風評被害対策

5ちゃんねる書き込みに関するIPアドレスの開示請求とは

風評被害対策

5ちゃんねる書き込みに関するIPアドレスの開示請求とは

5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)は、多数のユーザーからのアクセスや書き込みがある、巨大匿名掲示板です。日々行われる大量の書き込みの中には、個人や会社を誹謗中傷する投稿も混じってしまうのが、やはり実情です。

5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)は匿名掲示板であり、誰が書いたか分からない作りとなっていますが、いわゆる風評被害対策として、投稿者を特定することは、可能なケースもあります。本記事では、匿名掲示板である5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)において誹謗中傷被害を受けてしまった場合に、その書き込みを行った投稿者を特定する方法について解説します。

匿名掲示板における投稿者特定とは

投稿者特定とは、単純に言えば、「投稿者に繋がる情報を持っている人や会社に対して、その人や会社が持っている情報の開示を求め、投稿者を特定する」という手続です。5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)における書き込みの場合、「投稿者に繋がる情報を持っている人や会社」とは、つまり、5ちゃんねるの運営者です。

5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)の運営者とは誰か、というのは、2ちゃんねるが5ちゃんねるに名称変更された経緯などもあって少しややこしいのですが、結論としては、フィリピン法人である「Loki Technology Inc」となります。5ちゃんねると2ちゃんねるの違い、それぞれの運営者や違いに関しては下記記事にて詳細に解説しています。

この「Loki Technology Inc」に対し、「持っている情報」の開示を求めるわけですが、ただ、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)は匿名掲示板です。その意味は、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)を運営している「Loki Technology Inc」自体も、投稿者が誰なのか、例えば投稿者の住所や氏名という情報について、知らない、ということです。

投稿者特定とIPアドレス開示請求の関係

IPアドレスが開示されれば、経由プロバイダの特定が可能に。

ただ、投稿者の住所や氏名が分からないとしても、掲示板運営者である「Loki Technology Inc」は、「投稿者に繋がる情報」は持っています。IPアドレスです。IPアドレスとは、インターネットに接続しているPCやスマホ(正確にはPCの場合はルーターなど)が固有に持っている、いわばインターネット上の住所というべき情報です。そしてIPアドレスの開示を受けることができれば、そのIPアドレスを管理している経由プロバイダ(固定回線の場合のNiftyや携帯キャリア回線の場合のdocomoなど)を特定することができます。そして、経由プロバイダは、当該年月日日時分にそのIPアドレスを使っていたユーザーの契約者情報を保有しています。…少しややこしいですが、例えば、下記のような仕組みです。

  1. 「Loki Technology Inc」は、ある誹謗中傷書き込みについて、「その書き込みを行ったユーザーのIPアドレスは126.212.170.222である」という情報を保有している
  2. IT的な調査を行えば、126.212.170.222がソフトバンク社の管理するIPアドレスであることが分かる
  3. ソフトバンク社は、その書き込みが行われた年月日日時分に126.212.170.222というIPアドレスを使っていた契約者の契約者情報(その人の住所や氏名)という情報を保有している

したがって、書き込みを行った投稿者を特定するには、大まかに言って、

  1. 「Loki Technology Inc」を相手方として、投稿者のIPアドレス開示を求める
  2. ソフトバンク社を相手方として、契約者の住所氏名開示を求める

という手順を踏めば良い、ということになります。この流れについては、下記記事にて詳細に解説しています。

このような仕組みであるが故に、5ちゃんねる運営者(である「Loki Technology Inc」)に対してIPアドレスの開示を請求する、ということが、書き込みを行った投稿者を特定する上で、非常に重要なポイントとなるのです。

5ちゃんねるに対するIPアドレス開示請求の方法

5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)は、誹謗中傷にあたるような書き込みの削除については、メールによる削除依頼も受け付けています。有名人や企業に対する誹謗中傷などの場合、なかなか対応して貰えないのが実情ですが、個人のプライバシー情報などの場合、特に弁護士への依頼を行わなくても、被害者自身からのメールによる削除が認められるケースも、実際問題としてあります。

ただ、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)は、被害者自身からのメールによるIPアドレス開示請求を受け付けていません。IPアドレスの開示を求めるには、裁判所を通じた手続を行うしかないのです。

そして、裁判所を通じたIPアドレス開示請求の場面では、例えば単に

  • 不愉快な書き込みがあるので、書き込みをした人を特定したい
  • 5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)の定める削除判断基準に違反する書き込みなので、投稿者を特定したい

