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風評被害対策

Facebookでの誹謗中傷の実例と刑事・民事の責任追及

風評被害対策

Facebookでの誹謗中傷の実例と刑事・民事の責任追及

Facebook は、月間ユーザー数で世界第1位のSNSです。日本国内でも高い人気を誇り、現在は30代以上の人が多く使っているSNSといわれています。基本的に実名の登録と利用が必要なSNSという特性から、名誉毀損が起きることもしばしば。本記事では実例を紹介しながらFacebookの名誉毀損について解説していきましょう。

Facebookの特徴

Facebookは、利用規約において「利用者が日常的に使用する名前をアカウントに使用すること」「ご自身に関する正確な情報を提供すること」とあるように、実名での登録と利用が基本です。実名で利用していないことが判明すると、本名に訂正するまでアカウントが停止されることもあります。

その性質もあり、フリーランサーや会社役員など、名前を出して仕事をしている人がFacebookにおいて、自分のビジネスを展開している例も多くあります。

顔写真を載せているユーザーも多く、設定によって出身地や、出身の学校、勤務先なども公開できるため、同姓同名の人から個人を特定しやすいのが特徴です。そのため、知人を見つけやすいのですが、同時に自分も見つけられやすいというリスクがあります。

Facebookでは、悪質な発言等をすると、親しい友人、知人や同僚などに直ちに知られてしまうのが特徴的と言えるでしょう。

Facebookにおける誹謗中傷事例

実名アカウントが基本だからこそ、リアルな付き合いに近く、生じるトラブルも多々あります。そうした際に、誹謗中傷を書き込まれると、その内容が友人、知人や同僚などに広く知られてしまいます。

他のSNSや掲示板のような不特定多数に拡散することこそ少ないですが、「〇〇さんがこんなことを言われている」「××さんって、そうだったのかな」と、友人、知人や同僚などに知られてしまい、困ったことになる場合があります。誹謗中傷されたとき、近しい人たちには知られたくない、と思うことが多いでしょうが、そのような身近な人々にこそ知られやすいのです。

本人のコメント欄に誹謗中傷を書き込まれる

悪意がなくても、他者の投稿やコメントを批判してしまうことがあります。知人だと思って油断してしまう場合もあるでしょうし、軽い批判ならいいのですが、知人であるがゆえにきつい言い方をしてしまう人もいます。リアルな付き合い、人間関係において発言しているつもりなのでしょうが、周囲の人たちが見ている状況で過激化すると、困ったことになりかねません。口論の末、本人が周囲には秘密にしている過去の経歴や犯罪歴、恋愛歴を公表されたり、明らかにしていない住所や勤務先などを書き込まれるという、個人情報の漏洩というトラブルも生じています。

Facebookの利点である、「長い間連絡が取れなかった昔の友人や同級生」との再会や付き合いの復活は嬉しいものですが、現状等を無視して過剰に過去の話を暴露されるなど迷惑する場合もあります。ほとんど誹謗中傷だといいたくなる場合もあるようです。

相手アカウントのタイムライン上で誹謗中傷される

こちらのコメント欄に誹謗中傷を書き込まれて迷惑をしているのなら、相手をブロックして書き込みができないようにすればひとまずは解決します。 しかし、自分のタイムライン上でこちらを名指しにして、こちらからは見えないところで誹謗中傷を書き込んでいるケースもあります。そうすると、ブロックしたとしても知人や友人には誹謗中傷されていることを隠せませんし、個人情報の漏洩を止めることもできません。

仕事上の誹謗中傷

Facebookを仕事上のツールとして活用している人も多いので、仕事上の評判を低下させるようなことを広められたり、コメントに書かれたりして、困ることが多くあります。「仕事上でトラブルを起こしたことがある」「この会社はブラックだ」「接客態度が悪い」など、いろいろな誹謗中傷の被害にあって困っている個人や企業が多くいます。

写真投稿とタグ付け

写真を勝手に投稿され、タグ付けされてしまうことがあります。名前が使われた相手にも同じ投稿がタイムラインで流れてしまいます。写真によっては好ましくないものもあり、その写真を見た他の人が意図せずに誹謗中傷を拡散してしまうこともあります。

このような問題をあらかじめ防ぐためには、個人の設定画面から、設定、タイムラインとタグ付けを選択して細かい設定をしておくと良いでしょう。あなたがタグ付けされた写真が公開される前に、公開していいかどうかをあなたが判断できるようになります。

ネットストーカー被害

Facebookでは、本人を特定することがたやすい上に、日々起きたことを気軽に投稿しやすいので、その人がその日どんな行動をしたのか、誰といたのかということを、逐一把握できることとなります。

元配偶者や元交際相手、あなたに片思いをしていた人などがFacebookのアカウントをチェックしてつきまとい、個人情報を調べ上げたり執拗にメールを送ってきたりという、ネットストーカーになることもあります

リベンジポルノ被害

元配偶者や元交際相手が、拒否されたことの仕返しとして、相手の裸の写真や性的場面の動画などを公開する行為をリベンジポルノといいますが、画像や動画も投稿できるというFacebookの機能を使った、リベンジポルノの被害も多発しています。

なりすまし行為

Twitterでも問題になっているのですが、「なりすまし」は同姓同名のFacebookのアカウントを開設し、本人に見せかける画像を掲載して本人になりすまし、その友達に「友達申請」やメッセージ送信を行います。友達申請があった人が本人と勘違いすることも多く、問題となっています。

