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風評被害対策

保険会社がネガティブな口コミを仮処分で削除する方法

風評被害対策

スマートフォンの普及に伴い、保険を検討する際に保険会社の口コミを見る人が増えています。保険は、ケガや病気など人生にトラブルがあった際に支払われるという性質上、ネガティブな口コミを書き込まれてしまうケースもあります。

この記事では、保険会社についての悪質な口コミを削除する方法について解説します。

保険会社への悪質な口コミとは

保険会社は、保険の契約時に重要事項を説明する義務がありますが、コミュニケーションのすれ違い等により誤解が生まれ、トラブルに発展してしまうケースもあります。そうしたケースでは、口コミサイトに「保険金が支払われない」「最低な保険会社。絶対に契約しないほうがいいです」といったネガティブな口コミが書き込まれてしまうかもしれません。悪質な口コミは風評被害を生じさせ、保険商品の売り上げ低下等の悪影響を及ぼすリスクがあるでしょう。

口コミサイトへ削除依頼する

事実とは異なるネガティブな口コミや誹謗中傷にあたるような口コミ、社員等のプライバシーを侵害するような口コミが投稿されている場合、まずは口コミサイトへ削除依頼をしましょう。ほとんどのサイトで、誹謗中傷やプライバシーの侵害にあたる口コミは禁止されています。

ただ、削除するかどうかを決めるのはサイトの運営者ですので、運営者が誹謗中傷やプライバシーの侵害とまではいえないと判断した場合は削除してもらえないこともあります。単に悪い評価をつけられたというだけで口コミを削除してしまえば、口コミサイトとしての目的を果たすことができなくなりますので、口コミの削除には慎重な姿勢を取っているサイトもあるでしょう。

口コミサイトの一つであり、保険会社の口コミも投稿されている「みん評(みんなの評判ランキング)」の誹謗中傷口コミの削除方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

削除の仮処分申し立てを行う

削除仮処分とは

口コミサイトへ削除依頼をしても口コミを削除してもらえない場合は、裁判所へ削除の仮処分を申し立てることができます。仮処分とは、民事保全法に基づく暫定的な処置のことで、通常の訴訟手続より早く結果が出ます。仮処分は、実際に訴訟で違法かどうかを決める前に仮に決定をするものですので、仮処分の決定が出た後に、訴訟を起こす必要があります。ただ、現実的には仮処分の決定が訴訟で覆ることは少ないため、仮処分で違法の決定が出れば、その後訴訟を起こさなくても口コミが削除されるケースが多いです

悪質な口コミは、風評被害が拡大する前に早めに削除することが大切です。そのため、仮処分による申立てが適していると言えます。

削除仮処分の方法

削除仮処分は、仮処分申立て→審尋→担保金納付→仮処分命令の発令→執行という流れで行われます。

仮処分申立て

まずは、裁判所に削除仮処分の申立てを行います。申立ての際には、保全すべき権利の内容、権利侵害の事実、保全の必要性を明記した申立書と疎明資料を提出します

通常の裁判の場合は、「証明」するための証拠が必要ですが、仮処分の場合は「疎明」でよいことになっています。「証明」は、裁判官に合理的な疑いをさしはさむ余地がない程度に真実らしいと確信を得させること、「疎明」は裁判官が一応確からしいと推測を得られることを指します。

審尋

審尋とは、聞きなれない言葉ですが、裁判における口頭弁論のような手続です。口頭弁論の場合、書面上で主張をしますが、審尋では裁判官と弁護士が直接議論します。

審尋の間隔は約1週間と短いため、前回足りなかった資料を短期間で集めたり、新たに書面を作成したりしなければなりません。こうした事態をなるべく避けるために、初回から周到に準備して有効な証拠や書面を用意していく必要があります

担保金納付

審尋の結果、その口コミの違法性が認められて、保全の必要性があるとされた場合、「担保決定」となります。担保決定となったら、担保金を法務局への供託という形で納付しなくてはなりません

なぜ担保金を納付する必要があるかというと、正式な裁判が提起されてその口コミの違法性が否定された場合には、口コミを削除させたことに対する損害賠償金が発生する可能性があり、その損害賠償金にあてるためです。この担保金は、口コミの内容や量にもよりますが、大体30万円から50万円くらいです。この担保金は、担保権利者の同意を得る等の手続を経れば取り戻すこともできます。

仮処分命令の発令

担保金を供託したら、裁判所は口コミ削除を命じる仮処分命令を出します。この命令が出されれば口コミサイトの多くは口コミを削除することになります。そのため、その後正式な訴訟手続を起こす必要はないケースがほとんどです。

執行

仮処分命令が出ても口コミが削除されない場合は、執行という手続を取ることもできます。また、執行の申立てをすれば、口コミが削除されるまでの間、裁判所が命じた金額を支払わせることができるとされていますが、ここまで削除を拒まれることはほとんどないでしょう。

誹謗中傷記事を仮処分で削除する方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。

仮処分で口コミの削除が命じられたケース

歯科医院についてのGoogleマップのコメントが名誉毀損にあたるとして、削除仮処分を申し立てた事例では、東京地裁によりコメントの削除が命じられました(東京地方裁判所2018年4月26日決定)。この決定の理由は、大きく分けて二つです。

  • そのコメントにより社会的評価が低下したといえる
  • 摘示されている事実が真実であるといえないことが疎明資料によって明らかになっている

つまり、上記の主張を適切に行えるかどうかや有効な疎明資料を集められるかどうかが成否を分けると言えます。逆に、そのコメントにより社会的評価が低下したとまではいえなかったり、そのコメントが単なる感想であり真実に反するという疎明が難しかったりする場合などは削除が認められない可能性が高いです。

歯科クリニックへの口コミを削除できるケースについては、以下の記事で詳しく解説しています。

まとめ

仮処分による削除の申立ては、通常の裁判手続より迅速に終わります。ただ、手続が早く進むことによる難しさもあります。短い時間内で適切な資料を集めたり、書面を作成したりする必要があるためです。

保険会社について悪質な口コミを書き込まれてしまっている場合、インターネット上の誹謗中傷対策に強い弁護士へ相談して早めの対策を取るようにしましょう

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。

近年、ネット上に拡散された風評被害や誹謗中傷に関する情報は、深刻な被害をもたらしています。

当事務所では風評被害対策を行うソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しておりますのでご参照ください。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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