といった主張では足りません。裁判所を通じた手続で問われるのは、

  • その書き込みが、いかなる意味で被害者の権利を侵害しているのか
  • その証拠は何か

という、純粋に法律的な議論です。例えば、ある会社が、いわれなくブラック企業呼ばわりされており、その書き込みを行った犯人を特定したい、という場面であれば、自社が労働法規を遵守している証拠などを精緻に揃えなければなりません。

これは、実際問題として、弁護士に依頼を行わないと難しいと言えるでしょう。

書き込みの削除とIPアドレスの開示

なお、マニアックな問題ですが、「先に書き込みを削除してから、IPアドレスの開示請求を行うことはできるのか」という問題があります。つまり、上記のように

  • 削除:内容次第では被害者本人により、メールによって実現できるケースもある
  • IPアドレス開示請求:裁判所を通じた手続が必要であり、また、弁護士に依頼しないと現実問題として難しい

というズレがあるため、場合によっては、先に書き込みを削除し、その上でIPアドレスの開示請求を行いたい、というケースもあり得るからです。これは、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)のみならず、他のサイト等でも問題となるテーマです。

結論として述べれば、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)の場合、「おそらく」非常に困難です。「おそらく」と留保を付けたのは、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)は巨大掲示板で、これを管理するウェブサーバーが複数に分かれており、サーバー毎に仕様が異なる可能性があり、「およそ5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)についてどうか」という検証が難しいからです。ただ、当事務所のノウハウによると、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)は、書き込みの削除後少なくとも一定期間でIPアドレスのログが消失する模様です。そして後述の通り、「仮処分」という手続を用いるIPアドレス開示請求には、1ヶ月程度の時間が必要です。

  1. まず自分自身で削除を行う
  2. この上で弁護士に依頼してIPアドレス開示請求の準備を開始する
  3. 約1ヶ月でIPアドレスが開示される

という手順だと、2,3の間にIPアドレスのログが消えてしまい、開示を受けることができなくなってしまう可能性が高いと思われます。したがって、投稿者を特定したい場合は、最初から弁護士に依頼を行う方が、少なくともベターです。後述するように、IPアドレス開示を求める裁判所手続(仮処分)では、削除とIPアドレス開示を同時に求めることが可能です。

IPアドレスの開示を求める仮処分手続とは

裁判より迅速な仮処分手続とは

一般論として、裁判は、非常に時間がかかる手続です。例えば、訴状を作成し提出すると、その約1-2ヶ月後に初回の期日が設定され、その初回期日の議論を踏まえて、約1ヶ月後に次の期日が設定され……と進行していき、裁判所が「十分に議論は尽くされた」と判断すると、約1-2ヶ月後に判決が出される、という時間感覚です。単純な事件でも最低3ヶ月程度、少しややこしい事件だと1年を超えることも珍しくありません。

ただ、投稿者特定は、後述する通り、厳しいタイムリミットとの戦いです。上記のような時間感覚では、書き込みを行った投稿者を特定することができません。そこで、「裁判」ではなく、「仮処分」という迅速な手続によることが認められています。仮処分手続の場合、上記と比較すると

  • (訴状の代わりの)申立書を提出すると、最短で即日期日が開かれる
  • 期日が終わると、その1週間程度後に次回期日が設定される
  • そもそも、1-2回の期日で終わることもある
  • 議論が尽きると、最短1週間程度で(判決の代わりの)決定が出される

という時間感覚で手続が進んでいきます。したがって、申立書提出から決定まで、約1ヶ月程度で終わるのです。「裁判所を通じた手続」というと、無駄に時間がかかってしまうイメージがあるかもしれませんが、例えば、メールで削除を依頼し、しかし形式的なミスや証拠などが不十分で突き返され、再度メールを送って……と繰り返すよりは、かえって弁護士に依頼し仮処分手続を使った方が早い、というケースもあるでしょう。

仮処分によるIPアドレス開示請求の特徴

この仮処分手続について、ネット上の情報には多少錯綜があるのですが、結論としては、下記のような特徴があります。

  • ある書き込みについて、削除とIPアドレスの開示を同時に求めることが可能です。
  • 5ちゃんねる内のレスであれば、複数レスについて同時に求めることが可能です。
  • 「被害者」(裁判の場合の「原告」に相当する「債権者」という立場の者)は1回の仮処分手続について1人(1社)である必要があります。例えば、A氏があるレスで誹謗中傷被害を受け、B氏が別のレスで誹謗中傷被害を受けているという場合に、A氏とB氏が弁護士費用を出し合って1回の手続で2レスについてIPアドレス開示請求を行うことはできません。

もっとも、「複数レスについて同時に求めることが可能」といっても、結局、「その書き込みが何故違法で、その証拠は何か」ということを、基本的には書き込み単位、少なくともその内容単位で検討しなければいけません。

