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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

ネット上における個人的な情報の公開はプライバシー侵害になるのか

風評被害対策

ネット上における個人的な情報の公開はプライバシー侵害になるのか

当サイトの別記事「病気情報とプライバシー侵害」に、「個人の病気に関する情報はプライバシーに関する情報であり、極めてセンシティブな情報です」と書きましたが、それ以外の氏名、年齢、住所、電話番号等の個人的情報も、公開されることはプライバシーの侵害に当たります。あなたの住所や電話番号を知った人があなたに興味を持って、自宅の周りをうろついたり、電話をかけてきたりするかもしれませんし、公開された個人情報を収集され、迷惑メールや振り込め詐欺などの別の犯罪に利用される危険もあります。公開されたときは、速やかに、対処せねばなりません。

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氏名・住所・職業・家族構成等の公開

名前や家族構成とともに住所を公開することは、単なるプライバシー侵害だけではなく、ストーカー行為等の犯罪につながるかもしれない情報漏洩です。

ウェブサイトで氏名や住所、職業等を公開されてプライバシーを侵害され、窃盗や恐喝等の犯罪行為をしている等の記事で名誉を毀損されたとして、損害賠償と記事削除を求めた事例があります。原告は子供3人とともに生活していたのですが、2000年頃から被告と同居するようになり、その関係はトラブルになるまで続いていました。それまで問題はなかったようですが、2014年頃に被告は運営しているウェブサイト上で、原告に関する記事を公開し始めました。

記事には、原告の氏名や住所、職業、学歴、経歴、離婚の事実、子ども達の氏名等が公開され、原告が窃盗、恐喝、詐欺、器物損壊という犯罪行為をしており、その損害賠償債務が1040万円に及ぶということ、万引きが100%成功すると原告が述べているということ、さらには、他人から奪った金銭を使用して弁護士を雇ってこれらの事実を隠蔽しているということが書かれていました。

裁判所は、記事内容が事実であると認めるに足る証拠はなく、摘示されている事実が真実であると信ずるにつき相当の理由があることを裏付ける証拠も存在しないとして、名誉毀損の成立を認めました。また、一般に、他人に開示されることを欲しないであろう性格を有するものであり、プライバシーとして保護されるべき私的な事柄に属し得るものと考えられる事柄を公表したことに関しては、

原告が本件記事において摘示された犯罪行為等をしたという事実自体を認めることが困難であるし、また、上記の事柄を公表すべき必要性を肯定することもできないから、いずれにしても、当該主張は、上記の公表が原告のプライバシーの侵害に当たると認めることを左右するものではない。
そうすると、本件記事は、原告のプライバシーを侵害するものとして、この意味においても、不法行為に当たるということになる。

東京地方裁判所2015年7月16日判決

として、プライバシーの侵害も認め、80万円の損害賠償の支払いと記事削除を命じました。なお、この事例で公表されたプライバシーに属する事柄とは、職業・住所・生年月日・出身大学と学部・離婚した夫の職業・結婚時の勤務先・子供3人の名前・年齢等でした。

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名前や家族構成とともに住所を公開することは、単なるプライバシー侵害であるにとどまらず、ストーカー行為等の犯罪につながるかもしれない重大な情報漏洩です。「逗子ストーカー事件」は、犯人に引っ越し先の住所を知られたために、起こった事件です。

[blogcard url=”https://monolith-law.jp/reputation/stalker-regulation-law”]

離婚の経緯の公開

テレビ番組において元夫により離婚の経緯に関して一方的な発言をされ、それが名誉毀損あるいはプライバシーを侵害するとして、元妻がNHKを提訴し、訂正放送をさせた事例があります。

NHKが「妻からの離縁状・突然の別れに戸惑う夫たち」と題して放送した「生活ほっとモーニング」の番組において、離婚経験のある男性が素顔のまま、大学生の息子とともにインタビューに答えました。
離婚に至った経緯は、近所でも評判の仲の良い夫婦であったが、8年前に仕事の関係で夫の帰りが遅くなるようになってから、夫婦の仲がぎくしゃくし出した。夫は妻にきちんと説明をしたし説得もしたが、妻は理解しようとせず、いら立ちを募らせるばかりであった。何回も話合いをしたが、夫には妻の言い分がささいなことにしか聞えなかった。妻は夫の知らない間に離婚の準備を進めていて、夫に対して突然一方的に離婚を要求した。この男性は妻の本当の気持ちが分からないまま離婚に同意した。妻のメッセージに深い意味を感じなかったことが夫婦仲を悪化させた。というような趣旨の放送でした。

しかし、実際には、この妻は、放送の9年前に夫に明確に離婚を申し出たのを始め、その後も何度も離婚を求め、約7年前からは家庭内で顔を合わせることも避け、夫も妻からの離婚の申出とその理由を認識して生活していたものです。しかし、夫が離婚に応じようとしないため、妻は、離婚調停の申立てをし、その後、家を出たというのが事実でした。約1年間の離婚調停の後、離婚調停が成立しました。一審判決が請求を棄却したため、元妻は控訴し、東京高等裁判所は名誉毀損、プライバシー侵害を認め、原判決を変更し、請求を認容しました。

裁判所は、元夫は元妻から反対取材するのであれば番組の取材に協力しない又は番組への出演を拒否すると述べたことが認められ、このことから、NHKは、あえて元妻から取材しないで、元夫からのみ一方的に取材して番組を編集・制作し、これについて元妻の意見を聞かずに放送したのであるから、可能な取材を尽くし、かつ、元妻の名誉及びプライバシーを侵害しないように注意すべき義務を尽くしたとは、到底言えないとして、

