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風評被害対策

どんな誹謗中傷が名誉感情侵害にあたる?7つの具体例を解説

風評被害対策

誹謗中傷と名誉感情の侵害についての裁判における判断例

ソーシャルメディアの発達と普及によって、インターネット上で誰でも自由な発言ができるようになるとともに、匿名掲示板やSNSを通じた誹謗中傷の被害が社会問題化しています。

こうした誹謗中傷に対して法的責任を追及する場合、名誉毀損による不法行為責任を問う方法だけでなく、名誉感情を侵害したと主張する方法があります。名誉毀損の成立が認められなくても、名誉感情侵害にあたるとして損害賠償請求が認められるケースもあります。

そこで、本記事では、名誉毀損と名誉感情侵害の違いや、名誉感情侵害による不法行為責任が認められるケースについて、具体的に解説します。

社会的名誉と主観的名誉

社会的名誉と主観的名誉

名誉毀損(名誉の侵害)と名誉感情侵害を区別するためには、名誉毀損の「名誉」と、名誉感情侵害の「名誉感情」の違いを理解する必要があります。

名誉毀損の「名誉」とは、判例上「人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価」(最大判昭和61年6月11日民集40巻4号872頁)と定義されています。

そのため、誹謗中傷により自分に対する他人の評価(社会的名誉)が傷つけられた場合に、名誉毀損による不法行為を認められる可能性があります。

これに対して、名誉感情侵害の不法行為における「名誉感情」とは、「人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価」(最二小判昭和45年12月18日民集24巻13号2151頁)と定義されています。

そのため、誹謗中傷(侮辱)により、自分の自尊心やプライド(主観的名誉)を傷つけられた場合に、名誉感情侵害による不法行為が認められる可能性があります。つまり、「バカ」や「あほ」などの発言によって、社会的評価が低下するとまでは認められなくても、自尊心やプライドが傷つけられたといえるならば、名誉感情侵害を主張して救済される余地があります。

名誉感情侵害による不法行為が認められるケース

名誉感情侵害による不法行為が認められるケース

「名誉感情」とは、すでに解説した通り、自尊心やプライドといった主観的名誉を指します。名誉感情は、こうした主観的な感情の領域である以上、他人について論評する際に、自尊心などを少なからず傷つけてしまうことは避けられないかもしれません。少しでも名誉感情が傷つけば不法行為責任を問えるとなると、他人について自由に論評することを委縮させてしまいます。

そこで、このような弊害を避けるため、名誉感情侵害による不法行為責任が認められるためには「社会通念上許される限度を超える侮辱行為であると認められる」(最三小判平成22年4月13日民集64巻3号758頁)ことが必要とされています。

では、「社会通念上許される限度を超える侮辱行為」であると認められる場合、どのような事情が考慮されているのでしょうか。以下では、実際の裁判例の傾向に基づいて、不法行為責任を認める場合に考慮される事情と、認めない場合に考慮される事情を見ていきます。

不法行為責任を認める場合に考慮される事情

例えば、「死んでほしい」のような被害者の存在を否定する表現を用いるなど、文言それ自体の侮辱性が強い場合、社会通念上許される限度を超えた侮辱行為に当たると判断される傾向にあります(東京地判令和元年11月7日)。

また、文言それ自体の侮辱性とは別に、同じ投稿の中で他人を中傷する表現が執拗に繰り返されている場合も、不法行為責任を認める傾向にあります(東京地判令和2年9月25日)。

さらに、一般の読者が問題となっている投稿に接したときに、これが被害者に向けられたものであると読み取ることができる場合(同定可能性が認められる場合)も、被害者に対して侮辱的な投稿が行われていることが不特定多数者に伝わる可能性が認められることを考慮して、不法行為責任を認める傾向にあります(福岡地判令和元年9月26日)。

不法行為責任を認めない場合に考慮される事情

侮辱する文言が一度しか使われていなかったり、特段の根拠が示されておらず単なる意見や感想にとどまっていたりする場合には、社会通念上許される限度を超えた侮辱行為とはいえないと判断される傾向にあります(最三小判平成22年4月13日民集64巻3号758頁)。

また、単に「違法」などと指摘するにとどまり、表現に具体性がなかったり意味が不明確であったりする場合も、不法行為責任を認めない傾向にあります(東京地判令和2年3月12日)。

