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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

Instagramのストーリー機能で投稿された画像や動画の肖像権

風評被害対策

Instagramのストーリー機能で投稿された画像や動画の肖像権

肖像権は、著作権などとは異なり、明文化はされていませんが、本人の許可なく自分の顔や姿態を「撮影」されたり、「公表」されたりしない権利として、判例によって確立されてきました。

「公表」に関しては、「肖像は、個人の人格の象徴であるから、当該個人は、人格権に由来するものとして、これをみだりに利用されない権利を有すると解される」(最高裁2012年2月2日判決)とされています。

その一方で、プロフィール画像として自分の顔写真を使われ、なりすましをされたとして肖像権侵害を訴えて棄却された例もあります。

これは、「人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等として許されるべき場合もあるのであって、ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。」(最高裁2005年11月10日判決)より、総合考慮された結果、みだりに利用されたと認められない場合とされています。

ここでは、Instagramのストーリー機能における肖像権について、解説します。

ネットと肖像権

当サイトの別記事「なりすましの削除やIPアドレス開示請求」で紹介した大阪地方裁判所2016年2月8日判決では、被告のアカウントについて、「プロフィール画像として原告の顔写真を使用し、アカウント表示名として『B’』という原告の氏名である『B』をもじった名前(本件ハンドルネーム)を使用したものであるから、本件投稿は、いわゆる第三者が原告になりすまして投稿したものと認めることができる」と、なりすましを認めました。

その上で、判決は、本件アカウントのプロフィール画像として用いられた原告の顔写真は、原告が5年ほど前に登録した際に原告のプロフィール画像としてアップロードしたものであって、原告自らが不特定多数の者が閲覧することを予定されたSNSサイト上に公開したものであるから、これが用いられたことにより原告のプライバシー権が侵害されたと認めることはできないし、原告の顔写真は原告が自ら公開したものであるから、本件投稿により原告の肖像権が侵害されたと認めることもできないとしました。

みだりに利用されたわけではないとはいえ、なりすましや他人の顔写真をプロフィール画像として使っているだけでは、プライバシー権侵害や肖像権侵害にならないということですが、ネット上で公開したことのみをもって、自らの肖像権を放棄(容認)したと認定されることに対し、疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

Instagramのストーリー機能

Instagramのストーリーは、2016年8月に登場し、現在では国内ユーザーのうち、ティーン層を中心に、70%ほどが利用しています。フィード(ホーム画面)投稿とは別枠で24時間で自動消滅するため、短時間の動画や写真を気軽にシェアできる機能です。

最近では、気軽な情報発信手段としてストーリーのみを利用するというユーザーも増えています。日常のシーン以外にも、自分のフォロワーへの感謝の気持ちやフィードに投稿した際の告知など、豊富なエフェクトやビジュアルを使って、カード感覚で直感的に伝えることができるとして、人気が増しています。

このInstagramのストーリー機能と肖像権について、下級裁判所のものとはいえ、興味深い判決が出ています。

訴訟の経緯

原告Aは、2018年12月19日、妻である原告Bと共に食事のため蕎麦屋を訪れ、原告Bを構図等に配慮した上で動画に撮影し、Instagramにストーリー機能を利用して投稿しました。氏名不詳者は、上記投稿サイトから本件動画を入手し、24時間後に、本件動画は上記投稿サイトから削除されたのですが、氏名不詳者は本件動画の一部を画像として保存し、匿名掲示板に2019年9月に本件画像を添付して投稿をしたことにより、本件動画が複製されて送信可能化されました。

原告らは掲示板の運営よりIPアドレスとタイムスタンプを入手し、被告である経由プロバイダに対し、原告Aの著作物であり原告Bを被撮影者とする動画の一部が、被告の提供するプロバイダを経由してネット上のウェブサイトに投稿されたことによって原告Aの著作権並びに原告Bの肖像権及び名誉権が侵害されたとして、発信者情報開示を請求しました。

これに対し、被告であるソフトバンクは、原告Aが著作権を有するかは不明であるとして著作権侵害を否認し、動画は原告Bの承諾を得て撮影されたものであると考えられ、原告AによってInstagramに投稿されたということであるから、原告Bは前記動画をインターネット上で公開することについて黙示の承諾を与えていたと推認され、又は、本件投稿による原告Bの肖像権の侵害が社会通念上受忍すべき限度を超えるものとはいえないとして、肖像権侵害を否認しました。被告である経由プロバイダ側としては、通常の主張と言えます。

裁判所の判断

裁判所はまず、著作権につき、本件動画は原告Aが、その思想等を創作的に映画の効果に類似する視聴覚的効果を生じさせる方法で表現したものであるから、著作物に該当し、原告Aがその著作権を有するものと認め、氏名不詳者による本件投稿によって、原告Aの本件動画の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害されたことが明らかであると認めました。

次に肖像権侵害については、本件動画の撮影及びそれをインターネット上の投稿サイトに投稿したのは原告Aであり、原告Bは夫である原告Aにこれらの行為を許諾していたと推認されるが、氏名不詳者はInstagramから本件動画を入手したものではあるとしつつ、

本件動画は24時間に限定して保存する態様により投稿されたもので、その後も継続して公開されることは想定されていなかったと認められる上、原告Bが、氏名不詳者に対し、自身の肖像の利用を許諾したことはない。

本件画像は、原告Aの著作権を侵害して複製され公衆送信されたものであって、本件投稿の態様は相当なものとはいえず、また、本件画像の利用について正当な目的や必要性も認め難い。これらの事情を総合考慮すると、本件画像の利用行為、社会生活上受忍すべき限度を超えるものであり、原告Bの権利を侵害するものであると認められる。したがって、本件投稿によって原告Bの肖像権が侵害されたことが明らかであると認められる。

東京地方裁判所2020年9月24日判決

として肖像権の侵害も認め、ソフトバンクに発信者の情報開示を命じました。

https://monolith-law.jp/reputation/copyright-property-and-author-by-posting-photo

裁判所は、許諾されていないから直ちに違法だと判断したわけではなく、正当な目的や必要性も認め難いとして、「使用の目的、被侵害利益の程度や侵害行為の態様等を総合考慮して、その侵害が社会生活上受忍の限度を超えるかどうかを判断して」投稿の内容、態様、必要性等の事情を総合的に考慮し、受忍限度を超えるものとして違法性を認定したのではありますが、24時間限定で公開されるというストーリーの特性を認定根拠の一つとしたことは、注目してよいでしょう。

たとえ本人の許諾が認められない場合でも、受忍限度内であれば適法と判断される場合もあるので、その点は注意が必要ですが、Instagramのストーリー機能を用いている場合に、写真等を公開したからといって直ちにネット上で公開することについて黙示の承諾を与えたわけではなく、ネット上で公開したということのみをもって自らの肖像権を放棄(容認)したとはいえない、と主張する事例が今後は増加する可能性があります。

まとめ

自分で写真等をネット上に投稿した場合であっても、それは、一定の範囲内で閲覧されることを容認しているだけであり、無制限にどのような場所や形態においても容認するとして投稿しているわけではありません。

Instagramのストーリー機能は、容認の範囲を限定するという、通常の利用者の利用意思に合致するものと言えます。

もし自身の肖像権を侵害するトラブルに巻き込まれた際は、専門知識を有する弁護士に一度相談してみることをおすすめします。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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