離婚の経過や離婚原因は、関係当事者にとっては極めてプライベー卜な事柄に属し、しかも、通常この点についての関係当事者の認識ないし言い分は必ずしも一致せず、ときには鋭く対立することが多いものである上、〇〇やその妻である控訴人のような無名の一私人のそれは、それ自体は社会の正当な関心事ともいえないものであるから、これを取り上げて放送するに当たっては、この放送によって関係当事者が特定されるおそれのないような方法をとるか、そうでない場合には、いかに公共性のあるテレビ番組であっても、関係当事者の承諾を得、双方からの取材を尽くし、できるだけ真実の把握に努めることを要するものというべきところ、被控訴人がそのような努力を怠ったことは、前記のとおり明らかである。

東京高等裁判所2001年7月18日判決

として、名誉毀損とプライバシー侵害を認め、130万円の支払いを認めました。
また、放送法4条の「真実でないことが判明したときは、判明した日から二日以内に、その放送をした放送設備と同等の放送設備により、相当の方法で、訂正又は取消しの放送をしなければならない」に基づき、訂正放送を命じました。

テレビ番組においてもそうですが、自分の方に問題が多く、そのために離婚となり、その過程においても問題行動を繰り返したり、暴力をふるったりし、それに一切触れずに配偶者の側にのみ問題があるかのような記事をブログに書いたりすると、プライバシー侵害を問われることになる可能性が高いと言えます。離婚の経過や離婚原因は、関係当事者にとっては極めてプライベー卜な事柄に属すからです。

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出身・性格・離婚の経緯などの公開

他人に知られたくない性質の個人的情報をネット上で公開された場合には、専門の弁護士にご相談を。

1987年4月、ロサンゼルスにおいて元伊藤忠商事ロサンゼルス支店の支店長が行方不明となり、同年12月にロス市警は支店長の妻であった原告とAとを元支店長殺害の容疑で逮捕しました。しかし、原告はその容疑を否認して数時間後に釈放され、Aもまた数日後に釈放されました。翌年1月、ロス市警はAの友人であったBを元支店長殺害の容疑者として逮捕し、同人にいわゆる刑事免責を与えて、Aと共同して元支店長を殺害した旨の自供を引き出し、Bの供述に基づいて、マリブ峡谷道路付近で地中に埋められた元支店長の遺体を発見しました。

そしてロサンゼルス郡検事局は原告に対する訴追容疑を「殺人」から「事後従犯」(日本における「証憑湮滅」ないしは「犯人隠避」)に変更しましたが、のちに刑事訴追を取り下げました。

1988年3月頃から、日本の週刊誌等がこの事件を取り上げ始めました。現時点で判断する限り、「よくこんなことを書けたものだ」と思うほどの誹謗中傷の嵐だったのですが、日本の週刊誌は原告が有罪であること、やがて逮捕されることを確信していたかのようです。しかし、何を根拠にそのような判断をしたか不明です。

ほとんど情報もないのに、誹謗中傷をすることは許されませんし、危険です。繰り返されるネット上での誹謗中傷も、どういう責任を問われる可能性があるか、参考になる事例といえるでしょう。

原告は、名誉毀損、プライバシー侵害、肖像権侵害を訴えて、新潮社(「週刊新潮」「フォーカス」)、毎日新聞社(「サンデー毎日」)、小学館(写真週刊誌「タッチ」)、朝日新聞社(「週刊朝日」)、扶桑社(「週刊サンケイ」)、文藝春秋社(「週刊文春」)を提訴し、裁判所は記事の一部につき、名誉毀損とプライバシーの侵害、肖像権侵害を認め、損害賠償請求を認容しました。(東京地方裁判所1994年1月31日判決)

裁判所は、例えば、「ご乱心!“旧華族お姫様”」の夫殺し」「結局、犯人は、ロス市警がかねてからマークしていた別居中の妻(51)と、長男(21)だったわけだが」といった見出しで記事を書いた「フォーカス」については、「原告を元夫殺害の犯人であると主張するが、これを認めるに足る証拠はなく、犯人であると信じたことについても相当の理由はなかった」として名誉毀損を認定し、「離婚の争いに関する記述は、原告主張のとおり、一般人の感受性を基準とすれば秘匿を欲する事柄であり、原告のプライバシーを侵害するもの」と認めました。

また、掲載された原告の写真は、その1枚が、原告が一度目に逮捕後釈放された際の自宅前における歩行中の写真であり、他の1枚が、原告が1956年に「ミス平凡」に選ばれたときに雑誌「平凡」1956年12月号に掲載された水着姿の写真でしたが、水着姿の写真は原告の肖像権を侵害するものと認めました。

結局、侵害された情報は、本人の出身、離婚の経緯、犯罪の嫌疑、性格等であり、侵害の内容と程度により、

  • 新潮社(「週刊新潮」「フォーカス」)に200万円
  • 毎日新聞社(「サンデー毎日」)に70万円
  • 小学館(写真週刊誌「タッチ」)に40万円
  • 朝日新聞社(「週刊朝日」)に30万円
  • 扶桑社(「週刊サンケイ」)に50万円
  • 文藝春秋社(「週刊文春」)に60万円

の、慰謝料が認められました。

まとめ

このような、いい加減な調査しかしない、一方的な決めつけによる報道が問題にならないはずはありません。問題になっても売れるから構わないという判断があったのでしょうが、その全盛期に写真週刊誌が競い合っていたプライバシー侵害の過熱報道合戦が、現在はネット上で誹謗中傷合戦として行われているように思われます。ここであげたような氏名、住所、離婚の経過や離婚原因、出身、性格、家族構成、犯罪の嫌疑だけでなく、収入、身上関係など、他人に知られたくない性質の個人的情報をネット上で公開された場合には、速やかに対応することが必要です。

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