誹謗中傷・名誉感情の侵害についての判断の事例7つ

誹謗中傷・名誉感情の侵害についての判断の事例7つ

では、判決では具体的にどのような検討が行われているのでしょうか。実際の裁判例(東京地判平成31年1月15日)において、個々の投稿がどのように判断されているのかを見ていきます。

事案の概要

原告は、ブログで美容や健康、デートや恋愛、婚活の記事を公開していました。被告は、このブログに掲載されていた顔写真などから原告の氏名を特定し、インターネット掲示板「5ちゃんねる」のスレッドに、原告の本名を記載したうえで、誹謗中傷を繰り返しました。そこで、原告はこれらのうち7つの投稿を問題として、損害賠償を請求しました。

以下では、各投稿についてどのように判断されたのかを詳しく見ていきます。

なお、投稿は匿名で行われていたため、原告は発信者情報開示により投稿者の氏名と住所を特定した後に、投稿者に対して損害賠償請求の訴えを提起しています。発信者情報開示請求については、以下の記事をご参照ください。

関連記事:発信者情報開示請求とは?やり方と注意点を弁護士が解説

関連記事:書き込みした犯人を特定する「発信者情報開示請求」とは?

「バカバカしい」という投稿

まず、原告のブログの記事に関して「あまりのバカバカしさにエア(架空)なのかと疑った」と投稿したことについては、「あくまでも本件ブログを見た被告の感想を述べるものにすぎない」ため、社会通念上許容される限度を超える侮辱行為とは認められませんでした。

これに対して、原告を「バカ女」と投稿したことについて、「原告の人格そのものを非難する書き込み」であることや、原告について言及していることを特定できることから、社会通念上許容される限度を超える侮辱行為と認められました。

ブサイク・気持ち悪い」という投稿

原告を指して「ブサイク」と投稿したことや、原告やその交際男性を「気持ち悪い」と投稿したことについて、「ブサイク」という表現が「容姿の醜いことを意味する」こと、「気持ち悪い」という表現が「嫌悪感を持っていることを示唆する」ことから、社会通念上許容される限度を超える侮辱行為と認めました。

恋愛相手を「ぶさいく」などという投稿

原告の恋愛相手を指して「若いだけのチビビンボーぶさいく」と投稿したことについては、原告自身に向けられた誹謗中傷ではないことや、このように揶揄される人物との交際が一般的に人の人格的評価に影響を与えるとはいえないことから、社会通念上許容される限度を超える侮辱行為とは認められませんでした。

また、原告がそのような交際相手に浮かれている様を「惨め」と投稿したことについても、「穏当な表現とは言い難いものの、全体として見れば、原告の言動に関する感想の域を出ない」ため、社会通念上許容される限度を超える侮辱行為とは認められませんでした。

「ブス」という投稿1

原告を指して「加工してる写真すらブスってどういうことだよw」などと投稿したことについて、「ブサイク」と同義の「ブス」という単語を4回にわたって用いたこと、最後に「笑い」を意味する「w」のマークを用いて原告を中傷していること、原告について言及していることを特定できることなどから、社会通念上許容される限度を超える侮辱行為と認められました。

「ブス」という投稿2

原告を指して「ブス」や「惨めだな・・・ほんとに。毎日辛そう」と投稿したことについて、「ブス」との投稿は、他の投稿と同様に社会通念上許される限度を超える侮辱行為と認められました。

その一方で、「惨め」などと評する部分は、「原告の容貌等を具体的に誹謗中傷するものではなく、被告の推測を述べる」に過ぎないため、社会通念上許される限度を超える侮辱行為とは認められませんでした。

「尻軽」などという投稿

「やりもくチビぶさいくを家に入れたりして」や「尻軽だけでも治さないとブスに未来はないよ」との投稿について、「やりもく」とは文脈上「性関係を持つことのみを目的とすることを意味するもの」と解釈でき、本投稿は「原告が軽はずみに性関係を持つ者であり、容姿が醜い」と摘示するものであるから、社会通念上許される限度を超える侮辱行為と認められました。

顔の輪郭が「じゃがいも」のようだという投稿

原告を指して、顔の輪郭が「じゃがいもみたい」であり、顔の「パーツが大きくても輪郭が整っていないからとにかくブスに見える」と投稿したことについて、容姿の具体的特徴をあげた上で、原告を「ブス」とするものであり、社会通念上許される限度を超える侮辱行為と認められました。