なりすましの主目的は有料サイトに誘導したうえでお金をだまし取ることですが、個人的な嫌がらせも多く、本物のユーザーが発言したように見せかけて誹謗中傷が行われたりすると、社会的信用が失墜してしまいます。特に、ビジネスにFacebookを用いている場合、取り返しのつかないことにもなりかねません。また、友達となる相手の住所や生年月日、人間関係といった個人情報の取得目的もあり、この場合には周囲にも迷惑が及ぶので、大変困ったことになります。

乗っ取り行為

なりすまし以上に悪質なのが、アカウントの乗っ取りです。Facebookには正規ユーザーがログイン情報を失ってしまったときの救済として「友達を通じてアカウントを再開」という機能があります。これを悪用し、なりすましアカウントから対象となる人に友達申請を行います。「パスワードを忘れたのでアカウントを作り直した」といわれたりすると、友達申請を承認してしまう人もいるので、3人の承認を得られれば、Facebook乗っ取りは完成してしまいます。

乗っ取り被害で多いのは広告投稿ですが、Facebookには多くの個人情報があり、アカウントを乗っ取るということはこうした個人情報をすべて閲覧できることです。得た情報を用いて誹謗中傷もやりたい放題となりますし、本人名義で誹謗中傷するメールを送ったり、卑猥な書き込みをしたりして、本人の社会的評価を下げるというトラブルが生じています。いわゆる不正アクセス行為です。

また、Facebook以外での名誉毀損によって社会的評価を低下させた事例については下記の記事にて解説しています。

Facebookの誹謗中傷への対処の基本

アカウントをブロックする

誹謗中傷がそれほどひどいものではなく、相手とのつながりを絶つことでトラブルが解決するというのであれば、相手のアカウントをブロックすればいいでしょう。

例えば○○さんの投稿右上のマークをクリックし、次画面の「サポートを依頼または投稿を報告」をクリックし、「次に進むには問題を選択してください」画面の、「〇〇さんをブロック/この相手とやり取りできなくなり、お互いに表示されなくなります」「○○の投稿をすべて非表示にする/この人の投稿がニュースフィードに表示されなくなります」のどちらか、もしくは両方を選んで「送信」すれば終了です。

本人に直接お願いする

誹謗中傷を行っている本人に、誹謗中傷をやめるようお願いするという方法もあり得ますし、Facebookも、相手のアカウント宛にメールで依頼する方法を推奨しているのですが、あまりお勧めしません。もともとお互いが感情的になっているのであれば逆効果ですし、さらにエスカレートしてしまう場合も多いのです。

Facebookに対応を依頼する

コメントが誹謗中傷するものであり、削除したいと思ったときには、やはり投稿右上のマークをクリックし、次画面の「サポートを依頼または投稿を報告」よりFacebookへ報告しましょう。「次に進むには問題を選択してください」画面の、「問題の選択後に投稿を報告することができます」に「ヌード」「暴力」「嫌がらせ」「ヘイトスピーチ」「その他」などがあるので、「嫌がらせ」を選択すると、「嫌がらせを受けているのは誰ですか?」と出ます。「自分」「友達」の「自分」を選択し、「送信」すれば終了です。

あまりにも簡単なので、本当に対処してもらえるのかどうか不安になります。ガイドラインに反するものであれば削除されるはずなのですが、掲示板や他のSNSの場合と同じで、Facebookも申請があったものをすべて削除していたら、利用者が減ってしまいます。また、表現の自由も最大限認めなければなりません。また、申請者が自分で思っているほどには、誹謗中傷の程度がひどいと判断されないかもしれません。結局、削除申請しても、認められない場合が多いことになってしまいます

Facebookの誹謗中傷への法的対処

リベンジポルノ被害の場合

先にあげた「Facebookにおける誹謗中傷事例」の「6.リベンジポルノ被害」の場合には、Facebookの対応を待つことなく、速やかに警察に届けましょう。リベンジポルノ等の違法情報の通報を受け削除を行う窓口も、セーフラインによって開設されています。

刑事の責任追及

名誉毀損罪にあたる可能性があります。

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

刑法第230条

不特定多数に公開された場で、具体的事実を取り上げ、人の社会的評価を低下させるような行為をした場合には、名誉毀損罪に問われる可能性があります。本人になりすまして卑猥な画像や文章を投稿した場合なども、これに当たります。

人を侮辱した場合には、侮辱罪が成立する可能性もあります

誹謗中傷が深刻なものである場合には、脅迫罪にあたる可能性があります。

1 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

刑法第222条

「殺す」はもちろんですが、「家に火をつける」等の財産への危害告知も脅迫罪にあたる可能性があります。

民事の責任追及

民事上の請求で加害者を追及することもできます。

まず、Facebook,Inc.に、発信者情報開示の仮処分を申し立てます。Facebook,Inc.はアメリカ合衆国の法人です。海外サイトと国際管轄の問題については、当サイトの別記事をご参照ください。

日本の裁判所で申し立てを行えますが、仮処分命令が認められたらFacebook,Inc.は情報を開示しますので、次に、特定した経由プロバイダに対して発信者情報開示請求訴訟を行い、発信者の本名や住所などを特定します。

発信者を特定したら、名誉毀損に当たるような投稿であれば、損害賠償を請求することができます。また、投稿により精神的損害を受けたとして慰謝料を請求することも可能です。早期段階で専門の弁護士へ相談をお勧めします。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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