります。

しかし、 運営元・管理者に対し、個人で削除請求を行っても対応してもらえない場合が多く、投稿者が友人など身近な人間だった場合、その後の人間関係にも悪影響を及ぼすおそれがあります。

また、削除請求に応じてもらえない場合、裁判所にて削除を求めるための仮処分手続きをとることになります。自力で差止請求や損害賠償請求をするにしても、相手にされなかったり、請求額からかなり減額されてしまう可能性があります。

これらの手続を迅速に行うには、ネット上のトラブルに強い弁護士へ相談し、判断・指示のもと対処することをおすすめします。いち早く弁護士に相談し、適切な措置をとることが、自分や家族のプライバシーを守ることにつながります。

まとめ:肖像権侵害の損害賠償請求は弁護士に相談しよう

肖像権はSNSの発達によって、誰しも侵害し、または侵害されるおそれのある権利です。そのため肖像権を侵害されていると気づいた場合、すぐに弁護士に相談しましょう。

一定のノウハウを持つ経験豊富な弁護士であれば、個々の事情を考慮したあらゆる手段を取ることが可能です。任意交渉の場合でも、弁護士を代理人に立てることで相談者の要求に応じてもらえる可能性が高くなります。

1日でも早く弁護士に相談し、拡散されてしまう前に早急に解決することが、自分や家族のプライバシーを守ることになります。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。近年、ネット上に拡散された風評被害や誹謗中傷に関する情報を看過すると深刻な被害をもたらします。当事務所では風評被害や炎上対策を行うソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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