判断事例についてのまとめ

本裁判例では、「社会通念上許される限度を超える侮辱行為」といえるかを判断する際に、投稿文言の悪質性や具体性の程度、頻度などを詳細に検討しています。そして、これらの要素の考慮の仕方は、すでに紹介した他の裁判例の傾向と共通していることがわかります。

このように、具体的な投稿に対する判断の傾向を理解することで、名誉感情侵害による不法行為責任を認めさせるために、あらかじめどのような要素に注目すべきかの把握ができます。

関連記事:名誉感情の侵害とは「馬鹿」「不細工」の書込みにどう対処する?

芸能人に対するブスいじりの法的観点

芸能人に対するブスいじりの法的観点

バラエティ番組などで、芸能人に対する「ブスいじり」が行われることがあります。

特定の者に対して「ブス」などの揶揄は、通常であれば社会通念上許される限度を超える侮辱行為と認められる可能性があります。

もっとも、「ブス」と言われることに対して明示または黙示に許容しているのであれば、このような事情が社会通念上許される限度を超えるかどうかの判断で考慮されて、不法行為責任が否定される可能性もあります。

そのため、番組などで芸能人が「ブスいじり」をされることに対して、あらかじめ許しているといえるかが、不法行為責任の成否の判断をする際に重要となると考えられます。

名誉感情侵害による損害について

名誉感情侵害による損害について

名誉感情侵害の場合、慰謝料(精神的損害)や弁護士費用、発信者情報開示に要した費用を、損害の内容として請求することが考えられます。

このうち、慰謝料額については、投稿回数や投稿の内容、不特定多数の者によって投稿が見られるかどうか、侮辱しようとする意図があったのかどうかなど、さまざまな要素が考慮されることになります。

例えば、既に紹介した裁判例(東京地判平成31年1月15日)では、投稿が複数回に及ぶこと、誰もが閲覧できるインターネット掲示板に投稿したこと、投稿内容は「ブス」や「ブサイク」など原告の容姿を誹謗中傷するものであることなどを考慮し、慰謝料額を20万円としました。

また、東京地判令和4年3月4日では、投稿の表現内容が悪質なこと、原告を一方的に侮辱する意図が明確であること、被告が現在まで原告に謝罪したような事情はうかがわれないこと、他方で、具体的事実を摘示せず単に侮辱的表現の羅列に過ぎないため名誉毀損にはいたっていないこと、名誉感情侵害の部分は短文にとどまっていることなどを考慮して、慰謝料額を8万円としました。

このように、個別の事案ごとに具体的な要素を考慮して慰謝料額が算定されますが、原告が満足のいく額ではないことも少なくありません。そのため、精神的損害の基礎となる事情について、訴訟の段階で説得的な主張・立証が重要です。

なお、弁護士費用や発信者情報開示に要した費用に関しては、以下の記事もご参照ください。

関連記事:誹謗中傷の犯人への損害賠償請求の相場と計算方法とは

まとめ:ネットの誹謗中傷は弁護士へご相談を

まとめ:ネットの誹謗中傷は弁護士へご相談を

この記事では、インターネット上の誹謗中傷について法的責任を追及する場合、名誉毀損だけでなく、同時に名誉感情侵害による不法行為責任の検討も有益であることを解説しました。

名誉感情侵害による不法行為責任を追及する場合、問題となっている誹謗中傷が「社会通念上許される限度を超える」といえるかが重要となります。そして、すでに解説した通り、「社会通念上許される限度を超える」かを検討する際には、文言の悪質性だけでなく、内容の具体性や頻度など、様々な要素が関わることになります。

また、これらの各要素が検討にあたってどのような意味を持つのかは、裁判例などに照らして詳細に調査する必要があり、専門の弁護士への相談が役に立ちます。インターネット上の投稿などでトラブルを抱えている方は、ぜひ一度専門の弁護士にご相談ください。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。近年、ネット上に拡散された風評被害や誹謗中傷に関する情報を看過すると深刻な被害をもたらします。当事務所では風評被害や炎上対策を行うソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

モノリス法律事務所の取扱分野:風評被害対策

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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