「内容単位」というのは少し分かりにくいですが、例えば、

  • 「ブラック企業」という書き込みが複数あるのであれば、それらは一つにまとめられる
  • ある一つの書き込みに「サービス残業が横行している」と書かれているのであれば、その書き込みとの関係で主張や証拠を精査する必要がある

というような意味です。結局、あまりに多くの書き込みを対象とすると、上記のような意味での「内容」が増えてしまい、したがって前述のような時間感覚で手続が終わらず、書き込みを行った犯人の特定に失敗してしまうリスクもあります。実務感覚としては、誹謗中傷対策の経験が豊富な弁護士の場合、20-30個程度であれば、あまりスピードを落とさずに手続を進行できます。

IPアドレス開示のタイムリミット

固定回線・携帯キャリアのログ保存期間にはそれぞれタイムリミットがあります。

ただ、投稿者特定には、厳しいタイムリミットがあります。これには、5ちゃんねる特有の問題である部分と、およそインターネットにおける投稿者特定一般論としての部分があります。

5ちゃんねるによるログ保存期間のタイムリミット

まず、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)は、あまりに古い書き込みの場合、IPアドレスのログを保有していないケースがあります。これも上記と同様、サーバーによって異なる可能性があり、「おそらく」というレベルにはなってしまうのですが…。

経由プロバイダによるログ保存期間のタイムリミット

また、一般論として、経由プロバイダ(上記の通り、固定回線の場合のNiftyや携帯キャリア回線の場合のdocomoなど)は、

  • 固定回線の場合は1年程度
  • 携帯キャリア回線の場合は3ヶ月程度

しか、接続ログを保有していないケースが多いと言えます。したがって、

  1. 5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)を相手に、上記のように仮処分手続を用いてIPアドレスの開示を求める
  2. 1で開示されたIPアドレスを見て、経由プロバイダがどこかを確認する
  3. 当該経由プロバイダに対して、「今から住所氏名開示を求める裁判を起こすので、裁判が終わるまでIPアドレスを保全して欲しい」と求める
  4. 当該経由プロバイダに対して、住所氏名開示を求める裁判を起こす

この3までの部分を、携帯キャリア回線の場合は、投稿日から3ヶ月以内に行わなければいけません。そして1は、上記の通り、それだけで1ヶ月程度を要する手続です。したがって特に携帯キャリア回線の場合、投稿者特定は、極めて厳しいタイムリミットとの戦いなのです。

1年以内であれば投稿者特定に成功する見込はある

…ただ、上記のように解説すると、「およそ2ヶ月以内の投稿でないとIPアドレス開示請求は意味が無い」と思われがちですが、実務感覚としては、必ずしもそうとは言えません。

  • そもそも、携帯キャリア回線経由の書き込みは、決して「全て」ではない。ある程度の数の書き込みをまとめてIPアドレス開示させれば、その中には半分程度以上は固定回線経由の書き込みが含まれているケースが多い
  • 5ちゃんねるは、書き込みについて表示される「ID」を解析すると、それが携帯キャリア回線経由のものか、固定回線経由のものかについて、一定の情報を得られる場合もあり、ある程度のメドを前もって立てることができるケースも多い

という理由です。

ただ、いずれにせよ、このタイムリミットの問題も含め、IPアドレス開示請求は、最終的な目標、例えば「ブラック企業という書き込みを行った犯人を特定し、損害賠償請求を行いたい」という目標との関係では、どうしても「限界」がある、不完全な手続です。このリスクについては下記記事にて詳細に解説しています。

IPアドレスに関する弁護士費用の目安

また、弁護士費用に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。

結論として、最終的に住所氏名開示にも成功し、犯人を特定できることができれば、そこまでの手続に要した弁護士費用は「調査費用」として犯人に請求可能であり、さらに犯人に対しては慰謝料請求も可能です。したがって、犯人から支払を受けることができれば、「被害者側に金銭負担が生じる」ということはありません。ただ、上記参考記事で詳述している通り、投稿者特定には、

  • 法的に正当性があり、弁護士がベストを尽くしても、しかし技術的な限界などで犯人に辿り着けないというリスク
  • 犯人の経済状況などが原因で支払を受けることができないというリスク

があります。特に前者は、上述の記事内で詳述したとおり、現在の法律や裁判所の実務などに基づく部分もあります。

誹謗中傷対策を日々手がける弁護士としては、「最善を尽くすことはお約束できますが、上述のような法律や裁判所実務なども原因で、経済的負担が生じないという確約はできないため、それでもなお進めるか、検討して頂きたい」というのが本音ではあります。

モノリス法律事務所

モノリス法律事務所

モノリス法律事務所は、IT・インターネット・ビジネスに強みを持つ、東京・大手町の法律事務所です。

シェアする

トップへ戻る