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風評被害対策

似顔絵はどこまでOK?イラストの肖像権について解説

風評被害対策

似顔絵はどこまでOK?イラストの肖像権について解説

SNSや動画サイトにあなたが写っている写真や動画を無断で投稿された場合、肖像権侵害が成立する可能性があります。

では、イラストや似顔絵の場合はどうなるのでしょうか。イラストや似顔絵は、写真や動画と同様に扱うべきなのでしょうか?

そこで、本記事では、イラストや似顔絵と肖像権について解説します。

写真・動画とイラスト・似顔絵

写真・動画と、イラスト・似顔絵には大きく違う点があります。

それは、対象者の再現度合いです。当たり前ですが、写真や動画では対象者は忠実に描かれます。

一方、イラストや似顔絵は、人物の容ぼうや姿態をありのまま描いたものと、作者が主観的に特徴を捉え、意識的にデフォルメして描いたものの2種類に分けることができます。

この2種類によって扱い方が異なるように思えますが。では実際の裁判ではどのように判断されているのでしょうか。判例を解説していきましょう。

法廷内写真・イラストと肖像権

「和歌山毒物混入カレー事件」の法廷において、勾留理由開示手続が行われた際に、雑誌カメラマンが、法廷にカメラを隠して持ち込み、裁判所の許可を得ることなく、かつ、被告に無断で、手錠をされ腰縄を付けられた状態の被告を写真撮影しました

訴訟の経緯

この写真が写真週刊に掲載されたため、被告は、肖像権侵害に対する損害賠償を求めて提訴しました(第1事件)

翌週、この提訴を受けた週刊誌側が「絵ならどうなる?」というタイトルをつけ、写真の代わりに被告人のイラスト画3枚を含む記事を掲載して挑発し、

「貴女が突拍子もないことをしでかすのは今に始まったことではありませんが」、「下世話なことをお尋ね致しますが、首尾よく勝訴した暁には、賠償金の使途はどのようにお考えですか?」等の記述をし、

被告人を揶揄する記事を掲載した号を発行しました。

これに対し、被告は肖像権を侵害し、名誉を毀損したとして、損害賠償を求めて提訴しました(第2事件)

裁判所の写真に対する判断

この争いは最高裁まで持ち込まれました。対立したのは報道行為の有する公益性と肖像権です。最高裁判所は、第1事件につき、

「報道行為がその目的に照らして相当であるという要件を満たすときには、その行為の違法性が阻却される」としました。

ですが、写真の撮影方法や手錠と腰縄をつけられた写真であることを指摘し、「違法性が阻却されるものではない」として、掲載写真について、被上告人(刑事事件被告)の肖像権侵害を認めました。(最高裁判所2005年11月10日)

裁判所のイラストに対する判断

一方、第2事件については、イラストの描写の内容によって判断が分かれました。

関係者から資料を見せられている状態及び手振りを交えて話しているような状態が描かれたものについては、法廷内における被告人の動静を報道するためにその容ぼう等をイラスト画により描写して新聞や雑誌等に掲載することは社会的に是認された行為であるとして、社会生活上受忍すべき限度を超えて人格的利益を侵害するものとはいえないとし、肖像権侵害は認めませんでした。

実際に、裁判中に裁判長の許可を得ずに法廷内の写真を撮影することはできないため、法廷画家と呼ばれる人々が裁判の様子を描いています。これと同じであるとされたわけですが、週刊誌側も同様の判断をして、イラスト画を掲載したのでしょう。

一方、手錠腰縄により身体の拘束を受けている状態が描かれたものについては、そのような表現内容のイラスト画を公表する行為は、被上告人を侮辱し、被上告人の名誉感情を侵害するものというべきであり、こうしたイラスト画を記事に組み込み、本件写真週刊誌に掲載して公表した行為は、社会生活上受忍すべき限度を超えて、被上告人の人格的利益を侵害するものであるとして、肖像権と名誉権の侵害を認めました

最高裁判所はイラスト画につき、

人は、自己の容ぼう等を描写したイラスト画についても、これをみだりに公表されない人格的利益を有すると解するのが相当である
人の容ぼう等を描写したイラスト画は、その描写に作者の主観や技術が反映するものであり、それが公表された場合、作者の主観や技術を反映したものであることを前提とした受け取り方をされるものである。
したがって、人の容ぼう等を描写したイラスト画を公表する行為が社会生活上受忍の限度を超えて不法行為法上違法と評価されるか否かの判断に当たっては、写真とは異なるイラスト画の上記特質が参酌されなければならない。

同上

として、人の容ぼう等を描写したイラスト画についても写真と同様に肖像権が発生するとし、ただし、被撮影者の容ぼう等を化学的方法等により再現した写真と、描写に作者の主観や技術が反映されるイラスト画は、異なる特質を有しているし、それについて参酌されなければならないとしました。

