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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

介護施設・老人ホームの悪質な口コミ削除方法を弁護士が解説

風評被害対策

高齢化社会の到来により、介護施設・老人ホームの需要は増え続け、併せて新規で介護ビジネスに参入する企業も増加しています。

ネット上の口コミの評価を見て商品・サービスの購入を決定する人は多いですが、これは介護施設も例外ではありません。口コミによる宣伝効果は高いですが、一方、誹謗中傷などの悪評に悩まされるケースも多いです。

今回は、老人ホーム・介護施設の運営事業者向けに、施設への悪質な口コミを削除する方法について解説します。

介護施設・老人ホームの増加傾向

介護施設・老人ホームのなかでも、地方公共団体や社会福祉法人運営の特別養護老人ホームは特に増加傾向にあり、2012年は6,590施設だったものが、2016年には7,705施設にまで増加しています。特別養護老人ホームは公的機関であり、有料老人ホームと比べ施設利用の費用が安いため、利用を希望する人が多いと考えられています。入居を希望しながらも空き室不足で施設に入れない待機者の数は、2019年4月時点で約30万人もいます。

厚労省調査結果概要

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/fukushi/16/dl/kekka-kihonhyou01.pdf

口コミの重要性

介護施設を選ぶ際は、できる限り詳細に内部情報が欲しいものです。従来は施設見学という手段を取る人が多くいましたが、一時的な側面では実態を把握できず、入所後に「思っていたのと違う!」と後悔するケースも多々あります。

そこで、内部情報を詳細に得る新たな手段として有効なのが、ネット上の口コミをチェックする方法です。「介護のほんね」や「老人ホームマップ」といった介護施設専門の口コミサイトにアクセスし、利用を検討する施設名で入力して、利用者の口コミを見ることができます。

介護サービスの質は、数字だけでははかれない部分が多く、口コミで現場の声を聞くことはとても重要です。入所前の口コミのチェックは当たり前になってきています。

風評被害対策の重要性

例えば、「この施設でリハビリを受けたら回復した」「介護職員の対応が丁寧だった」など良い口コミがあれば利用を検討したくなるでしょう。

逆に悪い口コミがあると、「評判が悪い施設だからやめておこう」と顧客が離れてしまうリスクもあります。介護施設の運営では、口コミの風評被害対策はとても重要です。

介護は利用者のプライバシーに深く関わる仕事のため、対応は1対1で行われることが多く、そこでどういった行為が行われたのかは一部の人間しか知り得ません。

このような閉鎖的環境においては、利用者や家族と施設側の信頼関係が重要になります。きちんとした信頼関係を構築できていないと、誤解が生じ、ネット上にネガティブな口コミが投稿されるおそれがあります。

例えば、認知症の利用者が車いすから立ち上がろうとした拍子に転倒し、恨みを持った家族からネット上に「〇〇という施設は最悪!職員がサボっていたせいで事故が起きてしまった」といったネガティブな口コミを書きこまれるケースがあります。こうした口コミを見た人は、施設に対して悪印象を持ちます。

悪評が広まると利用者が減り、施設運営が立ちゆかなくなり、最悪の場合倒産する可能性もあります。ネガティブな口コミに対し、早急に対応するが必要あります。

ネガティブな口コミの削除方法

「介護のほんね」では、ガイドラインに違反する口コミは、運営側の判断により投稿を削除する場合があると記載しています。全件対応してくれるとは限りません。この章では悪質な口コミを確実に削除する方法、ポイントを解説します。

違法による削除請求

裁判所に対し、違法による削除請求を行います。ネット上のネガティブな投稿を削除する場合、名誉毀損を主張するのが一般的です。「この投稿によって名誉権が侵害されているので削除してほしい」と主張することになります。名誉毀損成立のための要件は、以下の3つです。

  1. 公然と
  2. 事実を適示し
  3. 人(団体)の名誉を毀損する

「公然と」とは「不特定多数」という意味で、公開されたインターネット上での書き込み自体が「不特定多数への表現」と認められます。

「事実」については、例えば、「職員が不愛想だ」という口コミは個人の「感想」にすぎず、人によって感じ方が異なり、ここでいう「事実」には該当しない可能性があります。

一方で、「この施設が事故を隠ぺいした」という口コミであれば、明確な証拠がある場合は「事実」に該当しますが、「事実」を書き込むだけでは名誉毀損は成立しません。口コミサイト自体がそれらを書き込む場として存在しており、消費者と企業の情報差を無くす有効なコミュニケーション手段とされています。状況に応じ双方の利益を考えて違法性の判断をする必要があります。一定の事由をもとに違法性が成立しないことを「違法性阻却事由」といいます。

こうした問題は法律知識が無いと判断が難しいため、専門の弁護士へ相談することをおすすめします。

仮処分による削除請求

仮処分は簡易的な裁判手続のことです。裁判を起こすのと比べ、迅速な口コミの削除が可能です。悪質な口コミが公開されたままだと、風評被害が拡大する恐れがあります。被害を最小限に食い止めるには、迅速な手続きが必要となります。

裁判所に対し、「悪質な口コミの削除を求める仮処分命令を出してほしい」と要求します。命令が出されれば、裁判所からの命令ということもあり、口コミサイト側も削除に応じる例がほとんどです。

ただし、仮処分手続きは、通常の裁判と同様に法律的な主張を行い、手続きの必要性を裁判所に認めてもらう必要があります。こういった主張についても専門性の高い対応を求められるため、プロの弁護士に依頼することをおすすめします。

投稿者特定も可能

仮処分では削除だけでなく、投稿者特定の手続きを取ることも可能です。

投稿者特定の場合、まずサイト側にIPアドレス開示請求を行い、プロバイダを特定してから発信者情報開示請求を行う必要があります。削除の場合と比べ、手続きが煩雑になる点にご注意ください。

具体的な手順等については、こちらの記事で詳しく解説しています。

まとめ

高齢化社会では介護施設や老人ホームの件数が増加し、利用にあたりネット上の口コミを参考にする人が多く、ネガティブな口コミが投稿・拡散されると、施設の評判・経営状況に悪影響を与えるおそれがあります。

悪質な口コミを確実に削除するには、裁判所に対し仮処分の手続きを用い、削除を請求する方法が一般的です。法的な主張・立証が必要となり、知識や経験が無いと対応は困難です。

被害が拡大する前に、すみやかに専門弁護士に依頼することをおすすめします。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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