本件の場合には、イラスト画の特質を参酌しても、人を侮辱し、名誉感情を侵害するものであるので、肖像権侵害が成立するという判断です。

似顔絵と肖像権

大学講師である原告が、被告会社の発行する雑誌及び単行本に掲載された被告が描いた漫画において、名誉を毀損され、肖像権を侵害されたとして、不法行為に基づき、損害賠償の支払等を求めた事例があります

訴訟の経緯

原告は過去に被告漫画家を批判する本を出版したことがありました。

被告漫画家はその中で自分の漫画が多数引用されていることにつき、雑誌及び単行本に掲載された自著の漫画において、「わしの絵を無断で盗んで乱用している」、「ドロボー」、「著作権侵害のドロボー本」、「汚い商売しとるよな」等と表記しました。原告はこれが、一般読者に対し、原告が窃盗類似の著作権法に違反する複製権侵害をしたと認識させており、本件漫画は、原告の社会的評価を低下させ、名誉を毀損するとしました。

また被告が、原告の似顔絵を描いて原告を批判したことにつき、人は人格的利益として自己の肖像を無断で制作や公表されない利益を有しているが、似顔絵も肖像や容姿に関する情報に該当するのだから、無断で人の似顔絵を漫画に掲載することは違法であるとして、肖像権侵害を訴えました

裁判所の判断

裁判所はこれに対し、本件表現がいずれも原告の社会的評価を低下させるもので、原告の名誉を毀損するとしました。

ですが、原告による表現は複製権侵害にあたるという意見ないし論評によるものであり、公共の利害に関する事実であり、漫画家の著作権を擁護するという公益を図る目的を有するとしました。

その上で、原告の意見ないし論評について検討し、その前提となる事実は重要な部分において真実であると認めることができるとし、表現内容が意見ないし論評としての域を逸脱していないかについて判断しましたが、漫画全体の文脈からみれば原告に対する人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評の域を逸脱し、相当性を欠くものと評価することはできないとして、名誉毀損は認めませんでした。

肖像権については、

肖像権を侵害する行為となるのは、写真撮影、ビデオ撮影等個人の容貌ないし姿態をありのまま記録する行為及びこれらの方法で記録された情報を公表する行為であると解すべきである。絵画は、写真及びビデオ録画のように被写体を機械的に記録するものとは異なり、作者の主観的、技術的作用が介在するものであるから、肖像画のように写真と同程度に対象者の容貌ないし姿態を写実的に正確に描写する場合は格別として、作者の技術により主観的に特徴を捉えて描く似顔絵については、少なくとも本件のように似顔絵自体により特定の人物を指すと容易に判別できるときに当たらないときは、似顔絵によってその人物の容貌ないし姿態の情報を取得させ、公表したとは言い難く、別途名誉権、プライバシー権等他の人格的利益の侵害による不法行為が成立することはあり得るとしても、肖像権侵害には当たらないと解すべきである。

東京地方裁判所2002年5月28日判決

とし、「似顔絵自体により特定の人物を指すと容易に判別できる」場合を除けば、言い換えれば主観的に特徴をとらえて描く似顔絵である場合には、「その人物の容貌ないし姿態の情報を取得させ、公表したとは言い難」いので、肖像権侵害とはならないとしました。

本件の場合の似顔絵は、原告の顔写真をもとに描かれたものでしたが、原告の容貌ないし姿態を正確に表現しようとするものではなく、他のキャラクターと同様に被告漫画家としての技術により主観的に特徴を捉えて描く似顔絵であるとみるのが相当なので、似顔絵自体により原告を指すと一見して判別できない。したがって、その容貌ないし姿態の情報を取得させ、公表したとは認め難く、原告の肖像権を侵害するとは認められないということです。

まとめ

主観的に特徴を捉えて描く似顔絵が投稿されていた場合、肖像権が侵害されていることが認められる可能性は低いと言えます。

似顔絵による肖像権の侵害を広く認めてしまうと、特定の人物を似顔絵で表現することが原則として全て違法となりかねず、表現自由を過度に制限してしまうことがあるからです。

もちろん、対象者の容貌ないし姿態を正確に表現しようとした似顔絵であれば、肖像権が侵害されていると認められる可能性があります。

また、肖像権侵害にあたらない場合でも、名誉権、プライバシー権等の人格的利益の侵害による不法行為が成立する可能性はあるので、注意が必要となります。

一方、対象者の容貌ないし姿態を正確に表現しようとするものであるのなら、肖像権侵害となる可能性があります

また、肖像権侵害にあたらない場合でも、名誉権、プライバシー権等の人格的利益の侵害による不法行為が成立する可能性はあるので、注意が必要となります。

肖像権の判断は高度で専門的です。SNSが普及した昨今、誰もが容易に似顔絵を投稿できるようになり、肖像権が侵害されるケースは急増しています。肖像権が放置されたまま放置するのは危険です。ぜひ一度専門家に相談するのがよいでしょう。

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